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(回答先: 「日本を襲うのは二千年に一度の現役世代の減少と高齢者の激増である」/藻谷浩介『デフレの正体』から 投稿者 仁王像 日時 2012 年 6 月 13 日 20:27:59)
第2講 国際経済競争の勝者・日本
<世界同時不況下でも続く貿易黒字>
日本には天然資源もなければ、食糧生産も十分ではありません。ですが加工貿易国である上に内需不振ですので、製品が売れないのであれば、原材料も輸入しない構造です。食糧自給率は41%(カロリーベース)で先進国中最低だと言いますが、食糧輸入の絶対額はといえば9兆円台。輸入のごく一部に過ぎません。つまり輸入のほとんどはどうしても使わなければならない固定費ではなくて、売り上げに連動して上下する変動ですから、輸出が減っているのに輸入だけを増やすというようなことは起きません。そのため、日本が貿易赤字になるのは構造的に難しいのです。
日本の国際競争力を論じるすべての人は、ムードに乗って良い悪いを騒ぐのはやめ、客観的で議論の余地のない絶対数、すなわち輸出額、輸入額、貿易収支の額を冷静に眺め、そこから構想を把握するようにしていただきたい。
<中国が栄えれば栄えるほど儲かる日本>
<中国に先んじて発展した韓国・台湾こそ日本の大得意先>
そもそも日本が韓国や台湾に何を売っているのか、…韓国、台湾は、日本からモノづくりのためのハイテク部材や機械だけを買っているわけではありません。豊かになった向こうの国民が、日本製品の中でもブランド力価値の高いものを買い始めているのです。車や電気製品はもちろんですが、安心安全が売りと食材や、お菓子なども人気です。日本人の一部が韓国直輸入の高級キムチや陶磁器を買うように、韓国人もの一部が消費する日本直輸入の高級品も年々増えているのです。だからこそ、先方の技術力がいくら高くなろうとも、いやそのおかげで国民が豊かになって行けば行くほど、日本の貿易黒字は増えていく、技術ではなく「ブランド」が日本の商品に備わっている限り。
<フランス、イタリア、スイスに勝てるか>
ところで、そのように無敵の商品力を持つ日本から黒字をむしり取っていく、二国が世界にはいます。何が起きても儲けの減らない世界の工業国兼金貸し・日本から黒字を稼ぐのは容易ではありません。アメリカはもちろん、中・韓・台も、ロシアですら対日赤字なのです。欧州を見てもEU全体もそうですし、イギリスだけを見てもドイツだけを見ても、向こうが大幅な対日赤字です。でも実は、拡大G8の中でもフランスとイタリアは、近年一貫して対日貿易黒字なのです。G8以外では、スイスがすべての分野で対日黒字です。彼らは強力な資源を持っているのです。「自国製」の「高級ブランド品」です。
フランス、イタリア、スイスは、日本からハイテク製品を買っていないわけではない。日本のハイテク製品の代金よりも、日本人が喜んで買っている向こうの軽工業製品の代金の方が高いので、日本が赤字になるのです。
でも幸いなことに、日本はもともと軽工業製品の分野にもきわめて強い国です。伝統工芸にも素晴らしいものが多い。本来の力を発揮すれば何も困ることはありません。
だって、ハイテク分野では日本にかないっこないフランスやイタリアが、人口でも日本の半分ほどしかない彼らが、ブランドの食料品と繊維と皮革工芸品を作ることで、日本から貿易黒字を稼いでいるんですよ。
第3講 国際競争とは無関係に進む内需の不振
日本経済の停滞は、国際競争に負けた結果ではないことをお示ししてきました。国際競争に勝っても負けても、それと無関係に進む「内需の縮小」こそ、日本経済が直面する恐るべき病気なのです。
<なぜ「対前年同期比」ばかりで絶対数を見ないのか>
(MBAと取った経験からも)アメリカのファイナンスの世界で実際に行われているやり方には、仮定に立った机上の計算が多いこともよくわかりました。ビジネススクールで教えられていた米国流のファイナンスの世界全体が、怪しい投資話に投資家を誘うための甘いフィクションに貫けれているのです。
その後すっかり日本にも広まった米国流のファイナンスですが、本当は関係者だって構造に無理があることはわかっていないはずはない。でも事実がどうであるかは短期的投資の世界ではどうでもいいのです。
皆さんには、報道のそういう避けられない欠陥を踏まえた上で、ご自分で絶対数を確認されしっかりと長期トレンドを把握する癖を付けられた方がよろしいかと思います。
第4講 首都圏のジリ貧に気づかない「地域間格差」論の無意味
個人所得というと、機械的に「一人あたり所得水準」の話であると勘違いをする人がいますが、ここで言っているのは「一人当たり」の水準ではなく、「県民全員の所得の合計額」です。実際問題、一人あたりの水準に関係なく合計した絶対数が伸びれていれば、マーケットとしては魅力があるのですよ。その絶対数を税務署が把握してい(る)。
<「小売り販売額」と「個人所得」で見える「失われた10年」のウソ>
ここで用いた税務署由来の個人所得は「課税対象所得額」というものですが、こっれもきちんとした絶対数が市町村別に出る全数調査です。もちろんこれ以外に非課税の所得もありますのでえ、実際の所得よりは低めの数字が出ていますが、とはいってもその地域の経済状況をとてもヴィヴィッドに示す指標です。
ここで紹介した小売り販売額や課税対象所得額、あるいはこの先で使う国政調査のような、確固たる全数調査の数字は、現場で見える真実と必ず一致しますし、お互いの傾向に矛盾が出ません。一致しないのは、得体のしれない世の空気だけです。こういう空気というのは、数字を読まない(SY)、現場を見ない(GM)、空気しか読まない(KY)人たちが、確認もしていない嘘をお互いに言い合って拡大再生産しているものです。
<「東京都心部は元気」という大うそ>
<地域間格差に逆行する関西の凋落と沖縄の成長>
<地域間格差ではなく日本中が内需不振>
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