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(回答先: 激変する中国農業〜デジタル化で日本を圧倒 対日輸出の縮小、米農家に大きな頭痛の種 大学もチャイナマネー仕切り直し 投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 27 日 19:59:15)
2018年12月27日 窪田順生 :ノンフィクションライター
「日本の生産性は先進国で最下位」を素直に受け止めない人が多いのはなぜか
2017年の日本の労働生産性は、47年連続で主要先進7ヵ国(G7)で最下位だった。これを「欧米人に都合のいい指標だから気にしなくていい」とスルーするのはあまりにも危険だ。事実、労働者の賃金は低いまま放置され、ブラック企業がはびこっているのが今の日本。指標を間違いだと決めつけるのはやめて、「日本の社会システムが狂っている」ことを素直に認めるべきだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)
日本の生産性の低さは
数字のトリックに過ぎないのか
日本の生産性の低さは、賃金の低さやブラック企業の跋扈が示しています
欧米に都合のいい指標でも何でもなく、日本の労働生産性は正しく低い。精神論を振りかざして低賃金を是正しないブラック企業が跋扈するこの現実を、そろそろ深刻に受け止めるべきだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA
先週、公益財団法人・日本生産性本部が、日本の2017年の労働生産性が主要先進7ヵ国(G7)で最下位だったと発表した。
このワースト記録は、なんと47年連続。東京オリンピックまでこんな調子が続けば、「50年間、生産性を上げることができなかった先進国」という、誇らしくない世界タイトルを獲得してしまうのだ。
という話をすると、決まって「欧米の連中が勝手に決めた指標などまったく気にしなくていい」なんて感じで、開き直る人たちがたくさん出てくる。彼らの主張はおおむねこうだ。
「日本という国は、世界でもトップレベルの質のいい商品・サービスを、その辺の先進国の常識ではありえないほど安く提供している。この『低価格』によって、計算上ではどうしても労働生産性が低くなってしまっている」
要は、あくまで「価格設定」がネックになっているだけなので、卑屈になる必要はまったくないというわけだ。それどころか中には、実は日本人労働者の生産性は、世界の1、2を争うくらい高くて、「G7最下位」なんてのは数字のトリックに過ぎない、と声高に主張される方もいらっしゃる。
これには「その通り!」と激しく同意をする人も多いかもしれない。ご存じのように今、日本中が「生産性向上」に取り組んでおり、働く人たちは、こんなお説教を耳にタコができるくらいされている。
「無駄を省いて、もっと効率的に仕事すべき」
「残業や休日出勤など長時間ダラダラ働くのは生産性が低くなる」
「ITやクラウドを活用して、もっと省人化に務めるべきだ」
日本人はマジメなので、みな言われた通りに頑張る。そんな苦労を強いられているのに、「G7最下位」などありえない。データの算出方法が間違っているのではないか――。そんな風に懐疑的に見ている方も少なくないのではないか。
だが、残念ながらこれは大きな勘違いだと言わざるを得ない。生産性と「効率の良し悪し」は、あまり関係ないからだ。
「高品質低価格」実現の裏には
労働者の賃金の低さがある
労働生産性というのは、労働者1人あたりが生み出した成果――つまり、生産額や付加価値を、労働者数や総労働時間で割って、「購買力平価」という国際的な値を用いて円ドルを換算したものだ。確かに、労働時間の削減は割り算の「分母」の減少につながるから、まったくの無意味ではない。
ただ、それよりも遥かに効果があるのは、「分子」を増やす、つまり生産額や付加価値を上げることにあることは言うまでもあるまい。
つまり、いま日本中の労働現場で叫ばれている「もっと効率良く!」「もっと労働時間を短く!」という取り組みは残念ながら、生産性向上には大きく寄与しない。厳しいことを言ってしまうと、こんなトンチンカンな方法を続けているから、47年間も生産性が低いままなのだ。
また、問題なのは「低価格」だけであって、日本人の生産性自体は高い、みたいな考え方も誤解に基づいている。
先ほども申し上げたように、労働者の生産性とは、つまるところ付加価値である。そこには、手先が器用だとか、マジメでキビキビ働くとか、下町ロケット的なチームワークを大切にするとかはあまり関係がない。
では、日本人労働者は「高い付加価値」を生み出しているのかというと、大変申し上げにくいが、そうとは言い難い。
その証こそが、「高品質・低価格」だ。
原料などモノの値段やインフラのコストは、先進国の間そこまで大きな差はない。そんな大して変わらぬ条件の下で、なぜ日本では「高品質・低価格」を続けられたのかといえば、労働者の価値が低い、つまり「低賃金」ということに尽きる。
「低賃金労働者」というのは、経営者からすれば効率良く利益を上げられるありがたい存在だが、社会全体で見ると、労働者の付加価値を下げてしまう要因となる。つまり、どんなに効率良く働こうが、どんなに高品質なものを生み出そうが、「低賃金」で働かされている時点で、「日本の労働者は生産性が低い」ということになるのだ。
なんてことを口走ると、「カネだけが付加価値じゃない!職人のプライドとか、おもてなしの心という生産性で測れないところを、日本の労働者は大切にしているんだ!」というような怒りの反論がビュンビュン飛んでくることだろう。
もちろん、私も日本人なので、そういうものに価値を見出したい気持ちは痛いほどわかる。だが、一方で、こういう「ふわっとした話」によって労働者に罪悪感を植え付けていることが、パワハラやブラック企業という問題につながっている現実を忘れてはいけない。
組織やビジネスの問題を
個人の努力の問題にすり替える
例えば、3年前のクリスマスに「過労自殺」をした電通女性社員のことを思い出していただきたい。彼女は連日のように長時間労働を強いられ、自宅に戻ってもシャワーを浴びてすぐ出社という生活を繰り返していたが、それでも上司から「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」「今の業務量で辛いのはキャパがなさすぎる」という罵声を浴びせられていた。
命を削るように必死に働いても、評価されないどころか壮絶にディスられる。普通に考えれば、「ふざけんな」と辞表提出、となるところだが、彼女は限界までブラック労働を続けて、心がポキンと折れてしまった。
真面目すぎた。頑張り屋さんだった。すぐに辞めると再就職が難しい…。この手の境遇から逃げなかった理由は人それぞれ様々だろうが、その根底にあるのが「罪悪感」だということは明らかだ。
皆さんも身に覚えがないだろうか。「俺が若い時はこんなもんじゃなかった」「定時に帰るなんて、やる気が感じられないし、周囲の士気が下がる」などなど、会社や上司から言われる「ふわっとした話」を真に受け、「自分は甘いのでは」「自分勝手な振る舞いで会社に迷惑をかけてしまった」と自分が悪いと考えたことが。
この“罪悪感マネジメント”ともいうべき歪んだ人材育成こそが、実は日本の生産性向上を妨げている最大の原因である。
労働者が命を削るほど働いて結果が伴わないとなると、論理的に考えれば、そのビジネスや組織に問題があるという結論に至る。だが、日本人は「システム」や「組織」に盲従することを幼い頃からしつけられているので、論理的破綻はすべて「個人」のせいにされる。つまり、「結果が出ないのは、みんなの頑張りが足りないから」と精神論に傾倒してしまうのだ。
ブラック企業になればなるほど、労働者という「個人」をどんどん追い込んでいくのはそのためだ。
社会システムが狂っているのか
生産性の定義が間違っているのか
さらにやっかいなのが、この精神論が労働者にまで浸透していることだ。論理的に考えれば、すぐに逃げ出すか労基署に駆け込むべきようなブラック労働を強いられても、「結果が出ないのは頑張りが足りないから」という罪悪感を植え付けられているので、石にかじりつくような勢いでブラック労働に心身を捧げてしまう。
こんな調子だから、いつまでたっても生産性が上がらない。仕事とはやり甲斐だ、チームワークだ、お客様の笑顔だという「ふわっとした話」ばかりがもてはやされているうちに、賃金は二の次、三の次にされ、気がつけば「低賃金」がビタッと定着してしまったのである。
このような意味では、「G7最下位は気にする話ではない」どころか、大いに気にすべきだ。というよりも、この期に及んでまだ現実から目をそらそうとするというのは、かなり深刻な「認知障害」だと認識すべきだ。
これほど世にブラック企業やパワハラが溢れている中で、「生産性G7最下位」と聞けば、論理的に物事を考える人ならば、このような結論になる。
「これだけ労働者が血へどを吐きながら働いているのに生産性が低いということは、問題は労働者にあるのではなく、社会システムが狂っているからではないのか」
だが、現実には、この狂った社会システムを維持するために、「外国人労働者」を大量に入れようなんて国策を推し進めていることからもわかるように、大半の日本人はシステムを「盲信」して、以下のような方向へ流れていく。
「これだけ労働者が血へどを吐きながら働いているのに生産性が低いということは、問題は労働者にあるのではなく、生産性の定義や調査が間違っているのではないか」
要は、常に「自分たちは間違っていない」というところからスタートするので、「耳の痛い話」は「デマ」や「日本には当てはまらない」と素直に受け取れないのだ。
よくコントや漫才で、都合の悪い話を聞きたくない時に、両耳を塞いで「あー、あー、まったく聞こえません」なんてやるのを見るが、こういう態度を「生産性」というものに関して、47年間も貫き通してきたのが日本なのだ。
生産性の低さを無視することは
日本を危機に陥れる
「生産性が低いなんてのは、欧米がつくった指標なんだから気にしなくていい」というような主張を耳にするたびに、こんな感じの話をどこかで聞いたなと考えていたのだが、最近それがいつかを思い出した。
今年7月の西日本豪雨災害だ。
情報番組などでも多く取り上げられたので覚えていると思うが、この時の水害では、避難指示を受けながらも自宅に留まった結果、凄まじい水が押し寄せて、2階や屋根に上がってレスキュー隊から救出されるという方がたくさんいらっしゃった。
もちろん、高齢者で動けない、足が悪いなどの事情のある方もいらっしゃったが、その中に多かったのは、「水がくるのは知っていたが、ここまでひどいとは思わなかった」という人である。
例えば、岡山県倉敷市真備町で、過去に浸水の経験がありながら、今回は2階に避難して、レスキュー隊に救出された女性はこうおっしゃっている。
「隣人も避難する車に同乗するよう声をかけてくれたが、『こんなに水がくるとは思わんかった』。避難せず、二階に取り残されていたところを消防隊員にボートで救助され、『甘かった』と反省する」(日本経済新聞2018年7月11日)
このように、さしたる根拠がないのに希望的観測から「おそらく丈夫だろう」と思ってしまう心理を、「正常性バイアス」と呼ぶ。東日本大震災の津波被害者の中に、一度は高台まで避難したものの、「もう大丈夫だろう」と自宅に貴重品などを取りに戻った方が多くいたが、それもこの「正常性バイアス」が影響している。
危機的局面では、人間の赤裸々な本性があらわれる。命にかかわる大きな自然災害という局面で、これだけ多くの人たちに「正常性バイアス」が見られるということは、これは日本人の国民性といってもいいものなのかもしれない。
だからというわけではないが、「生産性が低いなんてのは、欧米がつくった指標なんだから気にしなくていい」というのも、どこか似た匂いを感じてしまわないか。
日本が他の先進国と比較して際立って低賃金――つまり、ブラック労働が蔓延していて、労働生産性という数値も最下位。素直に考えれば、危機的状況であることは明らかだ。しかし、多くの日本人はさしたる根拠もないのに希望的観測から「そんなに深刻に受け取るような話でもない」と笑い飛ばしている。
水がくるとわかっていながら「大丈夫だろう」と逃げなかった女性と、何も変わらないのではないか。
津波や水害の場合は、消防隊や自衛隊などのレスキューの人たちが助けてくれるかもしれない。だが、「生産性G7最下位」という、音も立てずに忍び寄る「危機」はいったい誰が助けてくれるのか。
気がついた時にはもはや手遅れ、なんて悲惨なことにならぬよう、ああだこうだと屁理屈をこねる前に、「生産性G7最下位」という結果を、日本中がもっと重く受け止めるべきではないか。
https://diamond.jp/articles/-/189729
国内景気の真実と2030年の現実(大前研一)
国内好景気戦後2番目の長さの意味
内閣府は13日、有識者らでつくる景気動向指数研究会を開き、2012年12月から続く景気拡大期間が高度成長期の「いざなぎ景気」を超え、昨年9月で戦後2番目の長さになったことを確認しました。またさらに、景気の回復が今月まで続いていることが確認されれば、戦後最長に並ぶことになり、政府や民間のエコノミストの間では、来年1月には戦後最長を更新するとの見方が強まっているということです。
これには何の意味もありません。それほど良い景気がずっと続いているという感覚は、国民は全く持っていません。国民の感覚との間になぜこうしたズレが生じるのかと言うと、要するに景気動向と言うものを測っている数字に原因があるのです。
https://asset.ohmae.ac.jp/wp-content/uploads/2018/12/20181226_1.png
平成30年間を振り返って、平成元年の世界の企業の時価総額ランキングを見てみます。1989年1月に天皇が崩御され平成になったわけですが、当時のトップテンのうち、エクソン・モービルとIBMを除いて全て日本の企業が占めているのです。それが、2018年9月末のランキングでは、中国の2社が入っているのを除いて、全てアメリカの会社になっているのです。平成という時代は、日本が世界で最も激しく衰退した時代なのです。
それなのに、なぜ景気が良くなったなどと言っているのかというと、それは指標の見方が良くないからです。例えば、平成元年から見ると、株価はどんどん下がってきて、戻してきたとは言え、依然として当時の水準は回復していない状態にあるわけです。一方、FTSEは3倍近く、そしてダウはなんと9倍になっているのです。平成の間で、先進国の中で日本だけがマイナスになっているのです。
そして、名目賃金の推移を見ると、アメリカやユーロ圏はほぼ2倍になっています。
その一方、日本はマイナス7%です。つまり、平成元年から平成最後の年まで、上がっているものなど何もないのです。ある種の統計上では57ヶ月上がっているといっても、身近な指標では地を這うようなレベルなのです。これを上がっているなどとは到底言えません。
この平成の中、世界で我々日本だけが、失われた30年だったという認識が必要です。日本にとっては戦後経験したことのない、最も暗い、失われた30年だったのです。戦後70年のうち、この30年は何も良いことがなかったわけです。さらに企業で言えば、国内トップのトヨタ自動車が世界では26位で、トップ10には1つも入っていないのです。日本企業も世界の舞台から姿を消した、そういう時代だったのです。このことを言わずして、「いざなぎ景気」などと言っていますが、白衣の装束を着てイザナギに戻った方が良いのではないかという感じです。
2030年都市別GDPランキング
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日本経済研究センターは、日本、アメリカ、アジアの、13の国と地域の主要77都市を対象に、都市別のGDP予測をまとめました。それによりますと、2015年時点の上位10都市はニューヨーク、東京、ロサンゼルスなどで、中国はゼロだった一方、2030年の予測では北京や上海など4都市がランクイン。アメリカは8から5都市に、日本も2から1都市に減少し、中国の都市が今後躍進する見通しだということです。
今、世界は国の競争のほかに、メガシティの競争になっています。メガシティに繁栄が集まるという傾向があるのです。私は「国民国家の終焉」という本の中で、このことをかなり詳しく書きました。また、UCLAで公共政策論の講義の中で教えているのもメガシティというもので、深センなどの都市に代表されるように、繁栄はメガシティということがテーマになってきているのです。
2030年の一人当たりGDPのランキングを見ると、シンガポールがトップになっています。日本は名古屋や東京が上位に入っています。また、サイズで言うと、ニューヨークがトップで2位が東京となっており、2015年の時点では大阪も上位に入っているのですが、2035年の予測を見るともう大阪は入らず、深センなどの都市がトップテンに入ってくるのです。このように中国の都市の躍進が非常に目立っています。
今は繁栄というのはメガシティにもたらされるということで、日本の場合には、東京を除いてはメガシティができない状況にあるのです。大阪も、IRだ、万博だなどと言っても、あのようなものは芥子粒ほどの影響しかないのです。もっと大阪そのものが、世界中から人、金、モノ、情報が集まるようにしないといけないのです。名古屋も同様です。そういう日本の地方の自由度が求められるのです。北海道であれば札幌、東北で言えば仙台、九州の場合には福岡といったところが、メガシティを目指して動くべきなのです。しかし、日本では、みんなで足を引っ張り合い、なぜ札幌だけなのか、なぜ福岡なのかなどやっているのです。やはりメガシティの競争だということになると、憲法第8章を書き換えて、そうしたところにもっと自治権を与え、世界中から人、金、モノが来るようにしないといけないのです。これが私のセオリーなのです。
シンガポールなどは都市国家なので楽勝です。しかしやはり、世界第一のメガシティはニューヨークであり、二位は2035年の予測でも、東京なのです。東京と言えば日本であり、日本中の権限を東京に集中できるので楽なのですが、大阪や他の都市などにも、もっと権限を与えないといけないのです。日本の中の、少なくとも道州別で言えばそれぞれの首都になるようなところが、そうした視点に立った長期ビジョンを持たなくてはいけないというのが私のセオリーです。今回はたまたまそういう都市をテーマにした報告が出たというわけです。
仏伊財政収支の推移
フランスのマクロン大統領は10日、2019年1月から、最低賃金をおよそ8%引き上げるなどの家計支援策を発表しました。フランス全土で続く黄色いベスト運動を踏まえた譲歩策ですが、これにより、マクロン政権が最優先課題とする財政立て直しは、一層困難になる見通しです。
問題の引き金となった、燃料税を上げるという策は止めたようです。最初は半年間はやらないと言っていたのですが、1年やらないと言い出し、今ではもう言わなくなりました。そして、この最低賃金を100ユーロ上げるという策を実行した場合、計算してみると最低賃金は24万か25万円になってしまうのです。これが最低賃金とすると、日本などよりもはるかに高くなってしまいます。
これにより黄色いベスト運動は終わって欲しいというわけですが、まだくすぶっています。以前ほどではなく、パリに攻めてきているという状況でもなくなっていますが、マクロン辞任を迫って48項目などというものを出しているので、そう簡単に収まるかどうかはわかりません。今回マクロン大統領は最低賃金の件で大枚をはたいたわけですが、財源があるのかという点は疑問です。本当に実現ができるものなのでしょうか。
もう一つ疑問なのが、イタリアの情勢です。ヨーロッパの言うことなどは聞かないと言って、コンテ首相は予算を出し、ヨーロッパに否定され、3週間で直すように言われたわけですが直せず、今度出してきたのは、GDP比の財政赤字2.04%という案です。当初はマイナス2.4%だったわけですが、それに対して修正を加えました。ギリギリのところまで持ってきたということで、制裁を回避する態度を示したわけです。ヨーロッパ委員会としても、これをさらに否定するか、今年はこれで良いとするか微妙なところであり、そういうところにイタリア側は玉を落としたというわけです。
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財政収支の推移を見ると、イタリアに並んでフランスも、GDP比で2.8%の赤字です。これに対して、今回マクロン大統領がとても金のかかることを約束してしまったので、財政状況はより悪化するでしょう。イタリアよりもむしろフランスの方が問題児だということになってきます。
イタリアは、ギリシャの二の舞としてとんでもない苦しい立場に追い込まれると思いきや、今度の予算に真実性があるのなら、ギリギリセーフのところまで来たと思います。ヨーロッパはただでさえ不安定な上に、ギリシャよりもはるかに大きいイタリアに問題を起こされると困ってしまうのです。今回の予算をヨーロッパが認めてくれれば、とりあえずはほっとするということになります。
▼その他の記事を読む:
【前回の記事】米IT「ビッグ5」時価総額(大前研一)
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
12月16日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
米IT「ビッグ5」時価総額(大前研一)
IT「ビッグ5」の時価総額の動きに注目
12月3日の株式市場で、アマゾンドットコムの株価が一時、前の週末に比べて5.2%高まで上昇し、時価総額でアップルを抜き首位となりました。年末商戦が好調と伝わり、投資家の見直し買いが入ったもので、マイクロソフトも加えた三つ巴の競争が激しくなっています。
その数日前には、マイクロソフトが1位になったというニュースが走りました。アメリカのITビッグ5の時価総額のグラフで見てみると状況がよくわかります。去年に比べマイクロソフトの時価総額が大きく伸びているのです。
一方、アップルは最新のiPhoneの売れ行きがそれほど良くないということで、時価総額が落ちてきています。アマゾンがアマゾンエフェクトと言われる現象で時価総額を伸ばし、ここにきて三社ともに、7900億ドルから8000億ドルとレベルでほとんど肩を並べています。これから先は、1位は日替わりメニューということになってきます。
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その一方で、フェイスブックはかなり遅れていて、その半分程度の時価総額になっています。グーグルのアルファベットも、調子が良いと思われていましたが、ここにきて1位とのの差が見えてきています。去年と今年の差を見ても大きな伸びが見られません。大きく飛躍したマイクロソフトやアマゾンに比べると伸びが小さいわけです。今週の株式を見ていると、FAANGの中でも少し景色が変わってきたという感じがします。
COP24と環境問題についてのトランプの反応
地球温暖化対策について話し合う国連会議COP24が2日、ポーランドで開幕しました。2020年以降の地球温暖化対策を定めるパリ協定について詳しい実施ルールを決定するのが主な目的した。温室効果ガス排出削減目標の立て方などをめぐり、先進国と新興国が対立しており、合意できるかが焦点でした。
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途上国の方はお金を欲しがり、先進国の方は途上国に排出を減らすように求め、お金の点だけが揉めているのです。COP24の精神には全員が賛成ですが、経済負担は誰がするかというところがテーマになっています。当然予想されたことですが、今その点で難渋しているわけです。
主要国・地域の二酸化炭素排出量の推移を見ると、もともと高いアメリカは、このグラフには2016年以降が含まれていませんが、実はトランプ政権になってからさらに高くなっているのです。多くを排出している中国とアメリカが対応すれば良いことなのです。今後はインドの排出量が増えているので、そうしたところへ資金を負担してあげることが課題になってきます。
トランプ大統領はなぜCOP24を止めたのかという事についてですが、彼は耳がない、つまり聞く力がないということがタイム誌に書かれています。地球環境問題についてのアメリカ政府の報告では、異常気象という点でかなり深刻な被害をもたらすことが示されているのですが、それに対しトランプ大統領は、「少し読んだがそれはそれで良いのだ。だが私は信じない」などと言っているのです。ウッドワード記者が「Fear」いう本を書き、恐怖の男と表現しましたが、その中でトランプ大統領は全く理解力がなく、レポートをいくら持っていっても読まない、誰とでも、対立すれば自分が勝つと思っている人で、かなり異常な男だと書かれています。小学校5、6年レベルの頭しかないと言われていますが、今回の発言はまさにそれを示しています。あれだけ深刻に環境問題について書いているアメリカ政府自身のレポートについて、「アメリカ政府自身のレポートを読んだが、信じるかどうかというと私は信じない」などと発言するのです。ちょっとだけ読んだというのが、また彼のすごいところです。絶対、表紙を見ただけなのでしょう。
フランスのEU財政基準対策
フランス各地で12月8日、マクロン政権に抗議する大規模デモが4週連続で行われました。参加者が黄色いベストを着て抗議するこの運動は、11月からネット上で広がってきたもので、この日はパリだけで約1万人、全国で12万5000人が参加。事態の沈静化に向け、ドルジ環境大臣は5日、燃料増税を19年中は行わない方針を示しましたが、デモの参加者からは対策が不十分との声が上がっています。
これはマクロン倒しということで、マクロン大統領の辞任を求めています。しかも100ほどの町でローカルに盛り上がってきていて、今はついにパリの中心街まで来ています。これはかなり組織的な運動で、まだ統率されたり政党があったり、主義主張があったりはしませんが、貧乏人をここまで馬鹿にすることはやめてくれという動きです。フランスのテレビ、フランス2では、かなり細かい報告をしています。
実は、いわゆるワーキングプア(中位所得の60%以下の所得の労働者)が問題なのです。平均の60%かそれ以下の収入の人たちがかなりいて、その人たちが車で通わなくてはいけない時に、燃料税が引き上げられると、自分が5万円ほどしか使えるお金がないのに、燃料代が1万円を超えてしまうということになり、これでは食うに食われず、耐えられないというわけなのです。マクロン政権はちょうどボトムをヒットし、1番良くないところに手を入れてしまったのです。
その一方でマクロン大統領は、法人減税をすると言っているので、金持ち減税だと言われています。また公務員を12万人クビにするということも言っています。こうした中で、全く関係ないのですが、フランス政府はルノーの株式の15%を持っています。日産がそれを買い取ってあげれば良いのです。ルノーの株価は時価総額で3兆円から3兆5000億円ほどなので、その15%は4500億円です。
一方、この燃料税でどのぐらいになるのか計算したところ、3000億円なのです。そうすると、少なくともほぼ1年分増税分をフランス政府がルノー株を日産に売ることによって賄えるのです。そして日産はすでに15%を持っているので、フランス政府から買い取ることで30%になるわけです。
こうした数字を計算してみると、意外に面白い発想ができるものです。マクロン大統領もここまで追い込まれたら、日産から稼ごうとせずに、日産に、自分の株を売るから5000億円助けて欲しいとすれば良いのです。私が交渉官だったらこういう話をしてはどうかと思います。
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フランスは失業率がまだ10%と高いものの、財政収支の推移を見ると、対GDP比で-2.8%までまとめてきています。EUの財政基準ではGDPに対して単一年度の赤字は3%しか許してくれませんが、フランスでは現在違反している状況です。マクロン大統領の作った今回のバジェットでは2.8%に収まるので、マクロン大統領としてはどうしてもそれをやりたいということなのです。
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そして主要国における人口1000人あたりの公的部門の職員数の比較を見てみます。主要国の中ではフランスが1番多く、90人に上ります。そのうち41.6%は地方政府、19.2%が政府系企業で、ルノーなどもここに入ります。24.6%が中央政府で、このような数の中央政府は他にありません。イギリスの場合には政府系企業が多くあり、アメリカとドイツは地方政府が大きい状況です。そして実は日本は、1番公的職員が少なく30数人なのです。日本は政府が無駄遣いをしているという声が暴動にまでならないわけはここにあります。それに対しフランスはここを引き締めないとどうしようもないのです。マクロン大統領が公務員を12万人減らすと言ったのは正しいわけですが、それよりも先に燃料税などに手を出してしまったので、ここが大変な問題になっているのです。いわゆるワーキングプアというのは世界的に大きな問題であり、日本でも問題が広がっています
https://asset.ohmae.ac.jp/mailmagazine/backnumber/20181219_1/
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