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著者は冒頭で「これは読んだ方がよい」と心から薦めている。筆者も読んでよかった。目からウロコのところがたくさんあった。著者は経済学者ではない。使用する数字は誰でもアクセスできて確認できる就業者数、失業者数あるいは生産年齢者数の絶対数であり個人所得は一人当たりではなくその地域の全合計額である。
失業率、有効求人倍率や出生率などの数字はほとんど使わない。これで日本経済の変遷が説明できるとし説得力がある。結果として「経済学(者)」のイカサマぶり・無能ぶりを暴き出してもいる。
眼目は「日本は百年に一度どころか二千年に一度の現役世代の減少に襲われる」ことであり、その処方箋も提示する。
ここでは断片的な引用しかできず意を尽くせないので、疑義や意見のある人はぜひ本書を通読してから、コメントされるよう希望する/仁王像
『デフレの正体―経済は「人口の波で動く」』藻谷浩介/角川新書‘11年から抜粋
<あとがき>
「経済を動かしているのは、景気の波ではなく人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」。この本の要旨は一言でいえばそういうことになりましょう。
第5講 地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」
<苦しむ地方圏を襲う「二千年に一度」の現役世代減少>
青森県でも、90〜95年に失業者数は5千人以上増えていたが、失業者の増加をはるかに上回る勢いで就業者数が増えていたので、90年代前半の青森県で個人所得(トータル)の増加、モノ消費の増加が起きていた。逆に00〜05年の失業者数は2万1人に増えたが、就業者数の4万4千人の半分にも満たない水準。つまり00〜05年の就業者減の半分以上は、失業とは無関係に生じた減少なのです。
その要因とは、人口変動です。それも総人口ではなく、生産年齢人口の変動です。「現役世代」の数で、15〜64歳人口が該当します。
…
このように青森県の経済の問題は、単に景気循環に伴う失業者の増減や、若者の流出だけで説明できるようなものではありません。今世紀になっての不振の背後には失業者の増加ペースや若者の流出ペースを大きく上回る就業者数の減少があり、その背景には総人口減少のペースを大きく上回る生産年齢人口の減少がある。同時に高齢者の激増も進行している。この事実を踏まえてこそ、日本で何が起きているのか、本当のところがわかってくるのです。
(これらのことを)「少子高齢化」というズレた言葉で表現するのは、少子化=子供の減少と、高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、…最も重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまっている。
<人口が流入する首都圏でも進む「現役世代の減少」>
(略)
<所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増>
首都圏で起きているのは、「現役世代の減少」と「高齢者の激増」の同時進行です。
<「地域間格差」ではなく「日本人の加齢」>
<団塊世代の加齢がもたらす高齢者のさらなる激増>
現在「100年に一度の不況」のせいにされている現象の多くが、実は景気循環とは関係ないところで、このような住民の加齢によって起きているものなのです。「100年に一度」どころの騒ぎではない。今起きているのは日本始まって以来の、「二千年に一度」の生産年齢人口減少なのですから。
なぜそんなに首都圏の高齢者福祉の現場が需給逼迫しているのか、その原因は「住民の加齢による高齢者の絶対数の激増」という単純な事実であることを誰も言わない。景気だの格差だの、関係のないことばかり言っている間に、しかし、時間は平等に流れていくのです。
第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
<住宅バブルを生んだ団塊世代の持ち家取得>
<「就職氷河期」も「生産年齢人口の波」の産物>
<「生産年齢人口の波」が決める就業者数の増減>
戦後の生産年齢人口と就業者数の増減の推移をグラフにまとめた。日本経済が本当の意味での景気循環の直撃を受けた第一次石油ショック前後の5年間(70−75年)を除けば、この二つの数字はストレートな相関を見せています。
…ほとんどの時期において完全失業者数と就職者数は同時に増えたり減ったりしていたのです。経済学をかじると、「失業と就業は逆の動きをする」と思い込みがちですが、この公式が戦後日本においてはまったく妥当しない空論であったことは国勢調査結果から一目瞭然です。
つまり恒常的に失業率の低い日本では、景気循環ではなく生産年齢人口の波、つまり「毎年の新卒就職者と定年退職者の数字の差」が、就業者総数の増減を律し、個人所得の総額を左右し、個人消費を上下させてきたわけです。これを理解せず、就業者数増減を見ないで、失業「率」と有効求人倍率で景気を論じるというのが日本で広く見られる謎の慣行であるわけですが、そういう景気判断が、就業者数に連動している日本経済の現実とずれるのは当たり前です。
この「生産年齢人口減少に伴う就業者の減少」こそ、「平成不況」とそれに続いた「実感なき景気回復」の正体です。戦後一貫して日本を祝福してくれていた「人口ボーナス」が95年頃に尽き、以降は「人口オーナス」(新規学卒者<定年退職者)の時代が始まったということです。
アメリカ発の世界同時不況(100年に一度?)が、仮に起きなかったとしても、足元の5年間(05−10年)には日本史上最大の、「二千年に一度」の生産年齢人口減少が起きていることに変わりはないのです。つまり日本がさらに深刻な内需不振になることは、どのみち避けられなかったと申せましょう。
<「好景気下での内需縮小」が延々と続く>
戦後の生産年齢人口と就業者数の増減の推移をグラフにまとめた。日本経済が本当の意味での景気循環の直撃を受けた第一次石油ショック前後の5年間(70−75年)を除けば、この二つの数字はストレートな相関を見せています。
…ほとんどの時期において完全失業者数と就職者数は同時に増えたり減ったりしていたのです。経済学をかじると、「失業と就業は逆の動きをする」と思い込みがちですが、この公式が戦後日本においてはまったく妥当しない空論であったことは国勢調査結果から一目瞭然です。
つまり恒常的に失業率の低い日本では、景気循環ではなく生産年齢人口の波、つまり「毎年の新卒就職者と定年退職者の数字の差」が、就業者総数の増減を律し、個人所得の総額を左右し、個人消費を上下させてきたわけです。これを理解せず、就業者数増減を見ないで、失業「率」と有効求人倍率で景気を論じるというのが日本で広く見られる謎の慣行であるわけですが、そういう景気判断が、就業者数に連動している日本経済の現実とずれるのは当たり前です。
この「生産年齢人口減少に伴う就業者の減少」こそ、「平成不況」とそれに続いた「実感なき景気回復」の正体です。戦後一貫して日本を祝福してくれていた「人口ボーナス」が95年頃に尽き、以降は「人口オーナス」(新規学卒者<定年退職者)の時代が始まったということです。
アメリカ発の世界同時不況(100年に一度?)が、仮に起きなかったとしても、足元の5年間(05−10年)には日本史上最大の、「二千年に一度」の生産年齢人口減少が起きていることに変わりはないのです。つまり日本がさらに深刻な内需不振になることは、どのみち避けられなかったと申せましょう。
<「生産性向上」努力がGDPのさらなる縮小を招>
実数をお示ししましょう。一部上場製造業1090社と、非製造業742社の単独決算を合計した数字を、96年度から06年度まで作ってみた。
96−06年度を通してみても、生産性が26%も増えたのに付加価値は1%の微減でして、「生産年齢人口減少局面においては、従業員を減らし生産性を上げるという行動は、経済成長に結びつかない」ということが、明確に数字に出ています。
非製造業はまったく対照的な動きになっています。…しかし、付加価値額は製造業と同じ1%の微減にとどまっています。
第8講 声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち
そもそも「人が歳を取る」という物理現象に原因があるわけですから、これは対処が可能な問題なのでしょうか。ご安心ください。対処は相当程度まで可能です。
@生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう。
A生産年齢人口に該当する世代の個人所得を維持し増やそう。
B(生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう。
これらが実現できれば結果として経済成長も改善します。が、逆が起きるとは限りません。経済成長率を何か別の方法で上げたとしても、@ABは達成できないのです。
事実この間までの「戦後最長の好景気」の元では、…「生産年齢人口減少」@はまったくとまらず、生産年齢人口に該当する世代の所得増加Aは生ぜず、個人消費総額Bも実際には増えませんでした。生産年齢人口減少という構造の元では、直接に@ABを図る策が必要なのです。
<「日本の生き残りはモノづくりの技術革新にかかっている」という美しい誤解>
モノづくり技術を際限なく革新して、今後も常に日本の製造業が世界の最先端に君臨し続けたとしても、「生産年齢人口減少に伴う内需縮小」という日本の構造問題はまったく解決されません。日本の製造業が競争力を保って輸出を続けることは、生産年齢人口減少のマイナスインパクトに抗するための三つの目標に直接まったく貢献しないからです。
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