http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/556.html
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(回答先: 「日本病」に気付き始めた日本人 お金がもたらす“無限の可能性”という錯覚 転換期に必要な3つの武器 目的工学 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 04 日 01:18:31)
ピーター・ブレグマン/HBRブログ
Leadership
無策こそ、最上の策
2013年04月17日
ピーター・ブレグマン CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。
これから何をすべきか、わからない――卒業、転職、引退など人生の転機を迎える時、こんな不安を抱えることは誰しもあるだろう。先が見えないのは自分の計画不足のせいだ、と自責の念にかられる人もいるかもしれない。しかしブレグマンは、4つの要素さえふまえていれば、将来について無計画でもかまわないという。
?今週末、20年以上前に通っていたプリンストン大学を訪れてスピーチを行った。キャンパスに向かうあいだ、卒業を数カ月後に控えた当時の私が取り憑かれていた悩みを思い出していた。「これから、どうすればいいんだろう?」
?その頃、よい答えが見つからなかった。就職先が決まっておらず、将来の計画もなかった。
?しかし結局、それこそがよい計画だったのかもしれない。
?マーク・ザッカーバーグとそのルームメイトは、コンピュータ・サイエンス専攻の学生だった当時、現実的な計画などなにもなかった。彼らがフェイスブックを立ち上げたのは、ただ面白いと思ったからである。才能を発揮できて、ハーバードの学生や卒業生どうしをつなげる斬新な手段が、たまたまフェイスブックだったのだ。それが4億人以上の会員を擁することになるとは、彼は予想だにしていなかった。そのうえ、収益がどこから来るのかもはっきりわからなかった。しかし彼はフェイスブックをやめなかった。2007年にアプリ開発を外部に解放し、ゲーム開発者がユーザー獲得のためにフェイスブック上の広告枠を買い始めた。これは2004年当時のザッカーバーグの戦略には、まったく含まれていなかったことだ。
?グーグルの創業者ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンも同じだ。1996年にプログラムを書き始めたが、収入源について明確なプランもアイデアもなかった。しかしそれは、やめる原因にはならなかった。2002〜2003年になってようやく、アドワーズとアドセンスによって収益基盤ができたのである。
?先週の記事「計画したことに縛られないために必要なこと」の中で私は、計画に対して柔軟性をもつ必要があること、計画に固執するのは危険であることを書いた。でも、もし完全にノープランだったらどうすればいいだろうか。
?学校を卒業する時だけでなく、人生を通して、そんな状況に直面することは誰もがあるだろう。30年近く働いてきた世代は、幸いにも長生きしていれば、第2、第3の人生を迎えている。若い世代は数年おきに転職し、まったく別の業界に鞍替えすることもある。昨日立てた計画は、今日には無意味となるかもしれない。私のヨガの先生は、以前はキャスティング・ディレクターだった。
?無限の選択肢がある状況では、計画を練ることが難しくなる。コロンビア大学ビジネス・スクールの経営学教授シーナ・アイエンガーは、次のような研究を行っている。あるグループには6種類のジャムを購入の選択肢として提示し、別のグループには24種類のジャムを提示した。試食段階では後者のほうが商品に強い興味を示したが、実際に購入した数は前者のほうが多く、後者の10倍だった。選択肢が限られると、人間は10倍も行動を起こしやすいのだ。
?選択肢が多すぎると、人は簡単に惑わされてしまう。たくさんの中から選べず、結局は何も選ばずに終わってしまう。
?それでも人生は続いていくので、「選ばない」という選択を事実上はしたことになる。ある時そのことを振り返り、自分の能力を無駄にしてしまったように感じる。ジャムを1つも買わずに店を出てしまった、というふうに。
?必要なのは、計画がない場合でも行動を起こす方法、正しい方向へと進む指針だ。
?それでは、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジ、サーゲイ・ブリンのように成功するには何が必要なのだろうか。機会、粘り強さ、幸運などだろう。しかしこの3つをもたらし高めてくれる、別のものがある。私はそれを「4つの要素」と呼んでいる。
?●自分の強みを活かす
?●自分の弱みと向き合う
?●情熱を持ち続ける
?●自分を差別化する
?以上のことができたら、成功はあなたに微笑むだろう。
?ザッカーバーグ、ペイジ、ブリンの3人はテクノロジーを愛してやまず、それに関する才能もある。しかし1人で事業を起こしたのではなく、弱点を補い合うために他者と協力している。そして、他のどんなものとも違うユニークな方法と事業内容によって、自分たちを差別化した。
?プリンストンでの私の情熱の対象は、野外活動でリーダーシップを発揮することだった。私の強みはチームの形成と指揮、弱点は神経症的なまでの安全意識だった。しかしアウトドアにおいては、この弱点は長所となる。野外で仲間たちと過ごすことが大好きだった。ニューヨーク市で育った私は都市生活者としての視点を持っており、これが野外活動の初心者に対する独特の指導法に結びついた。
?けれども当時の私は、それらを就職にどう役立てればよいかわからなかった。それが長期的なキャリア形成にどう結びつくというのか。森で生活しながら家族を養っていけるのか。それは難しいだろう。だから野外活動のすべてを投げ出そうとした。ロースクールに行くことすら考えた。
?しかし私はそうしなかった。代わりに選んだのは、その時やっていたことをやり続けること。「4つの要素」を追求し、それらにマイナスとなるものを変えるという実験を始めたのだ。
?私が試してみたのは、野外活動で企業の団体のチーム形成を指導することだった。この仕事で生活は安定した。そして自己の差別化をはかることもできた。他のアウトドアリーダーよりも、企業の世界について詳しくなったのだ。
?こうして、私は会社を設立した。ひとつの決断が、次の決断を導いた。18年後の今も私の事業は、強みと弱み、情熱と独自性をより活かすために変容を続けている。3年後にどう変化しているか、自分にもわからない。
?人生でたどる道筋をすべて明確にする必要はない。最も成功している人や事業は、はじめは考えてもいなかった方法や分野で能力を発揮しながら、成功への紆余曲折をたどっている。
?あなたはすでに、4つの要素に沿った何かを始めているのではないだろうか。それが仕事でも、趣味やひとときの気晴らしでもよい。あなたの強みが活かされ、弱みが受け入れられ、熱中するほど楽しく、あなたの個性が反映される何かをしているはずだ。ならば、そこをスタート地点としてはどうだろう。
原文:Why Not Having a Plan Can Be the Best Plan of All April 28, 2010
http://blogs.hbr.org/bregman/2010/04/how-to-make-a-career-when-you.html
【第16回】 2013年4月17日 後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 クライアント本部戦略ソリューション室長、兼DC推進室長]
選択肢が多いことは良いことか?
?前回は「人間は合理的な選択ができない」ことをカーネマン教授のプロスペクト理論の観点からお話ししました。投資においては、人間は最終的な資産価値ではなく損益で喜びや苦しみを感じてしまい、また利益から来る喜びよりも同額の損失から来る苦しみを大きく感じてしまいます。だから、損失回避の傾向が強くなり、損失が出ているときは損失を取り戻そうとリスクの高い無謀な行動に出てしまうのです。つまり、リスク選好は一定という理論通りには行かず、実際にはリスク選好は損益の状況によって大きく変わるため、人間はなかなか合理的な選択ができません。でも、人間のおかしな行動はこれだけではありません。今回は、選択が人間に与える影響についてお話ししたいと思います。
選択肢が多いことは良いことか?
?日常生活におけるラーメンや宅配ピザのトッピングなど、自分が好きなものであれば選択肢は多いに越したことはありません。では、当連載のテーマである老後の資産形成のように一般的に楽しくないものの場合はどうでしょうか。これから、その重要なツールである確定拠出年金の事例を用いて、選択肢の数が意思決定に与える影響についてお話しします。
?アメリカの確定拠出年金は、以前は希望者が加入する制度でしたが、当時、企業は従業員の選択の幅を広げるため、なるべく多くの運用商品をラインナップとして用意しました。普通に考えると、選択肢が多いほど多様な従業員のニーズに応えられるため、多くの従業員が関心を示し、確定拠出年金の加入率は高まるはずです。ところが、意外なことに、実際には運用商品の数が多いほど、加入率は低くなったのです。つまり、企業は従業員のために良かれと思って運用商品を充実させたのに、確定拠出年金の加入率が下がるという皮肉な結果になったのです。
?次に、もう少し身近な例で考えてみましょう。スーパーで多くの種類が置いてあるジャムのコーナーと、少ない種類しか置いてないコーナーがあるという状況を想像してください。コーナーを訪れた人の割合はたぶん皆さんの予想通り、種類の多いコーナーのほうが上でした。ところが、実際に購入した人の割合は種類が少ないコーナーのほうが上という、またしても意外な結果となったのです。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
?実は、選択肢が多すぎると、人間は麻痺状態に陥り、意思決定を先送りする傾向があるのです。結果として、ジャムのように特段こだわりもなく、今すぐ必要でないものの場合は、選択自体を先送りし、今すぐ必要な場合には、現状維持の選択をする傾向があります。現状維持というのは、例えばバーに行って注文しようとしたとき、メニューに載っているお酒の種類が非常に多いと、目移りして決まらず、結局はビールやいつも飲むお気に入りのカクテルなどを選んでしまうことです。
?ここまで幾つかの事例を見ましたが、資産運用についても同じことが言えます。今、東証一部に上場している日本株式は約1700銘柄、公募されている投資信託も4000本以上あります。老後の資産形成のための投資は通常、今すぐ必要なものではないため、これだけ膨大な選択肢から適切なものを選べと言われてもよく分からず、結果として、多くの人が選択を先送りしてしまいます。実際、弊社が2009年に実施した調査でも、多くの人が老後に備えた「自分年金」の必要性は感じながら、行動に移した人はわずかでした。
「選択は良いこと、選択肢は多いほど良い」と思われがちですが、実際には選択肢の多さが災いして、選択肢が増えると選択できなくなる「決定麻痺」を招くのです。オヤジ世代の皆さんには、子供や部下の教育で選択の余地を与えすぎてうまく行かなかった経験はありませんか??人を適切な方向に導くには、あえて選択肢を狭め、決定麻痺が起こらないようにする必要があります。このように自主性を残しながら上手に誘導することを、自由放任でも積極介入でもないリバタリアン・パターナリズム(緩やかな干渉主義)と言い、アメリカの確定拠出年金制度では活用されています。
人間は選択肢を正しく評価できるのか?
?人間が選択において不完全なのはこれだけではなく、絶対的な評価にも問題があります。以下のような2択の質問があった場合、あなたならどちらを選びますか??(1)XYZ誌の印刷版の購読(年間1万2000円)、(2)XYZ誌の印刷版およびWeb版の購読(年間1万5000円)。では、次のような3択の場合はどうでしょうか??(1)XYZ誌の印刷版の購読(年間1万2000円)、(2)XYZ誌のWeb版の購読(年間1万5000円)、(3)XYZ誌の印刷版およびWeb版の購読(年間1万5000円)。
?3択における(2)の「Web版だけ」という選択肢は一見無駄に思えますが、実はとても重要な意味があるのです。2択では「印刷版だけ」、3択では「印刷版とWeb版」を選んだ人が多いのではないかと思いますが、その場合、あなたはXYZ誌の思惑通りの選択をしたことになります。3択に「Web版だけ」という選択肢を加えたことにより、値段は同じでサービスが充実した「印刷版とWEB版」がより魅力的に見えたからです。つまり、一見無意味に思えたこの選択肢は、実は高額な選択肢に誘導するための巧妙な“囮”だったのです。この背景には、ある選択肢をだいたい似ているが一部劣っている選択肢と並べると、両者の比較から前者を魅力的に感じてしまう人間の心理が働いています。
結局、人間は正しく選択できない
?何事においても選択肢は多いほうが良いとよく言われますが、人間は意外と自分が思っているほど適切には選択できないのです。正しい選択をするため、投資に限らず、様々な局面において今回お話ししたことを参考にしていただければ幸いです。
今回の川柳
選択は?思っているより?難しい
http://diamond.jp/articles/print/34763
部下を成長に導くのは「時間配分」だ!
ティーチングとコーチングのバランスを考えよう
2013年4月17日(水) 石田 淳
『育てる技術』
「課長塾」で講師を務める石田淳さんの新刊『育てる技術』(小社刊)が、4月8日に発売されました。
「仕事をいくら教えても、若手が育たない。むしろ、口うるさく指導する自分が部下から疎まれている」――。そんな悩みを抱える管理職は少なくありません。なぜ、部下のため、組織のためによかれと思って指導して、嫌われるという結果を招くのか。それは多くの場合、教え方が行動科学の原則からはずれているから。いまどきの若手にもストレスなく伝わる合理的な育て方を身につければ、指導の成果は一気に上がります。
部下育成で重要なのは、相性でも情熱でもなく、「行動」に焦点を当てること。本書では、具体的な行動を改善することで「できる部下」を育てるロジカルな褒め方、叱り方を、石田さんが実例を挙げながら詳細に解説しています。ぜひご一読ください。
日本企業の課長職はプレイングマネジャーであることが求められています。限られた時間の中で、部下の育成、そして自分のプレーヤーとしての業績アップという2つの課題をクリアしなくてはいけません。
しかも、それだけではありません。ほとんどの企業はトップダウン型の意思決定プロセスに従って動いています。そのため大抵の場合、課長のところには経営陣から業績アップのためにあれをやれ、これをやれと様々な案件が下りてきます。
一方で、課長が取り仕切る現場では日々、クレームなどの問題や課題が次々と発生しています。つまり、課長は経営陣から下りてきた案件に対応するのとは別に、新たに発生する現場の問題や課題を解決していかなければいけません。
組織のピラミッド構造において上層部と下層部の間に立つ課長は、こうした構図の中にいるがために、処理しなければならないことが山のようにたまっていく傾向があります。
私が行動科学マネジメントの普及を通じて目指しているのは、このようなピラミッド構造をひっくり返して、「上から下」という流れを変えることです。行動科学マネジメントを実践すれば、若い従業員たちは放っておいても望ましい行動を取るため、良い結果が出る。現場が上層部に良い結果を提示するため、上層部にいる経営者は現場を信頼するようになる。だから経営層は現場に対してむやみやたらと指示を出さなくなる。なので、私は「行動科学マネジメントは現場で指揮をとる課長職がラクになるための究極の手法である」と主張しています。
部下のパフォーマンスを上げ組織の成果につなげる
行動科学マネジメントの根底には「パフォーマンス・マネジメント」という考え方があります。パフォーマンス・マネジメントとは、「個人のパフォーマンスから生み出された貢献を、組織の成果に結びつけること」を指します。
一般的に、組織における個人のパフォーマンスとか個人の貢献度というと「個人をどう評価するか」という観点を想起しがちですが、行動科学マネジメントにおけるパフォーマンス・マネジメントにおいては、個人に対する評価は二の次です。
ここで、課長であるあなたのことを考えてみてください。会社からあなたに問われているのは、チーム、つまり課としてどれだけの結果を残せたかということです。部下を管理する立場になると、どうしても「部下をどうやって評価するか」に意識が向きがちですが、部下の評価は本質的な命題ではありません。課長は「部下のパフォーマンスを向上させて、会社に寄与する人」であるべき。ここに起点を置いて、課長として何をするのかを考えていく必要があります。
「みんな平等に教育」では部下は育たない
北陸地方に本社を置く精密機器会社では、東京や大阪などの大都市に営業拠点を置いています。今回新しく設置された福岡営業所には、所長以下、4人のスタッフが配属となりました。4人とも20代で、1人ひとりの経験の差はそれほどありません。
この会社では、営業活動におけるマニュアル化が徹底されています。過去に医療関係者への過剰接待や、顧客企業の担当者にバックマージンを提供していたことが発覚し、問題となったからです。
そこで、九州地方の営業を任された所長は、4人に対してはマニュアルに沿って全く同じ教育を実施することにしました。毎朝のミーティングでは会社のミッションとビジョンを確認し、各人のあいさつや笑顔のチェックを行いました。さらには、その日の行動予定を各自に述べさせて、所長が細かい指示を与えるようにしました。夕方には、営業活動の結果報告も兼ねた会議を持ち、懸案事項を皆で話し合いました。
商談のロールプレイング(模擬訓練)や個人に対して行う個別ミーティングについても、誰に対しても同じ頻度で行うようにしました。平等で明確だし、これにより4人全員が同じように成長できると考えたからです。
ところが半年もすると、4人の成長度合いに明らかにばらつきが出てきました。
あるスタッフは、所長の目から見ても快活で説明能力も高いのですが、顧客からの評判が良くありません。どうやら、社会人としての基本的なマナーを軽んじているところがあるようです。そういえば、毎日の朝礼でもどこかしらけた態度を取りがちです。
一方、また別のあるスタッフは真面目なのですが自分からはあまり発言せず、営業には向いていないようにも思えます。ロールプレイングをやらせてみても、自社製品のアピールなどが上手にできていません。
あとの2人も似たり寄ったりで、それぞれ長所があれば短所もあるといった具合です。ただ総じて言えば、帯に短し襷(たすき)に長し。所長にとっては誰ひとり安心して仕事を任せられないという状態なのです。そのため、大事なことはすべて所長が走り回って処理しています。
そんな所長に対する本社の評価は、残念ながら高くないようです。実質的に5人もいるのに、それにふさわしい数字が出ていないためです。
スタッフ1人ひとりが持つ潜在能力や、所長がスタッフの教育のためにかけた時間を考えると、所長は非常にもったいないことをしています。4人それぞれの得意分野や成長度合いを踏まえて、少しでも指導の時間配分を変えていれば、今ごろは4人ともかなりの「使える人」に育っていたはずです。
「一緒に仕事をする」だけでは部下は学べない
近畿地方にある、従業員数100人前後の広告代理店。ここで働いている30代半ばのマネジャーは、3年前に後輩社員が入社してから自分の仕事が忙しくなる一方だと感じていました。
このマネジャーは長い間、今年50歳になる上司と2人で、電車広告の営業を担当してきました。不景気が続いていたため、定期的に広告を出してくれるクライアントはごくわずか。毎月の売り上げを確保するためには、顧客の様々なリクエストに応じなければならず、目の回るような忙しさでした。
そこに新しくメンバーが増えたので、マネジャーは「これで少しはラクになる」と喜びました。マネジャーとしては、上司の下に自分と新人という2人が配属になるのだから、自分の仕事は、半分とは言わなくても3分の1くらいは軽減するだろうと期待したのです。
ところが、上司はこう言いました。
「君たち2人で、これまでの仕事は頼む。その分、僕は新規の顧客開拓に専念するから。頑張れよ」
マネジャーを中間管理職として置き、その下に後輩社員を配置する。つまり、マネジャーはこのとき後輩社員の上司となったわけです。
それにしても、これまで一緒に組んできた50歳のベテラン上司と、これから組むことになる新人とでは、そのポテンシャルは天と地ほどの差があります。当然、マネジャーの負担はかなり重くなることが予想されます。しかも、部下育成という仕事が増えてしまった格好です。
それでも、このマネジャーはこう決心しました。
「後輩社員が独り立ちしてくれたら、僕も上司のように自分の仕事に専念できるはずだ。そこまで頑張って育てなくちゃ」
マネジャーは、自分たちがこなさなければならないすべての仕事について、まずは2人で一緒にやってみようと考えました。クライアント企業を訪問して回る、広告原稿のチェックをする、といった仕事を一緒に進めることによって、後輩社員はそのやり方を覚えてくれるだろうと考えたからです。
その結果、どうなったか。2人の労働時間が圧倒的に長くなりました。そもそもマネジャー1人が急いで進めてもなかなか終わらないような仕事を、後輩社員に1つひとつ説明しながら進めたので、毎日深夜残業となりました。
それを会社がよしとするはずがありません。マネジャーは上司から「もっと効率的にやれよ」と指示を受けました。
今度は思い切って、仕事を分けることにしました。
「これまで僕と一緒にやってきて、理解できたこともずいぶんあるだろう? だから仕事の3割くらいは、君だけでやってみてくれないかな」
でも、これは後輩社員には無理な相談でした。というのも、それまでずっとマネジャーと2人で動いていたため、「1人シフト」、つまり1人だけで仕事を進める準備が全く整っていなかったからです。だから後輩社員は頭では理解できているものの、その通りには行動できません。1人でクライアント企業に出向いても、ただあいさつをするにとどまり、受注に至らないことがほとんどでした。
当然、売り上げは落ち、マネジャーはそのフォローに何倍もの時間と労力を費やすことになってしまいました。後輩社員の育成にかける時間など取れません。
マネジャーはまたしても上司から注意を受けることになりました。
「どうして放っておくんだ。もっと早く育てなくちゃダメじゃないか」
もちろん、マネジャーはそんなことは言われなくても分かっています。後輩社員に独り立ちしてもらえたら一番助かるのはマネジャー本人なのですから。でも、マネジャーにはもう後輩社員を独り立ちさせるのは不可能なのではないかと思えてしまうのです。
2つのエピソードを読んで、他人事とは思えないと感じた方も多いのではないでしょうか。2人とも「良かれ」と思って頑張っているだけに、それが裏目に出ていることがとても残念です。
「ティーチング」と「コーチング」を組み合わせよう
では、課長として部下のパフォーマンスを向上させるにはどうすればいいでしょうか。行動科学マネジメントでは「ティーチング」と「コーチング」の組み合わせが重要であると言っています。
課長であるあなたに必要なのは、部下が成果を創出できるようなティーチングと、部下がモチベーションを高く保てるようなコーチングです。つまり、仕事自体を正しく教えることと、部下が自発的に動けるような意欲喚起の両輪が必要だということです。
ティーチングとコーチングという2つに対する配分は、部下1人ひとりの能力や経験の度合いに応じて、バランスが取れるよう変えていく必要があります。入社したての新人社員に対しては、対応する時間のほぼすべてをティーチングに充てることになるでしょう。最初からモチベーションを喚起したとしても、正しい仕事のやり方が分からなければ空回りするだけですから。
一方、仕事が何とかこなせる状態にまで育ってきたなら、ティーチングの時間をコーチングにシフトさせていくことが大切です。コーチングを通じて本人のモチベーションを高めていかなければ、その部下は次第に腐ってしまいます。精密機器会社や広告代理店のケースは、ティーチングとコーチングの割合をうまく配分できなかった例と言えるでしょう。
では、配分はどのように変えてバランスさせればいいでしょうか。例えば、ティーチングに週3時間、コーチングに週30分必要な部下がいるとします。その部下が、あなたのティーチングのおかげで仕事ができるようになってきたら、今度はティーチングは週15分、コーチングは週2時間という配分に変えていきます。
この結果、その部下がコーチングを週30分も実施すれば十分、というレベルにまで育てば、しめたもの。課長であるあなたは、浮いた時間をほかの部下育成に充てる、あるいは自分の仕事のために使うことができるようになります。
要は、課長自身が自分の仕事の内容と、各仕事にかけている時間をちょっとていねいに見て、それぞれの時間配分を考えていけばいい、という話なのですが、実際にはそれをやらずに苦しんでいる課長が多いのです。
時間配分を盛り込んだ「行動計画表」を作ろう
自分の仕事をこなすだけで大変な課長が、業績も伸ばしながら部下育成を成功させるには、先ほど紹介したティーチングとコーチングの時間配分を含めた、仕事時間のバランス配分が必須です。
課長はおしなべて忙しく、使える時間は限られています。自分の業績を上げるために、そして部下を育成するために、やらなければと感じていることがたくさんあるはずです。しかし実際には、それらすべてをこなせるほどの時間は与えられていません。だから、従来の延長線上にあるやり方だけを続けていたら、行き詰まって当然なのです。
こうした事態を避けるために、行動科学マネジメントがあります。自分の仕事と部下育成の時間配分を考え、バランスを取り、その内容を盛り込んだ「行動計画表」を作ってみましょう。
ひとくちに課長と言っても、置かれた状況には違いがあります。精密機器会社の所長のように部下をたくさん抱えているのであれば、部下育成にかける時間配分は必然的に多くなるでしょう。逆に、広告代理店のマネジャーのようなケースであれば、部下育成ばかりに多くの時間を使うわけにはいきません。
まずはあなたがするべき仕事と、それらに対する時間の使い方を全部、洗い出してみます。それを適切な割合で配分し直し、スケジュールに落とし込んでいきましょう。
例えば、毎日午前中と夕方の2時間を自分の仕事に充てて、午後の3時間を部下育成に充てるという配分が考えられるでしょう。あるいは、月曜日から木曜日は自分の仕事に集中し、金曜日に部下育成を徹底的に実施する、という配分も考えられます。もちろん、もっと細やかに分けられるのが望ましいでしょう。
広告代理店のマネジャーは、後輩社員の上司になった段階で、こうした時間配分と、それをどう変化させていけば良いかを考えるべきでした。最初のうちはすべて後輩社員と一緒に行動し、仕事を覚えてもらおうというのは、決して悪い計画ではありません。慣れてきたら仕事を分けるというのも悪くありません。しかし、そこには時間配分の考え方が欠けていたのが問題でした。
例えば、最初の1カ月は、自分の仕事は後回しにしてでも徹底的に後輩社員に仕事を教える。2カ月目は現場で一緒に行動し、3カ月目に入ったらいよいよ1人で顧客回りをしてもらう。このような時間配分の変化を持たせた計画を練り、それに基づいた細かい行動計画表を作っておく。そして、それを後輩社員と共有するのです。もしマネジャーがこのような行動計画を立てていたなら、計画の実行を通じて、後輩社員が独り立ちできるようになった可能性は十分にあったはずです。
あいまいさを排除する
行動計画表を作るときに大事なのは、課長であるあなた自身の仕事についても、また部下育成についても、数値を使ってあいまいさを排除するということです。仕事内容とその時間配分を具体的に記述して、計測できる数値に落とし込んでください。
仕事内容についてはあまり欲張らずに3つ程度に絞りましょう。そして、それぞれの仕事について「どのくらいの時間をかけるか」「どこまで進めるか」ということを、数値で計画していきます。
そして、2週間後くらいをメドに検証してみましょう。例えばあなた自身がA、B、Cという3つの仕事をこなしていて、Aはほとんど完成しつつあるのに、Cはまだまだ進んでいないようであれば、これまでAにかけていた時間をCに使うよう、配分を変更します。
また、部下にD、E、Fという3つの仕事を教えていて、Eの習得がかなり遅れているようなら、Eの仕事について教える時間を多くする必要があるでしょう。
このようにして定期的な見直しをかけていくことにより、手に余っていた仕事がどんどん片づいたり、部下への指導が適切にできるようになります。
行動科学マネジメントの“果実”をできるだけ早く得たいと考えるなら、計画に対するきめ細やかな見直しが必要です。以前はどんなに効果を上げた行動計画表であっても、見直しをしなければあっという間に古くなり、効果を出さなくなります。
課長の仕事内容は日々変化しているはずです。また部下も変化しています。行動計画表に沿って実行しているのであれば、成長もしていることでしょう。ですから、その変化に合わせて柔軟に時間配分を変えていきましょう。
仕事内容を洗い出す。時間配分を決める。行動計画表を作る。検証して時間配分や行動計画に見直しをかける。日々の仕事で忙しい課長職にとっては遠回りのように思えるかもしれませんが、実際にはちょっとした遠回りでしかありません。そして、このちょっとした遠回りが、あなたの仕事をラクにする最短の道になるのです。
石田 淳(いしだ・じゅん)
ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者
行動科学マネジメント研究所所長
組織行動セーフティマネジメント協会代表理事
「課長塾」メイン講師(行動科学による部下指導法を担当)
行動科学(分析)マネジメントの第一人者。アメリカのビジネス界で大きな成果を上げる行動分析、行動心理を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ、「行動科学マネジメント」として展開。精神論とは一切関係なく、行動に焦点をあてる科学的で実用的な手法は、短期間で組織の8割の「できない人」を「できる人」に変えると企業経営者などから支持を集める。ビジネスパーソン個人が自ら成長する際に今後、最も必要となる「セルフマネジメント」にも活用できるという手法として、各方面からさらなる注目を浴びる。組織活性化に悩む企業のコンサルティングをはじめ、セミナーや社内研修なども行い、ビジネス・教育の現場で活躍している。趣味はトライアスロンとマラソン。2012年4月、世界一過酷なマラソンといわれるサハラ砂漠250キロメートルマラソンに挑戦、完走を果たす。『教える技術』(かんき出版)、『会社を辞めるのは『あと1年』待ちなさい!』(マガジンハウス)、『組織行動セーフティマネジメント』(ダイヤモンド社)、『組織が大きく変わる最高の報酬』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。
輝く課長の行動科学マネジメント
日本の現場を支えているのはミドルマネジャー、すなわち課長です。課長が輝いてこそ、現場が元気になり、企業は発展します。課長の目の前に課題は山積しています。目標達成、新事業の立案、部下の育成から子供の教育、生活習慣の改善まで。様々な課題に対し、対策は提示されていますが、その実行と継続は容易ではありません。自分の行動を自分で改善し続けられる「行動科学マネジメント」で、輝く課長を目指しましょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130411/246528/?ST=print
上司は私の言葉をなぜ誤解するのか?
『半年で職場の星になる! 働くためのコミュニケーション力』/『Team・HK』
2013年4月17日(水) ザ・絶賛エディターズ
【私が編集した本読んで下さい!】
『半年で職場の星になる! 働くためのコミュニケーション力』
山田ズーニー著、担当:筑摩書房 鶴見智佳子
『半年で職場の星になる! 働くためのコミュニケーション力』山田ズーニー著(筑摩書房)
『あなたの話はなぜ「通じない」のか?』など、職場でのコミュニケーション技術で数々のヒット作を放った山田ズーニーさんの本です。社会人として、職場を自由に動き回り、ひいては社会で自由に動き回って働きかけることが出来るようになるための1冊です!
まずは会社員によくある悩み、「あなたの話をなぜ上司が誤解するか」を考えてみましょう。
物事は「何を言うかよりも誰が言うか」が問題です。本書ではこんな例をあげています。
「おめでとう」 (イチローより)
「おめでとう」 (連続強盗殺人犯より)
「おめでとう」 (母より)
同じ言葉でも誰が言うかで相手に与える印象がガラリと変わります。あなたの発言を誤解する上司は、「頼りない」「早のみこみ」「自分勝手」といった、あなたのセルフイメージとはかけ離れた見方で、あなたのことを見ているのではないでしょうか。
職場で話が通じるようにするには、まず自分という人間のメディア力=信頼性を高めることが大切なのです。
本書は「等身大のメディア力を持つ」方法からスタートします。
等身大のメディア力とは、まったく新しい職場でも、いかに職場の人々から自分という人間を信頼してもらうための方法です。
では、信頼を得るためにどうするか?
人の話の聞き方が、実は信頼に効く
本書では、一発で信頼される「人の話を聞く」技術、さらに、「上司を説得するチカラ」や「正しく伝わる説明・指示・報告のしかた」が、抜群に良い例・やってはいけない悪い例・フツウの例で、わかりやすく納得しながら習得できます。
さらに、社会人としての「書く技術」、仕事の文書を「読む技術」、通用するおわび、スタッフがやる気になる指示の出し方などが具体的に書かれています。
そして、一緒に働きたいと思われる・人を動かす表現力、上司もうなる・やる気が出る、目標の立て方まで。
つまり、日々のコミュニケーションを通して信頼を得ていく方法が満載です。伝えることで信頼が増す、信頼が増すからさらに伝わる。だから職場で伝えたいことを伝え、相手と通じ合い、チームで成果をあげていくことができるのです。
本書は、日経ビジネスオンラインで2009年4月〜9月に連載され大好評だった「新人諸君、半年は黙って仕事せよ。山田ズーニーのフレッシュマンのためのコミュニケーション講座」をまとめた単行本を文庫化したものです。
しかし、単行本が右から左に文庫になったわけではありません。
タイトルを変更し、中身も刷新し、新たに文庫として生まれ変わるまでには、新刊を出すのと同等の努力が要りました。
単行本は、フレッシュマンにターゲットが絞られていたのですが、文庫化にあたって、改めて読んでみると、この本は、一生通用する「働くためのコミュニケーション力」の基礎を身につけることについて書かれています。これは、新人だけに必要なチカラではありません。3年目も、5年目も、ベテランもベテランだからこそなめてしまいがちな基礎に戻って、本物のチカラを身につけてほしいと感じました。
読めば読むほど、社会人として働く人すべてに読んで欲しい!!と感じ、また連載当時も、単行本の読者も、ふたをあけてみると旧社会人も多かったので、山田さんに新人だけではない、働く人全てに通じる本として生まれ変わった文庫にしましょうと相談しました。
著者自身の体験から作られた一冊
山田さんは、改めて「働くためのコミュニケーション力」をすべての社会人に送り届けるために、そのコンセプトを一から考え直しました。何日も何日も本当にヘトヘトになるまで考えてくださいました。
そこで山田さんの頭に浮かんだのは、自分自身が16年目の企業戦士だったときの経験、なかでも転勤で全く新しい職場に移ったときの経験でした。岡山で11年経験を積んで、自信をもって東京へ異動したものの、同じ会社なのに話は通じず、バカにされ、自信をなくして呆然とした時のことを思い出したのです。
その時、山田さんが変えたのは、自らのコミュニケーションの方法でした。
皆に「私を分かって!」というのではなく、上司や同僚の作った書類やメールを読み込み、相手の文脈に飛び込んでいったのです。そこで山田さんは、周囲を自分のものさしでばかり見ていたことに気づきます。そこで、まずはものさしを捨て、周りを理解することに腐心すると、何もかもが変わっていったそうです。半年後には最高の結果を出すまでになったのでした。
私たちは「同じ言葉を話しているし、同じ会社にいるし、話は通じるもんでしょう??」と思っています。でも、同じ会社にいても部署ごとに見ているもの、目指す方向が違って話が通じないことが多々あります。
だからこそ、人をわかるチカラや伝える技術が大切なのです。
そう確信した山田さんは単行本の大手術に取り組みました。一度バラバラに解体し、組み直して、手を入れ、最後のまとめは大幅に書き直して……。
伝え方を全く変え、生まれ変わってできたのがこの本です。
人をわかるチカラ、伝える技術は、話す・書く・読む・聞くの、日々の地道な取り組みで誰にでも手に入れられます。そして、こうした働くためのコミュニケーション力を身につければ一生の武器になり、本当に半年で職場の星になれます!
山田さんも私も、心から自信を持ってお薦めできる内容になりました。
さらに、装丁の倉地亜紀子さんの力で、書棚でキラリと光り、仕事や職場に不安を持っている人を勇気づけ、元気の出る清々しい青い本にしていただきました。
コミュニケーションに困ったら、この「青本」を読んでください!!
【そんな私が「やられた!」の1冊】
『Team・HK』あさのあつこ著、徳間書店
『Team・HK』あさのあつこ著(徳間書店)
最近面白かった本は、あさのあつこさんの『Team・HK』です。
あさのあつこさんと言えば児童文学や時代小説の書き手というイメージだったので、装丁を見てちょっとびっくり。主婦の話?? 家事力?? あさのさん初のお仕事小説なんじゃない? と。
思わず手にとって本を開いたら目次に「魔女の腐乱死体」「訪問者は誰?」とある。
あれ? 主婦が主人公じゃないの? ミステリーなの? もしかして、家政婦は見た……みたいな話? とまた頭の中にたくさんの「?」が。
これが読み始めたらこれがメチャメチャ面白い。(ボキャ貧ですみません)
えっ、こんなお仕事の主人公でミステリー??
夫から「典型的な主婦思考だな」とバカにされ、中学生の娘からは「もっときれいにしてよね」と言われている、平々凡々とした主婦・美菜子が主人公。ある日、ハウスキーパー(そう、HKはこの略なんです!)会社のチラシをみつけてパートに出ようと決意したところから物語は始まります。
面接に行った日に、「死にそう(に家がメチャクチャ)、早く来て!」という電話でいきなりスタッフとして巻き込まれた美菜子。宝塚の男役のようなスラっと背の高い日向、小柄でまんまるな月子、金髪で見た目イケイケの樹里……などなど個性的なスタッフと共にお掃除に向かいます。
行った先でももちろん、あれこれ小さな事件が勃発……。すごいスピードで物語が進み、サクサクと家が片付けられ、ピカピカに磨き上げられていきます。HKのワザが開陳されているので楽しみながら家事力がアップする気がします。私は窓の拭き方を習得しましたっ!!
お仕事小説でもあり、謎解きミステリーでもあり、何より毎日の家事に前向きになって力が入る元気が出る作品でした。
あさのさん、続きが読みたいです!
鶴見智佳子(つるみ・ちかこ)
大学卒業後、編集プロダクションを経て筑摩書房入社。主に文庫や単行本の編集に携わる。担当した本に『絶叫委員会』(穂村弘)、『買えない味』(平松洋子)、『少しだけ、おともだち』(朝倉かすみ)、『泥酔懺悔』(朝倉かすみ他11人のエッセイ集)、『私の東京地図』(小林信彦)など。この4月から高校生、大学生向けのちくまプリマー新書編集部に異動となりました。
ザ・絶賛エディターズ
版元の規模やジャンルを問わず、ビジネスパーソンにいろいろな意味で役に立つ本を作っている編集者の任意団体。参加希望の方はぜひ、日経ビジネスオンライン編集部までお電話、お手紙、メール、ツィッター、コメント欄などでご連絡ください。熱い絶賛の原稿とそれに値する本、お待ちしております。(本欄担当:Y&Y)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/book/20130415/246648/?ST=print
雲泥の差が出る「クリエイティブになる方法」
2013年4月17日(水) 横田 尚哉
考えるコトと調べるコトは違います。何かを始める時に「さてどうやる」「どこかに事例はない」というのは思考ではなく、調査です。それはクリエイティブな作業ではなく、オペレイティブな作業です。自分はクリエイターだと思っていても、作業はオペレーターになっていないでしょうか。本当の意味でのクリエイションを身につけないといけませんね。
創造作業を科学的にアプローチ
クリエイティブな作業は、科学的にアプローチできます。新規性や独自性を追求したプロダクトやプロセスを創り出す作業は、特殊な能力が備わった人やその集団だけという印象が強いようですが、そうではありません。クリエイトできる仕掛けと、クリエイトできない仕組みを理解すれば、多くの人が創造作業に携わることができるのです。
もちろん、芸術的な領域でのクリエイトは困難です。そこには、表現のプロセス、具現化のプロセスがあるからです。科学的にアプローチできる限界というのもあります。マニュアルに従っていれば、自動的に優れた成果が得られるというものでもありません。
ただ、私の言うクリエイティブとは、あくまでビジネスにおけるクリエイションの領域に限定しています。仕事、業務の創造的改善という意味です。科学的アプローチを知らない人と知っている人では、雲泥の差が出るからです。時間と費用の掛けた量と比例するオペレイティブな作業とは異なり、コツを知るか知らないかで結果が変わるからです。
つまり、科学的アプローチを知らない人が多いのです。学校教育でも教わりません。企業に入っても教育プログラムはありません。だから、知らずにビジネスしている人が多いのです。だから、科学的アプローチを身につけると効果があるのです。
クリエイトできない仕組みを理解する
生物的な仕組みとして、クリエイトしにくいものなのです。私たちは、日常の活動において、四六時中クリエイトしてしまうと行動できなくなります。考えないで行動することができるような仕組みがあるのです。それは、習慣であったり、反応であったりするものです。先入観、固定観念によって無意識のうちに処理されているのです。
もっとも私たちは、その他の生物と違って知恵があります。ブレーズ・パスカルも「人間は考える葦である」と言いました。自分の意思と思考によって、道具を作ったり、判断したりすることができます。何も考えない生物と同じように扱うことはできません。
しかし、より多くの思考を処理したり、より複雑な行動をとったりするためには、固定観念が必要なのです。一部の情報から、過去の経験や知識を使って全体像をとらえ、次の瞬間を予測できるようになっています。たとえば、車が自分に向かって走ってきたら、反応的に逃げる行動をとります。いちいち思考することはありません。
つまり、ビジネスのど真ん中にいると、右から左から車が行き交っているのです。その都度立ち止まって分析して、議論して、合意を得ている暇はないのです。あえて、思考を停止することで、身の安全を守る仕組みがあるのです。だからクリエイトできないのです。
クリエイトできる仕掛けを理解する
では、クリエイトできる仕掛けを説明したいと思います。ポイントは固定観念から逃れる仕掛けを作るコトと、創造性を刺激する仕掛けを作るコトです。まず、固定観念から逃れる仕掛けについて説明します。それは、目の前の対象と脳にある過去の観念を結びつけないようにするコトです。それには、次の6つのパターンがあります。
細分化:対象を細かく分解することで、原形を判らなくする
拡大化:対象の一部を拡大することで、全体を見えなくする
縮小化:対象の周囲も取り入れることで、対象を相対的に小さくする
被覆化:対象の一部を隠すことで、対象と認識できなくする
変形化:対象の形や性質を変化させることで、別のものと思わせる
抽象化:余分なものを取り除き単純化することで、新たな感覚で捉えさせる
実は、クリエイトの上手な人は、自然にこの6つのパターンのどれかを使っているのです。バイアスがかからないように、ゼロベースになれるように、自分なりに工夫しています。そのためのテクニックもたくさん存在しています。私の専門とするファンクショナル・アプローチは、「細分化」「変形化」「抽象化」を取入れているのです。
だから、固定観念に縛られている人よりも優れたクリエイションができるのです。思考のブレーキを外し、自由に動き回れるから、新規性、独自性の発見ができるのです。これが、クリエイトできる仕掛けなのです。
図1
もっとも簡単な問いかけ「誰のため?何のため?」
私はこれまで、「誰のため?何のため?」が、問題解決における重要な問いかけであると言い続けてきました。実は、この問いかけこそが、「抽象化」にあたります。現象や形状にとらわれず、本質や原点を意識させるからです。本質や原点は、そもそもの目的であり、本当は何がしたかったのかを考えるきっかけを与えてくれるからです。
同時に、クリエイトできる仕掛けの2つ目のポイントにもなるのです。つまり、創造性を刺激する仕掛けです。過去に向かう思考から、未来に向かう思考に180度意識を変える魔法の言葉でもあります。あるべき姿をイメージしやすくなるのです。
クリエイティブな活動を、オペレイティブにしてはいけません。逆に、オペレイティブな活動にクリエイティブを持ち込んでもいけません。ビジネスにおいて、クリエイトとオペレイトを使い分ける必要があるのです。オペレイトのみの教育訓練をしていると、クリエイトできない人材になってしまいます。イザというとき、何も創り出せないのです。
私たちは、クリエイトの科学的アプローチを身につけるべきなのです。今の時代、そういうスキルが求められます。そしてそういう人材開発に力を注いでいる企業が生き残っていくのだと思います。他人に任せるのではなく、自らクリエイティブになってください。
図2
「誰のため?何のため?アソシエーション」(略してDNA):まず2つの問い掛けから改善のきっかけを得ようとする、横田尚哉が提唱している活動とそれに賛同した人たちの総称。
横田 尚哉(よこた・ひさや)
株式会社ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役社長。顧客サービスを最大化させる経営改善コンサルタント。
世界最大企業・GE(ゼネラル・エレクトリック)の価値工学に基づく改善手法を取り入れ10年間で総額1兆円の公共事業改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現させる。
「30年後の子供たちのために、輝く未来を遺したい」という信念のもと、そのノウハウを潔く公開するスタイルは各種メディアの注目の的。人間ドキュメンタリー番組「情熱大陸」(毎日放送)にも出演し大きな反響を巻き起こす。
全国から取材や講演依頼が殺到し、コンサルティングサービスは約6ヶ月待ち。「形にとらわれるな、本質をとらえろ」という一貫したメッセージから生み出されるダイナミックな問題解決の手法は、企業の経営改善にも功を奏することから「事業改善」「チームデザイン」「組織改善」の手法としても注目が高まっている。
著書に『問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門』『ワンランク上の問題解決の技術《実践編》』(ディスカヴァー刊)、『ビジネススキル・イノベーション』(プレジデント刊)がある。
「明日の決定学」
経営とは、未来の行動を決定することです。過去の行動を調べ上げることでも、現在の行動を徹底追及することでもありません。社員が、そして企業が、未来にどのような行動を取ればいいかを決めていくのが経営です。過去にとらわれず、現在に縛られず、向かうべき未来を見て、感じなければなりません。これが「明日の決定学」です。
このことは、経営だけではないのです。普段の仕事でも、プライベートでも、日常の決定と、「明日の決定」があるのです。本を読んでも、人に聞いても、ネットで調べても、誰も決めてくれない自分の明日は、自分で決めなければならないのです。
筆者は、これまでも『長期計画の作り方が分かるようになる「感性」「知性」「理性」』、『80年周期のサイクルで世の中を観てみる』、『2012年度は経営指標が使い物にならない』などで、その重要性を伝えてきました。10年後、30年後を見すえた時代のうねりを感じるようにならなければならないのです。
本コラムでは、これからの時代を担う方のために、これまで見えなかった大きな潮流を読み取るコツをつかんでいただきたいと思っています。日常の喧騒から少し離れ、物事の本質を感じとれる力を身につけてもらいたいのです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130416/246720/?ST=top
【最終回】 2013年4月17日 辻太一朗 [大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表]
大手企業が「大学の成績」を選考で使えば
日本の大学生は勉強するようになる!
?昨年の10月より、現在の日本の就活にかかわる様々な「不機嫌な現象」を説明してきました。それでは、現在のような学生にとってあまりにも無駄や理不尽なことが多い就活の問題は、どうすれば解消できるでしょうか?
大学の成績が役に立たない!
それこそが「負のスパイラル」の原因
?一般的には、こうした事態に陥っている原因として「企業が悪い」と言われたり、「大学が悪い」と言われたりする場合があります。しかし、それは間違いです。日本の就活にかかわる仕組みは、大学生にとって“不機嫌”であると同時に、企業にとっても、大学にとっても“不機嫌”なのです。そして、このようなおかしな状況が何十年も続いているのが現状です。
?これらの“不機嫌な状況”を作っているのが第2回でお話しした「大学教育と就職活動の間に起こっている負のスパイラル」になります。
?では、改めて「負のスパイラル」について簡単に説明しましょう。
?企業は、大学の成績を採用選考時に参考にしない。それによって、大学生は簡単に単位の取れる授業を選択し、その余った時間を課外活動に費やすほうが、メリットがある。そうすると教育に真剣な大学教員より、適当な授業で簡単に単位を出す授業をする教員の方が学生に人気が出やすい。その結果、授業の質は下がる傾向になり、より成績は企業にとって参考にならない。大学の成績が参考にならないので、企業はまず多くの応募者を集めて、独自のテストや面接に力を入れる必要がある。独自のテストや面接をクリアするために、学生はより課外活動に力を入れる――。
?このような流れになっています。詳しくは、第2回をご覧ください。
?では、なぜこの「負のスパイラル」は起こるのでしょうか?
?元凶になっているのは、「社会全体の大学の成績に対する期待感の低さ、信頼感の欠如」です。企業は、大学の成績を信頼していないから参考にしない。学生は、大学の成績を上げても何も得をしないため、成績に対する期待感が低い。大学教員も厳正に成績を評価する必要性を感じていない。
?このように当事者三者、もっと言えば社会全体の大学成績に対する信頼感のなさが、「負のスパイラル」を起こし続けています。
?少し言い方を変えると、今の日本は、大学生が学業に力を入れても報われない。そして、大学教員が教育に力を入れても報われない社会になっていると言えます。
?これを「変える」とは、大学生が学業に力を入れること、大学教員が教育に力を入れることが報われる社会にするということです。そのためには、成績に対する信頼度を上げることが必要なのです。
成績表は大学ごとにバラバラ
企業が成績を活用するためには
?成績の信頼度を上げるためには、まず企業が成績を採用活動で活用する努力をはじめることが必要です。今は、成績が信頼できないから活用しないという企業がほとんどです。しかし、負のスパイラルの構造の中で、企業が成績を活用し始めなければ、大学生は学業に力を入れても報われません。そうなると大学教員も、教育に力を入れても報われないのです。
?そこで、特に社会的な責任の大きい大手企業には、すぐにでもどうすれば成績を採用に活用できるのかを模索していただきたいのです。「信頼できないから活用しない」ではなく、社会構造の変化のために、活用する方法を模索する。それができれば、厳正に学生を評価している教員の成績に注目することが重要です。
?ただ、企業が大学の成績を活用するべきだとは言っていますが、大学の成績は、成績段階も、また表記の仕方も「A」「B」「C」や「秀」「優」「良」など大学ごとにバラバラ。また、どの先生が厳正に評価をしているかもわからない。また、成績表の体裁もバラバラです。
?つまり、企業にとって大学の成績は、活用するにはあまりにも有効な活用方法がわからないうえに、統一化させて評価するには手間のかかるものでした。
?私が代表をつとめているNPO法人DSSは、就活の「負のスパイラル」を解消することを目的に活動しています。そこで、少しでも企業の成績活用の負担を下げ、活用方法を模索しやすくするために、企業が簡単に応募者の大学成績を集められるようにし、統一のフォーマットや統一のGPA的な平均点の算定等をして、企業にとって編集しやすいデータで企業に提供するサービスを今年の6月から無料で提供する予定です。これによって、企業は大学の成績を格段に活用しやすくなるはずです。
いい授業を取得→いい就職ができる
1〜2年で学生に広まる可能性も
?企業が成績を活用しはじめ、それもいい授業や、厳正な評価をしている授業に着目するようになると、学生はそのような授業を取得して、その成績を向上させることが就職を考えたうえでメリットになります。学業に力を入れることが報われるようになるわけです。
?このような学生の動きは、企業が動き出すと1〜2年で相当進むと思われます。なぜなら、就職活動中の企業の選考方法に関する情報や噂の伝播のスピードと広がりのすごさは、相当なものがあるからです。そして、就職活動に関する情報は、就職を控えた下級生の間でも瞬く間に広がります。
?重要なことは、大学生の中で「大学の成績も参考にする企業が増えてきている。それもよい授業や厳正に評価している授業の成績を気にしているらしい」という評判が広がることです。
?そうなると、大学生は楽な授業よりいい授業・厳正な評価をする授業を選択し、単に単位を取れればいいのでなく、真摯に授業に取り組み、良い成績を上げるように力を入れます。すると、学生はこれまでは敬遠されていたような厳正な評価をしている教員の授業を選択し、そのような教員の授業では学生が真摯に取り組むようになります。要するに、大学教員が教育に力を入れることが報われるようになります。
?このような環境が整ってくれば、教育に力をいれる大学教員が増え、授業の質や評価の質がおのずと上がってきます。
?こうした流れができれば、全体的に大学成績の信頼度が高まり、企業にとって採用選考時に大学成績を活用することがより有効になっていきます。結果的には、大学成績を活用したほうが効果的な採用選考ができるので、活用しはじめる企業は増えていきます。
?これらの流れによって、「負のスパイラル」はおのずと「正のスパイラル」へと変わっていくのです。
学生が学業に力を入れるには
大手企業の協力が絶対条件
?この流れを作るためには、企業、それも社会的な影響が大きい大手企業が成績を活用しはじめる動きがどうしても必要です。私自身も大手企業の人事責任者にこの流れを説明し、協力を要請し続けてきました。大学生が学業に力を入れることが報われるような社会にすることに賛同いただき、協力を約束してくれる方もおられます。しかし、自社の採用のメリットが高くないということで、協力したくないというような人事責任者の方も多くおられることのも事実です。
?しかし、大学生が学業に、大学教員が教育に力を入れても報われない構造を残したままで、無駄の多い就活の問題も、大学教育のレベル低下の問題も解決するはずはありません。
?例えば、就職活動の開始時期だけを変更しても、大学生が学業に力を入れるでしょうか?過去もそうだったように大手企業を中心に、水面下での採用活動が横行し、そして徐々に選考時期が早くなることは目に見えています。
?大学生が学業に、大学教員が教育に力を入れることが報われる環境を作ることは、社会としての環境基盤の整理です。この基盤環境が整理されてはじめて、大学、大学教員、企業、学生がそれぞれの価値感や考えで行動することが、社会にとってもプラスの方向につながるのです。
?繰り返しになりますが、それにはまず、企業が成績を採用活動の参考にすることが絶対条件です。しかし、企業が行動しやすくする、また大学教員が今まであまり気にしてこなかった評価を厳正にしやすくするなどのために、政治が動くことも必要です。
?デフレスパイラルの解決も、政治によるリーダーシップが必要だったのと同じように、大学教育と就職活動の「負のスパイラル」を解決し、大学生が学業に、大学教員が教育に力を入れることが報われる環境を整えるためにも、政治にリーダーシップをとっていただきたいと思います。
<お知らせ>
3月29日、新刊『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』(東洋経済新報社)を上梓いたしました。東大・慶應・早稲田などの一流大学の学生も例外なく「勉強しない」状況を生み出す構造を解き明かし、改善策を提案しています。よろしければ、ご一読ください。
http://diamond.jp/articles/print/34766
【第1回】 2013年4月17日 矢作直樹
医師である私が、なぜ魂や「あの世」の存在を確信したのか
医療現場でときに遭遇する、医学常識の通用しないケース。その中には、魂や「あの世」の存在を示唆し、人は死ねばすべて終わりではない、ということを教えてくれるものがあります。
さらに、世界中で、人の魂が輪廻転生していることを信じざるを得ないような事例が数多く報告されているという現実があります。
医療の現場では?
ときに医学では説明のつかない現象が起こる
?医師となって30年余りとなる私は、救急・集中治療の現場をやってきたこともあり、大勢の方が逝く場面に立ち会ってきました。
?家族に見守られながら眠るように逝く方、苦しみながら亡くなる方、誰も面会に来ず医療スタッフだけに看取られる方、事故で運ばれて意識のないまま逝く方……、人のエンディングというのは、実に多様です。
?人は生きてきたように死ぬ、という言葉がありますが、それをどう解釈するかは皆さんにおまかせするとして、ここで一つ絶対と言えることがあります。
それは、「誰もが必ず肉体死を迎える」という事実です。
?私は医師であると同時に、魂もあの世も理解していると思っている人間です。「大いなるすべて」と解釈している神の存在も同様です。だからといって、何か特定の宗教や宗派の信者ではありません。
?私は死に関して、「肉体死を迎える」と表現しています。
?私たちの魂はこれまで連綿と続き、そして私たちの死後も連綿と続きます。その意味では「死なない」ということになりますが、私たちの肉体は期限が来ればすべて確実に滅びます。
「人は死なない」とは、そういう意味で「死なない」ということです。魂は滅せない、という意味であるとご理解ください。
?医療現場に携わるようになって驚いたのは、私たち医師が知っていること、わかること、できることは、残念ながらいまだ限られている、という事実でした。
?大学で医学を学び、臨床医として医療に従事するようになると、経験を重ねるにつれ、それまでの医学常識では説明がつかないことにもたびたび接するようになったのです。
?どんなに治療を尽くしても亡くなられてしまう方、それとは逆に、決して助かる見込みのないはずの重篤な患者さんが奇跡的な回復を遂げられたケース、果ては臨死体験といえるような事例なども経験し、いろいろなことを考えさせられました。そして、さまざまな報告や文献を読み、機会があれば気功や交霊なども実体験してみたのです。
矢作直樹(やはぎ・なおき)
東京大学大学院医学系研究科救急医学分野教授および医学部附属病院救急部・集中治療部部長。
1981年、金沢大学医学部卒業。その後、麻酔科を皮切りに救急・集中治療、外科、内科、手術部などを経験。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻および工学部精密機械工学科教授。2001年より現職。
2011年、初めての著書『人は死なない』(バジリコ)が7万部を超えるベストセラーとなり、話題となる。
前世を語る人々?
ヴァージニア大学医学部教授による報告
?輪廻転生、前世の存在については、現在まで多数の文献等に報告されています。
?また、チベットのダライ・ラマ法王は何度も転生を繰り返しているとされ、その位の継承は、代々転生者(生まれ変わり)を探し出すことでなされています。法王が亡くなると、次に生まれ変わってくる方角などが予言され、数年後、それにあてはまる幼児を探し出すと、先代の遺品を選ばせたり、先代の身近にいた人物を見分けさせるなどして前世の記憶を試すのです。現法王も幼少時に、先代ダライ・ラマ13世の愛用していた数珠を見分け、側近の名を迷わず言い当てたと言います。
?しかし、輪廻転生や前世など、そんなものは迷信の一つであり、荒唐無稽なもの、と思われている方も大勢いらっしゃることでしょう。
?でも、ときには、それでは単純に片付けられないような事例も報告されているのです。
?近年で論文ベースになる報告を集めたものとして有名なものに、ヴァージニア大学医学部精神医学講座教授であったイアン・スティーヴンソン博士の著書『前世を記憶する子どもたち』(原題:Children Who Remember Previous Lives?日本教文社)があります。
?この中には数多くの事例が報告されていますが、印象に残ったものをいくつかご紹介します。
【コーリス・チョトキン・ジュニアの事例】
?チョトキン夫人は、アラスカで漁師をしていた伯父のヴィクターから「自分が死んだら、おまえの息子として生まれ変わるつもりだ」と告げられ、伯父の体にある2つの手術痕を見せられた。そして、ヴィクターは「生まれ変わったら、これと同じ場所にあざがあるはずだ」と言った。
?その伯父が1946年に亡くなると、その一年半後、チョトキン夫人は男の子を出産する。その子はコーリスと名付けられたが、彼の体には生まれつき母斑が2つあり、その部位はいずれも生前の伯父が見せてくれた手術痕と同じ場所だった。
?また、1歳になって間もないコーリスは、コーリスという名前を復唱させようとした夫人に、「ぼくはカーコディだ」と言った。カーコディとは、伯父ヴィクターの部族名である。これ以外にも、コーリス少年は、その行動や興味に伯父ヴィクターと瓜二つといった特徴を示したり、知るはずのないヴィクターの知人たちを見分けたりしている。
?しかし9歳になる頃には、前世に関することは話さなくなったという。
【スレイマン・アンダリの事例】
?1954年にレバノンに生まれたスレイマンは、幼少期に前世での子どもの数や名前、出身地がガリフェであること、搾油機を所有していたことを口にしたが、それ以上のことは思い出さなかった。
?だが、11歳になった時に、ある出来事をきっかけにガリフェの首長だった前世を思い出す。前世での名や、その生涯についても思い出した。
?スレイマンの親族が、彼の語る記憶の真偽を確かめにガリフェに行くと、思い出した前世の名と同じ名前の首長が12年前に亡くなっていたこと、搾油機の所有やその生涯がスレイマンの記憶と一致することなどがわかった。
?その後、ガリフェを訪れたスレイマンは、首長の家族こそ見分けられなかったものの、いくつもの関連する場所や人を見分けたり、その首長の特徴を示したりしている。
【ボンクチ・プロムシンの事例】
?1962年、タイに生まれたボンクチは、話せるようになるとまもなく、前世について話し始めた。前世での出身地やチャムラットという名前、その両親の名、そして自分が祭りの日に刺殺されたということまで語った。彼がこの自分の死の模様を口にしたのは、2歳の頃だという。のちに、この殺人事件が事実であったこと、ボンクチの語った犯人の名前などが一致していることが確かめられた。
?また、ボンクチには、タイ人らしくない変わった行動や食べ物の嗜好があったが、これはラオス人特有のものであった。また、ボンクチは家族には理解できない言葉を口にすることがあったが、これもラオス語であることが判明する。チャムラットの一家はラオス人だったのである。
?だが、成長するにつれて前世の記憶を語ることはなくなり、その変わった振る舞いもしだいに消えていった。
(以上、いずれも『前世を記憶する子どもたち』<イアン・スティーヴンソン著?笠原敏雄訳?日本教文社>より)
?しかし、以上のような文献等に報告された事例だけでなく、私の知人にも、過去生体験を持つ人が複数います。
?その中の一例をご紹介しますと、某病院の理事長であり、皮膚科・ホリスティック医療を行っている40代の女性医師は、エジプトを訪れた時に、ある神殿で、かつて自分がここで働いていたことを思い出したと言います。それだけでなく彼女は、初めて訪れたその神殿内の細部まで思い出したというのです。
亡き母との再会が確信させてくれた
「あの世」と死後の生
?ほかにも私には、母の死にまつわる不思議な体験があります。
?ある時、知人の紹介で母を交霊してもらう機会に恵まれました。つまり、死者となった母と会話したのです。
?母は、霊媒となった人の体を借り、私の問いに答えてくれました。母しか知るはずのない、これまで私が誰にも話したことのなかった詳細なども正確に話したのです。また、霊媒となってくれた知人の降霊中の口調や立ち居振る舞いは、母との面識がなかったにもかかわらず、驚くほど母の生前の特徴そのままでした。そこに母がいるのでは、と錯覚を起こしたほどです。
?それ以来、なぜか私には、不思議な安心感のようなものが生まれてきました。
?死に対する漠然とした恐怖感が消えたのです。
「あの世」という異界の存在を、さまざまな書物や人の体験談以外で知ったのもこの時です。
?この体験は鮮烈でした。文字や他人から聞いた話や、同じ交霊でも知らない人(霊)から知らされるのと、他界した肉親から目の前で知らされるのとでは大きな開きがあることも実感しました。
?同時に私は、「あの世」と呼ばれるようなものの存在があること、人は肉体死を迎えても魂は滅しないこと、つまり、見えない世界の存在に確証のようなものを得たのです。
?現在の科学力では解明できませんが、魂は存在します。
?私たちが死後に行く場所、一般的に言えば「あの世」と呼べるようなものも明確に存在しますが、いきなり全部は無理としても、少しずつこれらの事実を理解されると、私たちがこの世に生を受けた日から旅立ちの時、つまり生まれてから死ぬまでの年月が愛しく感じられます。
?すると、死という「お別れ」に関する逝く側、送る側それぞれの「作法」が、実に興味深いものへと変わるものと思います。
?輪廻転生があるからこそ、つまり「死後の生」があるからこそ、私は死というお別れには作法が必要だと思っています。
?次回は、「逝く人の作法」「送る人の作法」を紹介します。
4月18日更新予定です
http://diamond.jp/articles/-/34724
【第3回】 2013年4月17日 松澤萬紀 [日本コミュニケーションマナー協会・代表]
職場の女性を味方につける「7つのニオイ対策」とは?
ANA客室乗務員(CA)として12年。500万人のお客様の対応で気づいた、行動・言葉・気づかい・テーブルマナー・習慣とは?テレビ、新聞でも紹介された「100%好かれる1%の習慣」。第3回目は【職場の女性を味方につける「7つのニオイ対策」とは?】です
女性は特にニオイに敏感。
「自分が心地よい」=「相手も心地よい」とはかぎらない
?あるセミナーを聴講したとき、私の隣に座った男性から、「香水の強いニオイ」がしました。
?ほのかに感じる香りであれば、好感がもたれると思います。けれど、この男性のニオイは、ちょっと強すぎました。
?私は「香水アレルギー」ではありませんが、それでもこのニオイを嗅いでいるうちに、少し、気分が悪くなってしまいました。
?香水の香りが強すぎると、相手の気分を害することがあります。おそらくこの男性は、「香水のニオイが嫌いな人もいる」ということに、気がついていなかったのかもしれません。「自分が心地よい」=「相手も心地よい」とはかぎらないものです。
?異業種交流セミナーで知り合ったIさん(男性)は、生命保険の営業に携わっています。トップセールスマンとして、たくさんの顧客を抱えるIさん。
?私はIさんに、「人と接するときに、心がけていること」について、うかがったことがあります。
「常に笑顔でいる」「売り込まない」「どの年代でも理解できる言葉を使う」など、セールスのコツをいくつか教えていただきましたが、とりわけ印象に残ったのは、「消臭対策をしている」という点でした。
「とくに女性はニオイに敏感。体臭や口臭をできるだけ抑えるように気をつけている」というのです。
トップセールスマンのIさんが行っていた
女性を味方につける「7つのニオイ対策」とは?
松澤萬紀(まつざわまき)?
日本コミュニケーションマナー協会・代表。
幼少期よりCA(客室乗務員)に憧れ、8回目の試験で念願のCAに合格。ANA(全日空)のCAとして12年間勤務する。トータルフライトタイムは8585.8時間(地球370周分)。ANA退社後は、コミュニケーションマナー講師、CS(顧客満足度)向上コンサルタントとして活動。年間登壇回数は200回以上。総受講者数は、2万人以上。リピート率は97%に達している。また、読売テレビ「ミヤネ屋」への出演、毎日新聞にも掲載されるなど、メディアでも活躍中。
【オフィシャルHP】
http://www.matsuzawa-maki.com/
?具体的に、Iさんがどのような対策をしているのかというと…。
【1】口臭の原因になるので、お客様とお会いする前は、コーヒーを飲まない。カフェなどでお客様とお会いするときは、「紅茶」を頼むようにする(コーヒーの成分が口のなかに沈着して、独特のコーヒー臭になるそうです)
【2】訪問先でコーヒーを出された場合は飲み、次のお客様に会う前に、ニオイ消しのために駅のトイレなどで歯磨きをする
【3】タバコは吸わない
【4】歯ブラシと歯磨き粉をカバンのなかに入れておき、食後と打ち合わせ前に、毎回歯を磨く
【5】「携帯用の除菌・消臭スプレー」や「制汗スプレー」、「汗ふきペーパー」を常備して、ニオイを抑える
【6】汗をかきやすい夏場は、「着替え用のシャツ」と「替えの靴下」を用意しておく
【7】入浴時は、デオドラント効果のある薬用ボディソープで体を洗う
?私がIさんに「そうしたニオイ対策をする前に、人からニオイを指摘されたことがあったのですか?」と質問すると、「いいえ。どちらかというと、私は体臭は少ないほうだと思います」との返事。
?それでもIさんは、「ニオイは、目に見えなくても相手を不快にさせる要素がとても強い」と考え、人一倍、「消臭対策」に気を配っているそうなのです。
消臭対策は、「やりすぎかな」
と思うくらいでちょうどいい
?少し前の資料になりますが、1999年に経済産業省が「抗菌加工製品ガイドライン」をつくるためのアンケート調査を行いました(※1)。
その結果、「自分のニオイを常に気にしている」と答えた方は全体の42%にのぼったそうです。
?この数字は、「太りすぎないよう食事には気を使う」と答えた人(38%)よりも多い結果です。
「42%」という数字を、みなさんはどう解釈しますか?この数字を「多い」と思いますか?それとも「少ない」と思いますか?
?私は、「少ない」と思います。
?女性に比べると、男性はまだまだ「消臭対策」に消極的です。
?実際、「男性は、自分の体臭は少ないと思い込んでいる傾向があり、花王(大手化学メーカー)の社内モニター調査では、実際にはかなり強めの体臭を持つ男性でも、自分はニオイがあまりないと過小評価しているケースがあった」そうです(日経トレンディネット参照:2008年9月)。
?消臭対策に、「やりすぎ」はありません。むしろ「やりすぎかな」と思うくらいでちょうどいいのです。
?口臭や体臭は、自分では気がつきにくいし、周囲の人も、気を使って教えてくれないことがほとんどです。だとしたら、自分が臭くても臭くなくても、ニオイ対策をしておいたほうがいいと思います。
?せっかくあなた自身がすばらしいのに、「ニオイで人が遠ざかる」ようなことがあったら、本当にもったいないと、思いませんか。
(※次回の掲載は4月18日になります)
(※1:経済産業省製造産業局編「抗菌加工製品ガイドライン」生活関連新機能加工製品懇談会第一次報告)
【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】
価格:¥ 1,470(税込) 判型/造本:4/6並製 ISBN:978-4-478-01734-0
◆『100%好かれる1%の習慣』
?ANA客室乗務員として12年。500万人のお客様の対応で気づいた、行動・言葉・気づかい・テーブルマナー・習慣とは?テレビ、新聞でも紹介された「100%好かれる1%の習慣」とは?
?ほぼ100%に近い確率で、どんな人からも好かれるためには、「相手がどう思うか」「なにをすれば相手が喜んでくれるのか」を察する「相手を気づかう心」を持ち、それを言葉と行動に込める「習慣」を身に付けることです。ですが、その気づかいの習慣を持っている人は、わずかに「1%」でしょう。そして、やろうと思えばだれでも実行できる、たった「1%の習慣」です。
?本書では、「劇的に人生を好転させた人」たちが身につけている「1%の習慣」を、39個、ご紹介いたします。
http://diamond.jp/articles/print/34678
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