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クルーグマン「ロージー・ルイズな共和党」「NHK子供たちが心配なら若年失業率を心配しろ、財政赤字は福祉国家破壊に便利」
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/507.html
投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 05 日 15:58:24: cT5Wxjlo3Xe3.
 

#クルーグマンの日本への処方箋は、主に金融政策 4%インフレ目標、大規模資産購入、
あとは反緊縮(大規模財政出動には反対らしい)、少子化対策か。

#先進国でインフレ恐怖とデフレ志向が強まるのは、少子高齢化が原因だろう。
政治的に強く、貯蓄も多い高齢者が将来の生活不安に怯えやすい。
そして政策立案者も多くは引退間近で多くの金融資産を抱えている。
当然、インフレ忌避(デフレ志向)の金融経済政策を採用する傾向は高まる。
その代り、戦争を忌避する傾向も高まる。
(逆に、途上国では、多くの若年失業者を抱えているので、不満が高まるとすぐに暴力や戦争、内乱に結びつきやすい)

#共和党ではロンポールらがFRBと信用通貨制度を攻撃し、実物の裏付けを要求している
まずあり得ないだろうが、実施すれば、かっての金解禁と同じく、海外に金などが流出し、
世界中で保護主義による信用収縮、失業、貧困、途上国では餓死が激増し
さらに世界中で内乱や戦争が増加する可能性は高い。

米国を震源とした途轍もない世界恐慌(スタグ)というわけだが
クルーグマンらリフレ派が恐れる最悪の選択の一つだが、結構あるかもしれない。

 


クルーグマン「ロージー・ルイズな共和党」(NYT,2012年9月2日)
ロージー・ルイズのことを覚えてる人はいる? 1980年,彼女は女性ではじめてボストン・マラソンでゴールテープを切った――ところが,実は彼女は完走なんてしちゃいなかった.走ったコースは,ゴール手前の1マイルほどでしかなかった.それ以来,彼女はある種のインチキの象徴になっている.実際にはやり遂げてもいないことをやり遂げたと言い張るインチキのね.
さて,近頃ではポール・ライアンがアメリカ政界のロージー・ルイズだ.
ライアン氏のマラソンの一件が表沙汰になって耳目を引くまえから,とっくに彼はロージー・ルイズに見立てるのにふさわしい人物ではあった.ともあれ,この一件はなかなか面白いので,まずはこれを取り上げようか.
ことの起こりは,右翼トークラジオ・ホストのヒュー・ヒューイットがライアン氏にやったインタビューだった.そのインタビューで,この副大統領候補は健康ぶりを吹聴して,自分はマラソンを3時間以内で完走したことがあると発言した.
この言い分は,『ランナーズ・ワールド』誌の関心を引き寄せてしまった.同誌は,完走時間は記録されているけれど,ライアン氏が成し遂げたという証拠はまるで見つけられなかったと記した.やがて明らかになったところだと,たしかにライアン氏はマラソンを完走したことがあるものの,その記録は4時間以上だった.
スポークスマンによる声明で,ライアン氏はこの一件をどうにか単純な間違いの笑い事ですませようとした.でも,まじめにやってるランナーたちにしてみれば,笑い事ですませられるようなことじゃない:「3時間以内」と「4時間以上」のちがいは,韋駄天とたんなる凡人のちがいで,ランナーなら間違えようのない差だ――自分の想像した世界を現実と思い込む夢想家でもなければね.さて,ライアン氏がうそつきではなく妄想家だと言ってみたところで,事態はましになりますかねえ.
ここで,今度の大統領選の話につながる.
当たり前ながら,ライアン氏の俊足ぶりなんて誰も気にしちゃいない.自分のマラソン記録について奇妙にも間違ったことを言ったことだって,それだけを取り上げてみれば,べつに語るべきことでもない.この一件が目を見張るのは,ライアン氏の政治家としての人物像に見られるロージー・ルイズぶりと,この一件がぴったり符合しているからだ.この人物像は,成し遂げてもいない偉業をやったと吹聴することで築きあげられている.
みんなも思い出してるだろうけど,ライアン氏は真実を語り財政に責任をはたす象徴的人物として振る舞ってきた.その一方で,実際には誠実でもなければ責任感もない政策提言を出している.巨額の減税を主張しながら,その一方では具体的な項目で支出削減を提案している.ぼくらのなかでもいちばん苦境にある市民を猛烈な逆境に追い込むような支出削減案だ.だけど,この削減案では〔減税による〕歳入減少分を埋め合わせるのにはとてもじゃないけど足りない.だから,赤字削減をめざす彼の主張は,ひとえに歳入減少分を税金の抜け穴をふさいだり,さらに巨額の支出削減を行ったりすることで埋め合わせてみせるという彼の言い分が正しいかどうかにかかっている.ところが,その抜け穴とやらがどういうものなのか,彼は断固として明言を避けているし,さらなる巨額の支出削減とやらも中身をつまびらかにしようとしない.
「でも,議会予算局の評価では,ライアン氏のプランはちゃんと赤字を減らすっていう結論だったんでしょー?」 よくぞ聞いてくれました.実のところ,予算局は彼のプランを評価なんてしとらんのですよ.だって,評価しようにも詳細が足りないんだもの.そのかわり,予算局はライアン氏に将来の支出と歳入の経路がどういうものか特定させつつ,「この経路をもたらすような提案は特定されなかった」と記している――ぼくには,「こいつはがらくたですよ」とほのめかしているように聞こえるね.
というわけで,基本的にライアン氏は予算局に自分のプランが赤字を削減すると仮定するように言い,できあがった報告書は自分の赤字削減案の正しさを擁護するものだと言い張ったわけだ.言っちゃ悪いけど,こんなのはゴール付近からこっそりマラソンコースに忍び入って「一位をとったぞ」と言い出す所行の政策バージョンだよ.
ただし,大統領候補はロムニー氏であってライアン氏じゃあない.ときどき忘れそうになるけどね.じゃあ,ロムニー/ライアンはライアン一人とどうちがうだろう? 「なおさらわるい」ね.ライアン・プランと同じく,ロムニー・プランも企業とお金持ちに巨額の減税措置を提示する一方でその削減分を詳細不明の抜け穴でふさぐことで相殺すると言っている.でも,ロムニー氏の方は,それだけでも現実味のないところへさらに防衛予算増額とオバマケアがやったメディケア費用の節約を廃することでいっそうの非現実味をかもしだしている.現実問題として,ロムニー・プランでは,赤字を削減するどころか,爆発的に増やしてしまうだろうね.
それなのに,ロムニー氏は自分が財政問題に責任感が厚いと吹聴している.フロリダのタンパで演説した際に,彼はオバマ大統領が巨額赤字で経済を痛めつけたと非難した(その一方で,オバマ氏は軍事予算を削減することで雇用破壊をしてるなんて発言もしてる――なんだそりゃ).それに続けて,彼はこう述べている.「我々は赤字を削減し,アメリカを再び均衡財政に復帰させます」 おやまあ,ロージー・ルイズな共和党議員がもう一人いたよ.
さて,今度の選挙の争点はなんだろう? もちろん,目指す社会像の対立だ――メディケア対ヴァウチャーケアの対立であり,セーフティネットの保持と破壊の対立でもある.でも,それと同時に,これは政治家ってやつがどこまで事実をねじ曲げられるかのテストでもある.実際,これほどまで完全にデタラメに依拠してみずからの政策案の現実と折り合わない主張を繰り出す選挙戦をアメリカの主要政党が展開するのは,これがはじめてだ.でも,ロムニー/ライアン馬券が当たりになれば,これが最初で最後ってわけにはいかなくなるだろうね.
(Paul Krugman, “Rosie Ruiz Republicans,” New York Times, September 2, 2012)


NHK BIZ PLUS:ポール・クルーグマン・プリンストン大学教授へのインタビュー
以下の文は、NHK Biz plusの番組サイト、飯田香織経済キャスターブログから「7/30/2012 Paul Krugman, Professor at Princeton University」の翻訳になります。誤字・誤訳の指摘はコメント欄にお願いします。

【世界経済】

■まずは、世界経済の現状をどう評価していますか?
私は、我々が不況の中にいると言ってきています。それは1930年代とは違って、そこまで酷くはないものの、かなり貧弱な経済パフォーマンスが持続したまま、そこから抜け出だそうとしているような兆候は見られません。
アメリカは足踏み状態ですね。実際、景気が後退してるわけではないが、足踏み状態です。ヨーロッパはかなり厳しい景気後退の最中です。日本は足踏み状態です。しばらくの間、うまくやってきた新興国も同じように活力を失っている。
だから、今の状況は、ヨーロッパの外では、気のめいるものではあっても、恐ろしいものではない。ヨーロッパは恐ろしい状況にあって、そして勿論ヨーロッパは世界経済の大きい部分を占めている。全体的に、これは信じがたいことです。もし6、7年前に2012年がこんな風になってると言ったとしたら、クレイジー扱いされたでしょうね。でも、それこそ現在の状況なんです。

■2008年のリーマンブラザーズの経営破たんの前後の金融危機と比べて、状況はどっちが深刻ですか?
2008年はスピードが速かった。来週にでも大惨事が迫っているようでした。我々は今そういう状況にないが、ヨーロッパではそうなる可能性がある。だが、ある点では今のほうが難しいとも思います。
2008年には、「オッケー、パニックは今ここにある、そのパニックを食い止める必要がある」と人々は考えていました。そして、そのパニックを食い止めることさえできれば、正常な時代が帰って来ると。そして、人々がそう考えること自体で半ば成功していた。今はもっと深刻に見える。我々が今ある状態から抜け出すためには根本的な政策の変更が必要だが、重要となるあらゆる政策変更には膨大な抵抗がある。だから、ある点では、現在は2008年ほど恐ろしいわけではないものの、またある点では、もっと手に負えないものになっている。私は3年半前よりも希望を失っています。

■それはなぜでしょうか?
実際の行動を起こすことがどれだけ難しいか分かったからです。あのころ、2008年には、人々は立ち上がった、リーダー達も多かれ少なかれ難局に立ち向かった。そう、そこに危機があった。彼らは世界を終わらせないために必要なことをやった。
今、難局に立ち向かっているリーダーがどこにいますか? 数週間ごとに、ヨーロッパは不十分な救済策を取っている。アメリカでは、政策に関する塹壕戦が繰り広げられている。日本は20年間まったく同じ状態にある。そして、それを本当に転換しようとするものは何一つ見当たらない。
だから、実際に、現在はもっといらだたしい、危機の中心にいたときよりもなお希望を持つのが難しい状況にある。

■リーダーシップの話をされましたが、リーマンショックのあとの対応で各国とも財政出動した結果、債務残高が積み上がり、そう簡単に財政出動ができないと思います。いかがでしょうか?
いくらかの場所ではお金がない。スペインには選択肢は多くない。ギリシアは基本的に選択肢がない。だが、アメリカ人は、アメリカの財政赤字が懸念されていると言いますが、市場は喜んで我々に実質上タダでお金を貸している。同じことはイギリスにも当てはまるし、ドイツにも当てはまる。
ヨーロッパの状況は、えっと、ヨーロッパ中央銀行はお金を刷ることができる。彼らは実際にはリソースを持っている。彼らが持っていないのはなんでもやるという知的な柔軟性、そして…政治的柔軟性です。いや、実際、お金がないという表現を使っているという事実自体が、我々の心が悪いアイデアの拘束にあることを表している。つまり、いつも「アメリカは壊れてしまった、我々には何もできない」と言っている人たちは、知的な落とし穴に落ちてしまっていて、我々の問題について勘違いしていることをさらけ出しているだけなんです。

■2008年当時は、最後は国家が景気を刺激することができましたが、いまはその“アンカー/頼みの綱”の役を果たせないのではないでしょうか?
それは単純に事実ではない――それは、基本的に、独自通貨建てで借金している全ての政府に当てはまらない。日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、ドイツは正確には独自通貨を持っていないが、ドイツがユーロを支配しているので事実上持っているようなものです、スウェーデン。リストを順に見ていけば、どの国も2%以下でお金を借りている。そして、インフレを調整すれば、基本的に日本を除くほとんどの場所で、ほぼゼロになっています。そこの部分は、日本では話が違う。そのことは、市場が問題だと見ていないことを意味する。彼らは喜んでお金を貸してくれる。明らかに、彼らは20年間での財政の均衡を心配しているのであって、今年のことは問題にしていない。

■財政が問題でないとすれば、いまの“危機の本質”は何でしょうか?
私はその本質にマクロ経済学があると思っています。マクロ経済学は知的な意味で、人々がすべて身につけるというのは難しい。人々の考え、人々は国を個々の家計のようなものと考えたがる。彼らは「苦しいときには、経費を切り詰めろ」と言いたがる。現在がまさにそれをやっちゃいけない不況じゃないのなら別ですよ。問題は、あまりにも多くの人が支出を控えてしまうことにある。それは経済を押し下げてしまうので、支出をしてくれる誰かが必要になる。そして、現在のような場合、それは政府になる。
そして、緊縮財政のレトリック、財政赤字と債務のレトリックは、数多くの人が良かれと思ってしたことが最悪の結果を招いてしまうことを意味する。経済を支える必要のある今この時期に、政府の支出を縮小させている。
その頂点に、政治がある。アメリカでは、財政赤字は根本的に福祉国家を傷つけたい人々にとっての便利な政治的ツールとなっている。そして、ヨーロッパでは国際性-国民性、その問題が高潔なドイツ人対浪費家の南ヨーロッパとして枠にはめられるようになっている。どちらにも一粒の真実はあるが、それは一粒の真実に過ぎない。でも、それが実際に問題の解決を妨げている。
だから、結局、我々は麻痺状態かもっと酷い状況、何もできなくなっている――私は前から政策に関して悲観的であったと思いますが、今の状況は過去の最悪の予想よりも酷いものです。4年も、5年も不況の中にいて、それなのに何をすることもできず、何をする意思もないなんて考えられなかった。

■今から振り返ってみると、どこで道を誤ったのでしょうか?
Oh wow。それはいくつもの階層があります。あるレベルでは、我々の誤ちは30年以上前に始まります、その時に知的な方向性を誤ってしまった。インフレには確かに実質的な問題があるものの、それは経済学の専門家内部で、不況の問題から離れていく転機となった。そして、人々はその分析を忘れ、その全てを捨て去り、考えなくなっていった。
それから、私の見方では、決定的な数ヶ月がありました。リーマンショック以後の7、8ヶ月は、実際に全ての人が本当に大きな対応策をとるべく結集した時だった。でも、我々はそれをしなかった。我々はアメリカでそれをしなかった。ヨーロッパ人もそれをしなかった。そして、その結果、時機を失い、気づいた時には現在の状態になっていた。

■要は、道を誤った時期を特定するならば、2008年のリーマンブラザーズの経営破たんの7−8か月後だったということでしょうか?
ええ。2009年の1月か2月までは、先行きはすごく明るいと考えていました。我々は大恐慌の再来を避けるために十分なほどには銀行支援策や財政政策を実行したが、それは確信ある回復を生み出すには不十分だった。
そして、困ったことに、そのことがこの種の積極的な政策への一般大衆の信頼を傷つけてしまった。それは今になって分かったことです。その時採られた政策が実際に大きな違いをもたらしたことにまったく疑問点はないと考えている。それが我々を最悪の状態から救い出しはしたものの、一般大衆の見方からすれば、失業率は高いままだった。アメリカの景気回復はそこまでのものだったんです。
そうなると、「これは、再び政府は支出を切り詰めるべきであって、他のことをする機会などもうないということじゃないか」と言ってしまうのも自然の本能でしょう。
(#バブル後日本における財政支出不十分説と同じ)

■“今の危機”の本質は、国家債務危機ではない、と?
違います。ソブリン債危機は非常に限定的な現象です。それは基本的にヨーロッパの周縁国のみの問題です。ユーロ採用国とユーロ建てで大量に借金していた東欧の数カ国だけ。しかし、基本的には、独自通貨を持たずに、金融危機に巻き込まれたユーロ採用国だけがソブリン債危機に苦しんでいる。
[1] 他の全ての国にとっては、もし投資家が撤退ではなく、ソブリン債に殺到しているなら、それはソブリン債危機ではない――そして、困難にあるユーロ圏の国にとっても、ソブリン債は苦しみを生み出している毒入りカクテルの一部に過ぎない。それらの国は通貨高に苦しんでいる。銀行危機に苦しんでいる。そして、ソブリン債の問題もあるんです。だから、それがソブリン債について誤解と考えているものです。ええ…アメリカでも、イギリスでも、信じがたいことに日本ですら、これまでの年月であれほどの借金をしながら、ソブリン債は現在何の問題にもなっていない。

■“今の危機”を分析すると?
えっと、それは再び銀行危機の一種と言えるが、主にヨーロッパの問題です。ヨーロッパの経済を押し下げている要因の一部は、ヨーロッパの銀行が困っているからです。全体としてのヨーロッパは銀行を救済するためのリソースを持っているが、困ったことに、ヨーロッパは一つの国ではないし、個々の国にはそのリソースがない。
そうであっても、私の見方では、主たる問題は単なる銀行危機と言うより、より広範なバランスシート危機の問題です。アメリカでの、民間部門の債務の膨張。ある程度まで、ヨーロッパでは主たるものは家計の債務です。日本でも似たような問題があるが、それは主に企業債務の問題で、そこが違っている。
でも、他の点では、ロジックはほとんど同じです。経済の大部分が良い時代に膨大な債務を積み重ね、人々はレバレッジに自己満足でありすぎた。その後、事態は変わった。住宅バブルははじけ、リーマン・ブラザーズは破綻した。そして、全ての人が言いました、「なんてこった、債務が大きすぎる」と。そうして、彼らはそれぞれ謝金を返す事を選び、またそうせざるをえなくなった。困ったことに、その相手側になってくれる人は誰もいなかった。全ての人が所得よりも支出を抑えようとした。だけど、集合的には――つまり、あなたの支出は私の所得であり、私の支出はあなたの所得になる。そして、多くの人々がレバレッジを解消しようとしているのに、その取引の相手側にたってもっと多くの支出をしてくれる人がいないと、経済は持続的に落ち込んでしまう。それが根底にあるストーリーなんです。それ以外のことはその結果です。

【日本経済】
■次に日本経済についてうかがいますが、どう見ていますか?
日本の90年代は、我々全てが今経験していることへの舞台稽古でしたからね。だから、実際に、私は90年代後期、この10年以前の数年間に、日本の政策に批判的だった経済学者は皆東京を訪れて、天皇に謝罪すべきだとジョークを言うんですよ。だって、我々は日本よりもずっと不味い政策対応をしてしまっているんだから。我々はもっと緊縮的な財政政策をとっている。我々は日本と同じような不十分な金融政策をとっている。だから、日本は道しるべをつけたんです。現在、私が日本のストーリーについて解釈してるところによると、日本は実際にかなり景気回復してる時期があった。2003年から2007年の間の日本を調べてみれば、まずまず合格点の景気回復だったことが分かる。
おそらく、2007年までには、日本経済は潜在成長力のずっと下方にあったわけではないものの、デフレからは脱出しておらず、また極めて脆弱なままだった。そこで、この世界的危機に捕らえられ、インフレという追加的な問題を抱えた、酷く落ち込んだ経済に逆戻りしてしまった。
インフレ率はアメリカでもヨーロッパでも低すぎる。もし人々が1とか2ではなく4%のインフレを予想するようになれば、我々の状況はずっと良くなる。だが、日本では、人々は今でも負のインフレを予想している。そのことが本当に日本を深刻なほど不利な状態に追い込んでいる。なぜなら、利子率はゼロ以下になりようがない。西欧ではどこも、利子率は基本的にゼロです――申し訳ない、先進国ではどこも、利子率は基本的にゼロです。だが、日本では実質利子率は正の値になる一方、アメリカでは実質利子率は負の値になる。だから、今、日本は先進国の中でも金融を引き締めていることになっていて、そのことが問題を大きくしている。

■謝罪する対象は本来、日本政府や日本銀行だと思いますが、なぜ「天皇にお詫びしたい」のでしょうか?
まあ、これはジョークの類なんで。そのほうがシャレてませんか? いや、我々は明白に歴代の日銀総裁に謝罪しますよ。彼らが正しかったからではない。彼らは間違っていた。でも、奇妙なことに、同じ状態に陥ったときには、我々は同じふるまいをしてしまった。
基本的に、ベン・バーナンキが2000年に日本を批判した時、彼は完全に正しかった。不幸にも、FRB議長としてのベン・バーナンキは日本銀行がやったことと同じことをしている。だから、バーナンキ教授がバーナンキ議長に彼が仕事をちゃんとやってないことを叱りとばしてもらいたいですよ。

■最近、日銀の白川総裁は自信を持って金融政策を語っているように見えますが、あなたの発言を聞けばさらに自信を持つでしょうね。
だけど、彼は誤解してるのかしれない。だって、私は今でも日銀は間違ってると言ってるんですよ。その謝罪を私なりに言うと、「オッケー、我々はやっと政治的、知的に正しいことをすることがどんなに難しいことか分かりましたよ。今になって、我々はあなた方がやってきたことと同じ間違いをしているのが分かる。理解できるどころじゃなくね。それは許容範囲なんだろう」
でも、それが正しかったと言う意味じゃない。日本は今でも必要なことがある――つまり、今起こっていることは、我々が日本の失敗を複製していると言うこと、日本は正しくないのに、結果として同じ間違いをしてると言うことです。

■アメリカの事実上のゼロ金利、低成長のことですか?
日本には極めて積極的かつ非伝統的金融政策が必要だと言う意味です。金融と財政の両面で、非伝統的かつ積極的な政策が必要です。そして、我々も日本と同じです。実際、我々は財政面で日本よりもずっと酷い政策を採っている。と言うのも、我々はあまりにも早く財政緊縮に向かってしまい、十分な支援策を採れなかったから。
そして、我々は金融政策が機能する機会を与えるために必要なことをすることができなかった。日本では、ある程度インフレになると人々に確信させることが本当に必要なんです。膨大な資産を進んで買い取る必要がある。銀行の準備金になるものだけでなく、市中で通常なら買わないものを買う必要がある。そして、アメリカも十分にそれをやってない。だから、ストーリーは同じです。我々は一時的、短期的であるはずの需要の落ち込みを永続的な不況状態の経済に変わっていくのを許容してしまっているんです。

■1998年に「日本は4%のインフレ・ターゲットを15年間続けるべきだ」と主張されましたね。いま振り返っても、その立場に正しいと思いますか?
15年と言ったかは確かじゃない。10年と言ったように思う。だが、いずれにせよ、その期間の長さはいくぶん恣意的なものだが、答えはイエスです。こうしたことは全て、IMFのチーフ・エコノミストですら4%のインフレ率には強い論拠があると言っている。今、彼は、日本がこのような不景気に陥っていて、行動の余地を残しているのだから、そうするべきだと言っています。
日本の現在のインフレ率が実際に1とか0であることが問題をずっと大きくしている。それよりもっと高いインフレ目標を目指せるんじゃないですか? だけど、私は今でもその答えは意図を示そうとすることだと考えています。実際、中央銀行がどれだけ正確にインフレ目標に合わせられるか分からないにしても、経済が回復し始めた時に、インフレの上昇を許容するという強い意思をはっきりと見せることがすごく重要であることを強く示す指標を見てきている。デフレの危険性が消え去っても、すぐにはそれを止めてしまわないこと。
そうすれば大きな違いが出るでしょう。と言うのは、実際、現在のユーロの破綻は、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が利子率を引き上げた2011年4月の後に始まった。それはほんの小さな利子率の引き上げでした。それ自体では、そんなに重要なことにはなりようもないような。だけど、インフレ予想の様々な指標はまさにその時に急降下しているのが分かります。それは、何があろうとインフレをその天井である2%にとどめるというシグナルをECBが出したからです。それは実際にはそれ以下のインフレ率になる可能性が高いことを意味している。そして、向こう5年間、低すぎるインフレが続くことはユーロ圏の見通しにとってまさに致命的です。この種の予想面の動きはすごく重要です。そして、不幸にも、中央銀行はこういうことばかりやってきた――日本の場合には2003-7年の景気回復期にその時期がありました。もし日本銀行が経済をそのまま進めていれば、デフレから抜け出れたかもしれなかったし、現在の状況はもっと良くなっていたかもしれない。
その代わりに、正常化の最初の合図として、日銀は利子率を上げ始めた。またもや、ほんの少しではあったものの、インフレは来ないという明確なシグナルを生み出すのには十分だった。あれは本当に酷いものでした。そして、今、ヨーロッパ中央銀行はもっと正当化できる要素が少ない中で、それと同じことをやっている。FRBはそういうことはやっていないが、行動を起こさない月日が過ぎ去る中で、失業を心配するよりも、ますますインフレに対するアレルギーがどんどん酷くなっている。そのことがまたインフレ予想に影響を与える。

■時計の針をことしの2月14日まで進めてください。日銀は、1%の“インフレ・ターゲット“を打ち出しました。
1%、ゼロよりはいい。 [2] だが、現実を考えれば、我々が日本について知っていること、つまり、以前ほどではないものの、日本が今でも永続的な貯蓄過多であることを考慮すると、それはどうか。人口動態のために投資需要が弱い。日本は低い実質利子率を必要としている。そして、もしインフレ率がたった1%なら、実質利子率を十分低いものにすることは難しい。だから、4%のインフレ率に論拠があるのなら、私はあると思っているが、日本はむしろもっと目標値を高めるべきだ。だから、それはすごく、すごく小さな一歩でも、一歩には違いない。それは過去に我々が日本銀行から聞かされてきた、「良いデフレはまったく問題にならない」とか「物価の安定こそが目標です」よりはずっとましです。私の考えでは、1%インフレは正しい方向への一歩ではあるんですが、十分な一歩と言うにはほど遠い。

■そうしましと、今の日本経済に活力を取り戻すためのあなたの処方箋は何ですか?日本政府は繰り返し財政出動をしてきましたし、あなたの言葉を借りますと、日銀も「一歩正しい方向に踏み出した」。であれば、いったい何が必要なのでしょうか?
日本はあまりにも長くストップ・ゴー政策を採ってきたために、いくらかの点でより難しい状況にある。そうして、いまやあまりにも高水準の債務を抱えてしまった。ただし、市場はそれを懸念しているようには見えません。だが、日本の場合には、財政刺激策に賛成するのはアメリカほど容易ではない。だが、今すぐの緊縮財政は本当に避けるべきでしょう。しかし、さらなる冒険的な金融政策のドアはまだ開かれている。

■例えば?
1%ではなく、3%か4%のインフレ目標とか。我々ならかなりな規模のイギリス型かアメリカ型の量的緩和を試してみるでしょう。買い取るべき非伝統的資産はまだある。私はそれらがすごく不確実だと認めざるを得ません。誰もこの内のどれが機能するのかは分からない。それが機能することを示す経済モデルならあるが、そこには数多くの不確実性がある。だが、物事が良くなる可能性があるなら、やってみる価値はある。さらなる積極的な金融政策にはマイナス面がほとんどない。だから、私ならそれをやってみるでしょう。

■日本の消費税率の引き上げ、さらにタイミングについてはどう考えますか?
それを分析している時間がまったくなかったんですが、すごく疑わしいとは思っています。日本が長期的な予算問題を抱えていることは理解してますよ。アメリカの場合には、この不景気が永久に続くわけではないんだから、それらの措置を後回しにできると主張することが可能です。日本の場合には、不景気がここまで長く続くと、それも少し疑問でしょう。
しかし、今はそれをする時期ではないという考えもまたしっくり来る。それは我々が実際には理解していない問題への対策ですから。それが日本国債に対する信頼の喪失を意味するのであれば、そういうことは起きていません。私ですらこんなに債務水準が高くなっているのに信任が失われているいかなる兆しも見られないことに驚いていると言わざるを得ない。

■一方でIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しを見ると、日本については先進国の中でも高い成長率を予想しています。いま引き上げなければいったいいつ上げるのか、という指摘もありますよね?
成長率とその水準については注意深くある必要があると思っています。日本経済は今も深刻な不景気に見える。1930年代に、アメリカが財政政策に大失敗したことは覚えておいたほうがいい。アメリカがかなり急速に景気回復していたものの、いまだ深刻な不況にあった、1937年の大失敗のことです。
アメリカは深刻な不景気からは抜け出していたものの――日本が来年かなりの成長率になると見られているのと同じですが、それは良い兆候ではなかった。十分な理由はなかった。もし私の記憶が確かなら、1997年に日本は成長率がかなり良かったこともあり、消費税を引き上げた。そしたら、案の定、深刻な景気後退に舞い戻った。だから、成長していると言う事実だけでは十分ではない。経済が本当に潜在成長率に近づいていると信じれるようにならないと。

■日本経済を向かせる処方箋は、財政をさらに拡大させ、金融をいっそう緩和せよ、という主張なのでしょうか?
少なくとも日本の場合、財政引き締めをしないこと。債務水準がここまで高くなると、刺激策を主張するのは少し難しい、少しどころじゃなく難しいのは理解できます。でも、少なくとも緊縮財政は後回しにして、2000年にプリンストン大学の教授たちが日本にやれと言っていたことを全部試してみる。そして、今、FRBにいるプリンストン大学の教授(バーナンキ議長)がそれらをどれもやってないことは気にしない。
Year。それは実に奇妙なことです。私が初めてプリンストンに来た時、この少数のグループがいたんです。彼らは皆それがアメリカでも起こりうると考えたから、日本の経験に取り付かれていたんです。

【日本の教訓】
■バーナンキ議長は、1930年代の金融恐慌を研究したし、1990年代の日本経済についても研究しました。なぜ、その研究成果を今のアメリカの金融政策に生かせないのでしょうか?
えー、数点あります。一つは、彼が独裁者じゃないこと。そして、これは良くないことなんですが、公開市場委員会が酷く分裂している中で、FRBが行動を起こすのは良くないと考えられていました。彼は私がボーグと呼ぶものに同化してしまったんです。それがどのようなものであれ…。  FOMC連邦公開市場委員会

■ボーグって何?
昔のスタートレック・シリーズに出てくるもので、その中ではロボットが人間を乗っ取るんです。そこで、組織としてのFRBの視点からすると、安全策をとりたいという誘惑があるんです。確実に達成できること以外は何もやろうとしないような。目標を経済という条件ではなく、チェックボックスを埋めることで定義する。確かに、我々はマネタリーベースを拡大した。確かに、我々は利子率をゼロにした。それ以上何も望むべきじゃないと。バーナンキが今日まで長い間FRBにいた重大な結果として、彼はFRBの組織としての利益を最優先に考えるようになっていった。そして、FRBがそこにいるのは、経済を救うためだという事実を見失っていった。
私は他の人々のことは知らないが、FRBにいると真に積極的な政策を採るという感性を失ってしまいがちです。彼らが過去に何を書いてきたかによらず、そこには組織として偏りの問題あるように思う。
それに加えて、アメリカは次の選挙を控えている。そして、1年以上もの間、共和党はバーナンキに対して事実上、「オバマを助けることになるかもしれないから、経済を拡張させることは何もやるな」と言ってきている。そして、私は、現在も深刻な脅迫が続いている要因が存在するのは明らかだと考えている。

■アメリカの財政について、近著では教育、公共事業、防衛に予算をつければ景気が上向いて雇用を生み出す、と書いていますが。
それは特定のものを指しているわけじゃない。私は防衛をまったく推奨していないし、そんなことはまったく考えにない。

■その上で、「財政で景気を下支えせよ」と言うのであれば、アメリカ、さらに日本は、いったい何に予算を振り向けるべきだと考えていますか?
えー、アメリカの場合は簡単です。なぜなら、我々は既に大規模な支出削減をやってきているので、それを反転させるだけで、十分な刺激策になる用途はたくさんある。我々は教育費やインフラへの支出を大幅に切り詰めてきた。それを元に戻すだけで、新たな大型プロジェクトは必要なくなるほどです。減らされたクラスのサイズを数年前の水準に戻すだけでいいんです。学校の先生を再雇用する。学校設備や道路のメンテナンスを再開する。
中断されている建設計画を再開する――我が国の連邦システムのために、連邦政府は州や地域に補助金を与えるメカニズムがある。だが、やるべき事業のリストを挙げていくのは難しくない。
私は何をやればいいのか分かるほど日本には詳しくない――もちろん、日本は過去数十年に渡って、莫大な額をインフラに使ってきた。私には独自の案は何もないんですが、噂によると日本でトンデモない規模のインフラ投資の計画があるとか。

■先進国はいずれも歴史的な高い失業率に直面していますね。
それはそうですね。世界的にレバレッジ解消が進んでますから。つまり、世界のいたるところで――そのことを言っておくべきでした。日本の債務のサイクルは、我々全てのものより数十年先行していた。

■日本語では「課題先進国」って言うんですよ。
確かに。日本はこの点で最前線にいます。結局のところ、北大西洋の両岸で、アメリカとヨーロッパの両方で金融の規制緩和と金融的な自己満足の期間がありました。私は、1990年から2008年までの間、この大西洋の両岸で、債務レベルが高くなっても大丈夫という信念がどんどん大きくなるような伝染病の大発生があったと考えている。それがネヴァダ州のカス住宅ローンをファイナンスする複雑なデリヴァティブであろうが、スペインのカス建築物をファイナンスするためのスペインの貯蓄銀行に対するドイツの州立銀行の貸し出しであろうが、それらは基本的に同じものだった。
それからバブルがはじけ、同じようにその伝染病も消え失せた。そして、いまや数字の点では、アメリカと西ヨーロッパにたいした違いはない。細かい点では、単一政府を持たないまま単一通貨を手にしたヨーロッパには付随する問題がある。だが、基本的なストーリーはよく似ている。

【見通し】
■水晶玉を覗きこんでください。世界経済についてどんな見通し?
Oh wow、巨大な不確実性が広がっていると言わざるを得ません。その不確実性がどんなものか説明しましょう。
一つの不確実性はヨーロッパです。現在の構成、あるいは現在の政策では、ユーロは機能しない。そこで、我々が向かっているのは――2つの内1つが起ころうとしている。 [3] どちらも、すごくドラマチックな policy shirtsが起こることになる。と言うのも、我々は今すぐにはヨーロッパ合州国を手にできない。疑問なのは、ヨーロッパ人が基本的にユーロをたくさん刷る意思があるかだ。
スペイン国債を買い入れるためにも、成長率を引き上げ、ヨーロッパのインフレ率を高くするためにも、ユーロをたくさん刷る事。そうすれば、ユーロ圏は一つになれる。もしくは、ドイツがそんなことは許さないと言うか。その場合には、ユーロ圏はバラバラになる。
もしユーロを救うためにやる必要のあることを挙げていけば、人々は「oh、そんなことは不可能だ」と言う。ユーロは崩壊すると言えば、彼らは「well、そんなことはありえない」と言う。そして、この2つの内1つは実際に起こる。私はどちらになるかは分からない。オッズはほぼ半々でしょう。だから、それは大いな不確実性です。
そして、当然、ユーロが崩壊すれば、ヨーロッパに甚大な影響を与える。酷く厄介で、破壊的な移行コストが掛かることになり、その余波は世界の他の地域にも及ぶ。それは厄介なことになる。
アメリカは選挙を控えている。その結果にも範囲がある。オバマは再選されるか? オバマは議会で過半数を得て再選されるか?  その場合には、このことをやってみる2度目のチャンスが手に入る。あるいは、アメリカで塹壕戦が続くことになる。もしくは、ロムニーが当選するのか? ロムニーが大統領になれば、彼の言っていることは実際何の意味もないから、彼がすることは見当もつかないし、私はそれが最悪なものになると思っている。私は、彼が支出サイドで緊縮財政を追い求めると同時に、何の効果もない金持ち減税をやって財政赤字を悪化させると考えている。それは酷いありさまになると思う。
我々が全面的に酷い政策を採ることになる可能性は小さいものではない。それは、例えばヨーロッパがどうしても進路を変えることができずに、ユーロが崩壊して、苛烈な結果ばかり残ることになるとか。アメリカが完全に誤った政策を採るとか。その場合には、現在以上に、1930年代に見えてくるでしょう。

■世界経済の見通しについて随分と悲観的ですね。
楽観的でいるのは難しい。と言うのも、どこかにリーダーシップがありますか? 数年前に、大間違いの政策変更があった。緊縮財政が答えということになった時、最初、私はそれを信じられなかった。人々がそんな間違いを本当にするということが信じられなかった。でも、それは実際に起こったことです。
そして、それを認める人はほぼ皆無です。つまり、「あれは訂正されるべき間違った政策転換だった」と自ら言った人はほとんどいない。だから、この状況で楽観的になるのは難しい。我々の進路を変えてくれるようなリーダーがどこにいますか?

■日本は「失われた20年」と言われています。世界経済も今後10年、20年の単位で落ち込むのでしょうか?
私がずっと言ってきているように、西側世界は景気回復の兆しがないまま、すでに5年が過ぎている。ヨーロッパでは事態は悪化し続けているし、アメリカはギリギリです。だから、すでに失われた10年になっている。失われた10年の半分がすでに過ぎてしまった。これが失われた10年になると考えるのはまったく難しくない。そして、今までの5年間はかつての日本よりずっと酷いものになっている。大量失業、その苦しみは日本で起こったどんなものよりずっと酷いものです。ヨーロッパの大部分で起こっている公的サービスの崩壊、そんなことは日本では起きなかった。
So boy、また私のジョークなんですが、日本は訓話と言うより、お手本として見えるようになってきている。それは酷いものではあるものの、アメリカや西ヨーロッパで我々が経験しているものほど酷くはないからです。

■プロの経済学者として、いま世界経済を救うためには何が必要だと考えますか?
何が必要か? 基本的に、大規模な金融政策と財政政策が必要です。我々がこんなことを経験した最後の時、1930年代に、我々が手にしたものは戦争でした。それはすごく恐ろしいものだったが、もっとお金を使わせ、十分なお金を刷らせることになる結構な副作用をもたらし、我々は大恐慌から脱出できた。
だから、再び私のジョークなんですが、もし宇宙からのエイリアンの脅威をどうにかでっち上げて、宇宙への備えのために支出をする必要があると言えれば、我々はここから抜け出せるでしょう。それ以外に何かあるのか思いつかない。
でも、その政策自体は難しいものじゃない。実際にやるべき政策は簡単に説明できる。問題は、実際に、どうやって政治家にその政策を採用させるかです。

■一方でこう言いたくなります。大規模な財政支出をした結果、国債の格付けが引き下げられ、さらに、次の世代に膨大な債務というつけをまわすことになる。どう反論しますか?
2、3あります。一つ目に、もし本当に子供たちのことを心配してるんであれば、大規模な若年失業率のことを心配しろと。現在は西側世界の若者にとって恐るべき時代です。もし純粋に財政のことを心配しているとしても、高失業率、特に長期間の高失業率は経済を腐食させ、将来の課税ベースを腐食させる効果がある。
この点、もし支出を切り詰めることによってお金を節約しようとすれば、長期的な財政状況を改善させるのではなく、悪化させることに終わると考えられるたくさんの理由がある。それは良い主張ではない。今、緊縮財政を採ることは、経済への影響は言うまでもなく、純粋に財政的な観点からもおそらく自己破滅的です。
そして、我々が不景気から抜け出すことができれば、私は財政タカ派になる。合理的に見て経済が完全雇用に達した時には、すぐにでもまた節約を始めればいい。我々は第二次世界大戦で莫大なお金を使い、戦争が終わったときには非常に高水準の政府債務だけではなく、活力ある経済も残っていた。そして、民間部門の債務は成長とインフレの相互作用を通して大幅に減少していた。
そして、それから、我々はその債務を実際には完済しなかったが、その債務を安定化させて、経済におけるシェアを小さくすることができた。それは従いたくなるような経済モデルです。

■「宇宙からエイリアンが攻めてくれば財政出動が増える」とは興味深いですが、ほかに大胆な提言はないのですか?そうでね、例えば、世界の先進国の中央銀行が同時に自国の債務を買い取って借金をチャラにするとか。是非、非伝統的な提言をお聞きしたいのですが。
えっと、協調の問題がそんなに大きな役目を果たすというのは明らかではない。人々は、重要なのは行動を起こすことだとしても、ECBとFRBが同時に行動を起こせば、個別の行動では生じないような追加的なインパクトが生じるといいたがります。
他方では、中央銀行は国債を大量に購入することで、通貨を切り下げられると。それは、あなたにとって良いことが、他の人にとっては悪いことになるということです。だから、それぞれの国が別々に行動しようと、インセンティブの強さは全然変わらない。これはヨーロッパでは違う。ヨーロッパ人は一つの通貨を共有しているため一緒に行動を起こす必要がある。ヨーロッパ人は一緒に行動して、その綻びを監視する必要がある。だが、それを別とすれば、FRBには権限がある。日本銀行には権限がある。イングランド銀行にも権限がある。だから、これをやるのにG20の会合は必要ない。
それが行われる場所はアメリカ議会や連邦準備制度理事会の内部にあるのであって、どこか国際的な会議ではない。

■日本経済が成長軌道に乗るには何が必要だと思いますか?キーワードを書いてください。
Oh wow。

■成長が必要なのは分かっているんです。その成長には何が必要か、という趣旨です。
インフレを伴う経済成長。インフレを必要とする国があるとすれば、それは日本です。

■その心は何でしょうか?
なぜなら、実際、それが複合的なものだからです。日本は、人々がお金を貯めておかないようにする動機を必要としている。だから、インフレが必要なんです。債務がここまで膨らんでしまったがために、経済成長とインフレの両方を必要としている。現在、日本は突出した膨大な債務という失われた20年の遺産がありますから。
歴史的には、国家はこうした債務を、部分的に、インフレで薄めることによって処理してきました。

■でも、日本はそれを10年も20年もやってきました!
でも、インフレにはなってません。日本がその罠から、デフレから抜け出そうとすると常に、日本銀行が、オッケー、やっと常態に戻ることができる、利子率を上げようと言ってきました。実を言えば、日本はあるべき状態に戻るチャンスを頓挫させてきたんです。
重要なのはそれをしないことです。尊敬と信頼の機関であろうとすること、それこそ日本銀行がやり続けていることであり、今はその時期ではないのに、ヨーロッパ人が皆やっていることです。今こそ、そうした事を全部捨て去らないと。

■先ほどから何度の日銀に言及していますが、日本の場合は、政府による財政よりも日銀による金融政策の方が果たす役割が大きいと言いたいのでしょうか?
政府は緊縮財政を採って、邪魔をするべきではない。でも、日本に関しては、私ですら大型の財政刺激策は支持できない。それは機能するかもしれないが、これほどの債務水準になると少し神経質になる。たぶん、そうすべきじゃないんでしょう。市場はそういう見方をしてないようなんで。
別の問題もあります。日本は根底に人口問題を抱えている。日本の人口が増加するという展望を持てれば、活路を見出すのはずっと容易になるんですが。でも、もしかしたら、フランス型の政策を採れば、もっと子供が生まれるように促進できるかもしれない。あと、文化の問題に対処する道を探って、移民をもっと受け入れることができれば。

■現実的ではありませんね。
分かります、分かりますが…それは分かります。実際、私の印象ではその辺はまったく変わっていない。日本が人種の坩堝志向になっていくことはないと思う。たぶん、こころなしか、日本は10年前よりも少し孤立した。だから、それは正しい。
でも、子供を増やす政策なら実行することができる。フランスは実に興味深いことだが、出生促進政策を運営して、実際に機能させていますから。

■ありがとうございました。

1. 原文:For everybody else, if investors are rushing into sovereign debt, not out of it. so it’s not a sovereign debt crisis except –and even for the euro countries that are in trouble, their problem is only, sovereign debt is just part of the sort of poison cocktail that they’re suffering from. [↩]
2. 原文:I mean given the realities, given what we know about Japan, which is that it has persistently, still, not as much as before, still persistently high saving. [↩]
3. 原文:Either there’s going to be some very dramatic policy shirts [↩]
http://econdays.net/?p=7050
 

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コメント
 
01. 2012年9月05日 21:39:45 : Pj82T22SRI

>クルーグマンの日本への処方箋は、主に金融政策 4%インフレ目標、大規模資産購入、あとは反緊縮(大規模財政出動には反対らしい)、少子化対策

インフレ目標1%すら四苦八苦してるのに、4%を日銀が宣言しても、市場は信用しないだろうし、
手段としての大規模資産購入は株やREET、外債を買うなら内外の富裕層への分配というモラルハザードになる欠点がある。
少子化対策は、言うは易く、しかし容易には実行できない。

ありきたりな処方箋だが、それでも構造改革がほとんど進まない状況では、やらないよりはマシか。



02. 2012年9月05日 23:51:28 : glol9xWTY2
>クルーグマンの日本への処方箋は、主に金融政策 4%インフレ目標、大規模資産購入、
あとは反緊縮(大規模財政出動には反対らしい)、少子化対策か。

4%のインタゲは、日本の岩田教授も唱えている。

■4%のインフレ目標でデフレ脱却の姿勢示せ――岩田規久男・学習院大学経済学部教授《デフレ完全解明・インタビュー第1回(全12回)》(1)
■要点
・日銀がデフレを容認しているからデフレが定着している
・マネタリーベースを増やせば、予想インフレ率は上昇する
・4%のインフレ目標の導入でまず、デフレ脱却を急げ
http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/396d5a486965f76dffd92e2c8e5208ec/

あとリフレ派の高橋洋一教授や若田部昌澄教授も4%インタゲに賛成だが、
財政拡大を伴う強力なリフレ政策も唱えている。

■政府通貨は見事な政策 若田部昌澄(早稲田大学教授)
(前略)政府通貨はじつに見事な政策である。
国民に購買力を直接支給する財政と金融の合わせ技であり、たんなる国債発行とは異なる。
それゆえ財源問題もない。
もちろん論理的には日銀が政府の長期国債を新規発行国債に限らず、大量に購入すればよい話ではある。
しかし日銀はこれまで長期国債の購入を渋ってきた。
日銀が危機対応に目覚めれば別だが、日銀の行動が変わらないとすれば政府通貨は十分考慮に値する。
平時では使われない政策でも、危機には望ましい政策もある。
あとは、どこまで政策担当者が腹をくくるかに懸かっている。
http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=128&nif=false&pageStart=20

■デフレ脱却が難しいという人に、政府紙幣12兆円刷って、
それを財源として国民の年金保険料(基礎年金部分)を1年間ただ【1】にしたら、どうですか。
それでもデフレ脱却できないなら、さらに政府紙幣12兆円にします。
それでもダメならさらに12兆円。
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/23052236145
■【1】とほぼ同じもので、政府が国債12兆円発行して日銀が12兆円引き受ける【2】。
これは財政法ただし書きでできる。
さらに、政府が国債12兆円発行して日銀が12兆円市中から買い切りする。
これはすぐ今でもできる。
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/23052247089
■これと長い見で見て似たもので、日銀が単に市中から12兆円買い切る【3】。
そうするとその分の利払費は浮くので、財政支出に回すことが可能。
40年債を買い取れば2%で40年分だからかなりの財源になる。
理論上、1,2、3は同じ
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/23052279237
■大蔵省時代に、榊原さんが10万円金貨で派手にやって6000億円の国庫収入。
そこまで派手にやらなくても、毎年記念通貨で小遣いかせぎ。
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/23052215208

■財政難で景気対策ができないなら量的緩和だが、それをどうしてもいやというなら政府紙幣でいい。
量的緩和でベースマネーを増やすことと政府紙幣は理論的には同じだから。
政府紙幣20兆円を日銀に持ち込めば2年くらい年金保険料をタダにできる。
これでデフレが直らなければさらに政府紙幣20兆円
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/18838647138689024

■政府紙幣でデフレ脱却・円安・失業率低下になるが何が、問題なのか。
やり過ぎると酷いインフレになるが20兆円くらいなら大丈夫。
インフレ目標で縛っておけばいい。
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/18920525086588928

■政府紙幣はまず20兆円。その次から5兆円ずつ。
beiその他の予測資料をみながらだけど、たとえばbeiが2%を超えたらストップとかね。
効果にタイムラグがあるからあのあたりをよくみながら。
こういうことをやるのが本当のテクノクラート
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/18968321940525056

■政府紙幣50兆円で国民50万円=社会保障保険料2年間タダをやってもまったく問題ないはず。
この程度なら今の日銀の通貨発行怠慢から今でもインフレにならない。
政府紙幣500兆円で国民一人あたり500万円にしよう
http://twitter.com/YoichiTakahashi/status/28820476591611904
(高橋洋一=嘉悦大教授・元財務官) 


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