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2019.2.2
人はなぜ、バブルで散々な目に遭っても またすぐ新たなバブルに踊ってしまうのか?
ジョン・K・ガルブレイス:経済学者
古今東西で起きた金融バブルとその崩壊過程を描いた『バブルの物語』。“経済学の巨人”と称された故ジョン・ケネス・ガルブレイスが著した同書は、バブルを希求する人間の本質と、資本主義経済の根幹に迫った名著として長く読み継がれてきた。
今、世界中で株価が乱高下し、先行き不透明感が増している。はたして現在の経済状況はバブルなのか? だとすればその崩壊は迫っているのか? それを見極めるうえで『バブルの物語』は極めて有効な教訓を与えてくれる。同書のエッセンスを紹介する連載の第3回は、なぜ人々がバブルを繰り返すのか、その理由に迫る。
金融に関する記憶は極度に短い
『バブルの物語』では、17世紀オランダの「チューリップ・バブル」をはじめ、それ以降に起きたいくつもの大規模な投機のエピソードを俎上に載せて分析している。ガルブレイスはこうした事例を用いてバブルを生む「陶酔的熱病(ユーフォリア)」への警告を発するのだ。しかし、一方で「本当に警戒心を持つのは一部の人だけかもしれない」と悲観もしている。
なぜなら、熱病を発生させ、それを支える2つの要因を、人々がほとんど無視しているからだという。その要因について彼は以下のように説明する。
「(熱病を発生させ、それを支える第一の要因は)金融に関する記憶は極度に短いということである。その結果、金融上の大失態があっても、それは素早く忘れられてしまう。さらにその結果として、同一またはほとんど同様の状況が再現すると──それはほんの数年のうちに来ることもあるのだが──、それは、新しい世代の人からは、金融および経済界における輝かしい革新的な発見であるとして大喝采を受ける。」
「人間の仕事の諸分野のうちでも金融の世界くらい、歴史というものがひどく無視されるものはほとんどない。過去の経験は、それが記憶に残っているとしても、現在のすばらしい驚異を正しく評価するだけの洞察力に欠けた人の無知な逃げ口上にすぎないとして斥けられてしまう。」
つまり金融の世界では、金融上の新たな発見やツールに踊らされて痛い目に遭っても、そうした過去の失敗の教訓がすぐに忘れ去られ、まったく活かされないというのだ。さらには、教訓を活かそうとして警告を発すれば「洞察力に欠けた人の無知な逃げ口上」として無視されかねないのである。
たしかに、バブルが数年から十数年ごとに沸き起こり、そのたびに「金融および経済界における輝かしい革新的な発見」が喧伝されることに心当たりがある人は多いだろう。
たとえば「ITバブル」は、ITという革新的なツールによって景気循環が消滅しインフレなき経済成長が実現すると説いた「ニューエコノミー論」に支えられた。同バブルは2000年前後に崩壊するが、それ以降、ニューエコノミー論を目にする機会はほぼなくなった。そして、わずか8年後にあのリーマンショックが発生するのである。
リーマンショックはアメリカの住宅バブル崩壊がきっかけで発生するが、背景にはサブプライムローンの不良債権化があった。この新たなローンも「金融工学」という革新的な道具を駆使して生まれたものなのである。
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「お金持ちは賢い」という錯覚
「お金持ちは賢い」という錯覚
ガルブレイスは「陶酔的熱病(ユーフォリア)」を発生させ、それを支える2つめの要因として以下を挙げる。
「投機的熱病とその確実な崩壊とに寄与する第二の要因は、金(かね)と知性とが一見密接に結びついているかのように思われていることである。このように言うと、立派な人々からは歓迎されないに決まっているのであるが、残念ながらこの指摘は正しいものとして認めなければならない。」
「個人が所有もしくは関係する所得とか資産とかいう形での金(かね)が多ければ多いほど、彼の経済・社会観は深くしっかりしており、彼の頭脳の働きは機敏で鋭い、と考える強い傾向がある。金(かね)こそ資本主義的成功の尺度である。金(かね)が多ければ多いほど、成功の度合も大であり、その成功の土台となった知性もすぐれている、というわけだ。」
「金持ちに対するこうした敬意というものは、記憶の短さ、歴史の無知、したがってまた、先に述べた個人的・大衆的な錯覚に陥る能力、を示唆している。」
まさにガルブレイスらしい辛辣な指摘と言えよう。そして、金(かね)と知性に関わる錯覚は金融プロフェッショナルにも当てはまると述べる。
「われわれは、大きな金融機関──大きな銀行、投資銀行、保険、証券会社──のトップにある人たちは並々ならぬ知性の持ち主であると考える傾向がある。彼らが支配する資本資産や所得の流れが大きければ大きいほど、金融・経済・社会に対する彼らの見方も深いはずだと考えてしまう。
しかし実のところは、こうした大金融機関のトップに立つ人たちがそうした地位にいるのは、彼らが、競争者の中でも最も言動に安心感があり、したがってビュロクラシーの観点から見て最も無害な人であるからだ、というケースが多く、このような傾向は大組織についてはごく普通に見られるところである。」
「金(かね)を貸す立場にある人は、昔からの習慣・伝統の力により、また特に借り手の必要・欲求のために、日常業務について敬意をもって接せられる度合が殊のほか大きい。そのために彼らは、自分個人の頭脳がすぐれているという自信に陥ってしまう。つまり、このように扱われるのだから自分は賢明であるに違いない、と思い込んでしまう。したがって、最低の良識を持ち続ける上で何よりも大切な自己反省ということを怠りがちになる。」
「投資する大衆は、金融の才のある偉人に魅惑され、そのとりこになってしまう。なぜこのように魅惑されるかと言えば、それは、その金融操作が非常に大がかりであることと、巨額の金(かね)がかかわっている以上それを動かす人の頭脳も偉大であるに相違ないと信じ込んでしまうことによる。」
前述したリーマンショックなどはまさにこのケースと言えるだろう。裕福で地位も高く、自他ともに賢明であると認める人たちこそ、最も愚かなことに手を染めかねないのである。
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バブル発生の原因は「市場」そのものにある
バブルの「種」は
市場自体に内蔵されている
『バブルの物語』ではバブル発生の際には必ず「一見新奇で大いに儲かりそうな金融の手段」や「金融の天才」が登場すると繰り返し述べられる。
そしてバブルが崩壊すると、つい最近まで称賛を浴びていた金融手段や天才に怒りや非難が集中することになるわけだが、ガルブレイスは実はそれこそが大問題だと言う。
「論議の的とならないのは投機それ自体、またはその背後にある異常な楽観主義である。『投機の結末では、真実はほとんど無視される』。これが最も注目すべきことなのである。」
「投機には多くの個人や機関が関係していたわけであって、過ちや愚鈍さや行き過ぎの責任を特定の個人または会社に帰するのは無難なことであるけれど、社会全体とか金融界全体のせいにするのは穏当でないと考えられるからである。
多数の人がうぶで、愚鈍でさえあったことは明らかである。しかし、そのように言ってしまうと、知性は金(かね)につきものであるという前述の仮定に真っ向から反することになる。金融界はこうした無節制な過ちを犯すほど低能ではない、という想定を崩すことはできないのだ。」
つまり人々は、新奇な金融手段や天才をスケープゴートにしてしまい、それを無闇に信奉した社会や金融界の過ちを認めようとしないというのだ。まさに「真実はほとんど無視される」のである。
ガルブレイスはそして「市場」そのものにこそ、バブル発生の原因があるとする。
「自由企業制の立場・教義において広く認められているところによれば、市場は外部的な影響を中立的かつ正確に反映するものだとされている。市場自体に過ちの種が内蔵されていて、その内部的な力で市場が動かされる、というふうには考えられていない。これは古典的な信仰である。したがって、崩壊の原因として、市場の外部にある何か──それがいかにこじつけであるにせよ──を見つけ出す必要が生じる。あるいはまた、何らかの形で市場が濫用され、そのために市場の正常な働きが抑えられた、と説明する必要が生じるのだ。」
まさに、市場を万能視する新古典派を批判し、現実に即して経済社会を究明してきたガルブレイスの面目躍如たる指摘と言えるだろう。
(つづく)
[新版]バブルの物語
ジョン・ケネス・ガルブレイス 著/鈴木哲太郎 訳
<内容紹介>
なぜ、金融バブルは繰り返されるのか。17世紀オランダで起きたチューリップバブルから、1929年の世界大恐慌、さらには1980年代末の日本のバブルに至るまで、古今東西で起きた「熱狂」とその崩壊過程を描く。バブルを希求する人間の本質と、資本主義経済の根幹に迫った名著がついに復活!
はたして大暴落は訪れるのか?ガルブレイスの問題作から読み解くバブルの本質
アベノミクスで日本は再びバブルに踊る?世界的経済学者が世に問うた「警告の書」
ジョン・K・ガルブレイス「文明の衝突は起きない」
金融危機の真の原因を振り返る
https://diamond.jp/articles/-/192798
ビジネス2019年2月2日 / 01:49 / 5時間前更新
インフレよりデフレが懸念材料=FRB理事候補のケイン氏
Reuters Staff
1 分で読む
[ワシントン 1日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)理事への起用が取り沙汰されている元ピザチェーン経営者ハーマン・ケイン氏(73)は1日、FRBはインフレよりもデフレについて懸念すべきとの認識を示した。
ケイン氏はフォックス・ビジネス・ネットワークとのインタビューで「インフレを懸念要因と見なさぬようFRBに促す。なぜならデフレがより大きな懸念要因だからだ」と語った。
米政府高官は前日、トランプ大統領がケイン氏をFRB理事に指名する人事を検討していることを明らかにした。ケイン氏は同ポストを巡りトランプ大統領と会合したかどうか明らかにせず、候補者として考慮されれば、光栄に感じると述べるにとどめている。
ケイン氏はまた、賃金動向を注視する考えを示し、「賃金はようやく動き出しつつあるが、FRBはデフレよりインフレを恐れており、しばらくは消極的ながらも利上げの話を避けようとするだろう」と述べた。
エコノミック・アウトルック・グループの首席グローバルエコノミスト、バーナード・バウモル氏は、賃金の前年比上昇率が4カ月間連続で3%を超える中、雇用の伸びが続けば、物価上昇圧力が掛かる公算が大きくなると指摘。「ケイン氏が実際に、賃金動向に基づく金利政策を追求するのなら、現時点で利上げに傾くということだ」と分析する。
ただ、トランプ氏が昨年、利上げを批判したことを踏まえると、政権指名候補は追加利上げに反対すると考えるのが無難と、バウモル氏は語る。
ケイン氏は1989─96年、カンザスシティー地区連銀で役職に就いている。 バウモル氏「金融政策やマクロ経済への影響についてしっかりと訓練を受けたエコノミストを求めているのなら、ケイン氏が適任かどうかは分からない」と話した。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-cain-0201-idJPKCN1PQ5C2?il=0
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