http://www.asyura2.com/13/nihon31/msg/713.html
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法論理に関する基本を教えたりなど裁判を指揮する責任は裁判官にあるから、会見で「録音・録画で判断決まった」と説明した裁判員を責める気はない。
「偽テロ事件」報道を見聞きしてよく思うが、ヒトは映像を見せつけられると、その映像に付与されている“説明”まで一緒に“真実”と思い込みやすいようである。
創作ではないリアルな映像であっても、時間的空間的に撮影者及び編集者の意図で切り取られた“断片”でしかないという事実が忘れられがちである。とりわけ、その映像が衝撃的であればあるほど...
取り調べの全面可視化には賛成だが、全面的な可視化であってもそれは、拷問・暴行・脅迫といった不法な取り調べを抑制する手段の一つでしかなく、冤罪を減少させるものだとは考えていない。
警察や検察は、それほど単純な国家機関ではないので、誰が見てもわかるような行為を通じて自白を強要するわけではない。
冤罪を減らすためには、取り調べの全面可視化を求めるのではなく、司法(裁判官)に憲法や刑事訴訟法などの規定に従った判断を求めることが何より重要だと考えている。
今回の旧今市市女児殺害死体遺棄事件の判決が、生の取り調べ映像を見せそれがあたかも“真実”であるかのように思わせる効果に支えられているということから、取り調べの可視化とその公開は、逆に、「自白」を証拠とする正当性を強化することで冤罪増加に拍車をかける危険性さえ孕んでいると言える。
このまま「自白偏重」の裁判が続けば、取り調べの可視化は、自白さえ導き出せば有罪確定という異様な状況を正当化する“道具”となるだろう。
※参照投稿
「冤罪事件の根源的最終的責任は裁判所(司法)にアリ」
http://www.asyura2.com/11/nihon30/msg/760.html
被告人が女児を殺害し遺体を遺棄したかどうかという問題は脇に置くが、昨日の旧今市市女児殺害事件に関する宇都宮地裁判決は違憲である。
なぜなら、被告人を有罪とした根拠が「自白」だけだからである。
日本の司法は、宇都宮地裁に限らず、任意性や信用性を根拠に「自白」を唯一の証拠として有罪にする悪癖があるが、日本国憲法第三十八条には「3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と規定されている。
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※日本国憲法該当条文
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
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第2項が別にあるように、第3項の規定は、被告人に対する取り調べの過程で、拷問や脅迫ないしは利益誘導(自白すれば罪を軽くするなど)があったかどうかを問題にしているわけではない。
端的に言えば、任意であろうが、信用性が高いものであろうが、「自白」のみの証拠で有罪にすることはできないという規定である。
(第2項は、確たる“物証”があるとしても、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に基づいて収集されたものなら採用できないという規定)
当該裁判で提出された“物証”は、Nシステム(自動車ナンバー読み取り装置)や猫の毛のDNA鑑定結果だが、せいぜい、「被告が犯人ではないとは言えない」というレベルのものであり、「被告が犯人である」というレベルのものではない。
それらは、裁判官も認めているように、被告人が犯行に及んだという前提で考えれば証拠のように思えるといった証拠(いわゆる「状況証拠」)である。
(Nシステムはある地点を通行した車両を特定するだけで犯行現場を映したものではないから、どのみち証拠にはならない。女児の死亡推定時刻については異説(10時間後から17時間経過以降)があり、ある日時のある地点のNシステムで被告の車(ナンバー)がある地点を通過したからといって犯罪の証拠につながるわけではない。猫の毛は、被害者の身体に付いていたとされるもので、被告人が飼っていた猫の毛ではないとは言えないというレベルの鑑定である)
当該事件を担当した宇都宮地裁松原里美裁判長は、憲法第三十八条を無視するかたちで、「自白は具体的で迫真性に富み、根幹は客観的事実と矛盾せず信用できる」とか「殺人のことを当初聞かれた時の激しく動揺した様子、気持ちの整理のため時間が欲しいと述べる態度は、事件に無関係の者としては不自然」といった理由を付けて、自白の信用性を認めている。
任意性や信用性があろうとも、憲法の規定で有罪の証拠にはならないが、別件(商標法違反)で逮捕された被告人が、女児殺害遺体遺棄で“取り調べ”(刑事訴訟法違反)を受け、4月中旬から6月初旬まで長期にわたる取り調べの果てに得た女児殺害に関する「自白」について、7時間ほどの録画再生映像を見ただけで安易に任意性や信用性を語って欲しくないと思う。
裁判官は「自白は具体的で迫真性に富み、根幹は客観的事実と矛盾せず信用できる」と言っているが、取調官は、犯人が誰かは知らないとしても、どういう殺され方をしたのか、遺体がどこにどうやって遺棄されていたかを知っており、「自白」に至るまでの長期(約2ヶ月)にわたって、被告人に、“こうやったんだろう”、“こう思ったんだろう”と吹き込んでいるから、被告人の頭のなかにも犯行に関する一定のイメージが形成されており、「具体的で迫真性に富み、根幹は客観的事実と矛盾せず」という内容になるのも当然である。
被告人は取り調べ官に暴行や威迫行為があったことも主張しているが、それらだけがやってもいない殺人を「自白」させる手段ではない。
長期の拘禁と日々聞かされる“犯行物語”は、ヒトの精神を歪めていく。
再生された取り調べ映像では、取調官がやさしく問いかけたときに自白したようだが、拘禁の不安と恐怖が募ると、やさしい対応をしてもらったヒトに“迎合”する気持ちも生じる。 そのヒトの意向に沿うことでそのヒトのやさしい対応をつなぎ止めたいと思う。
日本の司法の大きな問題として、犯行を否認した場合、反省していないとかいった理由を付けて量刑を重くすることを指摘できる。
そのような話を聞かされた被疑者のなかには、死刑になるよりとか、長いムショ暮らしになるよりはマシといった折り合いを付けてありもしない「自白」をすることもある。
「自白偏重」という憲法違反であり近代法理論にも反するおぞましい因習から脱しない限り、日本で積み上がってきた冤罪の山は低くならないだろう。
自白を迫る取り調べを否定はしないが、「自白」はあくまでも証拠(物証)を得るための手段であり、「自白」そのものを有罪の証拠とすることはできないのである。
※関連参照投稿
「2人に死刑執行:連続女性殺人犯蒲田死刑囚の物証(唯一)に疑問、公判では否定した自白“のみ”で死刑確定」
http://www.asyura2.com/13/nihon31/msg/703.html
[飯塚事件]事件の経緯さえ未解明のまま死刑判決に踏み出した犯罪的裁判:DNA再鑑定の結果とは無関係で無罪のケース
http://www.asyura2.com/11/nihon30/msg/529.html
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<栃木女児殺害>「録音・録画で判断決まった」裁判員ら会見
毎日新聞 4月8日(金)21時58分配信
◇宇都宮地裁 裁判員たち、物証の「弱さ」を指摘
栃木県日光市(旧今市市)で2005年、小学1年の吉田有希ちゃん(当時7歳)を連れ去り殺害したとして、殺人罪に問われた勝又(かつまた)拓哉被告(33)=栃木県鹿沼市=の裁判員裁判。無期懲役の有罪が言い渡された勝又被告(33)の裁判員裁判を担当した裁判員らが閉廷後、宇都宮地裁で記者会見した。裁判員たちは物証の「弱さ」を指摘する一方、「(犯行を自供した)録音・録画がなければ判断は違っていた」と話した。
会見したのは裁判員6人のうち5人と、補充裁判員3人のうち2人の計7人。判決について、7人は「(被告は)真摯(しんし)に受け止め、罪を償ってほしい」と感想を述べた。
録音・録画について、70歳代の女性は「決定的な証拠がなかったが、録音・録画で判断が決まった」と話した。別の30歳代男性は録音・録画を評価しながらも、「抜けている部分が多いという印象を持った。もっと公開する範囲を広げてほしい」と指摘。女性会社員も「物的証拠が少なく、(判断が)より難しく感じ、はがゆかった」と語った。
評議時間の短さへの指摘も多く、女性看護師は「(読み込む調書の量など)情報量があまりにも膨大で、どう処理していいか分からなかった。振り返る時間がほしかった」と注文をつけた。判決が3月31日から延期された経緯については、裁判官側から「これでは間に合わないので延期できないか」と申し出があったためという。【高橋隆輔】
最終更新:4月9日(土)0時29分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160408-00000113-mai-soci
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栃木女児殺害
「自白、信用できる」求刑通り無期懲役判決
毎日新聞2016年4月8日 15時09分(最終更新 4月8日 20時36分)
宇都宮地裁の裁判員裁判、勝又被告に
栃木県日光市(旧今市市)で2005年、小学1年の吉田有希ちゃん(当時7歳)を連れ去り殺害したとして、殺人罪に問われた勝又(かつまた)拓哉被告(33)=栃木県鹿沼市=の裁判員裁判で、宇都宮地裁は8日、求刑通り無期懲役を言い渡した。松原里美裁判長は、焦点だった自白調書の信用性について「自白は具体的で迫真性に富み、根幹は客観的事実と矛盾せず信用できる」と述べた。
被告は捜査段階でいったん連れ去りや殺害を認めたが、供述は変遷を重ねた。公判では無罪を主張しており、弁護側は控訴する。
松原裁判長は、取り調べの録音・録画について「殺人のことを当初聞かれた時の激しく動揺した様子、気持ちの整理のため時間が欲しいと述べる態度は、事件に無関係の者としては不自然」と信用性を認めた。
被告の車が自宅と遺棄現場を行き来したとする自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)の記録、遺体に付いたネコの毛は被告の飼い猫と矛盾しないとのDNA鑑定結果など、検察側が主張した状況証拠についても検討。「被告が犯人の蓋然(がいぜん)性は相当高いが、犯人と直接結びつけるものではない」としながら、自白調書を重視し有罪を認定した。
量刑理由について「発覚を逃れるためナイフで何度も刺して惨殺した。身勝手で、あまりに過剰で残虐。地域社会への影響も見過ごせない」と述べた。
弁護側は公判で、「録画されていない暴力や暴言、利益誘導で犯行を認めさせられた。自白に任意性も信用性もない。状況証拠も犯人と特定できるものではない」と反論していた。
事件の取り調べの録音・録画は約80時間に上り、このうち検察、弁護側双方が合意した7時間余が公判で再生された。当初、判決は3月31日の予定だったが、裁判官と裁判員の評議が長引いたとみられ、異例の延期となっていた。
判決によると、勝又被告は05年12月2日午前4時ごろ、茨城県常陸大宮市の林道で有希ちゃんの胸をナイフで複数回刺して失血死させた。今回の無期懲役の判決は、区分審理で有罪とされた商標法違反事件などの部分判決も踏まえ言い渡された。【田中友梨】
栃木小1女児殺害事件
栃木県日光市(旧今市市)で2005年12月1日午後2時50分ごろ、小学1年の吉田有希ちゃん(当時7歳)が下校途中、友達と別れた後に行方不明となり、翌2日午後2時ごろ、約65キロ離れた茨城県常陸大宮市の山林で遺体で発見された。胸に複数の刺し傷があり、死因は失血死だった。行方不明の現場付近に以前、住んでいた勝又拓哉被告(33)が14年1月、商標法違反容疑で逮捕され、有希ちゃんを殺害したとして同6月3日に殺人容疑で再逮捕された。
http://mainichi.jp/articles/20160408/k00/00e/040/222000c
- 愛媛県警から流出した「被疑者取調べ要領」 あっしら 2016/4/09 17:40:46
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- 部分可視化では正義が貫徹されたことにならない ニュース・コメンタリー (2016年4月9日)〜寧ろ冤罪化? 戦争とはこういう物 2016/4/10 01:03:42
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- 女児殺害判決 全面可視化を急ぎたい(この国会では形のみ?!) 戦争とはこういう物 2016/4/10 13:36:11
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