http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/609.html
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米国で「社会主義」が復権するのは政治的に望ましい傾向である。
近代史が大きな転換点にあるなか、どれかを支持するわけではないが、一時的であれ大きな政治勢力となった社会主義・共産主義・ファシズムなどについて(イスラムも)、頭ごなしに拒絶するような構えは捨てたほうがいい。
※関連参照投稿
「忍び寄る全体主義の影 大衆迎合、統合も脅かす:「全体主義=悪」は99%のヒトを檻に閉じ込めるための陳腐な言説」
http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/569.html
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『ニューズウィーク日本版』2016−2・16
P.38〜40
「自称「社会主義者」が勝ち取ったもの
米大統領選:アイオワ州で本命ヒラリーを脅かしたサンダースは指名争いに敗れたとしても民主党の将来を変えるだろう
ジャメル・ブイエ(スレート誌記者)
「草の根に大きなうねりが起きている」。米民主党の大統領候補指名争いの初戦が行われたアイオワ州で、ジュレミー・シューファーはそう言った。彼はバーニー・サンダース上院議員を応援するために、カリフォルニア州からやって来た1人だ。
「やがて現れる進歩的な候補者を支える土台が、今つくられている」と、シューファーは言う。「サンダースは基盤を築きつつある。彼が勝とうと負けようと、私たちはヒラリーやその後に続く者が正しい道を取るよう目を光らせる」
ただしサンダースが指名争いに名乗りを上げたのは、ヒラリー・クリントン前国務長官に正しい道を取らせるためではない。勝つためだ。アイオワ州党員集会の前日に行われた彼の集会では、会場となった州都デモインの大学に2000人に達しようかという支持者が詰め掛けた。その場でサンダースは、はっきりと言った。
「革新的な構想をお望みなのか。ならば、私が持っている」。多くの民主党支持者の心をつかんだ社会主義者は、そう語った。「力を合わせて、1%(の富裕層)のためだけでなく、全国民のための経済を生み出そう」
大学生や労働組合員の声援に応え、サンダースは社会民主主義的な政策を実現させると誓った。医療保障の拡充、家族のための有給休暇、インフラ再建、大企業への増税、15ドルの最低時給、公立大学の無償化などだ。
さらに男女間の貸金均一化を訴え、警察・司法の「制度的人種差別」の撲滅を主張。ウォルマートなど大企業の賃金の低さを指摘し、従業員はメディケイド(低所得者医療保険制度)やフードスタンプの利用条件を満たせると非難した。「ウォルマートの創業者一族に言う。企業助成政策を諦めろ。従業員が生活できるだけの賃金を払え」
サンダースと支持者は互いを理解し、熱く盛り上がる。「人民の人民による人民のための政治を実現させる」という得意のフレーズが始まると、支持者たちが唱和する。興奮した若者が「バーニー、愛してる!」と絶叫すると、サンダースはほほ笑み、感謝の表情を見せる。少しばかり照れくさそうにも見える。
アイオワ州党員集会の前夜に流れたテレビのインタビューで、サンダースは指名獲得レースを戦い抜くと宣言した。「私は勝ちたいが、ここで2ポイント差で負けても問題はない。次はニューハンプシャーヘ、サウスカロライナヘ、そしてネバダへと進んでいく。最後までやり抜く」
彼は本気で勝とうとしている。それが冒頭に紹介したカリフォルニアの支持者の言葉につながる。勝とうと負けようと、サンダースは民主党の歴史に名を残すだろう。
左派の逆襲が始まる?
民主党左派は常に党内で主流から外れていた。80年代後半から90年代には、左寄りになって党の人気が落ちるのを恐れた中道派に冷遇された。
93年に大統領に就任したビル・クリントンと民主党議員らはウォール街とパイプを築き、「犯罪との戦争」という保守派受けする政策を掲げた。福祉については、被扶養児のいる家庭への扶養制度などを廃止して、受給や労働要件の厳しい制度につくり替えた。
人種的少数派の優遇措置に対する反発が起こり、共和党大統領のロナルド・レーガンが党派を超えて人気を集めた時代を知る民主党員には、この道しかなかった。リベラリズムが生き残るには、「大きな政府」の時代を終わらせるしかなかった。
サンダースなど旧左派の生き残りにとって、この方針転換は破綻を意味した。彼らにしてみれば、左派なくして民主党の隆盛はあり得ない。
ビル・クリントンが中道寄りの公約で大統領再選を果たしてから20年が過ぎた今、左派を軽視してきた民主党政権の勢いが衰えたのは、サンダースと彼の仲間が危供したとおりだった。サンダースはただ真っすぐに「民主社会主義」を訴え、多くの民主党支持者を結集させた。
サンダースが唱えるのは、新しい「ニューディール・リベラリズム」だ。バラク・オバマ大統領やヒラリーが軸足を置く中道寄り路線に対抗するもので、アメリカでは侮蔑を意味する言葉だった「社会主義」に市民権を与えた。
サンダースが勝とうと負けようと、この点は大きい。今回の民主党予備選は、現在に、そして将来にも大きな意味を持つ。
もし指名を勝ち取ったら、サンダースは民主党を無理やりにでも左に寄せるだろう。負けたとしても、党内の一大勢力を率いることになる。そうなれば「ヒラリー・クリントン大統領」に対して強い発言権を持ち、閣僚の人選から政策にまで口を挟むことができる。
だが、サンダースが及ぼす影響はそんな小さな枠には収まらない。彼の主張する「政治的革命」によって、アメリカ政治がすぐに変わることはないかもしれない。しかし、サンダースに刺激を受けた支持者が民主党の活動に積極的に関わるようになれば、長期的には変わり得る。彼を支持するスタッフやボランティアや活動家が次世代の民主党を担い、今回の経験を将来の大統領選に生かすだろう。
84年と88年の民主党予備選に出馬した黒人指導者のジェシー・ジャクソンがオバマのような政治家に道を開いたように、サンダースも「民主社会主義者」たちに道を開く可能性がある。今回サンダースを支持した人々が、やがて民主党を変える力になり得る。
アイオワ州党員集会でヒラリーを脅かしたことで、既にサンダースは歴史に名を刻んだ。20世紀初めに5度にわたって大統領予備選に出馬したユージン・デブス以来、アメリカ政治に本当のうねりを起こした社会主義者となった。
20年後、30年後に民主党がどんな党に変わるにせよ、そこにはサンダースとその支持者の足跡が刻まれている。」
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