http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/576.html
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(回答先: 無策こそ、最上の策 選択肢 時間配分 上司なぜ誤解 クリエイティブになる 就業力 あの世 ニオイ対策 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 17 日 01:38:17)
40歳から細胞が変わる?
2013年4月19日(金) 安保 徹=新潟大学大学院医歯学総合研究科教授
今日の診察:体内細胞の変化と免疫力
人間の体は、40歳を過ぎた頃から体内細胞が変化し、瞬発力よりも持久力が増す。陸上競技で言うと、短距離より長距離の方が得意になるのだ。それにもかかわらず、若い頃と同じような働き方を続けていると、体に負担が生じ、大病を患う確率が高まる。病気にならないためには、生活習慣を是正するとともに、免疫力の向上が必須となる。
イラスト:市原すぐる
「気持ちは若い頃と変わらないのに、体がついていかない」。このように感じることは、中高年世代であれば誰もが経験しているだろう。体内細胞は40歳頃を境に変化する。これが、体に無理が利かなくなってくる大きな理由の1つだ。
人間の細胞には、糖を分解してエネルギーを得る解糖系優位の細胞と、有酸素呼吸でエネルギーを得るミトコンドリア系優位の細胞がある。解糖系優位の細胞はエネルギーを作り出す際の瞬発力が強く、ミトコンドリア系優位の細胞は持久力が強い。
人間の体は、40歳を過ぎた頃から、ミトコンドリア系優位の細胞が活発に働く。瞬発力よりも持久力が増し、陸上競技で言うと、短距離より長距離の方が得意になるのである。それにもかかわらず、若い頃と同じような働き方を続けていると、体に負担が生じ、大病を患う確率が高まる。
翌日に疲れが残るとか、体がつらいと感じたら、無理をし過ぎていると自覚し、静養してほしい。仕事であれ趣味であれ、やりたいことを続けていきたいのなら、できるだけ早いうちに生活習慣を是正すべきだ。特に病気にならないためには、免疫力の向上が必須となる。
交感神経の緊張に要注意
免疫システムを司る白血球には、顆粒球とリンパ球、マクロファージがある。顆粒球は細菌処理を、リンパ球はウイルスなど小さな異物を処理する。マクロファージは、白血球に占める割合は低いものの、ウイルスや細菌以外に、死んだ細胞の処理も行う。これら白血球は、交感神経や副交感神経といった自律神経との関わりが深い。
人生には思うようにいかないことが多い。それでイライラし不平不満を口にしていると、交感神経が緊張して血管が収縮し、血圧が上がり、狭心症や不整脈など循環器系の病気が起きやすくなる。アドレナリンが放出され、血糖値も上がる。
さらに交感神経の緊張は、リンパ球を減らし顆粒球を増やす。リンパ球が減ると、その働きが弱まって免疫力が下がる。極端な場合は、体内に常在するウイルスが暴れ出す。例えばヘルペスや帯状疱疹の発症は、その典型的な例である。
顆粒球の増加が原因で起きる病気もある。歯周病、痔、びらん性の胃炎など粘膜に生じる病気は、顆粒球の増加に関連している。顆粒球は、老化の原因となる活性酸素を放出している。もともと加齢とともにリンパ球は減り、顆粒球は増えていく。ただでさえ増加する顆粒球を、交感神経の緊張でさらに増やすのは避けたいものである。
働き過ぎやストレスなどで交感神経が緊張しがちなビジネスパーソンの場合、副交感神経が優位に働く時間をしっかりと確保したい。本来、人間の体は日が沈むと休息を求め、副交感神経が優位となってリラックスできるものだが、夜遅くまで仕事をしていては、交感神経からの切り替えがうまくいかなくなる。
副交感神経を優位にするには、ぬるめの湯に浸かるのが効果的。入浴の際はシャワーで済ませず、湯船でしっかり体を温めてほしい。また、筋力を高めると代謝がよくなって体温が上がり、リンパ球の働きが活発になる。強いストレスにならない程度の運動は、免疫力の向上に有効だ。
体を冷やす要因の1つには薬がある。必要以上に薬に頼り過ぎず、自己免疫力を高めることを心がけてほしい。免疫力を高めていれば、いたずらにガンを恐れなくても済む。今後の人生を豊かなものにするために、いま一度、自分の生き方を振り返り、仕事への関わり方、生活習慣や心の有り様を、見直してみてはいかがだろうか。(談話まとめ:仲尾 匡代=医療ジャーナリスト)
心と体(日経ビジネス2009年11月30日号より)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130415/246692/?ST=print
あなたは何歳で死ぬと思っていますか?
2013年4月19日(金) 高岡 浩三 、 おちまさと
チョコレートの「キットカット」やインスタントコーヒーの「ネスカフェ」などを販売するネスレ日本の高岡浩三社長兼CEO(最高経営責任者)は、父も祖父も42歳で亡くなったことから、自らの寿命も42歳で尽きることを覚悟して生きてきた。42歳を人生の「〆切」と定め、42歳からの逆算で人生を駆け抜けようと決めた結果、高岡氏は、今では1つの文化にまでなっているキットカットの受験生応援キャンペーンを成功させ、生え抜きの日本人として初めて社長に上り詰めた。
このコラムでは人気プロデューサーおちまさと氏のプロデュースで高岡氏が自らの考えを綴った初の著書『逆算力 成功したけりゃ人生の〆切を決めろ』の一部を掲載し、高岡氏の逆算の人生哲学を紹介する。
皆さんは何歳で人生を終えると思っていますか?
私、高岡浩三は42歳で人生を終えると思っていました。
日本人の平均寿命は、2011年時点で男性が79.44歳、女性は85.90歳。2009年に過去最高となった後、男女とも2年連続で短くなっているようですが、日本が世界屈指の長寿国であることは間違いありません。
これだけ長寿の国ですから、若い読者の皆さんであれば、まだ自分が死ぬことなど、考えたこともないかもしれません。40代前後の皆さんでも、「どんなに少なく見積もっても60歳ぐらいまでは生きるのではないか」と考えている人が多いのではないでしょうか。
もちろん、長生きは喜ばしいことです。生きていたいと思うことは生物として自然な欲求ですし、自分の親やおじいちゃん、おばあちゃんに少しでも健康で、長生きしてほしいと思うのも、ごく当たり前のことでしょう。
ただ、自分の人生を歩んでいくことを考えるとどうでしょう。特にこれから社会で活躍していく若い人たちとって、自分が80歳まで、つまりあと50年とか60年も生きると想像することは、あまりにもリアリティがないのではないでしょうか。
ただでさえ今の日本には閉塞感が漂っています。2012年12月に安倍晋三氏が首相に就き、マスコミなどで「アベノミクス」と呼ばれている経済政策を進めたことで、厳しさは多少やわらいでいるようです。しかし、日本経済はバブル崩壊以降、もう20年も低迷したままなのです。しかも、少子高齢化が進み、人口が減り始めています。このような状況の中では、10年先、20年先はおろか数年先の未来さえ想像できない、という人も多いかもしれません。
80歳まで生きるとして、自分がどんな人生を送るのか――。それを考えるには、日本人の寿命はあまりにも長すぎるのではないかと、私は常々考えています。長すぎるために、具体的な人生設計をなかなか立てることができない。具体的な人生設計を立てることができないために、結果的に人生がなんとなく過ぎていってしまう。大げさな言い方をすれば、このような人生の集合体が今の日本経済を形作っているのではないかと思うのです。
このような考えを持つに至ったのは、私が42歳で人生を終えるという哲学に基づいて生きてきたからです。
10歳の誕生日に、私の心の中に芽生えたこの哲学は、その後の人生に大きな影響を及ぼしました。勉強、就職、仕事、結婚、そのほかあらゆる人生の局面において、そのことを意識しなかったことはありません。42歳で死ぬということは、平均寿命まで生きる人の半分ほどしか生きられないということです。皆さんも想像してみてください。自分が42歳で死ぬことを。
80歳まで生きることを想像した時にはあれほど長いと思えた人生が、途端に短く感じられたのではないでしょうか。また、既に42歳を超えている方であれば、自分のこれまでの人生を振り返ったかもしれません。あれもこれもまだ何もやっていないと。
私は42歳が自分の寿命だと考え、そこから自分の人生を逆算して組み立てていきました。普通の人の半分の人生の中で、何をして、どのように生きるのかということを考えたのです。自分で42歳を寿命だと決め、人よりも凝縮した人生を送ろうとしたことによって、失敗を恐れずチャレンジすることができました。どのみちもういなくなってしまうと考えれば、なんでもできるのです。そのチャレンジのおかげで、結果を出すことができました。
私は今、53歳です。自分の寿命だと決めてきた42歳より、既に10年も長く生きています。生きているというか、生かされているという感覚でしょうか。だから今は私を育ててくれたネスレ日本という会社を日本一の企業にしたいと思っていますし、私が生まれ育った日本という国に貢献したいと考えているのです。
では、私がなぜ42歳で死ぬと思うようになったのか。それを知るには私の生い立ちに少しお付き合いいただかなくてはなりません。
日本人の寿命は長い。
そのために具体的な人生設計を
なかなか描くことができない。
逆算力 (成功したけりゃ人生の〆切を決めろ)
日経ビジネスの最新刊
『逆算力 成功したけりゃ人生の〆切を決めろ』
父親も祖父も42歳で鬼籍に入った。
自分もきっと――。
そして、42歳を〆切にした人生を歩むと決めた。
日本的経営で圧倒的な利益をかせぐネスレ日本。
100年の歴史で日本人初の生え抜き社長となり、
伝説の「受験にキットカット」キャンペーンを
生んだ男の倍速人生論。
おちまさとがインタビューを重ね、
完全プロデュース。
ネスレ日本社長 高岡浩三の「逆算力」 成功したけりゃ人生の〆切を決めろ
国内の食品メーカーとしては異例とも言える高い営業利益率を誇るネスレ日本。社長兼CEOを務める高岡浩三氏は、もはや伝説となった「受験にキットカット」のキャンペーンを手がけ、ちょうど100年となる同社の歴史の中で、日本人の生え抜き社員として初めて社長に就いた。
成功の背景にあったのは、42歳を人生の「〆切」とする独特の人生哲学。人気プロデューサーおちまさと氏のプロデュースにより、高岡氏が自らの哲学を綴った初の著書「逆算力 成功したけりゃ人生の〆切を決めろ」から一部を抜粋して掲載する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130417/246831/?ST=print
「若手の扱い方が分からない…」 先輩社員の悲痛な叫び
日経ビジネス独自調査に見る、社員教育の実体と「ブラック企業」との付き合い方
2013年4月19日(金) 瀬戸 久美子
日経ビジネス4月15日号「それをやったら『ブラック企業』〜今どきの若手の鍛え方〜」特集に合わせてスタートした、このオンライン連載。1回目はファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、若手社員の教育方針について語った(リンク:「甘やかして、世界で勝てるのか」)。2回目は飲食チェーンのワタミで陣頭指揮を執る桑原豊社長が、今の思いを独白した(リンク:「我々の離職率は高くない」)。
第3回目となる今回は、2013年3月に日経ビジネスオンライン「NBO世論調査」内で実施した、ブラック企業や社員教育にまつわる調査結果をお伝えする。現場の声からは、若手社員の教育方法に戸惑いを覚える先輩社員の姿が浮き彫りとなった。
今回の調査は、入社4年目以上の社会人と、入社1〜3年目の若手社員(新入社員を含む)に分けて実施した。まずは、入社4年目以上の社員の意見から見ていこう。回答者のボリュームゾーンは35歳〜44歳。皆さんの意識と重なる部分が多々あるに違いない。
「仕事を甘く見ている」と思っても我慢…
始めに、若手社員への接し方や教育について聞いたところ、9割近い人が新入社員や就職活動中の学生などに「気を遣っている」という現実が浮き彫りとなった。
Q あなたの会社には若い社員がいますか
Q 新入社員や就職活動中の学生とコミュニケーションを取る際、あなた自身が「気を遣っている」と思うことはありますか
Q あなたはどんなことについて気を遣いましたか(複数回答)
さらに自由回答欄を見ると、ベテラン社員たちの困惑ぶりが見て取れる。「普段はなるべく優しく接する」「私生活のことなど、くだらない話をされても聞く耳を持つ」「怒らない」「明らかに間違っていても、肯定してから正す」。
こうした振る舞いの背景にあるのは、世代間における価値観のギャップだろう。その溝を埋めるには、本来の業務とは別の気遣いや心配りが必要なだけに、「気づいた点などあっても教えず、関わらないようにしている」といった意見もあった。
では、実際に職場で叱責しなくてはならない状況に陥った時、先輩社員たちはどう振舞っているのだろうか。再び、アンケート結果を見てみよう。
「放っておいても気づいてくれる」?
Q あなたは、入社3年目までの社員を叱責したことはありますか
Q 「ない」と答えた方に伺います。なぜ叱責しないのですか
Q 「必要な叱責をしないと本人は気づきを得られない」という考え方があります。その点について、あなたはどう思いますか
●その他で多かった意見●
「戸惑っている自分がいる」「仕事をする機会がない」「面倒だから」「何が悪かったか考えてもらうような説明をして納得してもらうから」「気づいた点は本人ではなく、指導者に対して叱責するようにしている」「自分も未熟であり、叱責できるような立場にないと思うから」「パワハラと言われる恐れがあるから」「本人に、真摯に受け止める姿勢が見られないので」「信頼関係がまだ高いレベルではないから」「自身が過度に叱られた経験があり、人を叱ることができない」
Q 「ある」と答えた方に伺います。あなたは、どんなことについて叱責しましたか(自由回答)
◇何度注意しても改善されなかったことに対して叱責。叱られているときは反省しているが、また繰り返す
◇遅延の報告が遅れて、後工程に迷惑をかけたことについて。自己中心的な理由が出てきたので、それについて客観視させると共に、後工程の立場への配慮を促した。「まったく見えていなかった」との反省の弁が返ってきた
◇突然の休みばかり取るので、会社員としての心構えを話した。話した内容については理解を示したものの、生活習慣的な部分はなかなか直らなかった
◇目上の協力会社の方に失礼な態度があり、立場を勘違いしないように叱責した。その場では謝罪させたが、批判される経験に乏しく、フリーズしてしまって困った
◇遅刻を叱責。直後は身に染みたように受け止めましたが、2〜3カ月で元に戻った
◇訪問先企業とのミーティングの席でガムを噛んでいたので叱責したところ、「捨てる紙がありませんでした!」と逆ギレされた。その後、彼女は他部署へ異動、すぐに退職した
叱責したら「パラハラ」呼ばわり
Q 「ある」と答えた方に伺います。あなたは、どんなことについて叱責しましたか(自由回答)
◇始末書を書かせたら、インターネット上の某サイトからコピペしてきた。珍しく声を荒げて叱責したが、態度が変わることはなく、こちらが諦めた
◇会社のPCを壊したため叱責したら、「こんなことで壊れるのが悪い」「こんな古いPCを妄信していていいんですか!」と詰め寄られた。その後も自分のミスを認めず、周囲のせいにし続けている。マネジメント層を巻き込んで対応すべきだった
◇指示した仕事をやっていないので注意したら、何で怒られているのか理解していない様子で、終始ポカンとしていた
◇案件を逃すまいと、クライアントに「何でもします!」といい、無茶な注文を個人レベルで受けてしまった若手社員。会社の信頼を失墜させかねない言動を慎むよう指導し、本人も反省していた
◇報告や連絡漏れを叱責したら、後日、同期との飲み会のネタとして扱われ無駄に終わった
◇取締役会の資料の締め切りを守らないまま飲みに行くと退社したので、呼び戻した。どれほど大切な会議か、資料が揃わないことで誰にどのような影響があるかを懇々と話した。高学歴で叱られ慣れていないせいか、言葉もなく青ざめていた
◇仕事に対するやる気が感じられなかったため、仕事への取り組み方や日々の態度について叱責した。その場ではポカンとしていたが、後日、人事部門に駆け込んで「パワハラを受けた」と訴えられた
コメントを見る限り、叱責して状況が好転したケースの共通項は「時間をかけて、相手が納得するまで説明する」ことにあるようだ。社会人経験の長さは勿論、仕事に対する価値観も異なる若手社員。「黙っていても分かる」ではなく「分かるまで教える」。一見、面倒なことのように思えるが、何度も同じことを注意するよりははるかに効率的かもしれない。
今回の調査では、若手社員との接し方について意見を聞くと同時に、「ブラック企業」に対する意識も調査した。次からは、消費者としてブラック企業とどう付き合っているのか見ていこう。
ネット上の「ブラック企業」情報には一定の信憑性が?
Q 「ブラック企業」と呼ばれる企業の製品やサービスを利用したいと思いますか
Q インターネット上の「ブラック企業」に関する情報には、間違いも含まれていると思いませんか
なお、上記2つの質問は、入社1〜3年目の若手社員にも聞いている。結果は以下のようになった。
Q インターネット上で「ブラック企業」と呼ばれる企業の製品やサービスを利用したいと思いますか
Q インターネット上の「ブラック企業」に関する情報には、間違いも含まれていると思いませんか
全体の傾向として、若手社員のほうがネット上の「ブラック情報」に対する信頼度が高いように見受けられる。それだけに、濡れ衣も含めてブラックとの評判が立たないようにするには、就活生や若手社員にブラックと受け取られない職場環境を構築することが重要だろう。
とはいえ、守り一辺倒、若手社員に「優しい」職場を作ればいいわけではない。次回は、アンケート調査を通じて寄せられた「トンデモ新入社員事件簿」のダイジェストと、そんな社員を上手に指導する方法を紹介する。題して「ブラック社員にならないために」。先輩社員のみならず、若手社員の皆さんにもぜひ読んでほしい。
2013年3月、インターネット上で調査。大学生516人、入社1〜3年目の社会人63人、入社4年目以上の社会人718人から有効回答を得た
瀬戸 久美子(せと・くみこ)
日経ビジネス記者。日経ホーム出版社に入社後、『日経TRENDY』(家電の実験に追われる)、『日経WOMAN』(働く女子のホンネを聞き続ける)を経て、日経BP社との合併を機に『日経ビジネス』へ。特技は女子の内なる悩みや不安を聞き、共感できる誌面に仕上げること(経済誌にどう生かせばいいのか未だ模索中)、裁縫。趣味は読書、歌うこと、ラグビー&箱根駅伝観戦
それをやったら「ブラック企業」
「ブラック企業」と言われることが、企業に深刻なダメージを与えるようになっている。ゆとり世代が続々と職場に入ってくるなかで、今どきの若い世代といかに接し、教育するのか。また「ブラック」と巷で呼ばれている企業のトップはその状況をどう見ているのか。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長とワタミの桑原豊社長が、その思いを語る。同時に読者が経験した「新入社員事件簿2013」を掲載。新入社員が巻き起こす「とんでもハプニング」に、先輩・上司はいかに対応すべきなのか。対処術も合わせて紹介する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130417/246836/?ST=print
【第13回】 2013年4月19日 西川敦子 [フリーライター]
“病院で死ねない人たち”が激増する!?
1県分の人口が消える未曽有の「多死時代」到来
年間170万人が死ぬ
「多死時代」の到来
?鹿児島の全県民と同じくらいの人口が、たった1年で消えていく――。
?国立社会保障・人口問題研究所によると、2011年の年間死亡数は125万人。ところが、2040年には166万人と、鹿児島県の人口170万人にせまる見込みだ。1918〜19年にスペイン風邪が流行したときはおおぜいの死者が出たそうだけど、この時ですら年間死亡数は150万人程度。それを超える人たちが死んでいく世の中になるってことだよね。
?医療の進んでいなかった頃の日本は、子どもがたくさん生まれるかわり、人々の寿命が短い「多産多死」の社会だったんだ。 その後、子どもが減り、医療の発達によってお年寄りが長生きするようになった。
?ところが、これから到来しようとしているのは「多死時代」。これまで、日本人が体験したことのない時代だ。いったいどんな時代なのか。山形大学大学院医学研究科?教授?村上正泰さんに教えてもらった
「自宅で死ねない」のに
病院から追い出される人々
?年間で亡くなる人が、今より40万人も増える――心配なのが「死に場所」だ。
?かつては自宅で家族に看取られ、臨終を迎える人が多かった。ところがだんだん病院で死ぬ人が増え、昭和51年には自宅死派を上回るように。今では、およそ80%もの人たちが病院のベッドで最期を迎えている。
?病院死が増えた理由のひとつが、医療技術の進歩だ。治る見込みのない死病にかかり、意識を失った状態でも、薬や医療器具で命をつなぐことが可能になった。
?もちろん理由はそれだけじゃない。
「家族がいない」「いても日中は働いているので、世話できない」など、最近はいろいろな“家庭の事情”がある。自宅に帰りたいのはやまやまだけど、そうもいかない人たちが大勢いるってことだね。未婚化が進んで一人暮らしの人が増えれば、今後は「自宅で死ねない人たち」ばかりになってしまう。
「それにもかかわらず病院に入院できる日数は今、どんどん減っているんですよ」
?村上先生は次のように説明してくれた。
?2012年11月現在の、平均在院日数(病院に入院している平均日数)は推計で30.9日だ。これに対し、2008年11月は34.2日。たった4年間で3日以上減っていることになる。それもそのはず。国は「平均在院日数の短縮(減らすこと)」をスローガンに掲げているからだ。
?お年寄りの入院が長引けば、その分、医療費がかさむ。75歳以上の高齢者にかかる1人当たり医療費は年間80万円超で、全年齢の平均29万円を大きく超えている。年をとればとるほど病気にかかりやすくなるんだから、当然の話なんだけどね。
標的にされた
“医療区分1”の患者たち
?平均在院日数を減らすにあたり、とくに国が問題視しているのが「社会的入院」だ。社会的入院とは、一般に「治療の必要があまりない人が長期間入院すること」とされているよ。
「どんな人が社会的入院患者に当たるのか、定義するのはとても難しいですが、現在、慢性期の患者さんが入院している療養病床で、めやすとしているのが“医療区分”です。医療の必要性が低いとされる“医療区分1”から、医療の必要性の高い“医療区分3”まで3つの区分がある。厚生労働省が社会的入院患者に該当すると考えているのは、基本的に医療区分1の人たちです」と村上先生。
?ただし、医療区分1の人びとが医療を必要としていないか、といえばけっしてそうではない。
?脳出血や脳梗塞、糖尿病の後遺症で片麻痺を抱えているお年寄り。食べ物がうまく飲み込めない人たち。胃ろうといって、胃に管を通して栄養を摂取する寝たきり患者。クモ膜下出血の後遺症で、関節がこわばり手足が動かない人たち。それに末期がん患者――。
「高齢化が進んだせいで、最近は医療ニーズの高い慢性期のお年寄りが増えているんです。
?でも、こうした人々がみんな、医療の必要性が低いか、といえばけっしてそうではありませんよね。それなのに、医療区分1の患者さんについては、2006年以降、診療報酬(医療サービスに対して医療保険から医療機関に払われるおカネ)が極端に下げられてしまいました。彼らを長いこと入院させておけば、病院としては経営が成り立たなくなってしまいます」
?もちろん、入院を必要としているほかの患者のためにも、病院のベッドは空けなければいけない。とはいえ、受け皿の体制が不十分なまま平均在院日数が減り続ければ、必要な医療を受けられないお年寄りが出てくるおそれがある、と村上先生。
じつはそれほど高くない
「死のコスト」
?これまで慢性期の患者の受け皿とされていたのが、「介護療養病床(以下、介護型)」と「医療療養病床(以下、医療型)」だった。このうち、介護型はすべて廃止されることになっている。めどは平成30年3月だ。
「介護型にいる人々のうち、医療の必要な人は医療型へ、介護が必要な人は介護老人保健施設へ行ってもらおう、というわけです。あるいは在宅で医療や介護サービスを受けてもらう。というわけで今、介護型の施設の中には、介護老人保健施設などに看板を掛けかえるところが出ています。
?ところが、1つ問題がある。介護療養病床と介護老人保健施設とでは、医療の手厚さが全然違うんです。たとえば、100人の患者・入所者に対し、介護療養病床では医師を3人配置しなければなりませんが、介護老人保健施設では常勤医師1人いればよいことになっています。そこで提供される医療の範囲も異なっている。
?介護療養病床の転換先として介護療養型老人保健施設というのを作りましたが、結局、多くの入所者が病院に逆戻りしています」
?慢性期とはいえ、必要な医療サービスを受けられなければ、症状は悪化する可能性がある。死ななくてすむはずの人が亡くなってしまうこともあるだろう。もっとも、今後は死ぬためのコストもなるべく削減しよう、というのが国の思惑なのかもしれない。
?1月21日に開かれた社会保障制度改革国民会議で、麻生太郎副総理は「(終末期の医療費は)月に一千数百万円かかる」「さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」などと述べた。
?じつはこれは誤りで、終末期医療にかかる費用はそれほど高いものではない、と村上さんは言う。東京都老人医療センターの調べによれば、死亡前1年間の1人当たり入院医療費は80代で約266万円だ。麻生副総理の話とはだいぶ違うね。
どこで、誰と、どんなふうに?
個人が「死に方」を考える時代
?平均在院日数を減らすことや、介護型療養病床をなくしてしまうことについては、賛否両論あるだろう。でもこのまま医療費が削減されていけば、いずれ、社会的入院患者は減っていくにちがいない。これまでのような「病院死」は、当たり前の死に方ではなくなるのかもしれない。
「もちろん、病院で死ぬことが幸せとは限りません。住み慣れた地域で生活の質にも配慮しながら最期を迎えたい、と願う人がむしろ多いのでは。在宅医療・介護を進めていくことは絶対に必要です。
?だからといって、入院医療や施設入所、在宅療養からどれか1つを選ばなければいけない、というわけでないのでは。二者択一的に捉えるのでなく、それぞれのよさをうまく利用すればいい。これからは、ひとりひとりの病状、健康状態やライフスタイルなどに合わせ、いろいろな医療、介護サービスを組み合わせるきめ細かな仕組みが必要になってくるはずです。
?たとえばサービス付き高齢者住宅のような、自分に必要な介護や医療サービス、食事や洗濯、掃除などの生活支援などを受けられる賃貸集合住宅なら、自分らしい生活が営める。
?ただ、今のサービス付き高齢者住宅は賃料が高く、ゆとりのない高齢者は入居しづらいのが現実。格差が広がりつつある時代です。もっと安い家賃で入居できる住宅を増やしていくべきではないでしょうか」
?しっかりとした医療体制、看取ってくれる家族に恵まれていたかつての日本。でもこれからは「病院で死ねない。でも自宅でも死ねない」という人たちが増えていく。どこで、誰と、どんなサービスを受けながら死んでいきたいのか?「多死時代」を迎えるにあたって、みんなが考えるべきときなのかもしれない。
むらかみ・まさやす
1974年広島県因島市(現・尾道市)生まれ。東京大学経済学部卒業後、大蔵省(現・財務省)入省。カリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・環太平洋地域研究大学院留学。財務省国際局調査課課長補佐、内閣官房地域再生推進室参事官補佐等を経て、2004年7月より厚生労働省保険局総務課課長補佐を務め、医療制度改革に携わった。2006年7月に退官した後、財団法人日本国際フォーラム所長等を経て、2010年2月より山形大学大学院医学系研究科教授(医療政策学講座)主な著書に『医療崩壊の真犯人』(PHP新書)、共著に『高齢者医療難民』(PHP新書)、『日本の医療行政と地域医療 (医療経営士初級テキスト2)』(日本医療企画)がある。
http://diamond.jp/articles/-/34894
【政策ウォッチ編・第22回】 2013年4月19日 みわよしこ [フリーランス・ライター]
生活保護は「恩恵」と発言した厚労相と
低所得層の実態把握なしに進む衆院予算委への疑念
――政策ウォッチ編・第22回
2013年4月16日に、平成25年度予算案が衆議院を通過した。予算案には、生活保護基準引き下げ方針によって削減された生活保護費が含まれている。
今回と次回は、子どもの貧困問題・生活扶助相当消費者物価指数(生活扶助CPI)をめぐる衆議院予算委員会での議論を中心に紹介する。予算案が衆議院を通過する直前に、どのような議論が行われていたのだろうか??現政権の閣僚・厚生労働省・総務省などは、どのような認識を表明していたのだろうか?
生活保護基準引き下げに
“ふつうの人”が抱くさまざまな感情
?まず、2013年8月からの実施が予定されている生活保護基準引き下げについて、「世間の声」のいくつかを紹介する。
「生活保護基準が下がるったって、生活保護の人たちが、私たちの払った税金からおカネもらって、働かずに生きていけることには変わりないんでしょ??減らされるといっても、おカネもらえるだけ、有難いと思ってもらわなくちゃ。ウチからヘルパーを派遣してる生活保護の障害者がいるんだけど、だいたい、ゼイタクすぎるのよ。都営住宅の、ふつうに賃貸で探したら家賃が10万円はかかる、きれいなバリアフリーの部屋に、家賃2万円で住んでるし。で、生活は、生活保護でしょ??私たち、真面目に働いてるのがバカらしくなるわよねえ」(女性・40代・介護事業所経営)
「恥ずかしながら、ウチの長男は精神的にちょっと弱いところがありまして。高校は、県立の中堅の進学校に進学したんですけど、クラスメイトとの人間関係にちょっと悩んだみたいで。それから不登校になって、そのまま高校を中退してしまいまして。その後、通信制の高校に編入はしたんですけれど、勉強、してるんですかね??ええ、引きこもっちゃってるんです。『生活保護の家庭や貧困な家庭の子どもに高校中退が多い』という話があるそうですけど、年収800万円で専業主婦の妻がいる家庭でも、変わらないんじゃないですか??ウチだって、大変なんですよ」(男性・40代・管理職)
「生活保護基準って、どういうふうに決まっているのか、実は良く知らないんですよね。でも、生活保護の人たちは、正直、『もらい過ぎ』だと思います。ムカつきますね。『ダイヤモンド・オンライン』の『生活保護のリアル』っていう連載は、著者が生活保護基準引き下げに反対なのが気に食わないんですけど、一応、読んでます。確か、厚生労働省に『生活保護基準部会』ってのがあって、そこで、偉い先生たちが議論して生活保護基準を決めるという話なんですよね。『貧乏な人の生活費が1ヵ月にどれくらいか』とか『貧乏な人は、何をどのくらい買っているか』とか調べて、何か難しい計算をした話が出てました。でも、今までと違う方法が出てきた話といえば、その難しい計算くらいでした。
?それから、あの著者が怒ってる『生活扶助相当CPI』っていう、貧乏人の物価は下がっているんだから、というアレ。どっちも、だから『生活保護費を引き下げていい』とまで言えるかどうかは、僕にも良くわかりませんでした。そもそも背景となる調査がちゃんとされているのかどうか、僕も気になってはいるんです。でもまあ、自公政権になったんだから、しょうがないですよね。引き下げに文句言わないでほしいです。生活保護の人たちとか、その人たちを支援している人たちの、自己責任なんですから」(男性・30代・エンジニア)
?いかにも、「あるある感」のある意見ではないだろうか?
田村厚生労働大臣の
ビックリ答弁
?冒頭の女性の意見は、筆者に対して、実際に「当てこすり」としてぶつけられたものである。平日の昼間、貧乏くさい服装で車椅子に乗って街のコーヒーショップなどでノートPCや資料を広げている筆者は、しばしば「生活保護を受給している障害者」と勘違いされてしまうのだ。残り2つの意見は、実際にコーヒーショップや大衆居酒屋で耳にしたことのある会話をもとに創作した。もちろん、以上のような意見を「ネット世論」として目にする機会は少なくないであろう。ネット世論だったら、見なければ済む。コーヒーショップや大衆居酒屋での当てこすりめいた会話だったら、イヤホンを耳に突っ込んで自分の聴きたい音楽を流し、耳を塞ぐことができる。
?しかし、現職の大臣が、国会議事堂の院内で、雑談ではなく公的な議論の場で表明した意見であるとすれば??さすがに、見なかったこと・聞かなかったことにするわけにはいかない。
2013年4月12日、山井和則議員(民主党)の質問に答弁する田村憲久厚労大臣(「衆議院インターネット審議中継」の動画よりキャプチャ)
?2013年4月12日、衆議院予算委員会で、田村憲久厚生労働大臣(自民党)は、生活保護基準切り下げ問題・子どもの貧困問題に関し、以下のように答弁した。
「あの、生保の方々はですね、あの、今回、生活扶助下がりますけれど、それによって、何らかの、今受けておるような、恩典といいますか恩恵が、なくなるわけではないんですよ、これ」(2:50:52)
「生活保護世帯での、高校中退または不登校の皆様方の理由を、若干調べましたけれども、勉強の不振・友人との人間関係がうまくいかないなどの、一般的な学生でもあるような理由でありまして、経済的な理由であるということではなかった、というふうに承知をいたしております」(2:32:50)
「調査と言われても、この資料自体が、まあ、非常に精緻にはしておりません、この(筆者注;厚生労働省の)サンプル調査。で、この1000という数字も、充分ではございません。で、そういうものを仮に使った調査をしたとしても、実際問題、生活保護世帯の消費実態、たとえば都市部に多いですとかね、高齢者世帯が多いというようなものに、そのまま適用できるような物価下落の数字が出てくるとは、われわれ思えませんので。これはなかなか、そのような形で調査をするというものには、値しないのではないかと。このように思っております。さらに申し上げますと、精緻なものを作ったとしても、実際問題、何に活用していくのかという問題があります」(3:15:15)
「衆議院インターネット審議中継」サイト。「ビデオライブラリ」では、審議の生中継だけではなく、過去の審議を見ることもできる
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?以上は、「衆議院インターネット審議中継」サイトの「ビデオライブラリ」で見ることができる。表情・声調も含め、ぜひ視聴していただきたい。上記発言の末尾に書いた数字は、動画中でそれらの発言が現れる時刻である。
?内容としては、前ページで紹介した3つの「世間の声」と同様あるいは類似の認識・感情を背景に持っている。傍聴していた筆者には、「呆れてモノが言えない」という体感があった。息を吸い込んだ状態で口呼吸が止まってしまい、声を出しづらくなる体感だ。特に、最初の発言に関しては、呆れ、かつ大いに驚いた。ある法曹関係者は「解任請求もの」とまで語っている。しかし日本には、市民が閣僚の罷免を請求するための制度は存在しない。
?では、なぜ筆者はこの発言に呆れ、驚いたか。日本国憲法第25条の「生存権」は、基本的人権であって、恩恵ではない。現職の厚生労働大臣が「恩恵」という用語を用いるだけでも問題だ。さらに、生活保護基準が切り下げられ、生活保護費が削減されれば、生活保護当事者の生活・健康維持・ひいては生命に大きな影響が及ぶ。社会保障費削減を国是としている状況で、財務大臣がそのような発言をするのならば、まだ理解の及ぶ範囲だ。しかし、「現在だけではなく未来にわたって、人や暮らしを守る役割を担っている」と自認し、
「ひと、くらし、みらいのために」
?をキャッチフレーズとする厚生労働省のトップの発言として、許容されてよいものであろうか?
?そして問題は、答弁の文言以上に、内容にある。
生活保護費削減でも
子どもの教育への影響はない!?
2013年4月12日、予算委員会で質問する山井和則議員(「衆議院インターネット審議中継」の動画よりキャプチャ)
?前ページで紹介した田村厚労大臣の答弁は、いずれも、衆議院の山井和則議員(民主党)・長妻昭議員(民主党)の質問に対して行われたものである。
?山井議員は、子どもの貧困・住民税非課税限度額の引き下げが低所得層の生活に及ぼす影響について質問した。冒頭、政府側に対して簡潔かつ明快な回答を求め、
「田村大臣、私、もう、この質問、何度も何度も繰り返し、子どもの貧困、生活保護の史上最大の、最大10%、平均6.5%の引き下げについて質問をさせていただいております」
?と発言した。繰り返し、根拠を明確にしての質問を行っているのに、繰り返し、明確な回答が得られていないのである。さらに山井議員は、実際には物価が上昇しているにもかかわらず、「デフレ」による物価下落を理由として生活保護基準の引き下げが行われていることを問題にし、
「国民は生活保護の適正化は求めておりますし、私も適正化はしっかりやらねばならないと思っておりますけれど、『貧困家庭の子どもたちのところを削れ』というふうに思っている人、あるいは、それに連動して『低所得者の給付をカットしたり自己負担をアップさせろ』ということまでは、国民も望んでいないと思っております」
?と補足した。本連載をお読みいただいている読者の方々の多くも、そう考えているのではないだろうか??
?山井議員は、民主党政権下で復活した生活扶助の「母子加算」について、母子家庭において、実際にどのように用いられ、どのような効果を及ぼしたかを、厚生労働省の調査結果から紹介した。その調査結果によれば、生活保護を利用している母子家庭の母親たちの母子加算の用途は、子どもの教育費(50%)・子どもの学校行事参加費用(50%)を増加させることであったという(複数回答あり)。また、母親たちの62%は、子どもの進学や学校行事への参加について、積極的に・やや積極的に考えられるようになったという。そして山井議員は、生活保護を利用している一母子家庭の母親が「高校授業料無償化と母子加算復活のおかげで、息子は大学に行けました」と喜びを語ったことを紹介した。
?そして山井議員は、母子家庭に対する生活保護費削減が、子どもの進学や学校行事参加に影響をおよぼす可能性について、田村厚労大臣に質問した。田村厚労大臣は、
「何度も申し上げておりますけれども」
?と前置きし、
「子どもの数が多い家庭、子どものおられる家庭を含めて、非常に、引き下げ幅が大きくなるではないかとおっしゃられていますが、その部分は、実はわれわれが政権をいただいてから決めたことではなく、民主党政権下で行われた検討会で、議論の中で出てきた結論においてそうなるわけで(中略)、(生活保護費引き下げ幅のうち)デフレ部分は、すべての家庭においてかかるわけであります」
?とし、地域・年齢・世帯人数による生活保護費の「ゆがみ」の是正によって、生活保護世帯間の公平性を図った結果である、と回答した。
?この「民主党政権下で行われた検討会で、議論」とは、政権党がどの党であるかとは無関係に、5年ごとに開催される「生活保護基準部会」のことである。本連載第11回でも紹介したとおり、基準部会報告書は、現行の生活保護制度において、地域・年齢・世帯人数の評価が実態に即していないことを確かに指摘した。そして、「だから生活保護基準は引き下げられるべき」と読めることは、何1つ提言していない。
?さらに田村厚労大臣は、教育扶助・高等学校就学費が引き下げ対象になっていないこと、学習支援などの対応を行なっていること、全体として、子どもたちへの教育は強化する方向であることを述べた。
?では、生活保護引き下げによって母子世帯の生活が苦しくなることの影響は、子どもたちへの教育に及ばないのであろうか??単純に考えて、生活保護世帯や母子世帯でなくとも、一家の収入が減少すれば、
「両親は深夜、家計簿を見ては暗い表情で何ごとかを相談しており、子どもたちは数多くのことがらを諦めなくてはならず、家庭内の雰囲気がどこかギスギスしはじめている」
?という状況が発生するであろう。そのことが、子どもたちにどのような悪影響も及ぼさないわけはない。
?山井議員も「一家の収入が減る」ことそものものを問題視した。そして、田村厚労大臣に「タテマエの話をしているんではないんですよ」と言い、真摯な回答を求めた。
不登校・高校中退と
子どもの貧困は無関係!?
?次に山井議員は、生活保護世帯で、高校中退率・不登校率が高いことについての質問をした。政府側が用意した調査結果は、匿名のA市の生活保護世帯と全国の比較であり、A市どうし・全国どうしでの比較ではないところに問題がある。田村厚労大臣は、比較対象として不適切ではないのではないかと留保しつつ、
「高校中退率が2.1倍、不登校に関しては、小学校が5.7倍、中学校が3.9倍、高校が2.1倍」
?と、いずれも生活保護世帯の方が高いことを認めた。ちなみに、A市の生活保護世帯の中学生の不登校率は、10.2%にものぼっている。深刻な事態である。ちなみに田村厚労大臣は、A市どうし・全国どうしでの比較を「難しい」という、その理由を「プライバシー」「世帯のさまざまな理由を知ることが難しい」としている。
?さらに山井議員は、生活保護世帯での高校中退の理由を問題にした。田村厚労大臣は、
「あの、まず、A市での、生活保護世帯での、高校中退または不登校の皆様方の理由を、あの、若干調べましたけれども、勉強の不振、友人との人間関係がうまくいかない、などの、まあ、一般的な学生でもあるような理由でありまして、経済的な理由であるということではなかった、というふうに承知をいたしております」
?と答えた。山井議員は
「中退や不登校が、経済的な理由ではないんだと。そういうタテマエの答弁は聞きたくないんです。経済的理由も関連しているに決まってるじゃないですか。やはり、経済的理由とか、さまざまな問題が複合しているんです」
?と、声と表情に怒りをにじませて語り、
「田村大臣は、日本の国の厚生労働大臣なのですから、そういう、実態と乖離した、タテマエの答弁はやめてほしいと思います。私の知り合いでも、経済的な理由で中退した人、いますよ。いるに決まってるじゃないですか」
?と、田村厚労大臣に自覚を促した。ちなみに、さまざまな要因が関係することがらで理由を調べるアンケートでは、通常は複数回答とする。また、「重要度順に5つ回答してください」という形式であることも多い。この高校中退・不登校の理由に関する調査がそのように行われたのであれば、理由の上位3位は「学業不振」「友人との人間関係」「経済的問題」であるかもしれない。
生活保護当事者の生の声を
田村厚生労働大臣に聞いてほしい
?議論はついで、生活保護基準の引き下げが波及する他制度、就学援助や介護保険料へと移った。ここでも田村厚労大臣は、
「今年度に関しては、影響はしませんよね」
?と述べたものの、今後に関して、
「波及はさせません。就学援助が受けられなくなる人は出ません。介護保険料の自己負担が増額される人はいません」
?と明言することはなかった。
?この議論の中で、山井議員は、低所得層一般の生活が苦しい中で、生活保護世帯に限って、「生活保護基準引き下げ」という形で影響をおよぼすことはイジメや差別ではないかと問題提起した。そして田村厚労大臣は、
「あの、生保の方々はですね、あの、今回、生活扶助下がりますけれど、それによって、何らかの、今受けておるような、恩典といいますか恩恵が、なくなるわけではないんですよ、これ」
?と発言したのである。
?傍聴していた筆者は、
「田村厚労大臣は、困窮者や生活保護当事者、特に生活保護世帯の子どもたちと直接接したことがあるのだろうか?」
?という疑問を持った。あくまでも、見ているものが資料にまとめられた数字でしかなく、生身の人間や暮らしではないとすれば、タテマエではぐらかす意図がなかったとしても、実感をもって本音として語ることは不可能であろう。
厚生労働省内にある、厚生労働大臣プロフィール。田村憲久厚労大臣のプロフィールが、座右の銘「我以外皆我師」とともに紹介されている
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?田村厚労大臣は、厚生労働省のサイト内にある自らのプロフィールで、座右の銘を、
「我以外皆我師」
?としている。もし、過去に生活保護当事者に相対したことがなく、その肉声を聞いたことがないのであれば、「師」として学んでいただくためにも、まずは接していただきたい。
「でも、機会がなくて」ということはないだろう。国会議事堂周辺に並ぶ議員会館では、多様なテーマで院内集会が開催され、政治家たちに学習と交流の機会を提供している。4月25日にも、生活保護問題に関して「緊急院内集会?生活保護引き下げのトリックは見破られた!〜「社会保障生計調査」を隠すのは誰?〜」が開催される。そこでは、生活保護当事者の発言が予定されている。集会後に、直接、接触する機会もあるだろう。その集会では、筆者も「生活扶助相当CPI」に関する発表を行う。自分自身の宣伝ともなってしまい、まことに恐縮ではあるが、ぜひ、田村厚労大臣に出席をお願いしたい。多忙な公務の合間を縫って一瞬だけでも、あるいは、政策秘書を派遣するだけでも。
?次回は、長妻昭議員の質問を紹介する。根拠も論理も何もかも、おそらくは意図的にあやふやにしたまま、2012年5月以来の「生活保護バッシング」の感情論に乗じる形で行われているのが、8月から実施を予定されている生活保護基準引き下げだ。
?日本という国の形・国民生活の根幹を定めているに等しい「ナショナル・ミニマム」、生活保護基準が、このように、ドサクサにまぎれて変動させられてよいのであろうか??7月の参議院選挙で、現政権に、現在以上の政治力を与えてもよいのであろうか?
http://diamond.jp/articles/-/34900
【第1回】 2013年4月19日 三浦由紀江
【第1回】
所長就任4年で
なぜ、売上を1億1000万円アップできたのか?
第190回NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(2012年8月20日放送)で取り上げられ、カリスマ駅弁販売営業所長として知られる三浦由紀江氏。なんと、10代〜60代まで、110人のパート・アルバイトを束ね、所長就任4年で売上を1億1000万円アップさせた。この間、就任4年目にはあの東日本大震災があった。東北新幹線という大動脈を命綱にする大宮駅の駅弁販売がメインだけにこの痛手はあまりにも大きい。でも、三浦氏は逆境にめげずに、1本370円のミネラルウォーター「はやぶさウォーター」を“復興の旗印”と自ら考案。震災後の4割減収のピンチを救った。
このたび、『時給800円から年商10億円のカリスマ所長になった28の言葉』を刊行した三浦氏に、売上が大幅アップした秘密を語ってもらった。
NHK『プロフェッショナル』で「前代未聞の人事」という反響
?私が上野駅や大宮駅などで駅弁を売っていると、よく、「三浦さん!『プロフェッショナル』見たよ!」と声をかけていただきます。
?2012年8月に放送されたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀?楽しむ心が、道を拓く?駅弁販売・営業所長・三浦由紀江』では、JR東日本グループのNRE(日本レストランエンタプライズ)大宮営業所長として働く私の奮闘ぶりが描かれ、たくさんの方から感想をいただきました。
「非常にパワフル。長い間、主婦をしてきた視点を活かして駅弁販売をしている。やっぱり仕事は楽しまなくちゃ」
「所長就任1年目に5000万円も売上アップさせた手腕は、持ち前のアイデアやチャレンジ精神のたまもの!」
?などのうれしい反響のほかに、
「専業主婦から44歳でパートになった。これはよくあること。働きぶりを認められて正社員になった。これもある程度ある話。でも、正社員になって1年後に赤字営業所の所長に抜擢されて管理職になった。これは前代未聞の人事!決めた会社上層部も、抜擢された三浦さんもすごい!」
?と、いうものがありました。
?まさに、そのとおりです。自分でも前代未聞だと思います。
?私は44歳まで専業主婦でした。
?それから駅弁販売のパートを始め、52歳で正社員になりました。
?私は、2007年3月26日を忘れることができません。
?私が50年以上生きてきたなかで、間違いなく10本指に入るくらいとんでもない出来事が起きたのです。
パートが正社員になって1年後に赤字営業所の所長に抜擢
?2007年3月26日、「社長面接があるから」と本社を訪ねると、社長室の隣にある応接室に通されました。
?社長、常務、勤労部長の机が並び、その前に私用の椅子が1つ用意されていましたが、社長の姿はありません。
?常務、勤労部長と一緒にしばらく待っていると、社長が部屋に入ってきました。
「形式張った面接は必要ない。三浦を大宮営業所へ行かせるって、もう決めたから」
?常務、勤労部長が慌てて、
「社長、そうは言っても三浦の考えを聞かないと」
「まずは管理職として適材かどうか話を聞きましょう」
?と口をはさみましたが、社長の意思は揺るがない様子でした。
「三浦しかいないんだ。大宮営業所の所長として大宮を変えてくれ。三浦の得意なところで勝負してくれることを期待している」
?呆然としている私に常務と部長は言いました。
「三浦さんならできるよ。パート時代から活躍は本社で有名だったんだ。パートから社員に引き上げるときも社長はすごく悩んだ。でも、結局社長は50歳の三浦さんを社員に引き上げ、なおかつ能力を認めて管理職にした。社長は自分の目で人をしっかりと判断する人だよ。社長が三浦さんを見込んだんだから大丈夫!」
?ありがたい言葉をかけてもらいましたが、やっぱり自信がありません。
「これからどうなってしまうのだろう」との不安から、帰りの電車の中で思わず涙が出てきたのです。
心の病気になる寸前の私を救ってくれた上司の言葉
?所長になった私はパニック状態でした。
?管理職としてデータ管理もしたことなく、パソコンも苦手。前任者からデータを引き継いでもチンプンカンプンでした。
?スタッフとの関係もギクシャク。
「大宮をなんとかしたい。そのためには自分の言うことを聞かせなくては!」と思うほど、スタッフに高圧的になりました。
?スタッフが当時を振り返って、「あのときの所長は毎日鬼の形相だった」と言うのですから、本当にひどいものです。
?結果として、どんどん孤立し、体も壊しました。
?ストレスで夜中に吐いたり、血尿が出たりするようになったのです。
?私のモットーは「仕事は楽しく!」ですが、それがまったくできません。
?それどころか、
「この場から消えてなくなってしまいたい」
?と思うようにすらなりました。
?でも、会社を辞めたら、私の能力を評価し、抜擢してくれた社長の顔に泥を塗ってしまう。だから辞められない。でも仕事からは逃げ出したい。精神的にも肉体的にも追いつめられ、心の病気になる寸前だったのでしょう。
?そんな私の窮地を救ってくれたのは上司の言葉でした。
「無理に一生懸命やらなくてもいいから、三浦さんの得意なことからやりなさい」
?この言葉に救われました。
?忘れていたことを思い出し、ジーンとしました。
?私が得意なのは、パソコンや数字とにらめっこしていることではなく、みんなが楽しく仕事ができる環境をつくることです。
?自分ができないことをやろうとしてもうまくいくわけない。
?自分ができないこと、わからないことはみんなに助けてもらえばいい。
?売上も改革も大事だけど、いちばん大切なのは「仕事は楽しく」やること。
?みんなが仕事を楽しんでいない限り、なにもうまくいくはずがない。
?そのことに気がついた瞬間、ものすごく気が楽になりました。
所長就任1年目で売上が5000万円アップした理由
?それからは自分らしく、仕事を楽しむことをいちばんに考えて、数えきれないほどの困難を乗り越えてきました。
?大宮駅構内の「駅弁屋旨囲門」は「エキュート大宮」という商業施設のなかにあり、周りには寿司屋、弁当屋、惣菜屋など、強力なライバルがたくさんいます。
?お客様に「駅弁屋旨囲門」で駅弁を買っていただくには、魅力的な駅弁を取り揃えておかなくてはなりません。
?そこで私は、地方の駅弁業者さんとタッグを組み、新しい駅弁を開発することにしました。
?地方の業者さんの厨房まで出かけ、とことん味見して、「売れる駅弁」をつくったのです。
?料理に関しては素人の私がプロの駅弁業者にどんどんダメ出しするのですから、駅弁業者も最初は驚いたでしょう。
?でも、専業主婦として23年間、家族や友だちに手間暇かけた手料理を振る舞ってきた私は、自分の味覚に自信がありました。
?なによりいろいろな駅弁を一生懸命に売ってきた経験があります。
「こんな駅弁は売れない」とか、「この駅弁ならすすめやすい」という直感は、駅弁業者より絶対に鋭いはずです。
?だからこそ、遠慮なく「これはおいしくない」「このお弁当は売れない」という率直な感想を伝えました。
?駅弁業者も私の熱意を買ってくれ、私の納得がいくまで何度でもお弁当をつくり直してくれました。
?その結果、とても魅力的な駅弁ができあがったのです。
?魅力的な地方駅弁をたくさん取り揃えた結果、私が所長に就任した1年間で売店全体の売上は5000万円アップ。2年目、3年目も3000万円ずつアップしました。
東日本大震災後の窮地を救った1本370円の「はやぶさウォーター」
?2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。
?日本全体に自粛ムードが漂い、大宮営業所の売上も大きくダウンしました。
?大宮営業所が管轄している鉄道博物館の売店は、入場者数が減った影響をもろに受け、駅弁を200個仕入れても50個くらいしか売れません。1日の売上が7万円程度の日も続きました。
?そこで私は開発途中だった「はやぶさウォーター」を推し進めることを思いつきました。
?新幹線「はやぶさ」は、震災のわずか6日前にデビュー。最高時速300キロ超で東京・新青森間を3時間でかけ抜けます。首都圏と東北の各都市がスピーディにつながると期待され、乗車予約が殺到していました。
?しかし、震災で「はやぶさ」は止まっていました。
「はやぶさ」と言えば、ロングノーズタイプの個性的なフォルムが特徴的です。
これを模したデザインの容器に入ったミネラルウォーターを販売して、“復興の旗印”にしようと思ったのです。
?しかし、会社は震災前から「はやぶさウォーター」に消極的でした。
?ペットボトルの型をつくるのに60万円程度かかりますから、売れなければ大損です。
?上司は「売上が低迷している時期にリスクを冒す必要はない」と言いました。
?それでも私は、「はやぶさ」を“復興の象徴”と信じ、
「いまやらなくてどうするんですか。日本の元気がなくなっちゃいますよ」
?と会社を説得し続けました。
1本370円の「はやぶさウォーター」が2万本完売!
?2011年5月3日、「はやぶさウォーター」が発売されました。
?価格は370円(税込)。誰もが「えっ?」と耳を疑いました。だって普通のミネラルウォーターは100円程度ですから、3倍以上の価格だからです。
?でも、「はやぶさウォーター」は初日から予想以上に売れ続け、10か月で2万本を完売しました。
「370円もする水がよく売れたね」と言われます。
?たしかに、「はやぶさウォーター」は375ミリリットル入りで370円。ミネラルウォーター500ミリリットルの平均的な値段は100円前後ですから、これだけ見るとかなり高く感じます。
?でも、「はやぶさウォーター」は、ただの水ではありません。
?新幹線ファンにとっては記念品であり、子どもたちにとってはおもちゃです。
?実際、飲み終わったあとに遊んでいる子がたくさんいました。
?そこに「はやぶさウォーター」がヒットした秘密があります。
?こうして東日本大震災のあった2011年は一時4割減収になりましたが、終わってみると、「はやぶさウォーター」の大ヒットなどで前年並みの売上をあげることができました。
?結局、私は所長就任後の4年間で売上を1億1000万円伸ばしたことになります。
?この業績は大宮営業所の社員、パート、アルバイトが一丸となって上げた数字です。
?大宮営業所は社員9人に対し、パート・アルバイトが110人という構成です。
?つまり、成功の秘訣は、パート・アルバイトの即戦力化にあるのですが、それについては次回お話しいたします。
次回は4月22日更新予定です。
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第190回NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で大反響!110人のパート・アルバイトを即戦力化する秘密!44歳で時給800円、52歳で正社員、53歳で大宮営業所長となり、就任4年で売上を1億1000万円アップさせた28の言葉。ギクシャクした人間関係修復のコツ、部下を動かす言葉、1%の偶然をチャンスに変える方法、モンスタークレーマーをファンにする言葉、使えるパート・アルバイトの採用法まで一挙公開!心の底から仕事が楽しめ、心が楽になる三浦語録が満載。ぜひ一度ご堪能ください。
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三浦由紀江(みうら・ゆきえ)
JR東日本グループの株式会社日本レストランエンタプライズ(NRE、旧・日本食堂)弁当営業部上野営業支店前大宮営業所長。現・上野営業支店セールスアドバイザー。97年、44歳時にJR上野駅の駅弁販売を開始。当時の時給は800円。52歳で正社員となり、53歳時に異例の抜擢で大宮営業所長となる。就任1年目で駅弁売上を5000万円アップさせ、年商10億円超を達成。以降、所長就任4年で売上を1億1000万円アップさせる。大宮駅限定のカリスマ駅弁を20種産み出すかたわら、9人の社員と110名のパート・アルバイトを束ね、6店舗を切り盛りするカリスマ営業所長として活躍。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」、TBS「応援!日本経済 がっちりマンデー!!」でも紹介された。
http://diamond.jp/articles/print/34512
女性政策にいよいよ「本気」になった日本政府?
もはや不可欠、やり方次第ではEUにも勝てる
2013年4月19日(金) 磯山 友幸
民主党政権時代、最も「軽い」大臣ポストの1つが男女共同参画担当大臣だった。3年3カ月の間にこのポストに就いたのは官房長官の事務代行を除いても8人。少子化対策担当大臣の9人に次いで頻繁に交代したポストだった。
男女共同参画担当という大臣が初めて置かれたのは森喜朗内閣時代の2001年。主として官房長官の兼務ポストだったが、第1次安倍晋三内閣で内閣府特命大臣として上川陽子氏が任命された。以後、中山恭子氏、小渕優子氏と引き継がれた。自民党時代はほぼ1内閣1人だった。民主党も最初は女性議員の福島瑞穂氏を据えたが、その後は他の大臣の兼務ポストとなり「たらい回し」の状況になった。民主党はイメージとは違って「男女共同参画」や「少子化対策」を政策としてはあまり重視していなかったということなのだろう。
安倍内閣になって、がぜんこのポストの重みが増している。第1次安倍内閣同様、女性議員を大臣に据え、少子化対策と消費者及び食品安全担当を兼務させた。任命されたのは森まさこ参議院議員である。
実は「男女共同参画」や「少子化対策」は、経済の再生を目指すアベノミクスと密接に関係している。関係しているというよりもアベノミクスの主要政策の1つと言ってもいいものなのだ。
昨年末、安倍自民党が総選挙を戦った際、政権公約の細目である「自民党政策BANK」を公表した。その中に、「女性力の発揮」という項目があるのだ。それも「経済成長」の具体策の1つとして盛り込まれている。そこにはこう書かれている。
「にぃまる・さんまる」に込められた目的
「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標(“20年30%”〈にぃまる・さんまる〉)を確実に達成し、女性力の発揮による社会経済の発展を加速させます」
この「にいまる・さんまる」という数字自体は、民主党政権時代の2010年に作られた男女共同参画基本計画に盛り込まれていたもので、安倍自民党のオリジナルというわけではない。だが、安倍首相は自らの強いリーダーシップで実現に向けて具体策を打っていこうとしている。その背景には、アベノミクスの目的がある。強い日本経済の再生には女性力の活用が不可欠だという認識がある。
安倍氏の「本気度」は政権発足直後の人事にも表れた。前述の通り、男女共同参画担当相に森氏を起用したほか、規制改革担当相に稲田朋美氏を当てた。首相を含む19人の閣僚のうち女性が2人というのは、民主党政権時代を通じて「標準的」な水準だが、党人事ではサプライズを演出した。自民党の3役人事で、政調会長に高市早苗氏、総務会長に野田聖子氏を抜擢したのだ。
自民党3役に女性を当てたのは野党時代の小池百合子・政調会長の例があるが、与党としては初の起用。しかも3役のうち2人、つまり「過半数」が女性というのは自民党の歴史始まって以来の初めての事である。当選回数でみれば適齢期とも言えるが、2人とも無派閥。総裁の決断がなければ実現できない人事だった。記者会見で安倍氏は「女性の力を生かしていく。自民党が変わったことを理解していただけるのではないか」と述べた。
「女性力の活用」を具体化する政策づくりも始まった。政権交代直後に打ち出したのが、女性の雇用や幹部への登用に積極的な企業から優先的に国が備品や資材などを購入するという特例法案だった。
さらに政策会議として「若者・女性活躍推進フォーラム」を設置。2月13日には首相官邸で初会合を開き、首相自ら出席。こう挨拶した。
「この会議は、産業競争力会議、日本経済再生という文脈の中でお集まりいただいた。経済を成長させていく上で、若者と女性が主役であり、かつ、その成長の果実をしっかりと享受できるようにしていかなければいけない。ご議論いただいたことを産業競争力会議に報告をしながら、皆様の案を具体的な成果としていくよう、力を尽くしていきたい」
つまり、安倍内閣の目玉として設置した日本経済再生本部の下で「成長戦略」を検討している「産業競争力会議」の一部という位置付けなのだ。
長年の障害「幼保一元化」
実際、5月にもまとまる産業競争力会議の「成長戦略」では、特区などの形で一気に改革を進める方向性が打ち出される見通しだが、その中にも「女性力活用」の長年の障害に対する打開策が盛り込まれる方向だ。長年の障害というのは、「幼保一元化」問題である。
女性が仕事をしながら子どもを生み育てようとすると、最大のネックになるのが仕事中の育児問題だ。長時間子どもを預かる保育園へのニーズは高いが、定員に空きがなく入れない子どもも多い。いわゆる「待機児童」である。これを打開する方法として少子化で定員に余裕のある幼稚園を活用しようというのが幼稚園と保育園の一元化、いわゆる幼保一元化問題だ。
ところが、幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省、男女共同参画や少子化対策は内閣府と担当官庁がバラバラ。役所の縦割りに厚生族、文教族といった族議員の抵抗も加わり、話が前に進まないのである。
産業競争力会議では「霞が関特区」というアイデアが浮上している。幼保一元化問題に対して時限的に3省庁の権限を1つに集約、一気呵成に改革を実現してしまおうというものだ。
ではなぜ、産業競争力会議が女性力活用を大きなテーマだと捉えているのだろうか。
1つは労働力不足である。
このほど総務省がまとめた2012年10月末現在の推計人口を発表したが、定住外国人を含んだ総人口は1億2751万5000人と、前年に比べて28万4000人減少した。減少幅は過去最大となった。また、65歳以上の人口が初めて3000万人を超えた。少子高齢化が進み、労働力人口の減少がはっきりしてきたのである。経済成長には労働力人口の増加(もしくは生産性の向上)が必要だが、外国人移民の受け入れ議論が進まない日本では、女性と高齢者をどうやって労働市場に取り込むかが、待ったなしの課題になっているのだ。
すでに女性の就業率(労働力率)は上昇しており、25歳〜30歳では70%を超えている。今後、女性の労働力を引き出していくには、出産・育児のために離職する人が多い30歳〜45歳をどう職場に引きとどめるかがカギを握る。つまり、子どもを生んでも働ける環境をどう作るかだ。内閣府の推計では、出産・育児での離職がなくなれば女性の労働力は2770万人から2901万人に増えるとしている。
それでも今後予想される全体の労働力人口の減少を埋めるのは簡単ではない。女性の企業内での役割を大きく変え、女性労働を生産性の向上に結びつける必要性が出てくる。つまり女性力を生かさなければ、日本経済の再生はあり得ないのだ。
安倍内閣が「女性力活用」を掲げるもう1つの理由は、国際的な流れだ。女性力の発揮によって経済社会を変えていこうという取り組みは世界的な流れでもある。
欧州連合(EU)の欧州委員会は昨年11月、EU域内の上場企業に対して、取締役の一定割合を女性にするよう義務付ける「EU指令案」を発表した。そこには2020年までに社外取締役の40%を女性にするという具体的な数値目標が示されている。日本の「にぃまる・さんまる」を上回る「にぃまる・よんまる」を欧州は目指そうとしているのだ。
「能力ある女性が欧州の大企業の経営トップに関与できない“ガラスの天井”をうち破るために行動を取った」
EUは数値発表の際にこんなコメントを出した。女性が企業の中で昇進していくと、目には見えない天井が存在するというのだ。実際、EU域内の上場企業の常勤取締役の91%、社外取締役の85%が男性で占められているという。欧州の主要国で最も女性登用が遅れているとされるドイツは、このEU指令によって最も改革を迫られることになる。
ドイツでは、この数値を義務付けるか、企業の自主目標とするかで議論が割れている。義務化するということになると、守らない企業に対して罰則が導入されることもあり得る。そんな厳しいEUに比べ、日本の「にぃまる・さんまる」はこれまで、単なる目標で、実現可能性を疑問視する声も多かった。管理職に占める女性の割合は米国で43%、独仏で38%に達するが、日本は11%に満たない。アジアでもシンガポールは31%に達している。
経団連企業など日本の大企業の意識はまだまだ“保守的”だ。女性の活用を会社の方針にしていても、「やはり男でないと」と平気で口にする経営者は少なくない。女性の登用に積極的な企業ほど業績が良い傾向にあるとされるが、それにも“抵抗感”を感じる経営陣は多いようだ。そんな“意識”を代弁している調査結果がある。少し古くなるが2003年に経済産業省の男女共同参画研究会がまとめた「女性の活躍と企業業績」という報告である。
そこにはこう書かれている。
「女性比率の高い企業の高業績は風土が理由」
「女性比率が高い企業は見かけ上パフォーマンスが良いが、本当の理由は女性比率ではなく、企業固有の風土である」
企業間で比較すると、「女性比率の高い企業は利益率が高い(あるいは利益率の高い企業ほど女性比率が高い)ことがわかった」としているものの、「女性比率の変動と利益率の変動の関係を分析した結果からは、女性比率を高めても利益率が上がるとは言えなかった」と結論づけているのだ。前段で十分ともいえる結果があるのに、わざわざ後段でそれを否定しているのは、企業に女性比率を高めさせる政策を実施することに抵抗感を持っている人が多かったということだろう。
実はすでに日本経済の構造変化によって、「女性力」は不可欠になっている。同じ製造物を画一的により短時間で作る製造業から、顧客のニーズを汲み取り、きめ細かいサービスをするサービス産業へと、産業の主軸が移っているのだ。後者で女性ならではのセンスが求められるのは言うまでもない。サービス産業を中心に多くの企業が「ダイバーシティ(多様化)」を掲げて、女性力を活用しようとしているのはこのためだ。
産業競争力会議は今、さながら既得権を持つ古い経営人たちと、それをぶち壊さなければ成長はないと考える新しい経営人たちとの闘争の場になっている観がある。女性力の活用もそんな議論の中で意見が分かれることだろう。コーポレート・ガバナンスの強化もこの会議の大きなテーマの1つで、独立取締役(社外取締役)の義務付けなどが再び検討課題に挙がっている。独立取締役の発想は経営に「異質」な視点を取り込むこと。これによって企業の成長を加速させようという狙いがある。
どうせなら、独立取締役を2人以上義務付け、1人以上を女性にするというルールを義務付けてみてはどうか。女性活用最後進国から、一気にEUの前に出ることができる。
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
ジャーナリスト。経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材中。1962年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。熊本学園大学招聘教授、上智大学非常勤講師。静岡県アドバイザーも務める。著書に『国際会計基準戦争完結編』『ブランド王国スイスの秘密』(いずれも日経BP社)など。共著に『オリンパス症候群』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)。
磯山友幸の「政策ウラ読み」
重要な政策を担う政治家や政策人に登場いただき、政策の焦点やポイントに切り込みます。政局にばかり目が行きがちな政治ニュース、日々の動きに振り回されがちな経済ニュースの真ん中で抜け落ちている「政治経済」の本質に迫ります。(隔週掲載)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130418/246868/?ST=print
第28回】 2013年4月19日 降旗 学 [ノンフィクションライター]
大学受験にはTOEFLの受験も必要に?
グローバルな人材を育成するためなんだそうです
?さとり世代と言うらしい。ゆとり世代に代わる新しい世代分けだ。
?ネット掲示板の“2ちゃんねる”で、元日経新聞記者の故山岡拓さんの著書『欲しがらない若者たち』に関するスレッドが立てられたのが発端なのだそうだ。
?本の内容に照らしあわせ、誰かがゆとり世代に引っかけて“さとり世代”と書き込んだところ、多くの支持を得たとのことだ。それを、やはり2ちゃんねるの元管理人西村博之さんがツイートし、ネット上で拡散した。
「『さとり世代』。
?結果のわかっていることに手を出さない。
?草食系。
?過程より結果を重視。
?浪費をしない」
?こういった性向にある若者を指すのだという。
?が、私にはどうにもわからないことがあって、ゆとり世代とは、主に一九八〇年代半ば以降に生まれ、二〇〇二年から二〇一〇年の学習指導要綱で学校教育を受けた年代……、現在一〇代から二〇代半ばにさしかかる人たちを言うが、さとり世代も同年代を言うのだそうだ。
?どうやら、同年代の一方を“ゆとり”と言い、他方を“さとり”と呼んで分けているみたいなのだが、ゆとりとさとりでは何が違うのかが、私にはわからない。
?博報堂若者生活研究室アナリストの原田曜平さんは、朝日新聞の取材を受け、こんなふうに応えている。
「『ゆとり世代』はダメな若者を指す言葉になったが、『さとり世代』は、ゆとり教育を受けつつ、さらに勉強をし、現実的な将来を見通す賢い集団でもある。だからこそ、結果をさとらざるを得なかった」
?さとりの具体例を、朝日新聞は三人の大学生へのインタビューで挙げている。
?ある男子学生は、都内で生まれ育ち、これまでの旅行範囲はというと、北は北海道、南は三重まで。パスポートは持っていない。海外旅行に興味を持たない理由は、異国の料理は都内でも食べられるし、海外の様子はネットでわかるからだそうだ。自動車教習所に通ったことはあるが、途中で辞めた。
「将来は自分のレベルに応じた暮らしぶりでいい。すごいことをやろうなんて思わない」
?と言い、さとり世代と言われれば、ぼくもそうかも、と言っている。
?別の女子大生も、手続きが面倒臭いという理由で、海外旅行には興味がないそうだ。就職を希望する企業はあるが、年収にはこだわらない。そして、ほどよく力が抜けた大人になりたいと話す。
?さらに別の男子学生は、長身のイケメン(記事中の表現をそのまま抜粋)だが、彼女はいない。親しい女性はいるが、ただの友だち。親類の四〇代男性にはそれで満足なのかと驚かれたが、これが普通だと言い、みんなと仲良くできればいいのだそうだ。
「将来の夢は、寛容でおおらかな大人になること」
?と言っている。
?あくまで記事で紹介された現役大学生のコメントだが、いまの大学生はみんなこんなものらしい。
?私の年代は“三無主義”とか“新人類”と呼ばれたものだが、私が学生だったころもこんな感じだったかな……、と思いつつ、いや、もうちょっと温度は高かったよな、と思う。
?いっかどの人物にはなれなくとも、何か事を成すくらいのことは――、という意識は誰もが持っていたような気がする。違いますか、アラフィフの皆さん。
?しかし、博報堂アナリストの言によれば、こーいう子たちがダメなゆとり世代とは違うさとり世代で、“現実的な将来を見通す賢い集団”の部類に入るらしい。人生なんて人それぞれだからどーでもいいけど、寛容でおおらかな大人になりたいと言ってるような子がシューカツで勝ち残れるのか?
?学生の時分から、将来は自分のレベルに見合った暮らしができれば、なんて言うのは、現実的な将来を見通す“賢さ”なのだろうか――、と首を傾げたりするとおじさん呼ばわりされるのだろう。
?財団法人日本青少年研究所が、米中韓そして日本の四ヵ国の高校生六六〇〇人を対象に行なったアンケートで、将来偉くなりたいか、の質問に、偉くなりたいと答えたのは、アメリカ三〇%、中国三七%、韓国一九%だったそうだ。
?日本の高校生の回答は、一桁の九%である。
?逆に、出世したくないという回答は、アメリカ一七%、中国九%、韓国二七%、そして日本は五四%だったそうだ。実に、二人にひとり、である。二〇年後の日本が世界のどのあたりのポジションにいるか、何となくわかるような気がする。
?ゆとりであれさとりであれ覇気が感じられないのはどちらも一緒で、要するにこの世代の子たちは“勝ち残る”ことの意味を知らずに育ったか、あるいは、最初っから他人と“競う”という概念が頭にない世代のようにも感じられる。
?でなければ、格差をすんなり受け入れることに馴れているか、のいずれかだ。
?中には上昇志向の強い子もいるはずなのだが、どんどん先に行く仲間、高収入を得ている仲間を羨ましいとも思わないのだろう。ゆとりやさとりの子たちには、隣の芝生が青く見えないのかもしれない。過程よりも結果を重視しつつ、結果がわかっていることに手を出さないとは、あきらめの素養が強いのだ、きっと。
?ゆとりと言うと、それだけでダメなレッテルを貼られたかのような印象を与え、私も、ゆとりの子はみんな鷹揚で、とかく自分の世界観だけに縋っているように思っているが、同情している世代でもある。
?ときの政府と、文部科学省のわけのわからない教育要綱に振りまわされたのが、彼らだからだ。大学生の学力低下が騒がれたのは西暦二〇〇〇年のことだが、ものの本によれば『分数ができない大学生』という著書が契機になっているらしい。
?分数を解けない大学生がいるのか、と当時は私も驚いた記憶があるが、その後のOECD生徒の学習到達度調査(PISA2003)と、国際数学・理科教育調査(TIMSS2003)の結果が発表され、いずれも日本の学力が低下しているとの結果が出て、こちらもまた問題になった。
?学習到達度調査には三つのカテゴリーがあるのだが、二〇〇〇年の調査(OECD加盟二八ヵ国を含む三二ヵ国・二六万五〇〇〇人の生徒が参加)で、日本は、数学的リテラシーで一位、読解力が八位、科学的リテラシーは二位という結果を残した。
?これが二〇〇三年に六位、十位圏外、二位になった(二〇〇六年には十位、圏外、六位)。
?二〇〇三年はイギリスが調査に必要な生徒を集められなかったため、参加はしたものの国際比較の対象外となったことも加わり、よけい日本の学力低下が叫ばれた、との流れがある。
?だが、私が思うに、いちばんの問題は、これらの結果が“ゆとり教育”に結びつけられたことだ。ゆとりだからこんな結果になった、こんな結果でゆとり教育を続けていていいのか、といった論調だ。
?ゆとり教育の施行が二〇〇二年、学習到達度調査が行なわれたのが二〇〇三年だから、ゆとり教育が学力低下に関わっているとは思えないのだ私には。それとも、施行から一年で結果が出るのか、教育ってのは。
?ちなみに、学習到達度調査の参加国は、二〇〇〇年から三二ヵ国、四一ヵ国、五六ヵ国と開催するごとに増えてもいる。参加国が増えれば、順位の変動は大いにあり得るではないか。もしかしたら、最初っから大した学力なんてなかったのかもしれないのだぞ。
?ゆとり教育と言えば、週休二日制の徹底だとか円周率をだいたい3くらいでいいと教えるとか台形の面積の求め方を教えないとか運動会の徒競走で順位をつけないとか学芸会でみんな主役を演じるといった実にくだらない内容に集約されるが、文教族や文部科学省は学力低下を理由に“脱ゆとり”を言い始めた。自分たちで始めといたくせに。
?かと思ったら、一度は週休二日制にした学校教育をまた“六日制”に戻そうとの動きも出ている。
?むかし懐かしい“半ドン”の復活だ。
?いま見直しを始めたばかりで具体的なことはわからないが、ともすれば半日授業どころか、平日と同じようにきっちりカリキュラムを組むのかもしれない。
?また、自民党の“教育再生実行本部”なる組織は、大学受験もしくは卒業条件として、英語能力テスト『TOEFL』を受験し、一定以上の成績を収めることを条件にしてはどうか――、との提案をした。
?正式には『教育改革の第一次提言案』と言うのだが、すごいんだぞ、これ。
?本部長は遠藤利明衆議院議員だが、安倍ちゃん……、もとい、安倍総理へのお追従なのか総理の所信表明に倣ったのか、それとも自民党内でのブームなのか、この提言案にも“三本の矢”が盛り込まれた。
?その三本が、英語教育の抜本改革、理数系教育の刷新、情報通信技術(ITC)教育、なのだそうだ。お役所言葉の実例集かと思えるような表現ばかりだ。
?そして、この改革実現のため“グローバル人材育成推進法”の制定を提唱した。
?安倍総理が掲げる経済再生には“人材”の“養成”が不可欠で、それには“世界最高水準の学力”を実現しなければならない――、とその提言案は言っている。
?大学受験にTOEFL受験も併用せよ、はその一環なのだ。
?つまり、遠藤一派は……、もとい、遠藤センセイを本部長とする実行委員会は、大学受験にTOEFLも受けさせれば世界最高水準の学力を持つ学生を育成できるとおっしゃっているのである。
?ものすごい強引な理屈だと思ってしまうのは私だけか。
?受験や卒業に必要なTOEFLの基準は大学ごとに規定を設けるが、国際水準の研究を目指す大学を約三〇校“指定”し、その大学は卒業要件としてTOEFLで七割以上の高得点を収めることを条件にするらしい。
?ちなみに、当初、TOEFL導入は“全大学”を対象にする予定だったが、本部内から異論反論オブジェクション続出で国公立大学のみを適用対象とした。
?という経緯があったことも付記しておこう。
?でも、この提言案が実現すると、国公立の大学を受験するにはセンター試験のみならずTOEFLの受験も必要になるということだね。センセイ方は国公立大学を全部同じ色に染めようとしているらしい。
?残りの二本の矢についても簡単に触れると、理科系教育では、博士号取得者を現在の“二倍”程度の水準に増やすとのことだ。欧米先進国並みの三万五〇〇〇人が目標だ。大盤振る舞いで博士号取得者を増やせば世界最高水準の学力に到達するものと考えておられるようだ、センセイたちは。
?また、高校で理数強化に重点を置く文部科学省指定の“スーパーサイエンスハイスクール(略してSSH)”の生徒を倍増し、かつ、その中でも特に優れた生徒のための“超SSH制度”も導入するとのことだ。
?するとどうなるかの記載がないから、私もこれ以上は書けない。
?やっぱりこちらも数を増やせば何とかなると思っておられるのだろうか。
?というか、二〇〇二年から始まっているこの制度の成果をまず教えてほしい。
?三本めのITC教育については、二〇一〇年代に全ての小中高校生に一人一台ずつタブレット端末を配布する。
?のだそうだ。
?そのために、東京新聞では一〇兆円規模の集中投資も検討とあるが、日経新聞では一兆円と、投資額面に大きな開きがある。
?私に言わせればわははとしか言いようがないのだが、詰め込み教育がいかんと言えばゆとり教育だと言い、ゆとりでは学力が下がるから脱ゆとりでグローバルな人材養成にTOEFLを導入して博士号取得者を先進国並みに増やし、生徒一人ひとりにタブレットを持たせてITC教育を進めようってことだね。
?こういうことを難しい言葉で“行ったり来たり”もしくは“ブレブレ”と言う。
?文教族がこうだと言えば唯々諾々と従うのが文部科学省という組織だが、文科省ってところは、むかしのソ連が五ヵ年計画や一〇ヵ年計画をやったみたいに、教育という分野で何か統計でも取ろうとでもしていたのか――?
?と思ってしまうほど、教育政策はあっちへ行きこっちへ行きを繰り返す。
?そのたびに、振りまわされてきたのが“ゆとり世代”である。
?ゆとりをダメな若者の代名詞にしたのは誰だ。
?国立大の佐賀大学では、受験倍率が二倍を割り込むと学生の平均学力が下がるとの統計を出し、学生の“質を保証”する目的で学部の定員減に踏み切った。大学の運営より、学生の学力維持を優先したと私は見ている。
?私立の早稲田大学も、二〇年後には学部生をいまより二割減らす計画とのことだ。これらはいずれも昨年末の発表で、今月七日に安倍総理に手渡された提言とは趣や現実味という意味で大きく異なっている。現場と対策本部とでは、こんなにも温度差があるということではないか。
?文部科学省も、文教族のセンセイ方も、大人の思惑で子どもたちの未来なんか決められないってことを早くわかってほしい。ゆとり教育を受けた子だって、目標が見つかれば邁進するんだよ。
?世界に羽ばたく子は、放っておいても羽ばたく。
?私たち大人の役割は、その背中を押してやることじゃないか。
?TOEFLを受けさせりゃグローバルな人材が育つなんてくだらない考えも、即刻棄てるべきだ。こーいう非現実的なことを考える大人たちを、子どもたちは見ている。
?そりゃ、ゆとりの子だって悟るよな。
(文中敬称略)
http://diamond.jp/articles/print/34899
20世紀向けの組織では生き残れない
エリック・ブリニョルフソンMIT教授に聞く【後編】
2013年4月19日(金) 細田 孝宏
(前回から読む)
世界経済は金融危機から回復途上にある。だが、その足取りにもどかしさは否めない。先進国ではとりわけ雇用の回復が遅れている。理由はなぜか。デジタル技術の進化が雇用を奪ったことを実証的に提示し、米国で話題を呼んだ『機械との競争』(日本版は日経BP社)の筆者、エリック・ブリニョルフソンMIT教授に聞いた。
「デジタル技術の進化が速すぎたことで雇用を失った」ということでしたが、一方で、対応次第ではチャンスにもなると主張されています。
ブリニョルフソン:もちろんそれは簡単ではありません。工学や科学、技術の世界にいる人たちは、非常に優秀なロボットを作ることに成功しました。一方、経済学者や社会科学の専門家、あるいは企業のマネジメント層は、テクノロジーとの協業に対応できていないのです。
そうしたミスマッチに直面しているのに、なお以前の制度のままでいる。テクノロジーが変化したのに合わせて制度も変えねばならないのです。それは大きな挑戦です。
エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)氏
米ハーバード大学卒。米マサチューセッツ工科大学(MIT)にて博士号(経営経済学)を取得。現在はMITスローン・マネジメント・スクール教授。デジタル・ビジネス・センターのディレクターやスローン・マネジメント・レビュー誌の編集長なども務める。著書に『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)などがある。『機械との競争』(日経BP社)は、デジタル・ビジネス・センターのアンドリュー・マカフィー主任リサーチサイエンティストとの共著。(写真:常盤武彦)
企業を含め、既存の組織形態ではもはや対応できなくなりつつあるわけですね。
ブリニョルフソン:そういうことです。伝統的な組織は20世紀に対してデザインされたものに過ぎません。つまり、オールドテクノロジーに合わせて作られたものなのです。デジタルテクノロジーに合わせられてはいません。それもあって、多くの人は自らが貢献する方法を見つけられないでいる。だから雇用が減ったのです。
(リーマンショックを契機とした)大不況が起きた時、企業の幹部は「我々は10%とか20%、30%の人を削減できる」と私に言いました。経済が回復し、需要が戻ってどうなったか。彼らのことを再雇用する必要はなかったのです。人を戻さなくても生産性が上がったからです。そういう人はもう必要とされていない。テクノロジーとコンピューターが彼らのやっていた仕事をできるようになってしまったのです。
伝統的企業は自己変革しなければならない
新たな時代にうまく対応している企業はあるのでしょうか。
ブリニョルフソン:わずかですが。たとえば、アマゾンはその1社でしょう。うまくやっているシェア経済の会社*もある。しかしまだ初期の段階です。そうした会社はたくさんの従業員を雇っているわけではありません。ですから、我々はデジタル技術と雇用とを融合できる新たな道を考える必要があるのです。
* 既存のレンタル産業だけではなく、個人がインターネットを通じて、自分が所有するモノを直接貸し借りするサービスも含む
伝統的な企業は自己変革しなければならない。
ブリニョルフソン:その通り。自分で自分を変えねばならない。個人もです。働き手も自分を変える必要があります。さらには社会そのものも変わらねばならない。
著書では「機械との競争」に対する解決策として19の項目を挙げています。その筆頭が教育改革でした。
ブリニョルフソン:技術の進化によってロースキルの仕事は失われています。そういう仕事をしてきた人はもう職に就けない。創造性や高いスキルが求められる新たな仕事ができるよう再教育する必要があります。「機械との競争」状態なのに、教育が追いついていません。
教育を改善するには、より多くのお金を投じるだけではダメです。教師の数、質ともに足りていない。我々は教育を再発明し、新たなモデルを作り出す必要があるのです。例えば、MOOC*です。オンラインで1人の教授が1万人とか10万人といった多くの人に授業ができます。さらにデジタル技術を使って、学生が何を学んでいて、どういう教え方が効果的なのかというデータを集めてフィードバックもできる。継続的に教え方の良し悪しを分析し、カスタマイズする。これは教育の再発明と言えるでしょう。
* Massive Open Online Coursesの略で、インターネットを通じた無料のオンライン講座
(解決策の)19項目は多くて話しきれませんが、スキルを引き上げる教育ともう1つ大切なのが起業家精神です。新しい働き方を生み出す人は、新たな種類の組織を創造し、人々が買う新製品や新サービスを見つけることができるでしょう。
規制緩和が次のスティーブ・ジョブズを生む
規制緩和も重要だと言っていますね。
ブリニョルフソン:そうです。起業家を支援することにつながるからです。
1900年、約40%のアメリカ人は農業に従事していました。それが今日では2%以下です。では残り全員が失業者になったでしょうか?
ほとんどの人が新産業に移ったのです。例えば自動車産業のような。後にはコンピューター産業もありました。誰が新たな産業を生み出したか。
大学の教授ではありません。政府でもない。起業家です。ヘンリー・フォード、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ…。そういう人が新産業を生み出した。我々はもう一度同じことをしなければならないのです。
コンピューターが雇用を減らしているからこそ、次のヘンリー・フォード、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツが必要なんです。起業家が新産業を興すよう後押しする。おそらく多くは失敗するでしょう。でも中には成功するものも出てくる。
新技術やイノベーションは必然的に勝者と敗者を作ります。敗者をどのように支援していくべきでしょうか。
ブリニョルフソン:敗者から勝者に変えることです。だから教育や起業家精神に焦点を当てました。
考えてみてください。支援の方法として「(敗者には)お金を与える必要がある」という人がいますが、満足できる解決法ではない。(フランスの哲学者)ボルテールは言いました。「労働は3つの大きな悪から我々を逃れさせる。つまり、退屈、悪徳、欲求から」。
もしお金を与えれば、3つ目(欲求)は解決します。しかし、1番目(退屈)と2番目(悪徳)の解決には役立ちません。仕事が与えられることで、お金だけではなく生活にも意味を持てるようになります。そう考えて、19の方法に焦点を当てました。
政府、企業、個人、誰が主体となるべきでしょうか。
ブリニョルフソン:全員ですよ。個人はそれぞれが自助努力をする。企業や起業家は新しい仕事を生み出す。たくさんの人が職がないということは、これは起業家にとって大きなチャンスです。賢い起業家なら、職のない人を雇ってお金が稼げるわけですから。政府は教育やセーフティーネット、起業しやすい体制整備などで後押しする。
デカップリング解消は数十年の戦いに
経済統計を見ると、米国の雇用は回復に向かっているようです。
ブリニョルフソン:米国の失業の背景は、1つは景気循環であり、もう1つは根深い構造問題が横たわっています。金融危機からは回復しつつありますが、それは一断面でしかない。97年にさかのぼれば分かるように、(生産性の伸びに雇用の伸びが追いつかない)デカップリングに入っているのです。
デカップリングが解消し、雇用が追いつくまでにはどれくらい時間がかかるのでしょうか。
ブリニョルフソン:これから数十年の戦いになるでしょう。技術の進化は加速しています。この大デカップリングを避けるために、我々の対処も加速しなければならない。もしうまくいかなければ、この状況が続くことになる。
米国の企業経営者と話をする機会も多いと思います。この問題をどのように認識しているのでしょうか。
ブリニョルフソン:みな非常に心配してます。特にシリコンバレーの経営者はそうだと思います。(リンクトイン創業者の)リード・ホフマンや(オライリーメディアを創設した)ティム・オライリーらは、もっと状況が悪くなると考えていて、一緒にこの問題をなんとかしようとしています。
MITでは、デジタル経済に対応するためのプログラムを始めています。組織や我々のスキルを再発明するという課題に取り組むものです。日本からの参加も歓迎です。
細田 孝宏(ほそだ・たかひろ)
日経BP社入社後、経済誌「日経ビジネス」を振り出しに、建築誌「日経アーキテクチュア」、日本経済新聞証券部(株式相場担当)で記者活動に従事。「日経ビジネス」では主に自動車、流通、商社などの各業界を担当し、現在、米国特派員として、ニューヨークに駐在している。
技術は雇用を破壊する 〜『機械との競争』著者が語る〜
イノベーションが雇用を奪うことを論じた『機械との競争』(日経BP社)が日本でも話題になっている。
米国で深刻化した失業問題の根本には、急速なデジタル技術の進化があると分析するのは、著者の1人、エリック・ブリニョルフソン・マサチューセッツ工科大学(MIT)教授だ。
4月15日号の日経ビジネス「世界鳥瞰」に掲載したブリニョルフソン教授のインタビューの詳細版を2回にわたって紹介する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130417/246825/?ST=print
成功のカギは「執念、親心、主体性、臆病、明るさ」
続・27人が書いた「行動を導く方法論」
2013年4月19日(金) 好川 哲人
持論とは「経験から生まれ、行動を導いている方法論」である。プロジェクトマネジメントに関心を持つ有志が「持論」を文章にまとめる活動に取り組み、27編の持論が出来上がった。
27編のうち、9編の持論の骨子を前回記事『私はプロジェクトをこう成功させた』に紹介した。今回は残る18編の持論の骨子を紹介する。
その前に持論の読み方を説明する。以下は前回記事で書いた事の要旨である。
持論は持ち主の考えをまとめたもので他人に読ませるために書かれた文章ではない。この点に留意する。
プロジェクトマネジメントというテーマに関するプロフェッショナル同士でコミュニケーションをとるつもりで読む。プロである自分のやり方や価値観の中で、相手の持論を理解していく。
そのためにまずポジティブに読む。「持論として書かれているやり方は持論の筆者にとって正しい」という前提で、なぜうまくいったのかということを考えながら読む。
健全な批判精神を持ち、「ほかの成功要因、ほかのやり方があるのではないか」と問いながら読む。
それでは持論の骨子を紹介していく。通し番号(今回10からになっている)、持論の筆者名、題名を表記してから、骨子を記載した。ゴシック表示になっている個所は持論からの引用文である。文中の「PM」はプロジェクトマネジメントまたはプロジェクトマネジャーを指す。
【10】浅川佐知子 〜 プロジェクトを周囲からサポートする
浅川佐知子さんの持論は「プロジェクトに関係する人の主体性の有無が成功の要因である」というものだ。なぜなら、プロジェクトのタスク遂行上の問題や課題に他人ごとではなく自分のこととして取り組む姿勢の人材が多いプロジェクトにおいては、互いの真剣さが刺激となり相乗効果を生むからだ。
こうした主体性は自然にできていくものではなく、好ましい状況が出来上がるよう、プロジェクトの周囲がプロジェクトの環境を保全する努力をする必要があるという。そのための施策として次の2点が重要である。
リソースとゴールのイメージを共有する
パフォーマンスを引き出す環境を提供する
【11】浅見美奈子 〜 PMの執念が成功を引き寄せる
浅見美奈子さんは「PMが誰よりも執念深くなければ、困難なプロジェクトを成功へ導くことはできない」という視点から、以下3点を持論として挙げている。
絶対に諦めてはいけない:プロジェクトは成功しなければならない。私の考える成功とはQCD(品質・コスト・納期)の達成だけではない。お客様が満足し、次のチャンスにつなげてこそ成功だと思う。
ピンチはチャンスである:大小様々な予期せぬことが起こった時、問題を関係者へオープンにしてしまい、問題を実際より少し大げさに取り上げ、相手が考えるより大きな行動をとる。
「死ぬわけじゃない」という開き直り:完璧なPMとして顧客やメンバーに絶賛されてみたい。が、それができないからといってPM失格とはならないと思う。ダメなところを色々な人に手助けしてもらっても、最後に成功すれば問題ない。失敗したって死ぬわけではない。
【12】枝窪肇 〜 親心をもって接する
枝窪肇さんにとってプロジェクトは幼い子供のようなものであり、プロジェクトマネジメントに重要なのは親心をもって接することだという。子供のことを常に気にかけ、タイミングよく子供に接することがその子の育成に欠かせないのと同じように、プロジェクトでも以下の目配り気配りをタイミングよく、スピード感をもって行うことが必要である。
停滞したら直近のマイルストーンを示し進捗を促す。
余計なタスクを実施しているようなら本来のタスクを示してあげる。
メンバーの成功には共感し、メンバーが困っているときには理由を聞いて力になってあげる。
トラブルが発生したらトラブルシュートを行い、メンバーの成長を認めてあげる。
【13】兼平篤 〜 バランスを把握せよ
兼平篤さんの持論はプロジェクトマネジャーはプロジェクト遂行中に様々なバランスをとることが必要というものだ。プロジェクトはどんどん変わっていく。中でも重要なのはバランスをとっているその状況を把握できていることだ。
バランスを把握することで、ポイントが明確になり、全体のバランスが俯瞰でき、次のアクションを取りやすくなる。その結果、プロジェクト全体のバランスを保ちながら、プロジェクトを成功へと進めることができる。
【14】久保清隆 〜 プロジェクトの成功確率、成功度合いを高める方法
久保清隆さんはプロジェクトの成功確率、成功度合いを高める方法に関する持論を述べている。プロジェクトマネジャーは3点の役割を果たす必要があるという。
ミッションに取り組み始める前にチームを作る。
ミッションを遂行する。
プロジェクトを通して組織を成長させる。
このうち、チーム作りに関しては以下のプロセスで行う。
ゴールを明確にする
必要な役割を考える
メンバーを集める
飲み会などで仲を深める
メンバーでゴールを共有し、意識を統一する
プロジェクトにおける開発のプロセス、チーム内の規律、ルールを決める
次にミッションの遂行においては、計画フェーズと実行フェーズに分け、それぞれ次のように進める。
計画フェーズ:必要な作業を洗い出し、優先順位を決め、それぞれのタスクの期日、担当者を決める。
実行フェーズ:計画を実行し、定期的に進捗を確認。遅れが発生していたら対策を立て、ボトルネックが発生していたらそれを解消するように手を打つ。
役割の3番目、プロジェクトを通して組織を成長させるためには、プロジェクトの中で定期的に、またプロジェクトが終わった後、必ず自己評価をするという。
【15】伍實郎 〜 PMは「政治」に向き合う実務家
伍實郎さんはエンジニアリング会社に勤務するプロジェクトマネジャーであり、プロジェクトマネジメントは「政治」、すなわち「当事者間の対立や利害を調整して全体をコーディネートし、意思決定を行い、それを実現させる作用」であるという持論を持っている。そして政治の作用を作りだすために、以下のポイントがあると述べている。
まずは、その地で仕事をさせていただくことに心底感謝し、一緒に仕事をする相手と自社内メンバーをリスペクトしよう。
物事を説明する際に、相手の腑の落ちる言い方を見つけよう。
相手方が視覚的に理解しやすいビヘイビアやボディランゲージを身につけよう。
同じことを伝えるにも、複数のソースを使って、相手の複数の要人にアピールしよう。
決定事項に対する変更は、日本では罪悪感を伴うが、海外ではそうでもないことがある。思い切って“現地仕様”のやり方に合わせてみよう。
できるだけ日頃からの顔合わせにより同一目線で対峙し、協働意識を醸成しよう。
問題には必ず解(解決策)があると信じよう。
言葉のハンディは真の障壁ではない、意図を伝えることに注力しよう。
プラントエンジニアリング業の場合、できる限り顧客の施工事例、すなわち現地のプラント実績を見学させてもらおう。
【16】柴田浩太郎 〜 予測し、決断し、人を動かす
柴田浩太郎さんの持論は「プロジェクトマネジャーは「予測し、決断し、人を動かす」のが仕事である」というものだ。
「予測する」とは「現状を把握する。次に目的、目標、ゴールを把握する。そして予測する」ことだ。
2番目の決断とは、五分五分だったり、大多数が反対する判断である。どのような状況でも理性的な判断を下すには、普段から判断の拠り所を持つ必要がある。
人を動かすには、とことん自分の無力さを認識し、人を動かすことの重要性に気づき、人が動くツボをおさえ、環境をつくり、人の弱さを理解することだという。
【17】白井和成 〜 人間力によるプロジェクトマネジメント
白井和成さんは、プロジェクトマネジャーがしなければならないことは、チームやメンバーを次の状態にすることだとしている。
諦めない:メンバー全員が「できる」と信じる。
仕事を楽しむ:一人ひとりがモチベーションを高く保つ。
好奇心を持つ:自発的に自分の分担エリアを広げる。
一人ひとりがリーダーシップを発揮:「自分のプロジェクトなんだ」という意識を持つ。
そのためにはリーダー自身の人間力を向上させることが唯一の方法だと述べている。
【18】鈴木達也 〜 常に誰と何を「握る」か、を意識せよ。
鈴木達也さんは、火消しプロジェクト(立て直しプロジェクト)で悪化を最小限におさえるには、PMが「いい意味で臆病」で次の点を意識することが重要だと指摘する。
顧客が「最優先」と認識しているものは何か。
最優先事項を決めるステークホルダーはだれか。
プロジェクトの方向性を決めるのはだれか。
キーとなるメンバーの性格と考え方をつかむにはどうすればいいのか。
これらを意識した上で「だれと何を握るのかという視点が非常に重要」としている。
【19】副島千鶴 〜 継続的にチームに最高のパフォーマンスを発揮させるために忘れてはいけない3つのこと
副島さんの持論は継続的にチームに最高のパフォーマンスを発揮させるというものだ。このために重要なポイントが3点ある。
チームワークを最大化する:お互いの得意分野と役割を全員に理解させ、その理解の通りに行動させる。
役割を理解し行動する:異なる能力を持ったメンバー同士が能力を発揮し合えるようになること。
whatだけでなくwhyとhowを伝え続ける:「何のために」その役割が必要かを伝える。役割を通して何を「どのように」実施して欲しいかを伝える。これらをプロジェクトを通して伝え続ける。
【20】高島徹 〜 プロジェクトの成功は、環境作りから
高島さんはプロジェクトリーダーの立場というより、コンサルタントとしてプロジェクトに関わる立場から、プロジェクトリーダーが仕事をしやすい環境を整えることが大切という持論を持つ。そのための具体的な活動として2点を挙げている。
ステークホルダーの間で意識合わせをきちんと行う。プロジェクトがスタートした後は、プロジェクトリーダーの悩みを聞き、障害を排除し、話し合いを円滑に進める。
プロジェクトリーダーにすべてお任せではなく、動きやすいようにサポートする。
【21】中村耕治 〜 自分の経験から考えたプロジェクト成功のための一文
中村耕治さんの持論は明確な目標と期限を掲げ、メンバーやメンターと意見を交わし合い、プロジェクトの成功を信じて明るく突き進むというものだ。
プロジェクトがうまくいったときには、リーダーとして次の行動をしていたという経験から、中村さんはこの持論にたどりついた。
目標がわかりやすくメンバーの賛同を得ることができた。
メンバーのモチベーションの維持や向上に努めた。
適切なアドバイザー(メンター)を確保できた。
先延ばしできない明確な期限を設定した。
メンバーの精神面のケアを心がけた。
自分がプロジェクトの成功を信じていた。
【22】中村文彦 〜 プロジェクトの目的を対話により共鳴化すべし
中村文彦さんの持論は「より高い価値やwin-win関係をプロジェクトから生み出すには、関係者がプロジェクトの目的を深く理解し、共有化を越えた「共鳴化」を生み出すことが必要」というものである。「共鳴化」のために、中村さんは以下の取り組みが必要だとしている。
プロジェクトの立ち上げ時などに、目的について対話により話し合う場を設ける。この場には、できるだけ多くのステークホルダーが参加する。共有したプロジェクトの目的は、文面や図、絵などにまとめ、プロジェクトの進行中、常に確認する。利害関係に対立が発生した際は、まとめておいた目的に立ち戻って、できるかぎりwin-winになれる解決策を創造する
【23】西智明 〜 コミュニケーションを実践、促進、管理せよ
西さんは「コミュニケーションを実践、促進、管理せよ」という持論を持つ。そのために次に2点を心掛けるとしている。
フランクな関係“も”築く:それぞれの性格、特性、人となりをしっかり把握する。
定期的に一同に会する:日次や週次などの定例会議を「コミュニケーションを実践、促進、管理」するために活用する。
【24】帆足秀樹 〜 そのプロジェクトに惚れられるか、否か
帆足さんは「このプロジェクトに惚れてもらえるかどうかがカギ」だという。そのために3点が重要であると述べている。
プロジェクトを自分の色に染める。
次に自分がマネジャーでなければならない理由は何かを考える。
プロジェクトにメンバーを何人確保できるか。
【25】矢野喜樹 〜 ステークホルダーの力を結集するために
矢野さんは「プロジェクトの目標が明確であり、上位層とプロジェクトメンバーに共有されていなければならない」という持論を持っている。そのために以下が必要だという。
組織の目標と整合できるプロジェクト目標を設定する。
組織の上位層の合意を取り付け、物理的・精神的なサポートを受ける体制を構築する。
プロジェクトリーダー自らが目標に向けてコミットし(まず自分が納得する)、メンバーにその意義を深く理解させる。
【26】山田篤 〜 ヒトの観点から捉えたプロジェクトマネジメント
山田さんは成果を出すためには選ばれたプロジェクトメンバーの人心を掌握することが何にも増して重要であるという。その観点から3点のポイントを持論として述べている。
納得感とコミットメント:プロジェクトメンバーの納得感・当事者意識を尊重する。
モチベーションの維持と賞賛:メンバーの当初の高いモチベーションを維持・向上させる。
信頼関係と権限移譲:協力してプロジェクト目標を達成するために、プロジェクトマネジャーとプロジェクト構成員との間の信頼関係を築き上げる。
【27】羽生悦朗 〜 PMに期待するもの:大前提は?
羽生さんは今回の持論作成に参加したメンバーの中では異色の存在で、「見せる保育」ではなく「見える保育」というコンセプトの保育に取り組んでいる。「プロジェクトの持ち方に対する考え」という視点から持論をまとめ、メンバーのスキルが上がれば成功と述べている。
ちなみに羽生さんのいう「見える保育」とは、以下の取り組みである。子どもだけではなく、PMの育成にとっても示唆に富む指摘と思う。
「見せる保育(真の顧客というより保護者という顧客の満足度を高める保育)」に走っている保育では、テレビ映りの良い状況や保護者に喜ばれる状況を見せるために、子どもの心を無視して、教える、教え込む、反復練習する、訓練することに走りがち。そうではなく、子どもの心に寄り添い、子どもの思いを類推しながら、その場にあった対応をとり、私の思いを返していく、見える保育をしていくべき。
以上の持論を書く活動は、筆者が発行している「PM養成マガジン」の創刊10周年記念として行ったものだ。それぞれの持論の本文をPM養成マガジンの中で順次掲載中である。
27編を読み、当たり前の事ではあるが、プロジェクトの成否は「人の力」次第だと改めて思った。持論を書いて自分のプロジェクト経験をいったん概念化し、次のプロジェクトに生かせるようにすることも、力を付ける1つのやり方だと考えている。
好川 哲人(よしかわ・てつひと)
プロジェクトマネジメントオフィス代表
15年以上に渡り技術経営のコンサルタントとして活躍。PMstyleというプロジェクトマネジメント(PM)の独自方法論を提唱、新規事業開発、研究開発、商品開発、システム開発などのプロジェクトを成功に導く。1万人以上が購読するメールマガジン『プロジェクトマネージャー養成マガジン』、ブログ『PMstyleプロデュース』、『プロジェクトの補助線』、書籍、雑誌寄稿を通じ積極的に情報を発信、PMの世界に強い影響を与え続けている。近著に『プロジェクトマネジメントの基本』がある。日本で発行されるビジネス書の大半に目を通し、書評ブログ『ビジネス書の杜』も運営する。
あなたがプロなら 持論を作れ、持論を磨け
だれもが仕事に関する「持論」を持っています。「営業とはこうだ」「新商品開発で重要なことは二つ」といったようにです。あなたの持論を文章で表現し、仕事の折々に見直してみましょう。そのつど発見があり、あなたの力を高めていくことができます。この連載では、持論の作り方、磨いていく際のコツ、持論の実例、をお伝えしていきます。読みながらぜひ、ご自分の持論を書き、磨いてみて下さい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130415/246688/?ST=print
丸暗記か数の扉を開くか、九九にもある人生の分岐点
「常識の源流探訪」に意外な効用〜初心忘るべからず(3)
2013年04月19日(Fri) 伊東 乾
いきなり別メディアのお話で恐縮なのですが、先週、足かけ7年続けてきた「常識の源流探訪」という連載を休筆しました。個人的には思い入れの深い連載ではあるのです。今回、諸般の事情により休むことになったものですが、実はこの、
「常識の源流探訪」
というタイトル、これは私がつけたものではないのです。当時そのメディアで編集長を務めておられた、本JBpress川嶋諭編集長こそ、「常識の源流探訪」の生みの親であり、また名づけ親でもあるのです。
開高健賞というものを頂き、どこかに連載を、という話になった2006年末、私が考えていたのは、別途相談されていた「CSRの哲学的な基礎付けが平易に分かるような連載を」というリクエストに答える内容で「CSR解体新書」というタイトルを自分ではつけていました。
それを「伊東さんの話をCSRだけに限るのはもったいない、もっと、みんなが常識と思っていることの源流を広範に訪ねていくような連載にしてほしい」
とリクエストして下さって始まったのが「常識の源流探訪」で、最初の1年、50回は「CSR解体新書」をサブタイトルに続けましたが、2年目以降の丸5年は、時事のトピックスから私の持ちネタまで、様々な問題の「当たり前」と思っている部分、つまり知ったつもりで思考停止している内容を、遡行して掘り下げていく姿勢で連載を続けました。
やがて川嶋編集長はJBpressを立ち上げて独立され、この連載を始めさせて頂いたわけですが、開高賞受賞後から頂くようになった、音楽以外のこうした原稿執筆の「初心」を一番共有させて頂いているのが、川嶋編集長その人にほかなりません。
さて、連載というのは、漫然と続けているとマンネリになったりしやすいものです。それを予防するのに、一番有効な方法・・・それが、実は「常識の源流を探訪」する姿勢、つまり、マンネリになるという、パターナリズムを廃して、思考を停止しそうな部分に自ら光を当て、カンフル注射をしていく姿勢だと思うのです。
前回、思いがけず大きな反響を頂きましたので、新年度に合わせ、具体的な題材に沿って「常識化」=肉体化と、その再点検=「源流探訪」について、もう少し踏み込んでみたいと思います。
かけ算の源流探訪?
例えば前回、「丸暗記しなきゃ話にならないもの」の例として「九九」を挙げました・・・それはそうなんです、最初はまず、四の五の言わずにマスターしなければ、話は始まらない。
でも、では丸暗記だけすればいいかと言うと、必ずしもそうではない。その分かれ目は、実はこの「マスター」のプロセスの中にあるのです。これを九九で考えてみましょう。
例えば九九の「2の段」は
2,4,6,8,10,12,14,16,18
これは「偶数」が並んだものですよね。「九九の2の段」という意味だけでなく、実は奇数偶数の偶数という、別の数列としての意味づけがあり得ます。
では「5の段」はどうでしょう?
5,10,15,20,25,30,35,40,45
5を2つ合わせると10ですから、5の偶数倍の段は10,20,30・・・と区切りのよい数字が、その間は「下1桁が5」の数字が並ぶ・・・これも、当たり前と言えば当たり前です。
が、こんなふうに見直すと、記憶を確認しやすいですし、もし何かの計算をしていて、自然数に5をかけているのに下1桁が0あるいは5でなければ、何か計算ミスをしている、と気がつく、つまりフェイルセーフの知恵に広がっていく端緒を持っているわけです。
そう、実は「単に丸暗記」するのでなく、2〜3回練習して覚え始めた内容は、今度はその中身、メカニズムを自分の内側に振り返って検討し直すことで、最初は棒暗記した内容が、だんだん、自分の意のままに分解再合成できる知恵の道具に変わっていく。
そういう、学習と演習の特徴があるわけです。
演習とか練習というのは、実はある種の実験です。被験者となっているのは自分自身。どうやったら効率的にきちんと学ぶことができるか。無意味な反復履修は、汗をかくという意味で自己満足にはなっても、実はしばしば無意味であることが多い、そんな現実もあります。
大して勉強してなそうなのに成績のよい人がいますね。要領がいいわけですが、要領といってもノウハウとして大事なものです。
私たち音楽を職業にするものは、比較的短時間で楽曲をマスターしなければならない、「譜読み」という仕事の仕込み段階を持っています。これをどのように効率的に行うか?
実はこれ自体が、一定の仕事の性質を決めてしまうくらい重要な意味を持つこともあるのですが、音楽の例よりも、まずは多くの方になじみの多そうな「九九」の、ちょっとした横顔で考えてみたいと思います。ご存じの方もいると思いますが・・・。
九九の「九」を考える
いま、九九の「9の段」を思い出してみましょう。
9,18,27、36、45,54,63,72,81
になりますね。ここでへんてこりんなことをお伺いします。今並べた「9の段」の、10の位の数字と1の位の数字を足してみてほしいのです。つまり18なら「1+8」27なら「2+7」といった具合にです。すると、どうでしょう!
1+8=9
2+7=9
3+6=9
4+5=9
5+4=9
6+3=9
7+2=9
8+1=9
・ ・・全部「9」になりますね。実はこれ 9×1 についても 9×10についても成り立っていて、
9×1=9: 9+0=9
9×10=90: 9+0=10
となっています。どうでしょう、この原稿の読者のたぶんすべての方は九九をご存じと思いますが、「9の段」のこの特徴をご存じでしたか?
こう尋ねると、知っていた、という人と、初めて知った、という人に分かれます。さらに、面白がりの人の中にはこんなことをする人がいるかもしれない。
9×11=99:9+9=18
9×12=108:1+0+8=9
9×13=117:1+1+7=9
おやおや、何か面白いですね、と言うかナイーブに不思議な気もする。何やら「仕組み」がありそうですね。
全くそのとおりで、この9の段の「構造」は、まあ知ってる人はよくご存じの内容ではあるのですが、単なる「算術」を超えて「数」というものの仕組み、整数のメカニズムを考えるうえで、実は面白いヒントがいろいろ隠されているのです。
一般化した英知:「算数」から「数学」へ
「九九の暗誦」は小学生が習うもので、これは要するに数の計算ができればよい、つまり「算数」の中身です。
しかし、いまチラリとお目にかけた「9の段のちょっと不思議な特徴」みたいなものは「数のメカニズム」ですよね。この両者、つまり「九九」と「メカニズム」の違いが「算数」と「数学」の分かれ目になっているのです。
中学以降「数学」として、文字数xやy、a,b,cなどが登場する代数の思考を教え始めますが、子供によってはここで躓いてなかなか数学にシフトできないケースもあります。
が、数学だって人類の文化が発展する過程で生まれてきたもの。本をただせば、例えば「九九のメカニズム」みたいなものを考える中から出てきたものであって、実は1,2,3・・・という数字を扱う中に法則性を見つけることが出発点。
言い換えるなら「九九」という「常識」を「そんなの当たり前」と思考停止するのではなく、その「源流」を探訪することで、新たな数学的構造を見つけ出してきたのにほかなりません。
今回この「9の段の不思議」謎解きは記しませんが、もしリクエストが多ければ次回、算数パズルの簡単な解説編を書いても、と思います(メディアによって、こんな算数パズルみたいな内容でも、知的好奇心を持って読んで下さる方が多いか、アレルギー的に反応される方が多いか、いろいろ分かれますので・・・)。
ともあれ重要なことは、自分が「丸暗記」したもの、というのは、実はただ丸暗記しただけで、全くメカニズムを理解したことにはなっていない、という基本的な事実です。
「初心」に立ち返る重要さの中には、実はこうした「己の内側にすでに入っているものの『再組織化』」という側面があるように思うのです。
(つづく)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37599
【第4回】 2013年4月19日 南 壮一郎 [株式会社ビズリーチ代表取締役]
一人では社会にインパクトを与えられない
――仲間を巻き込む前にするべきこととは?
【トレンダーズ代表 経沢香保子
×ビズリーチ代表 南壮一郎】(前編)
起業の苦難や楽しさを「仲間づくり」の視点から赤裸々に描いた『ともに戦える「仲間」のつくり方』の著者、南壮一郎氏。今回は、昨年上場を果たしたトレンダーズ創業者の経沢香保子氏との対談の前編をお届けします。トレンダーズの新入社員の前で対談をした2人が考える「人を巻き込む極意」とは?(構成:朝倉真弓)
上場を前に仲間を意識
―― 一人では超えられない壁をどう超えるか?
南?経沢さんとの共通点は、起業して最初に借りた事務所が同じマンションだということです。時期は重なっていませんが、10坪弱の狭い部屋で。
経沢香保子(つねざわ・かほこ)
1997年、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。1999年、創業間もない楽天株式会社に入社。楽天大学などさまざまな新規事業を成功させる。2000年、26歳で女性をターゲットにしたマーケティング会社であるトレンダーズ株式会社を設立。2012年、東証マザーズ上場(日本の女性社長としては現在最年少)。主な著書に『自分の会社をつくるということ』、『日記ブログで夢をかなえる』、『自分らしい人生を創るために大切なこと』など。
経沢?そうなんです。家賃10万円ぐらいのところからスタートしたんですよね。
南?今年4周年を迎えたビズリーチも、2年半前まであのマンションにいました。
経沢?すごい偶然ですよね。縁起がいいマンションです。
南?創業当初、僕は自分で全部やってしまいたい性分でした。経沢さんも、おそらく最初のころはそうだったんじゃないかなと思います。けれど、いい仲間が集まり、仲間にいろいろなことを任せることによって、自分の想像する以上のものができる。会社組織を盤石にするためには人に任せることが大切なんだなと、ここ3年ぐらいで強く実感しました。会社を立ち上げて苦労したことによって、僕の価値観は大きく変わったんです。
経沢?口で言うのは簡単だけど、その「二人羽織状態」をどう楽しめばいいのかについては、体感するのが難しいんですよね。
南?トレンダーズを経営するにあたって、いろいろなフェーズに直面したと思います。経沢さんが「仲間」というものを意識されたのは、いつごろだったんですか。
経沢?上場を目指したときだと思います。それまでは自分一人の力でできるところまでやろうという感じでした。できるサイズだったし、それでよかったんです。特に大きな組織を目指していたわけではありませんでしたから。志が大きくなかったというわけではないのですが、自分の限界はこれくらいかなと勝手に思っていた部分がありました。
南?上場しようと思ったきっかけは何だったんですか。
経沢?いろいろあるんですが、大げさに言うと、結局上場するかしないかは、会社にとってひとつの大きな分岐点だと考えました。上場することは、オーナーの手を離れて社会の一部に根づくこと。上場しなくてもできることはたくさんありますが、私がやりたいのは、社会の変革です。結果を出して市場に愛されないと社会は変えられないと思ったんです。
仲間集めは長期戦!
――自分にできないことができる人を
南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。2007年、株式会社ビズリーチを設立。エグゼクティブ向けの転職市場に特化した、日本初の個人課金型転職サイト「ビズリーチ」を運営。2010年、プレミアム・アウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を開始。2012年、ビズリーチのアジア版「RegionUP(リージョンアップ)」をオープン、2013年2月、IT・Webスペシャリストのための仕事探しサイト「codebreak;(コードブレイク)」ベータ版をオープン。
南?そこをきっかけに上場を目指されたわけですが、仲間集めはたいへんですよね。さまざまなスキルを持つ人に声をかけなければいけない。経沢さんはどうやって仲間を集めていかれたのですか。
経沢?ひとつにはまだ小さい規模のときから新卒採用をやるなど、カラフルなイメージを意識して組織を作ってきました。いろいろなカラーの人たちを採って、描ける範囲を広げたいと思っていたんです。
?やがて、社員の男女比が課題となりました。当初は女性ばかりの会社だったのですが、女性はお客様をすごく大事にするけれど、規模拡大や上場などにはあまり興味がない。他方、男性は野心が大きいので、会社を拡大したいという意欲がある。
?だから、ホスピタリティと意欲がうまくコラボレートすれば、会社として新しい幅が広がると思ったんです。そこで、まずは幹部に男性を招き入れ、男女比率を7対3にまで変えようと思いました。
?その後、本格的に上場を視野に入れたとき、会社にとって何が足りないのかがはっきりわかってきました。たとえばコンスタントに売上を上げるには営業統括が必要であるとか、財務戦略を担える人が必要だとか。そこで、会う人、会う人に「男性の営業のトップを探している」と言い続けて、現取締役の松本を紹介していただきまして。また、自分に足りないものを突き詰めて考えていくことで、私とは正反対の性格だからこそ会社を違った視点から導いてくれる、そう確信した現取締役の岡本にアプローチしました。
南?そういったキーマンに巡り合うまでには、たくさんの人に会っていたんですか。
経沢?はい、私はけっこうしつこいんですよ。この人はと思う人には定期的に連絡を取って、半年に1度は会いにいくんですよね。
?結局、数重視だと相手にも伝わりますよね。お見合いサイトで10人会っているうちの1人なのか、この人がいいと思って口説いているのか。社長として「あなたの人生を引き受けます」ぐらいの覚悟がないと、人を口説くことはできません。
南?実は僕も、追いかけ続けている人が何人かいます。5人から10人ぐらいは常にレーダーの中にいて、3ヵ月から半年ぐらいのタイミングでご飯を食べに行って、「よかったらぜひ仲間になってほしい」とアピールしています。
「想い」を伝え続けることが、仲間を引き寄せる
南?経沢さんは人を巻き込んだり集客したりするのがすごく上手で、それは素晴らしいスキルだと感じています。その“巻き込み力”は、どうやって身に付けたのですか。
経沢?以前は人を巻き込むということに関してあまり意識していませんでした。ですが、振り返ってみると「社会を変革したい」という気持ちを誰よりも強く持っていたから、いろいろな人がある意味「手伝おうかな」という感じで巻き込まれてくれたのではないかなと思います。「社会に対してこれをしたい」、「会社はこうありたい」というこだわりが強くて、そのためならば自分は何もいらないと本気で考えていたので、そこに人が乗ってきてくれたというのが、いままでのパターンです。
?最近は、もっと巻き込む範囲を広げていかなければいけないと思っています。今の世の中は閉塞感が強いので、「トレンダーズには夢や希望がある」とか、「夢がかなえられる」とか、そういう側面がもっと伝わるといいなと。たとえば「抜擢人事」に代表されるような、社員一人ひとりが目立つ仕組みとかですね。
南?そういった想いや仕組みは、どうやって発信していますか。
経沢?創業してからずっとブログを書いているので、それが大きなツールですね。あとは取材を受けることも多かったので、そこを通じて発信してきました。
?南さんはどうやって人を巻き込んでいらっしゃるのですか。
南?僕はとことん、しつこいぐらいに同じことを言い続けるようにしています。僕からすれば同じことを言い続けていても、初めて会う人にとっては初めての言葉ですから。「僕はこういうことをやりたいんだ」と、会った全員に伝える。そのやりたいことが私欲でない限り、必ず響く人は現れます。
経沢?その通りですね。そして、先にどれだけ相手に与えられるかということがすべてだと思うんです。まずは相手のために何かをしたいという気持ちですね。結局は与えた分の8割しか返ってこないかもしれないけれど、「与えたら戻ってくる」という法則をきちんと理解している人は、うまく人を巻き込んでいると思います。でも、欲しがることが先の人は、たいていうまくいかないし、好かれもしません。会話でも同じです。先に褒めれば、けなしてくる人はいませんよね。
→後編は、社長のあり方と、仕事における仲間づくりのコツについてのお話です。お楽しみに!(4月22日更新予定です)
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【第430回】 2013年4月19日 宮崎智之 [フリーライター]
「住宅は今が買い」に踊るべきか、踊らぬべきか?
家探し家族が心得たいアベバブルの上手な見定め方
アベノミクスによる景気回復期待が広まるなか、株式市場と共に盛り上がりつつあるのが不動産市場だ。マンションや一戸建てなどの住宅を扱う業者は、千載一遇のチャンスとばかりに、「インフレや消費税増税が始まる前に住宅を購入するほうがお得」と宣伝し、一棟でも多くの家を売ろうと奮戦している。しかし、リーマンショック発生直前の不動産プチバブルを思い起こすと、こうしたにわか活況の状況は「家探し家族」にとってリスクが大きいもの。クオリティのわりに価格が高い、割高の家を掴んでしまうリスクもある。家探し家族は、足もとの不動産市場をどう見つめるべきか。納得のいく物件を見つけるためには、どんな心得が必要か。(取材・文/宮崎智之、協力/プレスラボ)
アベノミクスで住宅が買い時に?
にわかバブルに沸く不動産市場
「子どもも大きくなってきたので、家を購入したいと思っていました。『アベノミクス効果で、そろそろ住宅が買い時』という雑誌の特集記事が増えて来たので、いい物件が売れてしまわないかと、少し焦っています」
?そう語るのは、事務用品メーカー勤務の40代男性だ。東京都台東区に住むこの男性は、最近、近所に新築物件の内覧会が増えてきたこともあり、週末はもっぱら家族と一緒に物件巡りに費やすという。
?会社の業績は芳しくない。男性自身、「近い将来、給与や賞与が増える可能性はあまり考えられない」という。そんな彼が今目を付けているのが、4000万円台半ばの中層マンション。「仮に35年間の固定金利で住宅ローンを組む場合、現在の給料のままでは生活費を従来より年間50〜60万円近く節約しないけなくなる」(男性)と語る。
?それでも、住宅を購入したいという意志は固い。アベノミクス効果で景気回復への期待が高まるなか、将来の資産価値上昇を見通しているからだ。この男性のように、最近住宅購入に意欲を示す人は増え続けている。
?景気回復局面になると、株式市場と共に活況を呈するのが、一戸建て、マンションなどの住宅市場だ。足もとを見ると、徐々にではあるが、その傾向が見て取れる。
?国土交通省が発表した「平成25年地価公示」によると、依然として全国的に下落傾向が続いているものの、下落率は縮小し、上昇・横ばいの地点が増えている。全国的に見ると住宅地は1.6%下落したが、前年の2.3%と比較すると下落率は改善。
?また、東京圏は0.7%、大阪圏は0.9%、名古屋圏は横ばいといずれも下落幅を縮小している(地価公示は毎年1月1日時点の価格を算出し、前回調査と比較)。報告書によると、「低金利、住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支え」などが原因とされている。
?足もとでは消費税増税を控えていることもあり、消費者の駆け込み需要も見込まれているほか、3月29日に参議院本会議で可決された税制改正法案では、住宅ローン減税の拡充が決定された。「14年4月入居分から住宅ローン減税の最大減税額を現行の200万円から2倍となる400万円(長期優良住宅・認定低炭素住宅は500万円)に拡大する」(2013年4月4日付、住宅産業新聞)というのだ。
?こうした追い風に「アベノミクス効果」が上乗せされれば、不動産市場は顕著な復活トレンドに乗るのではないかという期待は大きい。「これから不動産は儲かるかも」という見通しのもと、REIT(不動産投資信託)などの投資商品にも資金が流れ込んでいる。
千載一遇の追い風に奮闘する業者たち
住宅人気は本当に盛り上がっているか?
?実際、住宅人気は盛り上がっているのか。東京カンテイ市場調査部の中山登志朗・上席主任研究員は、「活況に沸く不動産市場において、『アベノミクスの影響で不動産が売れている』という事象はまだ確認できていません。現状では、消費税増税前の駆け込み需要や、相続税の改定のほうが影響としては大きいのでは」と分析する。
?中山研究員によると、価格変動率の小さい不動産市場は、株価や為替と比べて動きが見えてきにくいものだという。
「ただ、株で短期的に利益を出した人たちが、不動産に資産を付け替え、結果的に不動産価格が上がるという可能性は十分あります。民主党政権下のようにずっとデフレのままであれば、待てば待つほど不動産価格が下がるため買い控えするという心理が働きますが、インフレを政策目標に掲げる安倍政権に変わったタイミングで、『安いうちに買おう』という意識が広がることはあり得ること」(中山研究員)
?そう考えると、確かに今は「待ち」から「買い」に転じる潮目に当たる時期と言えそうだ。2008年のリーマンショック以降、低迷を続けた不動産市場だが、期せずして好条件が出そろった感のある今、業界関係者は沸いている。
?彼らは、「今こそが千載一遇のチャンス」とばかりに、「アベノミクスでインフレが本格化し、住宅価格や金利が上昇する前に早く購入した方がお得」「消費税増税が始まってから買うと負担が増える」といった宣伝文句を繰り出し、消費者に住宅購入を促すべく、奮闘している。冒頭で紹介した男性も、こうした宣伝文句に焦っている側面があるだろう。
ある程度の勉強と情報収集は必要
焦らず資産価値を見極めるべき
?しかし、初めて住宅を購入する人とって、潮目を正確に判断することは難しい。アベノミクスへの期待が膨らむ今は、家探し家族にとって本当に住宅の「買い時」なのだろうか。
?前出の中山氏は、「一般に市況が動きやすいときは、不動産を購入するタイミングとして頃合いよしと考える人が多くなる」と前置きしつつ、こう警鐘を鳴らす。
「当然のことですが、不動産は高額な商品のため、ある程度の勉強と情報収集が必要。洋服やパソコンなどの消費材とは違って、好みを基準にして買ってしまうのはリスクが高い。居住用の物件を買うとしても、『将来いくらで売れるのか』『いくらで貸せるのか』という出口の部分も精査しておかないと、資産価値が目減りしてしまうリスクを負うことになります」(中山氏)
?また、来年4月に消費税が8%に上がることから、不動産の駆け込み需要が見込まれているが、これも吟味の余地がある。安倍首相は景気動向を判断して増税を実行するかどうか決めるとしている。今後は参院選の集票を睨んで、増税の先送りに動く可能性もある。そう考えれば、焦って買わずにしばらく状況を見据えるのも手だ。
?総じて、「不動産価格が上昇するタイミングが本当に訪れるかどうかについては、可能性の域を出ず、現段階では慎重な見方をしたほうがいい」というのが中山研究員の見立てだ。
「仮に消費税が予定通り上がったとしても、たとえば5000万円の物件を購入するとして、消費税が8%に上がる場合の価格をざっくり計算すると、100万円いくかいかないか程度。情報に踊らされず、物件のポテンシャルをきちんと確かめて買うほうが重要です。それを考えずに不動産に飛びつくのは危険です」(中山研究員)
今、家を購入したい人が注目すべき
生活利便性、交通利便性、居住快適性
?とはいえ、ここまで「不動産のプチバブル到来」がメディアで騒がれているなか、気になってしまうのが消費者心理というもの。前述のように、今は家を買うにあたって悪いタイミングとも言えない。「やはり今、購入したい」と考えている人は、どのような点に気をつける必要があるのだろうか。
?一般的に、価値の上がる不動産を見分けるためには、「生活利便性」「交通利便性」「居住快適性」などに目を配る必要がある。当然と言えば当然だが、将来不動産の資産価値が上がるかどうかは、そういった「価値」との相関関係が強い。自身の住まいとして気に入っているかどうかだけではなく、資産性も考慮して物件を選ぶ必要がある。
?中山研究員が生活利便性の観点から注目しているのが、川崎市幸区。「東芝の事業所跡に出店した商業施設『ラゾーナ川崎』が開業して以降、分譲マンションが多く建ったことで、利便性や娯楽性が高まり、エリアのポテンシャルが高まっている」(中山研究員)
?また、同じ川崎市の武蔵小杉周辺も注目で、「タワーマンション建設が継続的に進んでいることに加え、東急東横線が副都心線などに乗り入れて利便性が増した。渋谷を通過駅として、新宿・池袋方面までダイレクトに行け、乗り換えなしで長距離の移動が行えるようになったインフラとしての効果は非常に大きい」(中山氏)という。さらに、東京スカイツリー開業により、東武線沿線の不動産開発も本格化し始めている。
?思えば、リーマンショックが起きる直前の2007〜2008年前半頃も、不動産市場はプチバブルに沸いていた。一部では、クオリティに見合わない高価格で販売されていると思しき住宅も少なくなかった。
?足もとで「アベノミクス」が高々と喧伝され、不動産の購入意欲が高まっているが、家探し家族はいま一度冷静に、「本当に今、買わなければいけないのか」「購入しようとしている住宅の資産価格は、実際どれくらいなのか」を吟味したほうがよさそうだ。
http://diamond.jp/articles/print/34892
【第2回】 2013年4月19日 深田晶恵 [ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役]
こんな理由で家を買ってはいけない!
その2「消費税が上がるから」
景気回復、さらに来年4月からの消費税増税、史上最低金利の今、家を買うなら今かも!と前のめりになる人たちが増えています。しかしちょっと待って。住宅ローンは大きな借金です。今、巷でよく聞く「住宅購入の理由」が本当に正しいのか、専門家の深田晶恵さんに語っていただきました。
第2回目の本日は、最近テレビや新聞、雑誌で話題にのぼる「消費税が上がる前に買った方がトクかどうか」に迫ります!
深田晶恵(ふかた?あきえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年、北海道生まれ。外資系電機メーカーを退職後、96年にFPに転身。日本経済新聞、日経WOMAN、日経ビジネスAssocie等でマネーコラムを連載中。国土交通省「住宅ローン商品改善ワーキングチーム」および「消費者保護のための住宅ローンに係る情報提供検討会」、住宅金融普及協会「住宅ローンアドバイザー運営委員会」委員を歴任。こうした委員会で金融機関と不動産事業者に住宅ローンのリスクの説明を義務づけるガイドライン作りを提唱するのが目下のライフワーク。主な著書に『30代で知っておきたい「お金」の習慣』『「投資で失敗したくない」と思ったら、まず読む本』他多数。
twitter:
http://twitter.com/akiefukata?
生活設計塾クルー
http://www.fp-clue.com/
来年4月から消費税は8%に!
税金アップ前に買った方がおトク?
?来年4月に消費税の増税を控え、「増税前に住宅を買うべきかどうか」をテーマに取材の依頼を受けることが増えています。住宅はおそらく「人生で一番高い買い物」ですから、消費税増税が気になるのは無理もないでしょう。
?消費税率は、2014年4月から8%に、15年10月からは10%にアップする予定。数千万円の買い物をするのに3〜5%も負担増になるとあっては、駆け込みでマイホーム購入に踏み切ろうと考える方が少なくないはずです。
?結論から言うと、増税により驚くほど負担が増えるわけではありません。むしろ、資金的な準備ができていない人は、「増税になるから買わなくては」と購入の”理由付け”にすることを避けましょうとアドバイスしています。
?駆け込み需要が発生すれば、増税後にはその反動も起きるもの。消費税率引き上げ後に住宅市場が急に冷え込むのは、望ましいことではありません。このため、2013年末で期限切れになる予定だった住宅ローン減税は延長・拡充されることになりました。
住宅ローン減税があっても
まるまる400万円戻る人は少ない!
?住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んでマイホームを買う場合に、ローンの残高に応じて納めた所得税が戻り、住民税の一部が安くなる制度です。現行の制度では、2013年入居の場合、住宅ローンの年末時点の残高のうち2000万円までを上限として、1%相当額が10年間にわたり税金が安くなります。
?つまり、「最大20万円×10年間=最大200万円」の負担が軽減されるわけです。そして、消費税がアップする14年4月からは、住宅ローン減税の対象となる年末時点のローン残高が4000万円に引き上げられて「最大40万円×10年間=最大400万円」が減税されることになりました(一般住宅の場合)。
?もっとも、住宅ローン減税は「納めた税金が戻ってくる・安くなる」制度ですから、もともと納税額が少ない人の場合、仮に年末時点の住宅ローン残高が4000万円を超えていたとしても、減税額は40万円に満たないケースが多いでしょう。
?たとえば年収500万円、妻が専業主婦で小学生の子どもが2人いる家庭の場合、増税後に減税の対象となる税金は24万円程度です。上限が40万円だとしても、減税効果は約24万円ということになります。国は、減税の恩恵が少なくなる所得層について、ローン減税に加え現金給付も検討しています。住宅ローン減税による最終的な軽減額は、所得額や住宅ローンの借入額などによって変わることに注意が必要です。
土地代には消費税がかからない!
消費税を過大に見積もっているかも?
?また、「消費税アップで不動産価格の3%、5%に相当する額だけ負担が増える」と思い込んでいる方は、実はマイホーム取得にかかる消費税を過大に見積もっているかもしれません。
?一般には不動産を購入する機会というのはめったにないものなのでご存じない方も多いのですが、不動産価格のうち、消費税が課税されるのは建物部分のみです。土地代には、消費税はかかりません。
?うっかり、消費税額を「2013年までは4000万円×5%=200万、2014年からは4000万円×8%=320万円だから、120万円も負担が増える」と計算していたとしたら、それは間違いです。
?たとえば税抜き価格4000万円のマンションを購入するケースで、土地代が4割、建物代が6割とすると、消費税の課税対象になるのは2400万円。2013年までは「2400万円×5%=120万円」だったものが、2014年からは「2400万円×8%=192万円」になるわけで、負担増は72万円ということになります。
?また、これも意外に知られていないのですが、不動産会社を仲介として個人の売り主から中古住宅を購入する場合、消費税はかかりません。マイホームを売却する方が会社員など一般の方人なら、消費税の課税業者ではありませんから、消費税は課税されないのです。もし中古物件購入を視野に物件を探すなら、消費税増税による負担増は、不動産会社へ支払う仲介手数料にかかる消費税の分くらいです。
?もちろん、マイホーム購入時は引っ越し代や家具購入費、登記にかかる手数料など諸費用にも消費税がかかりますから、消費税率アップによる影響はもう少し多めに見積もる必要があります。しかし、不動産取得についていえば、消費税増税の影響は「思ったより少なそうだ」と感じる方が多いのではないでしょうか。
消費税だけが原因で
買い急ぐとあとで後悔する!
?このように、住宅ローン減税拡充と消費税増税の両方について実際の影響を考えてみると、「消費税増税の前と後ではどちらが買い時なのか」と迷ってしまうでしょう。実のところ、住宅ローン減税で消費税増税分の負担をカバーできるケースもあれば、カバーし切れないケースもありますから、「こっちのほうがお得だ」と言い切ることはできません。
「そのうちマイホームを買いたい」と考えている人にとって、消費税増税は「これをきっかけに思い切って買ってしまおう」と背中を押す要因になるでしょう。しかし、「増税になるから」と住宅を買い急いでしまうのは大変危険です。
?というのも、本来、家を買うタイミングは税制などの外的要因ではなく、「頭金や諸費用に充てられるお金が十分に貯まった」「家族構成が固まった」などの内的要因で決定すべきものだからです。
?私はいつも、頭金と諸費用を少なくとも物件価格の2〜3割は貯め、さらに「万が一の時のためのお金」を200万円程度は手元に残したうえで住宅購入に踏み切るようアドバイスしています。近年は銀行間の住宅ローン獲得競争が激化しており、その結果として頭金ゼロでローンを組むこともできるようになっていますが、「借りられること」と「返せること」は別の話。頭金ゼロで借入額がふくらめば、その分だけ利息負担が増えて返済期間が長引き、将来、返し切れなくなるかもしれません。
?そもそも、「消費税増税前のほうがお得だろう」と住宅購入を急いでも、十分な頭金もないままに住宅ローンを組めば、利息負担が増すことで長期的にはマイナスになることも考えられますから、本末転倒なのです。
未婚、子どもが増える可能性のある人は
焦って家を買ってはいけない!
?また、まだ結婚していない人や、これから子どもを持ったり子どもが増えたりする可能性がある人は、焦って住宅を買わないほうがいいと思います。「予定外に子どもがもう一人生まれて、家が手狭になってしまった」「子どもが増えて教育費負担が重く、住宅ローン返済が厳しくなった」などの理由で、「早く買いすぎたかも……」と後悔する人は少なくありません。
?私がこれまで家計の相談に乗ってきた方の中には、「ずっと独身に違いないから」と一人暮らし用のマンションを買ったのに、トントン拍子に結婚が決まって「今のマンションと住宅ローンをどうすればいいですか?」と駆け込んでくるケースもありました。
?住宅購入は、十分な自己資金を貯めたうえで、ライフスタイルがある程度見えてきたタイミングで、良い物件との出合いを待って決めるべきです。後で「こんなはずではなかった」ということにならないよう、「消費税増税」という言葉に踊らされないようにしましょう。
(取材・文?千葉はるか)
次回の掲載は4/26(金)です。
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■2014年から消費税アップ!前と後ではどっちが買い時?
■「固定」と「変動」のおいしいトコ取り、「金利ミックス返済」の活用法
■ついに史上最低金利に突入!借り換えのラストチャンス到来!
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http://diamond.jp/articles/print/34805
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