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控訴を勧めなければ死刑判決を下すことができないことで、裁判員裁判の問題点が露呈
適正手続(裁判員・可視化など) / 2010-11-17 05:12:13
報道によると、【裁判員裁判で初の死刑判決を受けた池田容之被告(32)に対し、横浜地裁の朝山芳史裁判長は判決言い渡し後の説諭で「裁判所としては控訴を申し立てることを勧めたい」と述べた】という(産経 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/101116/trl1011161313009-n1.htm)。
通常、裁判官は、控訴することができることを伝えるだけであり、付け加えるとしても、よく弁護士と相談して決めなさい、というだけ。積極的に、控訴を促すことは珍しい。報道のとおりだ。
その理由として産経新聞は、【説諭には死刑に反対した裁判員の意向を踏まえた可能性もあるほか、控訴審もあることを示すことで死刑判決を決めた裁判員の精神的負担を和らげる配慮もあるとみられる】と指摘しているが、そのとおりだろう。
しかし、いくら、控訴したとしても、一審判決で、死刑判断を下した事実は変わらないのであり、死刑という形ではあれ、人を殺すことに市民が参加した事実は消し去りようがない。
【死刑に反対した裁判員の意向を踏まえた】という点では、米国の陪審制度では、有罪でさえ、全員一致でなければならないのに、日本では死刑さえ、全員一致ではないという制度的欠陥が露呈したといえる。
本来、刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要なのであるから、多数決で有罪を決めること自体、おかしいわけだ。少数であれ無罪と考える人がいる以上、合理的な疑いを差し挟む余地がないとはいえないはずだ。
しかも、死刑さえ、反対する人がいても判決されてしまう。その結果、死刑に反対だった人は、その場にいたこと、死刑に賛成する人を説得できなかったことを一生後悔するかもしれない。
【控訴審もあることを示すことで死刑判決を決めた裁判員の精神的負担を和らげる配慮】という点では、控訴審で死刑を維持してくれれば、自分たちが最終的に決めたわけではないと気が楽になるということだろうが、実際には、裁判員裁判の判決を検察官、高裁も重く受け止めている現状だけに、仮に、死刑ではなく向きだった場合に、控訴されるかどうかは分からないし、高裁でひっくり返すかどうかもわからない。したがって、気休めでしかない。
問題は、そういう気休めに頼らなければならない仕組みではないだろうか。
、
市民が市民を裁くことで、国家による恣意的な判断を避けるということ、つまり、国家による不当な有罪認定を避けることが市民参加の本質的な意義だと思うが、そうであれば、量刑までも、市民が判断することは必要ないし、むしろ、有害だ。
極刑であればこそ、裁判員制度における問題点が、露呈したわけだ。
単に、裁判長が気休めを言い、それを誉めるだけで、放置していいはずがない。
あえて、加えるならば、第二次大戦における日本軍人の死が、敗戦必至状況のもとでは無駄死にというほかないものであっても無駄死にだと思わせないことで遺族の国家に対する反感を防いだことと似ているような気がする。事実を直視することでしか、より良き社会は生まれない。
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