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(回答先: ≪斎藤貴男 著『消費税のカラクリ』 第5章 消費税の歴史 より抜粋(1)≫ 投稿者 Roentgenium 日時 2012 年 4 月 08 日 01:21:52)
(5頁からの続き)
■日本の源泉徴収制度も戦時財政から生れた
こうして消費税を批判していると、必ず返ってくる反論がある。お前はそう言うが、現にヨーロッパは付加価値税でうまくいっているではないか、しかも日本よりも遥かに高い税率なのに、誰も文句など言わない、何も問題などないからだ、などと。
これもまた論理のすり替えの典型だ。税制の仕組みとしては似ていても、ヨーロッパの付加価値税と日本の消費税とを安易に比較すること自体がどうかしている。
先ず歴史的な経緯が全く違う。ドイツとフランスについては先に述べたが、他の諸国も含め、ヨーロッパの大型間接税は押し並べて〔※概して、一様に〕第1次世界大戦を契機に導入されていた。戦費調達を目的とする新税、増税に、一般国民が異を唱えることなど不可能な現実に、古今東西、然程の愛があるはずもない。
日本でも、サラリーマン(給与所得者)の源泉徴収制度はまさにそのようにして始まった。日中戦争の最中(さなか)、翌年に真珠湾攻撃を控えた1940年の税制改正。当時の実務書の「はしがき」に残された大蔵省主税局官吏らの檄文に、当時の雰囲気を感じ取られたい(新字・新仮名に改めた)。
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《所謂(いわゆる)準戦時体制から戦時体制へ、更に東亜新秩序の建設を目指す国防国家体制の完成へ――皇国日本の目覚しい飛躍は大きな足跡を印して建設の彼岸へ到達せんとしている。
国家百般の施設は此の時に当って独り税制のみが旧体制の上に止まっていることは出来ない。
即ち新税制待望の声は、既に昭和12年春の第70議会に於ける、政府は速(すみや)かに中央地方を通ずる税制の根本的改正を断行すべしという附帯決議となって現われていたのであった。
そして其の機運は同年7月今次事変の勃発に依って一時阻止されたかに見えたのであるが、其の実、新税制の胎動は、事変費造出の為の数回の増税の間にも生々たる躍動を示していたのであって、永い、4年越しの生みの苦しみを経て遂に機は熟し、“皇紀2600年の光輝ある年に、古い衣裳をかなぐり捨てた、均斉美(きんせいび)逞ましい新税制は誕生したのであった”。(中略)
勤労所得は収入の基礎が最も薄弱である、担税力の最も弱いものであるとして課税上特別に考慮され、比較的好遇されて来たが、戦時財政の重圧の波は之等の階級にまでひたひたと押し寄せて来た。然(しか)し我々は之を強制された貢納とは考えたくない。“租税を通じて万民輔翼の実践へ――租税を通じて至純な奉公の悦びを体得したいのである”。(中略)
“納税者の意志は太陽である。支払者の協力は土である。そうして税務当局の指導は水である。此の中どれが欠けても立派な花は咲かず、実は実らない”》
(小林長谷雄(こばやし はせお), 雪岡重喜, 田口卯一『源泉課税』賢文館 1941年刊行)
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とことん出鱈目が日常化するのが戦争なのである。かくて推進された源泉徴収と、戦後の混乱期に徴税要員の不足等を理由に導入された年末調整とを組み合わせたのが、現在に至るサラリーマン税制だ。
給与所得者が納税の何もかもを勤務先に委ねさせられ、無権利状態を強いられる日本独自の仕組みの矛盾も詐術(さじゅつ)も、1980年代頃までにはそれなりに問題にもされたが、もはや誰も咎(とが)めない。慣らされ切ってしまっている。
外国から眺めれば、随分と“うまくいっている”税制に見えるかも知れない。いや、納税者自身が何も知らないのだから、実際にも“うまくいっている”という言い方も成立してしまうのだろうか。
ヨーロッパの大型間接税もまた、元々は戦争遂行を目的とする大衆課税だった。日本のサラリーマン税制と同じ、その体制の下で戦後の社会が築かれてきた。
更に第2次世界大戦での大増税が社会システムへのより深い定着を促し、ヨーロッパ統合の大目標が、共通税制としての付加価値税のあり方を完成させていく。国境調整や輸出戻し税のような諸制度を伴う付加価値税は、統一市場化にとって不可欠でもあった。
ヨーロッパの現状は、本書で論じてきたような消費税≒付加価値税の恐ろしさを一通り、かつ幾度となく経験してきた末にある。顧客との力関係で弱い中小零細の事業者が価格に転嫁出来ない問題に照らせば、既に大方の淘汰は済んでしまった状態ではないだろうか。
旅行に行けば小さなグローサリー(食料品店)が、特に田舎には目立つのも確かだが、その事情は容易には分からない。日本よりも競争が激しくなくて一定の利益を確保出来るのかも知れない。或いは個人経営の店のように見えても、実際にはフランチャイズ・チェーンやボランタリー・チェーンの加盟店である可能性も小さくないはずだ。
現代の日本は、とりあえず戦時下にはないとする認識が一般的である。EUに加盟する予定もない。ヨーロッパとは全く状況が異なっている。ヨーロッパ付加価値税率並みの消費税率を目指す必要など全く無いのである。
■付加価値税導入が招いた欧州諸国の混乱
昔の『朝日新聞』は凄かった。経済部を中心に編成された取材班が、大平政権〔※大平正芳(1910−1980)、総理任期:1978〜1980〕の一般消費税構想より遥か以前の1970年、既にヨーロッパで本格的な取材を試みている。パリを訪れた木下和夫(1919−1999)・大阪大学教授(財政学、政府税制調査会委員=当時)が、フランス付加価値税の“生みの親”と言われる前出のモーリス・ローレ(当時はソシエテ・ジェネラル銀行頭取)〔※Société Générale SA―Rothschild〕に面会した際のやり取りが興味深い。
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――税の公平という点から見れば、大衆課税になる間接税よりも、所得の多い人から税金を多く取る所得税のほうが優れているのに、どうしてフランスは間接税を中心にしたのですか。
「増税しようとする時には、所得税を動かすか、間接税に手を着けるか、どちらかだ。2つを比べた場合、我が国の事情では付加価値税(間接税)がいいと考えた。いわば“次善の策”と言うかな・・・・・・」
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どういう意味か。フランスの税制に詳しい在仏日本商工会議所の事務局長の補足説明が、この後に続いていた。
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「俗に“脱税天国”とまで言われるこの国で、所得税や法人税が一番ルーズだ。これらの税を増やすと、“納税者の反感を買ってまた脱税を促す。そこで、まあ無難なほうを選んだ。間接税なら気が付かない内に取れるし・・・・・・」
(朝日新聞社 編『税金―あなたは納得できるか』朝日新聞社 1971年刊行)
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だからと言ってフランスは、付加価値税の逆進性を無視はしなかった。食料品や生活必需品の税率を低く抑え、貴金属や毛皮などの贅沢品には高い税率を掛けたのはこの為だ。「所得税と同じように累進的になっている」と、フランス大蔵省主税局次長が語っていた。
付加価値税を税制の中心に据えるなら不可欠の配慮だと言うのだが、複数の税率が混在すれば、現場の混乱は避けられない。朝日新聞の取材は、この側面にも及んでいた。
オランダが旧来型の一般売上税から付加価値税に切り替えた1969年、政府は商品別の税率一覧表まで作成して新聞に発表した。何処の店でもその表と首っ引(ぴ)きでお客に対応する姿が見られたが、果たして便乗値上げも横行した。
この様子を眺めていたお隣のベルギーは付加価値税の導入までに1年間の猶予期間を設けたものの、結果は似たり寄ったり。或る町では、新規開店したガソリンスタンドが大安売りを始めたが、激怒した同業組合がその隣に更に安い仮の販売所を設置して叩き潰した。
目的を果たした仮販売所は直ぐに畳まれて、町には静けさが戻ったと言う。朝日の記者はブリュッセル在住の日本人による「中世のギルドの伝統を受け継ぐ同業組合のオキテ」云々のコメントで揶揄(やゆ)していたが、こうした社会風土も、ヨーロッパの付加価値税が“うまくいっている”背景にはあるのかも知れない。
■イギリスにもあった中小・零細業者の不利益
付加価値税に批判的な文献も入手した。グラハム・バノック Graham Bannock(−)『付加価値税と中小企業―ヨーロッパの経験と北アメリカにとっての教訓』(二場邦彦 翻訳監修、全国商工団体連合会 1987年刊行)。
バノック氏は自らの名前を冠したコンサルティング・ファーム Graham Bannock&Partners Ltd(GB&P)〔※現・Bannock Consulting Ltd(DAI Group傘下)〕の創設者で、英国政府が中小企業に関する諸問題を検討する目的で設置し、1971年に報告書を提出した通称ボルトン委員会(委員長が投資会社や経営教育財団の会長を務めていたジョン・E・ボルトン氏 John Robert Bolton(1948−)だったことによる)の主任調査員だった人物だ。
バノック氏は英国の「個人企業フォーラム」が1979年3月から82年3月までに合計7回、連続して行った定期調査に言及している。「どの法律があなたの企業に最も不利な影響を与えているか」、「どの法律が改められてほしいか」を中小零細事業主達に尋ねたもので、前者には毎回、後者に対しては一度だけの例外を除いて、何れも「付加価値税」が回答の第1位を占め続けたと言う。
そして、彼はこんな批判を加えているのだ。
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《納税費用の逆進性と中小企業に対する付加価値税税務行政の非効率性がよく知られているにも関わらず、当局は何故これらが税として望ましくない特徴であるかを忘れ易い。実際にこうした特徴が処置されなければならない3つの重要な理由がある。
第1は、経済的効率性が生産の方法や形態に一切の歪みを移転することによって増大させられるということである。“中小企業に相対的に重い負担を課すことが、或る場合には生産を歪め、自然でかつ最も効率的な単位ではなくする”。技術革新と変化に中小企業の重要な役割が与えられているのだが、中小企業に与えられる歪みは現在の経済効果ばかりではなく、成長さえも弱め得るのである。
第2に考慮すべきことは公平さである。“無差別に、社会の異る集団に異る負担を課すことは全く公正ではない”。
第3に考慮すべきことは、どの税も納税と税務行政の費用を伴うということである。これらの費用は社会にとって正味の損失である。諸資源が単に税を管理しまた納付することに向けられる時、その費用を支払う者は損失を被るのであるが、それを相殺する社会的な利益は存在しないのである》
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〔資料〕Robert Schuman(1886−1963) - Genealogy
http://www.geni.com/people/Robert-Schuman/6000000014129660504
http://fr.wikipedia.org/wiki/Robert_Schuman
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E5%AE%A3%E8%A8%80
〔資料〕Jean Monnet(1888−1979) - Wikipedia ※―Rothschild
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Monnet
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%8D
〔資料〕【予告編】刻一刻とあらわになる・・・「ポスト民主主義」社会 - David Icke in Japan 2011年12月12日、他
http://www.davidicke.jp/blog/20111202/
http://www.davidicke.jp/blog/top_blog/list_of_all/
〔資料〕欧州石炭鉄鋼共同体 European Coal and Steel Community(ECSC ※英語の場合) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E7%9F%B3%E7%82%AD%E9%89%84%E9%8B%BC%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%BD%93
〔資料〕欧州経済共同体 European Economic Community(EEC ※英語の場合) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%BD%93
〔資料〕欧州原子力共同体(EURATOM) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%BD%93
〔資料〕関税及び貿易に関する一般協定 General Agreement on Tariffs and Trade(GATT) - Wikipedia ※本部はジュネーヴ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E7%A8%8E%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%B2%BF%E6%98%93%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E4%B8%80%E8%88%AC%E5%8D%94%E5%AE%9A
〔資料〕世界貿易機関 World Trade Organization(WTO) - Wikipedia ※本部はジュネーヴ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E8%B2%BF%E6%98%93%E6%A9%9F%E9%96%A2
〔資料〕松下政経塾 - Wikipedia ※GATT・日本ラウンド終結の年(1979年)に誕生したエージェント養成機関、CSISの下部組織
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E4%B8%8B%E6%94%BF%E7%B5%8C%E5%A1%BE
〔資料〕清和政策研究会 - Wikipedia ※1979年結成(同年、小泉純一郎は第2次大平内閣で大蔵政務次官に就任)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A
〔資料〕≪中田安彦 著『世界を動かす人脈』 より抜粋(11)≫|MelancholiaT ※三極委員会と宮澤喜一、松下政経塾の正体、他
http://ameblo.jp/antibizwog/entry-10942884110.html
〔資料〕カルトの世紀 道徳再武装と松下政経塾 その1〜2 - 不 可 視 の 学 院 2007年10月15日 ※MRA本部はスイス・コー(ジュネーヴから車で1時間半)。ちなみに国連の専門機関である世界気象機関(WMO)の本部もジュネーヴにある
http://black.ap.teacup.com/fukashinogakuin/564.html
http://black.ap.teacup.com/fukashinogakuin/565.html
〔資料〕≪関岡英之 著『国家の存亡―「平成の開国」が日本を滅ぼす』 より抜粋(7)≫|MelancholiaT ※【日経・CSISバーチャル・シンクタンクの顔触れ(新自由主義者達の饗宴)】 【CSIS-HGPI】細川佳代子 【三極委員会】
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〔資料〕金貸し支配と労働運動は繋がっていた? - 日本を守るのに右も左もない 2009年5月8日
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〔資料〕ビルダーバーグ名誉議長 エティエンヌ・ダヴィニオン子爵の研究 - ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 2006年11月9日 ※Société Générale SA
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〔資料〕大平正芳(1910−1980) - Wikipedia ※YMCA、住友財閥、赤字国債発行・一般消費税、環太平洋連帯構想、中曾根政権への継承
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%B9%B3%E6%AD%A3%E8%8A%B3
〔資料〕朝日新聞社 編『税金―あなたは納得できるか』(朝日新聞社 1971年刊行)
http://www.amazon.co.jp/%E7%A8%8E%E9%87%91%E2%80%95%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AF%E7%B4%8D%E5%BE%97%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%8B-1971%E5%B9%B4-%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%A4%BE/dp/B000J9URZU
〔資料〕DAI Group - Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/DAI
〔資料〕John Robert Bolton(1948−) - Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/John_R._Bolton
〔資料〕ボルトン報告書以後のイギリス中小企業 By 外池正治 1978年2月25日(PDF、全70頁)
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/9325/1/HNkeizai0002100010.pdf
◇
【消費税とは何か】
〔資料〕消費税とはなにか? By 松井吉三(PDF、全12頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shouhizeitohananika.pdf
〔資料〕所得階級別租税負担, 1980〜2001 By 松井吉三 2004年11月(PDF、全21頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shotokukaikyubetsusozeihutan1980-2001.pdf
〔資料〕少子高齢化(格差)社会における税制のあり方〜消費税増税しか打つ手はないのか〜 By 松井吉三 2008年1月27日(PDF、全32頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shoushi.pdf
〔資料〕付加価値税の基礎理論から考える輸出戻し税の批判的考察 By 松井吉三 2009年9月15日(PDF、全9頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/hukakachikiso.pdf
〔資料〕日本の消費税の仕組みと特徴、負担構造についての一考察 By 松井吉三 2010年9月22日(PDF、全33頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shouhizeishikumitofutan.pdf
〔資料〕消費課税の理論の変遷についての一考察 By 松井吉三 2010年10月6日(PDF、全10頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shouhikazeinoriron.pdf
〔資料〕消費税における課税標準、税率、対価の返還についての批判的考察 By 松井吉三 2010年10月19日(PDF、全26頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shouhizeinokazeihyoujyun.pdf
〔資料〕消費税における仕入税額控除の調整についての批判的考察 By 松井吉三 2010年11月8日(PDF、全25頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shiirechousei.pdf
〔資料〕付加価値税本質論と消費税改革 By 松井吉三 2010年12月9日(PDF、全5頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/abstract.pdf
〔資料〕消費税における届出書類についての一考察 By 松井吉三 2011年1月18日(PDF、全25頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/todokede.pdf
〔資料〕付加価値税本質論と消費税改革〜フランス付加価値税誕生史の検討を中心として〜 By 松井吉三 2011年3月(PDF、全22頁)
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/fukahonshitsu.pdf
■日本の税率5%は欧州基準なら10%に相当
≪≪ヨーロッパの“累進的な”付加価値税の実態は、そのまま日本の消費税増税論者が如何に好い加減な嘘を重ねているかを物語っていた。彼らは消費税の税率がヨーロッパの付加価値税よりも低いことを嘆き、一刻も早く同じ水準に引き上げなければ財政が破綻すると絶叫しているが、果たしてそうか。
東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)の海外畑から金融論の研究者に転じた菊池英博(1936−)・文京学院大学教授が、日欧間の重要な比較をしている。
それによれば、日本の消費税率5%のうち国税になるのは4%でしかないが、国税収入に占める割合は22%にも達している。一方、英国やドイツ、イタリア、スウェーデンなどの付加価値税率は17〜25%と高いが、国税収入のやはり22〜27%を占めているに過ぎないと言うのだ。
菊地教授によれば、ヨーロッパの付加価値税には前述のように軽減税率が採用されている食料品や生活必需品も多く、また医療、教育、住宅取得やこれに関連する不動産、金融など、非課税項目も少なくない。対する日本の消費税には非課税項目が医療費や住宅の賃料などに限られ、軽減税率が適用される分野もないままに運用されてきた。
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《つまり、欧州での消費税は贅沢税的な性格を持つ。欧州基準で日本の消費税率を概算してみると、10%近くになるのではないか》
(『消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学』ダイヤモンド社 2009年刊行)
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以上の議論だけでは勿論、ヨーロッパの付加価値税が“うまくいっている”ように映る理由の全てを説明出来るものではない。全容を解明しようとすれば、歴史や文化に関わる厖大(ぼうだい)な文献調査と長期間のフィールドワークが求められよう。
だが考えてもみてほしい。私達はそもそも、ヨーロッパを云々する前に、自分達の足元をきちんと見つめたことがあっただろうか。私達の毎日はすっかり消費税の網の目に絡め取られてしまっているというのに、圧倒的大多数の人々は、この税制の何たるかを何も知らないではないか。
一方的な負担を強いられている零細事業者でさえ、幾ら頑張っても生活が苦しいのは不景気のせいだとしか認識していない人が少なくないのだ。自らが置かれている立場をよく理解出来ないまま――遺族の話を聞く限り、だが――自殺していった人も、決して珍しくなかった。
徴税側の世論操作はそれほどまでに凄まじいのである。税制に関心を持つジャーナリズムもアカデミズムも、一部の例外を除けば当局と同じ価値観しか持ち合わせていない。当事者も知らない消費税の実態が外国人に伝わることなど有り得ない道理。
逆もまた真なりだ。私達日本で暮らす大方の人々にはEC型付加価値税とヨーロッパの零細事業者の関係など承知出来ようはずはない。そもそも、この税制の大前提には、彼らの伝統的な階級社会があった可能性さえ否定出来ないのではないか。
先ずは自らの足元を、私達自身が置かれている状況を理解することから始めよう。その上で、どうしてもヨーロッパと比較したいならすればよい。順番が逆なのである。≫≫
〔資料〕菊池英博(1936−) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8A%E6%B1%A0%E8%8B%B1%E5%8D%9A_(%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E8%80%85)
〔資料〕菊池英博 著『消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学』(ダイヤモンド社 2009年刊行)
http://www.amazon.co.jp/%E6%B6%88%E8%B2%BB%E7%A8%8E%E3%81%AF0-%E3%81%AB%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E2%80%95%E8%B2%A0%E6%8B%85%E3%82%92%E6%B8%9B%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%A6%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E3%82%92%E5%85%85%E5%AE%9F%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E8%8F%8A%E6%B1%A0-%E8%8B%B1%E5%8D%9A/dp/4478009848
〔動画〕100428菊地英博氏インタビュー 1〜21 - YouTube 一覧
http://www.youtube.com/playlist?list=PLA415B8F52CB5B404
〔資料〕衆議院会議録情報:第174回国会 予算委員会公聴会 第1号 2010年2月24日
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/003017420100224001.htm
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=40182&media_type=
■米国が付加価値税を導入しない理由
ちなみに、やはりEC加盟国ではないアメリカ合衆国でも、この間に幾度となくEC型付加価値税の導入が検討されてきたが、実現していない。
日本では纏まった研究成果が入手しにくいので詳細は不明だが、前出のグラハム・バノック Graham Bannock(−)『付加価値税と中小企業―ヨーロッパの経験と北アメリカにとっての教訓』には、1980年にワシントンのシンクタンク「ブルッキングス研究所 Brookings Institution」〔※―日経・CSISバーチャル・シンクタンク、宗像直子・竹中平蔵、他〕が催した財政専門家の会議が「付加価値税は消費者にとっても中小・零細事業者にとっても高度に逆進的であり、これを解消しようと複数の税率を採用すれば納税も税務行政も複雑になり過ぎる」旨の結論を導いた事実が紹介されている。
また国税庁長官や大蔵事務次官を歴任した尾崎 護氏(1935−)〔※1988年竹下内閣時代の西垣 昭次官(1929−)・尾崎 護主税局長の下で消費税が導入され、更に(バブル経済の崩壊前後の)地価税法案も成立〕の『G7の税制―税制の国際的潮流はどうなっているのか』(ダイヤモンド社 1993年刊行)によると、1984年にレーガン大統領 Ronald Reagan(1911−2004)の指示で報告書「公平、簡素、経済成長の為の税制改革案」を纏めた米財務省も、付加価値税の導入に否定的な判断を示していた。
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《税制をより効率的な、また、簡素なものにする為、所得税制を全面的に付加価値税制に置き換えることについては、“分配上の不公平の問題が大きいこと”、また、所得税の一部に代替することについても、“付加価値税制の実施に掛かるコストが導入のベネフィットに比べて大きい”と見込まれることから、結局、付加価値税は税制改革提案の中には盛り込まれなかった。(中略)
尚、財務省報告では、付加価値税の長所・短所として以下の諸点が指摘されている。
[長所]
・貯蓄、投資を抑制しない
・経済的に中立である
・効率的に歳入を上げることが出来る
[短所]
・逆進性
・物価の上昇を齎す
・行政上のコストが大きい
・州・地方政府の財源の侵食》
>
あのアメリカでさえ、不公平や逆進性の問題を無視してまで付加価値税を強行するような暴挙は行わなかったのである。それに引き換え、日本は――。
■売上税から消費税へと名を変えて成立
≪≪翻(ひるがえ)って1987年の日本。嘘に塗れた売上税に対する国民各層の怒りは凄まじかった。
全国の消費者や商店主、中小企業の経営者達が、立場や支持政党の枠を超えて大規模な集会やデモを繰り返し、この税制の危険や不公正さを懸命に訴えた。3月に岩手選挙区で投開票が行われた参院補欠選挙で自民党候補が惨敗するに及んで、政府・自民党は売上税の国会審議をとりあえず見送った。
民衆の勝利は、しかし、長くは続かなかった。売上税は早くも翌1988年、若干の手直しを経、消費税へと名称が変更されて再浮上し、国会で可決・成立してしまう。経緯は本章の冒頭で述べた通りだが、その流れを決定付けたのは、推進する側の執念もさることながら、何よりも抵抗する側の甘さ、覚悟の足りなさではなかったか。
消費税に対する反対運動は、売上税の時に比べ、どこか醒めていた印象が拭えない。
流通小売業界を中心に全国3500団体で組織された「税制国民会議」(議長=清水信次(1926−)・前日本チェーンストア協会会長)〔※2012年3月21日「消費税を考える国民会議」会長に就任〕が1988年8月中に福島県内の6都市(郡山市、白河市、福島市、会津若松市、相馬市、いわき市)で予定していた反消費税の学習会が、突然、中止に追い込まれた事件が象徴的である。
9月初めの県知事選と参院補選の同日選挙を控えて、前年の“岩手ショック”の再現を狙う作戦だった。当時の福島保守政界は分裂しており、自民党県連の推薦を受けていない保守系の知事候補も立候補していた。それだけに政府や自民党本部の危機感も半端でなかったらしい。どのような力学が働いたのか、学習会は中止され、2人の保守系候補は選挙戦の最後まで消費税の問題に言及することがなかった。
権力の意志があからさまに示されて、超党派の、特に保守系の人々は怯(ひる)んだ。その後も反対集会もデモも続きはしたけれど、どこか諦めムードが漂うようになり、消費税はとどのつまり実施されることになる。≫≫
〔資料〕≪関岡英之 著『国家の存亡―「平成の開国」が日本を滅ぼす』 より抜粋(7)≫|MelancholiaT ※【日経・CSISバーチャル・シンクタンクの顔触れ(新自由主義者達の饗宴)】日経・CSISバーチャル・シンクタンク―ブルッキングス研究所
http://ameblo.jp/antibizwog/entry-11076818385.html
〔資料〕財閥とブルッキングス研究所によるホワイトハウスヘの政策介入 By 広瀬 隆 1〜3 - さてはてメモ帳 Imagine&Think! 2008年11月7〜9日
http://satehate.exblog.jp/10091169/
http://satehate.exblog.jp/10096394/
http://satehate.exblog.jp/10102314/
〔資料〕Japan and the Trans-Pacific Partnership(日本とTPP) - Brookings Institution 2011年12月2日 ※―竹中平蔵、他出席
http://www.brookings.edu/events/2011/1202_transpacific_partnership.aspx
〔資料〕宗像直子 - 独立行政法人 経済産業研究所 ※―CSIS、ブルッキングス研究所
http://www.rieti.go.jp/users/munakata-naoko/index.html
〔資料〕The Tax Foundation:State Sales, Gasoline, Cigarette, and Alcohol Tax Rates by State, 2000-2010(米国各州の売上税・ガソリン税・酒税一覧)
http://www.taxfoundation.org/news/show/245.html
〔資料〕尾崎 護(1935−) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E5%B4%8E%E8%AD%B7
〔資料〕尾崎 護 著『G7の税制―税制の国際的潮流はどうなっているのか』(ダイヤモンド社 1993年刊行)
http://www.amazon.co.jp/G7-%E3%82%BB%E3%83%96%E3%83%B3-%E3%81%AE%E7%A8%8E%E5%88%B6%E2%80%95%E7%A8%8E%E5%88%B6%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%9A%84%E6%BD%AE%E6%B5%81%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E5%B0%BE%E5%B4%8E-%E8%AD%B7/dp/4478100098
〔資料〕清水信次(1926−) - Wikipedia ※―蓮舫、小沢一郎、2012年3月21日「消費税を考える国民会議」会長に就任
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B0%B4%E4%BF%A1%E6%AC%A1
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120323/plt1203231124002-n1.htm
〔資料〕【短答直入 第160回】清水信次・生団連会長「行革の公約実現が最優先 性急な消費増税には反対だ」 - DIAMONDonline 2012年1月13日
http://diamond.jp/articles/-/15653
〔資料〕経団連と一線画す「生団連」加盟550団体に急増 - MSN産経ニュース 2012年4月3日
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120403/biz12040323430034-n1.htm
■中小零細事業者への飴(アメ)としての特例措置
鞭(ムチ)だけが振るわれたわけではない。消費税の本質を見抜いていたはずの中小零細事業者達には、それなりの飴(アメ)も振舞われていた。
@免税の特例、A限界控除の特例、B簡易課税制度の特例。すなわち3つの特例措置である。@については第2章でも触れた。年間の売上高が3000万円以下の小規模零細事業者は、納税義務を免除されたのだ。
Aは、@によって線引きされた免税事業者と課税事業者の境界にいる事業者に、課税の影響を緩和する為に設けられた。売上高3000万円以上、6000万円以下の納税義務者に課せられる税額の一部が控除される。
Bは、煩雑な仕入税額控除の事務負担を軽減するものだ。基準期間の課税売上高(税抜きの売上高)が5億円以下の事業者は、実際の仕入税額ではなく、一定の「みなし仕入れ率」を使って控除額を計算する方法を選択出来る制度である。
見なし税率は原則が80%、卸業者に限って90%。消費税率3%を当て嵌めて、次の計算式を当て嵌めると、それぞれの納税額は課税売上高×0.6%、課税売上高×0.3%、となる。
[卸売業以外]
(売上高×3%)−(売上高×80%×3%)
=(100×3%)−(80×3%)
=3%−2.4%=0.6%
[卸売業]
(売上高×3%)−(売上高×90%×3%)
=(100×3%)−(90×3%)
=3%−2.7%=0.3%
仕入れ税額控除など複雑かつ厖大(ぼうだい)な納税事務を納税義務者に求める消費税、付加価値税を実施するからには、この種の特例措置が絶対に必要だ。でなければ専門の要員を雇うことの出来ない零細事業者は、本来の事業を営む能力さえ奪われてしまう。
EC型付加価値税を共通課税としたヨーロッパ諸国も、それぞれの簡易課税制度を持っている。仕入れ税額控除の原点となる分割納付制度を最初に取り入れたフランスには、第1次世界大戦当時から、事務能力の低い中小・零細事業者と徴税当局とが協議して税額を決める「フォルフェ制度 Forfait System(協約課税)」の伝統もあって興味深い。
■“益税”便乗値上げ”への激しい批判
日本の場合、しかし、消費税の特例措置は“益税”や便乗値上げの元凶として強烈な批判に晒(さら)され続けた。スタートの直後には、宇野 収(うの おさむ 1917−2000)・関西経済連合会会長(東洋紡会長=当時)が特例措置の一切を廃止すべきだと発言している。それまで中小企業の多い繊維業界のトップとして消費税の導入に反対していた立場が、正反対にひっくり返っていた。
批判がまるで見当外れだったとは言わない。“益税”も便乗値上げも確かに存在した。けれどもそれは、マスコミ報道や一般の受け止め方とは、様相をかなり異にしていた。
そもそも商品やサービスの価格に消費税を転嫁出来ている事業者は決して多くない。転嫁しているような体裁が整えられていても、周囲の店舗との競合や顧客との力関係次第では、それ以上に値引きしている場合が少なくないのが実態だ。ましてや規模の小さな免税事業者においてをや。
一般のイメージ通りの“益税”が存在するとすれば、定価販売が成立しているケースに限られる。但し、その場合でも、仕入れには消費税分を支払うのだから、顧客から受け取った3%の丸ごとを懐に出来るわけではないのだ。(中略)
≪≪シンプルさばかりが強調される消費税。しかして鵺(ぬえ)のように曖昧で、不透明な消費税の、これも本質である。果たして消費者と零細自営業者の溝はかつてなく広がった。敢えて反目し合うように促す誘導も図られた。≫≫
■消費者の批判を煽り、利用した政府
例えば国税庁は、既に消費税が実施されているこの段階で、尚も例のクロヨン問題を強調したパンフレットを全国に撒いていた。同庁の協力団体ではあるものの、当局の意図を察知した全国青色申告会総連合は、会員への配布を拒否したと言う。
この事実を伝えた『朝日新聞』の連載記事が、近年の新聞ジャーナリズムでは考えられない、実に鋭い分析を残していた。売上税を断念させた中小商工業者が消費税には余り反対しなかったのは、免税点や簡易課税制度などの特例措置に黙らせられたのだとして、
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《いざ、消費税が実施されると、消費者の間からは当然のように「ネコババ」論議が高まる。で、今度は「消費者の不満」を梃子(テコ)に見直しを図る――そんな図式が見えてきた。(中略)
「政策構想フォーラム」のメンバーで、税制改革に深く関わってきた本間正明(1944−)・大阪大教授〔※―竹中平蔵〕は「政府のやり方は、一種の確信犯」と言い切る。「3つの特例措置を設ければ、税の一部が合法的にポケットに残る現象が広範囲に起きることは、前々から指摘していた。この点を議論せず、一気に法案を通したのを見ても、船出した後に直せばいいという政治的判断が窺える」(中略)
宇野宗佑首相(1922−1998)は就任後の初の記者会見で、「消費者に不平不満の声があると聞いている。実施後2カ月と言えども、常に国民の声を耳にしながら、消費税のあり方について考えていかなくてはならない」と述べ、その後の所信表明演説でも、見直しを言明した》
(税にゆらぐ」第1回「確信犯 中小業者黙らせた特例」1989年6月21日付朝刊)
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一連の特例措置は、単に甘いだけの飴(アメ)ではなかった。零細な事業者は舐(な)めた瞬間に周囲から石つぶてを投げつけられ、糖衣が溶ければ爆発するように仕組まれた、いわば時限爆弾が練り込まれた飴(アメ)だったのだ。
〔資料〕日本の消費税の仕組みと特徴、負担構造についての一考察 By 松井吉三 2010年9月22日(PDF、全33頁) ※フォルフェ制度
http://www.sinfonia.or.jp/~matsui/shouhizeishikumitofutan.pdf
〔資料〕宇野 収(1917−2000) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E9%87%8E%E5%8F%8E
〔資料〕本間正明(1944−) - Wikipedia ※―竹中平蔵
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E9%96%93%E6%AD%A3%E6%98%8E
〔資料〕政府要人・自民議員の醜聞 本間税調会長編 - 青山貞一ブログ 2006年12月15日
http://blog.livedoor.jp/aoyama211111/archives/50665309.html
〔資料〕クロヨン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%A8%E3%83%B3
http://www6.ocn.ne.jp/~mirai/p35.htm
■形骸化する特例措置に税率アップが追い討ち
果たして3つの特例措置は、その後の数次にわたる消費税法改正で形骸化されていく。年間売上高6000万円だった限界控除制度の適用上限は1997年に廃止されてしまう。3000万円だった免税点が2004年度から1000万円に引き下げられた。
簡易課税制度ときたら適用上限が5億円から4億円(91年)、2億円(97年)、5000万円(04年)と縮小の一途を辿り、見なし仕入れ率も90%と80%も2区分だったスタート時から、現在は90%(卸売業)、80%(小売業)、70%(農林漁業、鉱業、建設業、製造業)、60%(飲食サービス業、金融業、保険業)、50%(不動産業、運輸通信業、飲食以外のサービス業等)の5区分へと細分化している。業種による差の根拠は不明である。
この間には会計ソフトの発達、普及などもあり、一定以上の事務処理能力を有する事業者の負担が相対的に軽くなってきたのは確かだ。だから特例は絶対に縮小すべきでなかったとまでは言えないが、僅か1000万円の年商で課税事業者に組み込まれてしまう現状は残酷に過ぎる。
何の後ろ盾もない零細事業者の年商1000万円と、大企業のサラリーマンの年収1000万円(プラス年金や健康保険などの社会保険料の一部負担、福利厚生、及び勤務先を後ろ盾にした社会的地位)とでは天と地ほどにも意味が違うのである。
消費税の税率は、しかも導入9年目の1997年度に5%へと引き上げられている。正確には国税としての消費税4%と地方消費税(消費税4%×100分の25=)1%の合計なのだが、こうして地方財源にも充てられていることで、本来なら地域の住民や商店街のあり方にも配慮しなければならないはずの地方自治体が、消費税による収奪に見て見ぬ振りを決め込んでいる、或いは当事者になってしまっているのではないか。
■細川政権と「国民福祉税」
5%への増税が盛り込まれた改正消費税法案が国会で可決・成立したのは1994年11月の臨時国会だった。僅か9カ月前の「国民福祉税」構想を巡るドタバタの記憶も生々しかった時期である。にも関わらず――。
既に15年以上の歳月が経過しているが、概要だけは振り返っておきたい。その必要があると思われる。
騒動は1994年2月の未明に始まった。当時の細川護煕首相(1938−)〔※藤原氏・藤原不比等の子孫、近衞文麿の孫。野田佳彦の後見人。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)会長、日本赤十字社社長を務める近衞忠W(1939−)は実弟〕が突如、記者会見を開いて、政府・与党の「税制改革草案」を発表したのである。
それによれば、所得税を中心に6兆円の減税を先行させ、まだ3%だった消費税を3年後の97年に廃止する。但し同時に税率7%の新大型間接税「国民福祉税」を創設して、それらの財源に充てると言う。
国民福祉税と銘打つにしては、しかし、余りに杜撰(ずさん)な内容だった。草案には、《高齢化社会においても活力のある豊かな生活を享受出来る社会を構築する為の経費に充てること》が目的とだけ書いている。会見でも細川首相は、消費税の名称を変えただけではとの質問に「広い意味での目的税」、7%の根拠を問われれば、「正確にははじいていないが、腰だめの数字として、この程度は必要」などとだけ答えて済ませた。
国民福祉税の仕掛け人は斎藤次郎(1936−)・大蔵事務次官と小沢一郎(1942−)・新生党代表幹事(何れも当時)で、彼らが細川首相を動かしたと言うのが定説だ(細川内閣は日本新党、新党さきがけ、新生党、日本社会党、民社党、公明党などによる連立政権だった)。
国民の猛反発で翌4日には白紙に戻され、2カ月後には細川政権そのものが吹っ飛ぶことになるのだが、果たして消費税は増税されてしまった。一連の騒動の最中(さなか)で、連立政権は「税制改革草案」の内6兆円の減税だけを可決・成立させていた。だが国民福祉税は既に無い。代替し得る財源は?と言うわけだ。
2人の首謀者の蜜月はその後も続いている。民主党が政権を獲った2009年秋、斎藤氏は「日本郵政」の社長に就任したが、その背後には小沢一郎民主党幹事長(当時)の存在があるのだと、これも定説である。尚、前出の石 弘光(1937−)・前政府税制調査会会長〔※小泉政権下で政府税調の会長を務めた人物。民主党政権でも“民間有識者”として仕分け人を務めている〕が同じタイミングで日本郵政の社外取締役・監査委員長のポストに就任している事実も付言しておく。
〔資料〕細川護熙(1938−) - Wikipedia ※藤原氏・藤原不比等の子孫、近衞文麿の孫。野田佳彦の後見人
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E5%B7%9D%E8%AD%B7%E7%86%99
〔資料〕≪関岡英之 著『国家の存亡―「平成の開国」が日本を滅ぼす』 より抜粋(7)≫|MelancholiaT ※【日経・CSISバーチャル・シンクタンクの顔触れ(新自由主義者達の饗宴)】 【CSIS-HGPI】細川佳代子 【三極委員会】 ※日経・CSISバーチャル・シンクタンク―ブルッキングス研究所
http://ameblo.jp/antibizwog/entry-11076818385.html
〔資料〕斎藤次郎(1936−) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%8E%E8%97%A4%E6%AC%A1%E9%83%8E
〔資料〕小沢一郎(1942−) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%B2%A2%E4%B8%80%E9%83%8E
〔資料〕小沢一郎元代表は、最大の敵David Rockefellerとの「最終戦争」に突入、徹底抗戦宣言! - 板垣英憲「マスコミに出ない政治経済の裏話」 2010年10月7日 ※竹下内閣時代の副総理は宮澤喜一(―David Rockefeller, Sr.、CFR、三極委員会)、日銀総裁は澄田 智(―Lazard Frères)
http://blog.goo.ne.jp/itagaki-eiken/e/0b93aeb4dbc7a49eec4479d01d131518
〔資料〕Lazard Group LLC - 灼熱 HEATの日記 2004年9月6日
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200409060000/
〔資料〕サーキットブレーカー制度 Circuit Breaker - Wikipedia ※1994年2月14日から導入
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E5%88%B6%E5%BA%A6
〔資料〕財団法人ジョン万次郎ホイットフィールド記念 国際草の根交流センター 役員名簿(平成23年4月現在) ※小沢一郎会長、勝俣恒久・東京電力取締役会長、他
http://www.manjiro.or.jp/jpn/foundation/index02.html#directors
〔資料〕国民福祉税構想の経緯 By 成田憲彦・元細川護煕首相秘書官 2010年8月19日(PDF、全25頁)http://www.jnpc.or.jp/files/2010/08/2cf8b3fcfed52cc7c714297802830ecd.pdf
〔資料〕「日本一新運動」の原点 89 By 日本一新の会・代表 平野貞夫 - 日本一新の会 2012年1月5日
http://nipponissin1.blog136.fc2.com/blog-entry-122.html
(7頁へ続く)
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