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(回答先: ≪斎藤貴男 著『消費税のカラクリ』 第1章 消費税増税不可避論を巡って より抜粋≫ 投稿者 Roentgenium 日時 2012 年 4 月 08 日 00:48:22)
(1頁からの続き)
〔斎藤貴男 著『消費税のカラクリ』 第2章 消費税は中小・零細企業や独立自営業を壊滅させる より P.48−P.65〕
■間接税?直接税?
あれから20年余。この間の免税点の引き上げで、駄菓子屋さんも商店街も、その殆んどが納税義務者になった。一方では長引く不況で市場全体が縮小し、競争の激化は著しい。消費税率も3%から5%へ引き上げられ、彼らが自腹を切るウェイトは益々高められてきた。
読者には、ここで是非考えてみて貰いたい問題がある。消費税とは間接税なのか、それとも直接税なのだろうか。多くの人は間接税だと思い込んでいるはずだ。実際、どの解説書にもそう書いてある。だが、ちょっと待ってほしい。
一般的に両者の定義は、《法律上の納税義務者と担税者(租税を実際に負担する者)が一致することを立法者が予定している租税を間接税等という》(『有斐閣経済辞典』第4版)。消費税を納税義務者ではない消費者が負担しなければならないのであれば確かに間接税だが、実際にはこうして、転嫁出来るの出来ないのという現実がある。
自腹を切らされれば納税義務者と担税者が一致してしまい、そうなる可能性を立法者が承知していたなら、これは直接税だということになりはしないか。そもそも本当に間接税なら滞納など発生しない。つまり、消費税は間接税と直接税の2つの顔を持っている。鵺(ぬえ)のような税制なのである。
■免税点引き下げを巡る国会論戦
中小・零細事業者にとっての消費税の本質が、国会論戦でもかなり浮き彫りにされた時期がある。2003年の1月から3月にかけて、翌04年4月からの消費税の免税点引き下げを含む「所得税法等の一部を改正する法律案」の審議だった。
日本共産党が衆参両院で追及していた。ここでは03年3月25日の参院財政金融委員会〔※第156国会 財政金融委員会 第4号〕における池田幹幸議員(1941−)と、主に小林興起・財務副大臣(1944−)とのやり取りを紹介しよう。重要な内容とニュアンスを含んでいるので話し言葉の要約は行わず、やや長い紹介になるが、容赦されたい。
免税点が3000万円に設定されていたのは、それ以下の規模の事業者の事務負担を軽減する目的だったはずだが、これを引き下げるのは事情が変わったということなのか、などとジャブを繰り出しながら、池田議員が畳み掛けていく。
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池田 消費税創設時の小規模零細業者の実態は現在も何ら変わっておらず、いわんや、デフレ経済の進展や価格競争の激化により、仕入れに関わる消費税分の価格転嫁がより困難になっており、いわゆる益税どころか、むしろ損税となっている。
こうした実態を考慮せずに免税点制度を縮小・廃止することは、消費税分を転嫁出来ないことによる企業収益の圧迫要因を増加させるだけでなく、事務負担を過度に増大させ、小規模事業者の経営に重大な悪影響を及ぼすものであるということで、(中略)先ずその上に立った対策を考えるべきじゃありませんか。
小林 御承知の通り、一方では国民の皆様から、何となく自分達は消費税を取られているんだけれども、それが本当に国に納税されているのかと、そういう疑問の声が上がって来ているのも御承知の通りであります。
そういうことを配慮致しまして、やはり国民の皆様に消費税払って頂いたらそれは税当局に来るんだということも示していかなければならないということの中に、それじゃ3000万以下でいいのか、1000万以下でいいのかとか、そういうようなことになってくるわけでありまして、(中略)先生仰る通り、大変だというような方々に配慮しまして、色々と相談業務或いはPR業務ということについては税当局としても更に一層頑張っていきたいというふうに考えているところでございます。
池田 引き続き免税点の引下げについてなんですが、これは経済産業省がアンケート調査やっている。(中略)そこによりますと、法案の(中小企業)特例縮小に関して、仮にあなたの会社が、商店が課税業者となる場合には消費税を価格に転嫁出来ますかと聞かれたのに対して、これに対する回答、売上げ2500万から3000万円の階級で殆んど転嫁出来ないと答えている、それから一部しか転嫁出来ないと答えている、その合計が45.4%です。全階級の平均で見ますと52.3%です。(中略)この理由は何だと思われますか。
小林 何と言いますか、全部消費税は納めなければならぬですけれども、或いは力関係で、業界なんかで、消費税を俺は払わない、まけろとか、そういうようなことがこの日本でございますからあるのでないかと、中小企業の実態等を見た感じで、私は個人的にはそんなことも推測するわけでございますが、しかし理論的に言いますと、やはりそこは払って頂く、納税義務があるということでやってまいりませんと、いつまでもそういう悪い、一部にあると言われております習慣を残して、いや、結局そういうものはまけてしまえばいいんだということではこの消費税が普及してまいりませんので、やはり払って頂くことが当たり前なんだという風潮をどこかできちっと作っていかなければいけないということもありましょう。
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〔資料〕財務省:所得税法等の一部を改正する法律案 各PDFファイル
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/177diet/st230125h.htm
〔資料〕財務省:第177回国会における財務省関連法律 提出した法律一覧
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/177diet/index.htm
〔資料〕財務省:所得税法等の一部を改正する法律案要綱(PDF、全50頁)
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/177diet/st230125y.pdf
〔資料〕参議院会議録情報:第156国会 財政金融委員会 第4号 2003年3月25日 ※全文はこちらを参照
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/156/0060/15603250060004a.html
〔資料〕消費税 免税点引き下げ批判 参院委で池田議員「現場の実態を無視」 - しんぶん赤旗 2003年3月26日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-03-26/02_03.html
■経産省のアンケートが示す価格転嫁の実情
小林副大臣の話は論点のすり替えが甚だしい。現実の消費税が極めて不公正な税制である現実を百も承知の上で、そんなことは関係ない、納税義務者が払うことになっているのだから黙って払えばよいのだと居直ってみせていた。
とは言え彼が消費税の現実の一端を認めざるを得なかったのは、池田議員が示した経済産業省の調査結果があればこそである。2カ月前の衆院予算委員会(03年1月24日)で、やはり共産党の佐々木憲昭議員(1945−)の質問に対する平沼赳夫経産相(1939−)の答弁を受けて同省が公表した、前年2002年の8月上旬から9月上旬にかけての全国の11717事業者を対象に実施されたものだ(【図表6】)。
売り上げの規模が小さくなるほど一方的な負担を強いられていく実態がよく分かる。尚、回収率は77.3%の高率だった。
さて、池田議員の追及は続いた。1992年度と2001年度の比較で、法人税の滞納発生割合が半減しているのに対して、消費税のそれは逆に増加しているなどといったデータを、この辞典における当局の最新資料で示しつつの質問に、政府側は国税庁の村上喜堂・課税部長が答えた。
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池田 これは消費税の滞納がやっぱり深刻になってきているということを実態に示しておるわけですね。そうすると、じゃ、その理由は一体何なんだろうかということなんですが、如何にお考えでしょうか、理由。
村上 (中略)法人税の場合、御案内の通り、赤字になれば法人税の納税はございませんから、やはり経済情勢が悪いと、その企業の経営状態が悪くなってくると赤字になってまいります。そうしますと、納税がございませんから、したがって滞納も発生しないということだと思います。消費税は、一方、赤字黒字関係ございませんから、経済情勢に沿って滞納があるのではないかと思います。
池田 正にその通りなんです。ここのところが大事なところなんですね。
そうしますと、消費税の場合、売上げが伸びないと、景気が悪くて。そこで、売上げが落ちている中で、消費税が転嫁出来ないと、消費税も自己負担している。こういう実態が今の(滞納の)状態を悪くしているわけなんですから(中略)。
少なくとも、免税点引下げということになりますと、この実態をむしろ悪化させる、そういうことになるということじゃありませんか、今の部長の説明からいっても。当然、論理的にはそういうケースになりますね、大臣。
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消費税は事実上の売上税なのだ。政府税制調査会や財界、マスコミが口を揃える「消費税収は刑期に関係ないので安定している」という説明の陰には、こんな実態があった。ただでさえ赤字の中小・零細事業者が、顧客との力関係で弱いが故に消費税分を価格に転嫁出来ないか、消費税分以上の値引きを強いられ、それでも消費税を納めろと迫られる。滞納だらけにならないほうがおかしい。
再び登壇した小林副大臣は、しかし、更にのらりくらりと居直りを進めていった。
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小林 仰る通り、この状況下で滞納が増えるか増えないかと言えば、多分増える可能性もあろうかと思うわけでございますが、しかし、税というのを取る、頂く方から見ますと、滞納がありそうだから取らないとか、そういう考え方でなくて、やはり頂くところから頂くと。頂けるというか、そういう状況にあるわけですから、売上げがあって、そこから頂くわけですから。理想論に基づいて、理念に基づいて、さっき言いました公平性という理念に基づいてきちっと頂くということで課税をするわけでございます。
課税をした後は実態論になるわけでございまして、(中略)ただ、何れに致しましても、ずっと国民の間から出てきております、私達が納めた消費税が何処かへ消えちゃっているんじゃないかと、いわゆる益税解消という議論もございますから、そういう面での公平性というのは非常に大きく担保したという形になるのではないかと思っております。
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■「益税」への根強い誤解
またしても益税論が持ち出されていた。ここで「益税」についての典型的な認識を挙げてみよう。インターネット上の「ヤフー知恵袋」で、ベストアンサーに選ばれていた説明だ(回答日時2009年1月4日)。
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消費者は、どんな会社でもどんなお店でも、モノやサービスを購入した場合には消費税を支払いますよね?この支払った消費税は、その会社やお店に支払ったわけではなく、国に税金として
支払っているわけです。会社やお店は、消費者から税金を預かり、後々その預かった消費税を国に納めるという仕組みになっています。
しかし、実際には全ての会社やお店が、国に消費税を納めているわけではありません。例えば、会社設立後2年間は消費税の納税義務はありませんし、3年目以降であっても、年間の売上が1000万円を超えないような所は消費税を納めなくてもよいのです。(中略)そうすると、国に支払うつもりで消費者が支払った税金が、国には納められず、そのお店の儲けとなっていることになります。これが、消費税の益税問題と呼ばれるものです。
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誤解に満ちた記述である。池田幹幸参院議員の質問にあった「いわゆる益税どころか、むしろ損税となっている」という指摘を思い出して貰いたい。先に名古屋市の駄菓子屋さんや東京都内の商店街の話題で触れた、事業者が仕入れの際に支払う消費税分のことは無視されている点にも要注目だ。
匿名の回答者が徴税関係者でなく、善意の第3者であるなら、しかし、余り責めるわけにもいかない。問題は、他ならぬ国税庁が国民を積極的に欺き、権力のチェック機能たるべきジャーナリズムがその片棒を担ぎ続けてきた現実にこそあるからだ。
早い話が、ここに取り上げた国会論戦を正面から報じた商業マスコミは存在しなかった。国会という公の中の公の場で明らかにされた消費税の本質を、だから、この国の納税者は誰も知らないままでいる。陰謀論の類(たぐい)では決してない。次項で決定的な証拠を示そう。
〔資料〕「消費税における益税問題」について教えてください。 - Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1021919445
〔資料〕消費税増税推進論などの背後にあるメディアと国家の共犯関係 〜日本には「自由なメディア」はないのか?!問われる騙される側の国民の責任 - 川本幸立のブログ 2012年2月4日
http://yukitatu.kawamoto.main.jp/?eid=562
■消費税の本質を浮き彫りにした重大判決
消費税は憲法違反だとする国家損害賠償請求事件の判決が東京地裁民事第15部で言い渡されたのは、1990年3月26日のことである。
元参議院議員で「サラリーマン新党」の最高顧問だった青木 茂(1922−)氏ら合計20人が“益税”問題を俎上(そじょう)に載せて、「消費税法の納税者は消費者であり、事業者は徴税義務者である」との解釈を前提に、「にもかかわらず消費者から支払われた消費税が国庫に納付されない、事業者によるピンハネを認めている仕入れ税額控除、簡易課税、事業者免税点の各制度は、恣意(しい)的な徴税を禁じた憲法84条と国民の財産権を定めた同29条に違反し、また事業者間に不公平な扱いを齎すものでもあるので、法の下の平等を定めた同14条にも違反している」旨の訴えを起こしていたのだが、鬼頭季郎裁判長(きとう すえお 1941−)はこれを棄却した。
すなわち消費税は憲法に違反していない、合憲であるとの判断だ。1989年4月の導入から1年、それまでも批判の的だった“益税”に司法がお墨付きを与えた格好の重大判決だったにしては、極一部の例外を除いて、マスコミ各社の扱いが妙に小さかった。
ともあれ判決文を精読してみる必要がある。事の善悪を措(お)く限りにおいて、それは消費税というものの本質を浮き彫りにした、見事な理解ではあった。この判決内容が広く伝えられ、真っ当な議論が積み上げられていたなら、その後の税率アップも、近年における重税化への動きも、起こり得なかったのではないか。
判決理由は述べていた。
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――納税義務者とは誰か?
《税制改革法11条1項は、「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格に鑑み、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする」と抽象的に規定しているに過ぎず、消費税法及び税制改革法には、“消費者が納税義務者であることはおろか、事業者が消費者から徴収すべき具体的な税額、消費者から徴収しなかったことに対する事業者への制裁等についても全く定められていない”から、消費税法等が事業者に徴収義務を、消費者に納税義務を課したものとはいえない》
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つまり、事業者は消費者(小売業以外の業種では顧客一般)に対する商品やサービスの販売価格に消費税分を上乗せしてもよいし、しなくても構わない。消費者の側(同前)もまた、購入価格に消費税分を支払ってもよいが、支払わなければならないとは定められていないと言うのである。
幾つかの制度は事業者間の不公平を招きかねないのではないかとの指摘には、税率の低さを理由に甘受を迫っている。論理的であろうとする態度そのものが、この判決には欠落していた。
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《右制度(仕入れ税額控除)は、結果的には、全く免税業者からの仕入れに頼らない業者と、全面的にそれに頼る業者との間に、納税義務上差異が生ずる結果を齎す。しかしながら、理論的に右のような差異が生じ得るとしても、多くの業者は免税業者からもそうでない業者からも仕入れを行ない得る。
右制度によって利益を受ける程度は、業者によって幾分異なりはするものの、その恩恵を受ける機会は理論上はその業者にもあること、“控除割合が3%であること、並びに仕入先が免税業者である確率がそれほど高いものであることを消費税は予定していないこと”を考慮するならば、前記制度による差別の程度が、著しく不合理な程度に達しているとはいえない。(中略)
同程度(事業者免税点)によって“免税業者が得る可能性のある最大限の利益は対価の3%以下であり、割合としては然程高くはない”。しかも、これは、免税業者が消費者に消費税分を無条件に3%全部転嫁した場合に理論上最大値の差別が生じ得るものに過ぎない》
――憲法84条違反ではないのか?不公平な徴税を危惧する追及に対する判断に至っては、およそ不誠実としか言いようがない屁理屈が展開された。重大な部分だから、眼光紙背に徹して頂きたい。
《先に述べたように、“消費税相当分の転嫁の仕方は、事業者の対価等の決定如何に委ねられており”、その運用如何によっては、消費者に対する実質的な過剰転嫁ないしピンハネが生じる可能性もなくはない。この点において、消費税負担者である消費者側から見れば、消費税分につき、事故の負担すべき額の決定が恣意(しい)的に行われるように見える余地はある。
しかしながら、“消費者が消費税相当分として事業者に支払う金銭はあくまで商品ないし役務(えきむ)の提供の対価としての性質を有するものであって、消費者は税そのものを恣意的に徴収されるわけではない”。そして、法律上の納税義務者である事業者が、恣意的に国から消費税を徴収されるわけでもない。したがって、消費税法は、租税法律主義を定めた憲法84条の一義的な文言に違反するものではない》
(『判例時報』1344号より)
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小売商と消費者との間(事業者と顧客との間)における、消費税とは要するに物価なのだ。転嫁出来るも出来ないも、とどのつまりは売る側の腕次第。力関係で勝れば転嫁に加えて便乗値上げも出来ようが、劣れば自分で被るしかない羽目に陥らされる“けものみち”。
多国籍企業のグローバル・スタンダードを、町場の金物屋さんにも適用するとの宣言だったのかも知れない。最終的に誰が負担しようと、徴税当局は取れるものが取れさえすればよいのである。
消費税とは力関係が全てであり、問題だらけなのは明々白々だけれども、税率も低くて全体的には大したことがないのだし、お国の為なのだから我慢しろとだけ、この判決は言っていた。税率を引き上げる場合はこの限りではない、とも言っていない。
先に消費税の本質を浮き彫りにしたと書いたが、その大部分は被告である国側の主張を容れたものである。とすれば消費税とは国民の寛容――と言うより実際は不案内か無知――を前提にのみ成立し得る、とんでもなく不誠実な税制なということになりはすまいか。
■“益税”“損税”に司法がお墨付き
元々は消費者の視点から、益税許すまじという趣旨の訴訟だった。これはこれで一般の支持を受け易い、突き詰められると厄介な論理で、国としてはこの段階から矛盾を認めてしまうと消費税そのものが成り立たなくなる可能性がある。
そこで当時の大蔵省(現・財務省)は、消費税のつもりで消費者が支払う金額はあくまでも物価の一部であり、“益税”などという概念は法理論的に存在しないという主張を展開し、東京地裁もこれを自らの判断とした。実体経済の上でどうであろうと、そんなものは結果論でしかない、と。
と同時に、判決は、同じ理屈で、事業者の“損税”の合法をも含意(がんい)させていた。《消費者が消費税相当分として事業者に支払う金銭はあくまで商品ないし役務(えきむ)の提供の対価としての性質を有する》と言うのであれば、価格に転嫁出来るかどうかは事業者の裁量か能力次第、自己責任ということになる。
免税点の引き下げや市場競争の激化などで“益税”が実体経済においても消滅しつつあり、かつ税率の大幅引き上げが構想されている現在に至って、この時の判断が消費税の悪魔性を正当化する機能を果たそうとしている。
力関係による下請けいじめの横行は当初から懸念されたことだ。
公正取引委員会も、消費税が導入される3カ月前の1988年12月末、消費税の負担を下請けに皺寄せしないよう求めるガイドラインを公表。この方針を徹底するとして、89年の年明けには通産省(当時)・中小企業庁と共に全国432の業界団体とスーパー、百貨店、メーカーなど資本金1億円以上の企業6470社に通知していたが、実効が上がったとは言い難い。
消費税に絡む下請けいじめは、後に2004年4月の法改正で、免税点の引き下げなどと共に商品の値札を消費税込みとする「総額表示方式」が義務付けられた際にも注目された。
例えば本体価格1910円の商品に5%分の税額を乗せると表示が2000円を上回ってしまうので、「税込価格1990円」の値札で割安感を維持する為に納入業者に値下げを強いる、などといった行為が横行したのだ。
公正取引委員会も事業者間の取引に関する調査や厳格な対応に努めたとされるが、所詮は対症療法に過ぎない。消費税という仕組みの根幹がピンハネも下請けいじめも許容している以上、時間の経過につれて、この税制が経済社会の陰惨な力関係をより深刻にさせてきている現実も、弱い業者はそれに甘受せよと言い放った前記・小林興起財務副大臣のような国会答弁もまた、自然の成り行きではあるのだった。
東京地裁の判決が言い渡されてから8カ月後の1990年11月26日、今度は大阪地裁民事19部(河田 貢裁判長)がほぼ同じ内容の判決を言い渡した。やはりサラリーマン新党を中心に、全国から公募した原告団47人による訴えで、同党は東西2つの何れの訴訟でも控訴しなかった為、これらの判決はそのまま確定した。
〔資料〕消費税の転嫁に関する一考察〜税制改革法11条に立ち返って〜 By 浅野あずさ(PDF、全120頁)
http://www.sozeishiryokan.or.jp/award/z_pdf/ronbun_h21_11.pdf
(3頁へ続く)
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