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ビジネス2018年12月27日 / 17:34 / 2時間前更新
ゆうちょ限度額倍増、貯金集める意図はない=日本郵政社長
2 分で読む
[東京 27日 ロイター] - 日本郵政(6178.T)の長門正貢社長は27日の記者会見で、ゆうちょ銀行(7182.T)の預入限度額の引き上げについて「もっと貯金を集めたいとは一度も言ったことはない」と述べ、民間金融機関などが懸念する資金の急速な流入は起こらないとの考えを示した。
政府の郵政民営化委員会は26日、ゆうちょ銀の限度額を現在の1300万円から2600万円に倍増させる方針を盛り込んだ報告書を取りまとめた。2019年4月からの実施を目指すとしている。
民間金融機関は、ゆうちょ銀の完全民営化に向けた具体的な道筋が示されておらず、公正な競争条件が確保されていないとして、上限の引き上げには一貫して反対している。
長門社長は、限度額引き上げはあくまでも利用者の利便性向上が目的と強調。民営化委が求める社員に貯金の獲得を動機付けるような成果基準の撤廃と、ゆうちょ銀の株を3分の2未満となるまで売却をすることについて、「やるべきものはすぐにやる」と述べた。
ゆうちょ銀の貯金残高は180兆円と国内で圧倒的な大きさ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)の傘下2行合算の国内個人預金は76兆円。
ゆうちょ銀は2016年4月に限度額を1000万円から1300万円に引き上げたが、その後も急激な資金流入は起こっていない。長門社長は「他の銀行では(預金残高は)もっと増えている」と述べた。
ただ、民間金融機関には、経済情勢の悪化などで利用者の不安が高まった場合に、間接的に政府が大半の株式を保有するゆうちょ銀に預金が大量にシフトするのではないかという懸念が根強くある。
ある大手地銀の関係者は「限度額の問題は、はっきり言ってわれわれに直接影響はない。ただ、それにより同じ地域の小さな金融機関の経営が困難になると、そこから借りていた零細企業をどうするのかなど、われわれにも関係してくる」と話している。
さらには、超低金利下の運用難のなか、ゆうちょ銀がこれ以上資金を抱え込むことへの懸念もある。
ゆうちょ銀は通常の融資業務を禁じられているため、200兆円に上る資産のほとんどを有価証券などで運用している。ここ数年は国債の割合を減らし、外国債券などより利回りの高い投資先に振り向けるなど運用の高度化を進めているが、国債利息の減少を打ち返すまでには至っていない。
全国銀行協会などは、限度額引き上げによる資金流入の結果、ゆうちょ銀の運用規模がさらに拡大し、リスクが増幅される懸念があると指摘している。
長門社長は、低金利下で運用環境が厳しいのは民間金融機関も同じだとした上で、「運用難が心配だと言われるのはちょっと違う」と反論した。
浦中 大我
https://jp.reuters.com/article/yucho-idJPKCN1OQ0IH
2018年12月27日 週刊ダイヤモンド編集部 ,中村正毅
ゆうちょ銀、預入限度額引き上げでトップ辞任が不可避になる事情
ゆうちょ銀行と地域銀行との協調路線にヒビを入れる選択をした政府の郵政民営化委員会(岩田一政委員長) Photo by Masaki Nakamura
ゆうちょ銀行の預入限度額引き上げ問題を巡って、池田憲人社長(71歳)の辞任が不可避の情勢になってきた。経営を監督する金融庁は、すでに後任の人選作業に入っており調整を急ぐとみられるが、意向に沿う人材を再び送り込めるかは不透明な状況にある。
横浜銀行出身の池田氏は、2016年4月に東日本大震災事業者再生支援機構から、ゆうちょ銀の社長に就任。金融庁の後押しを受けるかたちで、それまでの地域銀行との対立路線から協調路線へとかじを切り、地銀と共同で地域活性化ファンドを設立するなど「民業補完」に心血を注いできた。
潮目が変わったのは昨年10月。3年ごとに実施する郵政民営化の「総合的検証」が進む中で、与党・自民党が衆院選の政策集に「限度額のさらなる見直し」を検討事項として盛り込んだのだ。
これを好機と捉えたゆうちょ銀の親会社、日本郵政は現行1300万円の預入限度額の撤廃を政府に強力に働きかけ始めた。
2019年に統一地方選や参議院選を控える中で、有利に働くとみた議員連盟(郵活連)も同調することで撤廃論が一気に高まり、政府の郵政民営化委員会は早々に撤廃で意見をまとめようと動いた。
これに対して、地銀をはじめ銀行業界は猛反発。政府が過半を出資する日本郵政の傘下銀行として「暗黙の保証がある中で、限度額撤廃による肥大化はまかりならん」「協調と言いながらここにきてはしごを外すのか」と憤り、ゆうちょ銀と再び火花を散らす関係に戻ってしまった。
その後、撤廃は見送りになり、限度額の引き上げへと焦点が移っていったものの、地銀などの経営が悪化した場合は、ゆうちょ銀への資金シフトが起きかねないとして、銀行業界の反発は全く収まる気配がなかった。
池田社長と金融庁が“完敗”の深い霧
そうした経緯の中で12月26日、政府の民営化委は預入限度額を、現状の2倍となる2600万円に引き上げる意見書をまとめ、安倍晋三首相に提出した。当初から限度額撤廃という目一杯高い要求を掲げ、最終的に限度額を大幅引き上げられれば御の字という算段だった日本郵政にとっては、満額回答に近い内容だった。
「ゆうちょ銀行の持続的成長には、地域金融機関との協働・提携関係の構築、信頼関係の醸成が不可欠だ」
一方で、事あるごとにそう説いて回ってきた池田氏と後ろ盾となってきた金融庁にとっては、民営化委に協調路線を半ば否定され、政治家とそれに寄り添う総務省(旧郵政省)、日本郵政に“完全敗北”した格好になる。
そもそもゆうちょ銀は、国内最大となる180兆円もの預金量を誇りながら、50兆円近い資金を日銀の当座預金にブタ積みし、マイナス金利の一部適用で損失を出している。
そうした現状にもかかわらず、限度額の引き上げというバランスシートに拡大余地を与える施策が、本当に必要なのかどうか。ゆうちょ銀内部からも噴出するそうした素朴な疑問に、説得力のある答えを見つけられないまま、民営化委は「利用者の利便性向上のため」(民営化委の岩田一政委員長)という理由で引き上げを押し切った。
選挙の獲得票数を最優先の“経営指標”にさせられた巨大金融機関は、ときに聞こえる政治家たちの声に導かれるようにして、今後も民営化という深い霧の中を彷徨い続けることになりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
https://diamond.jp/articles/-/189720
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