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『ニューズウィーク日本版』2016−2・16
P.19
「「中国中心のアジア」に協調して対抗せよ
ばらばらな戦略ではしたたかな中国にかなわない
日本とインドが先頭に立って対中戦略の連携強化を図るべきだ
プラマ・チェラニ(インド・政策研究センター戦略問題専門家)
アジアに新秩序を、という中国の野望は見え見えだ。アジアとヨーロッパを結ぶ現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)など各種プロジェクトを主導し、中国中心のアジアという戦略目標を着実に推し進めている。その野望はアジアに痛手を与え、危険さえ及ぼしかねない。周辺国はそれを承知しているが、協力して中国の覇権主義的計画を阻止する動きはほとんど見られない。
中国以外の主要国も重要な政策を打ち出してはいる。アメリカは12年に安全保障政策の軸足をアジアに移す「リバランス(再均衡)」政策に転じ、インドも新外交戦略「アクト・イースト」を発表。オーストラリアもインド洋に重点を移し、日本もアジアをにらんだ外交政策を採用している。
しかし彼らは協調的行動はおろか、共通の政策目標についての合意さえできていない。アメリカのリバランス政策の柱の1つであるTPP(環太平洋経済連携協定)には、中国ばかりかアメリカの同盟国であるインドや韓国も参加していない。
TPPが施行にこぎ着けても効果は地味だろう。参加12カ国中6カ国はそれぞれ既にアメリカとFTAを締結済みとあって、一番の効果は事実上の日米FTAが誕生することだ (日米両国で参加国のGDP総額の80%を占める)。ASEAN主導で中国、インド、韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランドが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が実現すれば、TPP効果はさらに薄れそうだ。
対照的に中国は、一帯一路で貿易と投資を通じた周辺国への影響力強化を意図。同時にインド洋などでも存在感を示して勢力図を塗り替えようとしている。中国の野望が半分でも実現すれば、アジアに重大な地政学的影響を及ぼすはずだ。
経済的要素も盛り込んで
アジアの地政学的な安定のためには主要国の利害を均衡させなければならない。だが中国は数十年かけて蓄えた政治力、財力、軍事力を誇示したがっており、交渉の難航は必至だろう。
現状ではどの国も単独では中国に対抗できない。団結し、ルールに基づく地域秩序を支持することによって中国に国際規範を守らせる必要がある。
そのリーダーにふさわしいのはアジアの国、特に急速に経済大国化するインドと政治的な積極性を強める日本だろう。両国は長年、アメリカ主導の国際秩序の恩恵に浴している。安定したパワーバランスの維持、領有権・領海権の現状尊重、航行の自由の堅持といった、国際関係でアメリカが支持する価値観を重視。しかも既存のアジア秩序を維持したい考えを示している。
インドのモディ首相は14年の訪日中、「われわれの周りで」「18世紀のような拡張主義」が見られると発言。他国を侵略し、海を侵害している国もあると指摘した。これが中国への苦言であることは明らかだった。昨年12月には安倍首相と共同声明を発表。南シナ海における「一方的な行動を回避」するようすべての国に呼び掛け、南シナ海における実効支配の既成事実化を図る中国を暗に批判した。
それでも日本とインドは戦略的に重要なミャンマー(ビルマ)やスリランカヘの政策・投資で協調できていない。こうした国が中国に依存し、その圧力に屈しやすいままでは困る。
アジアの主要国はアメリカも含めて、広い範囲に恩恵をもたらす安定したパワーバランスの確立に取り組むべきだ。日米印3カ国による合同海上軍事演習を通して、海洋安保協力強化を図るのもいい。
ただし戦略には経済的要素が不可欠。FTAの枠組みを超えて、地理経済的なつながりを強化する共同プロジェクトを開始すべきだ。途上国が中国依存から脱却すれば、ルールに基づく安定した秩序構築の追い風となり、中国を含むすべての国の繁栄につながるだろう。」
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