<■414行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> (新値3本が鍵)酒田新値の数え方と統計データから分かる重要な節目とは? テクニカル分析トレードの裏話 2021/05/30 https://behind-trade.com/technical-analysis/sakata-shine-toukei-date/「なんとなくローソク足を数えれば、酒田罫線は使いこなせるのかなぁ」 「酒田新値の数え方に明確な定義や理論なんてあるのだろうか?」 酒田罫線を使いこなせるようになるためにも、酒田新値の数え方はマスターしておきたいところ。 しかし、実際に相場を目の前にして酒田新値(一般的にローソク足)を数えるとなると、明確な定義が分からないなんてことに陥りますよね。 そこで、酒田新値の数え方について基礎的なパターンと酒田新値の統計データから分かる「気づき」について詳しく解説します。 長年、酒田罫線法は、筆者が投資をする上で参考にしている指標であることからも、諸説ある酒田罫線理論を本質的に読み解く力を養えるはず。 酒田新値を数える方法について理解を深め、実践的なノウハウとして活用できる状態を目指しましょう。 【関連記事】酒田罫線法とは一体何なのか?諸説ある歴史と概要について解説 目次 1酒田新値の数え方を複数の「パターン」から習得する 1.1(基礎)最もオーソドックスな酒田新値の数え方 1.2新値は繰り返されて相場を形成する 1.3酒田新値における「上げ」「下げ」の解釈について 1.4酒田新値における押し目の判断は◯本目? 2酒田新値の詳しい統計から分かること 2.1酒田新値から考察する「上げ相場」の性質とは? 2.2逆行での出現頻度が高い「新値3本」の確率について 2.3「逆行」が「順行」へと転換するタイミングを考察する 2.4上昇相場・下降相場における新値(逆行)の近似値について 3まとめ 1. 酒田新値の数え方を複数の「パターン」から習得する 酒田新値の数え方を複数の「パターン」から習得する 酒田新値の数え方には、基礎的な数え方から複数のパターンに分岐して理解したい項目があります。 具体的には、 (基礎)最もオーソドックスな酒田新値の数え方 新値は繰り返されて相場を形成する 酒田新値における「上げ」「下げ」の解釈について 酒田新値における押し目の判断は◯本目? の4つであり、酒田新値の数え方に関する概要を詳しくチェックしてみましょう。 1-1. (基礎)最もオーソドックスな酒田新値の数え方 まず、一般的な酒田新値の数え方について基礎知識と頻出のパターンを事例に、下記にて解説します。 初歩的な酒田新値の数え方って? 酒田新値の数え方について詳しい解説に入る前に、下記の連なるローソク足画像をご覧ください。 酒田新値を数える(1) 上記画像をご覧になると、至って普通のローソク足が不規則に出現がしているのが分かりますね。 「陽線」「陰線」とローソク足が不規則に並んでいる訳ですが、これらに規則性はあるのでしょうか? また、こちらの画像に関してはいかがでしょうか? 酒田新値を数える(2) 陽線と陰線が連なって形成されているチャートではありますが、特異な傾向は見受けられるでしょうか? 上記の画像から分かる情報として、「陽線の本数・陰線の本数がどれくらいあるか?」となるため、それらをカウントしてみるとします。 すると、画像Aに関しては陽線17本に対して陰線は9本。 画像Bでは陽線17本に対して陰線は12本であると分かります。 どちらも陽線の数が多いことから、上げ相場であると判断できますね。 でも、「チャート形状からも上げ相場だと分かるし、陽線が多ければ相場が上昇状態であるのは当たり前じゃん」と思われることでしょう。 酒田新値は、ここまで単純に解釈できるものではないですが、新値を数えるという点では最も初歩的に必要となるステップ(新値を数えることが)になるのです。 ですから、チャートに表示されている「陽線・陰線の本数」を数えることから、酒田新値のカウントは始まると考えておきましょう。 次に、酒田新値の基本を「押し目」の観点から詳しく解説します。 陽線(陰線)3本での出現頻度は高い 酒田新値の数え方において、最も基本的であり、注視したいのは陽線(陰線)の3本。 とりわけ、日足をベースとする酒田罫線において「3本」のローソク足は「どう解釈するか、あるいはどう認識すべきか」を見当する箇所になります。 下記の画像をご覧ください。 陽線の形成 はじめに、画像のように3本並んだ陽線の1本目はある時点における「寄付き」から始まり、「大引け」で値を高くして終わっているのが分かりますね。 陽線aによる値動きの発生を確認 この陽線を引いたローソク足を「a」とし、次の日も同じように陽線を出した値動きが発生。 陽線bによる上ヒゲの確認 陽線「b」 は大引け時には売りが浴びせられたことによって「上ヒゲ」を残した形になったものの、相場としては上昇を形成する一助になりました。 天井となる陽線c そして、3本目の陽線である「c」を形成したことで「ひと相場」を形成したと判断できます。 画像の陽線を詳しく見てみると、「a」の始値は底であることが分かりますし、「c」に関しては天井であると解釈できますよね。 でも、どうしてこれら一連の陽線が「ひと相場」を形成したと断定できるのでしょうか? その理由は、市場参加者の思惑や心理、売買と関係しているため。 例えば、「a」の陽線を形成した日は「上げ材料」や「関連するポジティブなニュース」などは特に無かったとしても、熟練の相場師によって買われたとします。 また、次の日「b」では銘柄に関連するニュースが出たことによって、今まで興味のなかった人々が買い出す動きに。 3日目に関しては、強材料となるサプライズが出たことによって、鈍感な相場師までもが慌てて買ってしまう展開になったことを示しているのです。 上記のような展開を、考えられ得る市場心理に当てはめると表のようになる。 心理的な状態・感覚 陽線1本目 敏感であり、大胆な傾向 陽線2本目 中位な状態 陽線3本目 鈍感であり、小心でもある 相場の感覚として人の気持ちはもっとも影響を与えるものであり、受けるものでもあります。 陽線が3本続いた場合、心理状態の異なる市場参加者によって形成されたことが分かりますね。 陽線1本目からも分かるように、相場に敏感でありながら大胆な「買い」が行えるというのは一部の相場師を指します。 経験と確かな技量がある相場師が、多くは分類されるのが窺えます。 技法のレベル 陽線1本目 熟練した相場師 陽線2本目 中位な相場師 陽線3本目 未熟な相場師 こちらは技法のレベル感を示したもので、利益を大きく狙いやすい「陽線1本目」から参加した相場師順に熟練していると考えられるでしょう。 反対に、陽線の本数が進むに連れて熟練度は落ちるとも判断できます。 売買の強弱度合い 陽線1本目 買い方によって少し買われる 陽線2本目 買い方が売り方と激しく売買する 陽線3本目 売り方の負け、買いの勢いが(一旦の)クライマックス 陽線が3本連なっていることからも、買いに勢いがあるのは自明。 けれども、売買の強弱も各段階によって違いがあります。 もっとも、陽線2本目は相場継続時のキーとなる箇所でもあり、激しい売買抗争によって決着が着くと解釈できますね。 市場での人気 陽線1本目 「買いたい」と考える参加者は少ない 陽線2本目 買いの人気が少し高まっている状態 陽線3本目 買いの人気が殺到しているが、売りの気配も出てくる 最後に、市場における人気度順で見てみます。 今まで、下げていた相場だったため「買い」の人気は少ないことが把握できます。 されど、陽線の形成が進むと人気が売りよりも高まっていくことが分かります。 結果として、3本目の陽線では買いの人気がピークになりやすいのです。 上記の項目を、より高次な事例で解釈すると「ひと相場」の意味も明瞭になります。 次の項目に進んでみましょう。 3本目が節目となる「ひと相場」とは? 先述した項目では、主に「人」の心理状態に着目して陽線(陰線も然り)の出現度に起きる相場の状態を観察しました。 これらを、よりダイレクトに相場そのものの「寿命」として換算してみると下記のようになりますね。 相場の寿命的観点から考えると… 陽線1本目 青年期における上昇相場 陽線2本目 壮年期における上昇相場 陽線3本目 老年期における上昇相場 どうでしょうか? 相場の寿命的観点から考えてみると、表のような推移を辿るのは自然な経過になるでしょう。 その上、先にお伝えした市場心理と重ねてみると「3つの陽線」は「三度目の正直」や「仏の顔も三度まで」と言い習わしがあるように、市場心理や相場の値動き、日足形成に如実に影響を与えているのが分かります。 つまり、3回連続する陽線や陰線は高確率で「ひと相場」が終了したと考えておくべきポイントになるのです。 ところで、先程の画像に戻ってみましょう。 新高値をそれぞれカウント 上記画像の「a」は直近の底であるとすると、「A」は陽線で見せる新高値1本目となります。 「b」の「B」に関しては「a」の底値に対して陽線新高値2本目。 最後、「c」の「C」については陽線新高値3本目であり、大引けでは「a」の底とは対照的に天井となります。 ただ、上記の説明ではあまりにピュアなチャートとなってしまいます。 そこで、実際の相場を想定したチャートでも確認してみましょう。 底となる陽線の確認 こちらの陽線・陰線における連なりを見て、「底」や「天井」、「新高値の本数」をご自身でも数えてみてください。 答えとしては、 A 底となる a 陽線新高値1本目としてカウントできる。 b 陽線新高値2本目としてカウントできる。 c 高値で引けてはいるが、前の陽線を超える新高値ではない。 d 前回の高値を上抜いていることから、陽線新高値3本目とカウントできる。 加えて、仮に小規模であったとしても「上昇のひと相場」が終了したと考えられる。 少し捻りのあるチャートを参考にしてみましたが、現実のチャートはもっと複雑なケースが多いでしょう。 とはいえ、こうした新値の数え方をすることで「ひと相場」となる節目の値動きを把握できるようになるのです。 1-2. 新値は繰り返されて相場を形成する 下記では、より複雑な新値の形成について見てみましょう。 逆行の陰線a/b a 陽線新高値1本目としてカウントできる。 b 陽線新高値2本目としてカウントできる。 陰線a 陰線新安値1本目としてカウントできる。 陰線b 陰線新安値2本目としてカウントできる。 c 陽線新高値3本目とカウントできる。 加えて、一旦の「ひと相場」が終了したと考えられる。 注視したい点としては、上記画像では、「a」と「b」を挟む陰線が確認できますが、「b」が新高値更新をしているのでカウントしません。 その後、陰線が2本続いているのが確認でき、「b」の高値に対して「2本の新安値」をカウントできるのです。 さて、下記の画像についてはいかがでしょうか? 底の確認 左側の「下げ」を見ると、下記表のようなことが分かります。 a 陰線新値1本目としてカウントできる。 b 陰線新値2本目としてカウントできる。 c 陰線新値3本目としてカウントできる。 「a」と「b」の間には、寄引同事のローソク足が出現していますが、明確な安値更新を示している訳ではないため、陰線新値としてカウントしていません。 もっとも、この陰線新値3本の出現によって「下げのひと相場」が終了し、次の上げ相場へと向かうと考えるのがセオリー。 すると、陰線3本目の「c」の大引け「1」の箇所が、「底=1」となって次なる上げ相場の起点になるのです。 天井の確認 ということで、再び先程の画像における真ん中付近の「上げ」を見てみましょう。 画像に表記しているアルファベットは、表のような新値のカウントが取れます。 d 陽線新値1本目としてカウントできる。 e 陽線新値2本目としてカウントできる。 f 陽線新値3本目としてカウントできる。 これはとてもシンプルな新値の更新を果たしており、目先の天井は「2」の陰線となります。 そして、一連の下げによる陰線3本目の安値「3」が底として判断できるでしょう。 底の確認(2) その後、「3」を底として、次なる上昇における起点(目先の底)として機能していますね。 新値のカウントとしては、「目先の上げ相場」と「さらに前の上げ相場」で異なってきます。 g 「3」の底に対して陽線新値1本目としてカウントできる。 h 「3」の底に対して陽線新値2本目としてカウントできる。 しかし、「1」の底からカウントすると「1を底とした陽線新値3本分」と、「2の天井」を上抜いた「h」であるため、陽線新値は4本ともカウントできる。 i 上記と同じく、「3」の底に対しては陽線新値3本目としてカウントできる。 けれども、「1」の底からカウントすると「h」に続いて陽線新値5本目となる。 要するに、「目先における一連の相場」と俯瞰して観察する「中・長期での相場」では、「新値」の数え方が変わることが分かりますね。 慣れるまで複雑な視点を要しますが、一つ一つ噛み砕いて見てみると酒田新値のカウントは行えるようになるはずです。 1-3. 酒田新値における「上げ」「下げ」の解釈について ここまでご紹介した酒田新値の取り方を実際の相場に当てはめて考えてみると、どのような結果となるのでしょうか? 分析としての精度の高さ、手法として利用できる信頼性の高さにお気づきになるはず。 ただし、根拠もなくチャートを眺めて「陽線の数が3本だから、ひと相場は終わった」などと断定・判断してしまうのは早計でもあります。 ゆえに、酒田新値を用いる前提として下記の項目を抑えておく必要があります。 酒田新値の統計はどのような方法で取るべきであるのか? 集計した統計結果はどうであったか? 統計結果から利用の仕方はどうであるべきか? という内容を知っておくことで、一見、曖昧であり明確な定義がない酒田新値を信頼たるものとして活用できるようになります。 ゆえに、相場の動きを示している「陽線」や「陰線」が酒田新値を前提に相場に取り入れる際、どのような意味を持っているのかを一貫した説明で理解しておく必要があります。 さらに、定義化した酒田新値の理解から酒田罫線法の基礎として、どういった規範で分析が行われているかを知りたいところ。 やはり、この場合も個人的な感覚に依拠するのではなく、「一貫した方法を参考にすべきである」というのが重要です。 *マニアックな内容をご紹介していますが、江戸時代に発案された酒田罫線理論には諸説あります。 歴代の相場師によって、意味・解釈が塗り替えられてきたため、より普遍的な内容を持って理解を進めるのがおすすめ。 尚、酒田罫線法の詳しい概要については「酒田罫線法とは一体何なのか?諸説ある歴史と概要について解説」にて詳しく解説しています。 「逆行の…」「順行の…」で酒田新値を捉える 「上げ相場は陽線ゆえに順行であり、下げ相場は陰線ゆえに順行とする」という言説があるように、順行・逆行の概念は酒田新値を用いる上でキーとなります。 一例として、上げ相場とは多くの場合で「引け高」の現象を把握できること。 引け高とは陽線を指しており、一連の陽線が連続することで「上げ相場」を形成しています。 つまり、上げ相場における連続する陽線は「順行」であって陰線の出現は「逆行」の動きとして把握できます。 一方、引け安が続く場合は上げ相場になることはなく、むしろ下げ相場と判断。 下げ相場における、引け安の陰線は「順行」であり、引け高における陽線は「逆行」というように、定義できます。 酒田罫線法における陽線・陰線の認識方法は、上記のような「順行の動き」「逆行の動き」から説明するものであり、 陽線新値 陽線新高値 陰線新値 陰線新安値 などと認識することで、各相場における「順行の陽線新値」「逆行の陰線新値」といった、捉え方が出来るのです。 1-4. 酒田新値における押し目の判断は◯本目? 「順行の陽線新値」や「逆行の陰線新安値」などがあるように、酒田新値の押し目を捉えることは、相場を分析し、売買に役立てる上で非常に重要です。 では、酒田新値の押し目について具体的な目安判断となる「新値の本数」はあるのでしょうか? 残念ながら、明確な目安判断となる押し目の本数はありません。 しかし、相場のトレンドに逆行してよく出現する押し目の新値は「3本」までとされています。 このような諸説がいわれる理由として、酒田新値の定本である「定本 酒田罫線法(林 輝太郎氏)」でも詳しく紹介されています。 著者による分析では、小豆(商品)と株による統計データを用いて分析。 (表1) 陰線新値の本数(押し目となった本数) 出現した回数 出現確率 累計確率 1 225 18% 18% 2 385 30,8% 48% 3 472 37,8% 86,6% 4 84 6,7% 93,3% 5 56 4,5% 97,8% 6 14 1,1% 98,9% 7 11 0,9% 99,8% 8 2 9 1 合計 1,250 林 輝太郎(2020年)『定本 酒田罫線法』, 同友館 すると、上げ相場における押し目の総本数が「1250回」であるのに対し、3本目の陰線新値の出現で相場転換した累計回数は「1,082回」であると分かりました。 これは、累計の確率で計算すると「86.6%」を占めることとなり、押し目の成功確率を如実に示していると分かりますね。 (表2) 陰線新値の本数(押し目となった本数) 出現した回数 出現確率 累計確率 1 65 20,1% 20,1% 2 106 32,8% 52,9% 3 91 28,2% 81,1% 4 35 10,8% 91,9% 5 10 3,1% 95,0% 6 10 3,1% 7 4 1,2% 8 2 0,6% 合計 323 林 輝太郎(2020年)『定本 酒田罫線法』, 同友館 その上、小豆だけに絞ったデータでは「323回」における全体的な押し目の数に対し、累計「262回」が陰線新値なる押し目であったと分かります。 つまり、これらのデータから分かることは「陰線新値4本目以降は出現回数が極めて少なくなるということ。 3本目までの新値であれば、押し目として値動きを期待できるも、4本、5本目以降の新値に関しては出現確率が極めて低くなるのが分かるのです。 因みに、5本までの新値が押し目となる場合、累計出現確率は「91,9〜97,8%(先述したデータから算出)」であることが分かっています。 ということは、押し目として成立した「5本までの新値」の出現確率は滅多に出現することなく、もしこれらの新値が出現した場合は押し目ではなく、相場の転換点になると考えられるのです。 酒田新値を用いた押し目の判断をする際、絶対的な定義として活用できる数値はありません。 けれども、おおよその出現確率が高い本数は3本目までであり、4本目以降に関しては出現する確率は低くなることが理解できます。 別途記事にて詳しい解説は行いますが、酒田新値を用いることで押し目 や戻り高値、天井、大底などの判断も行えるというのも、納得できるでしょう。 上げ相場で「陰線」、下げ相場で「陽線」を見れば押し目が分かる 2. 酒田新値の詳しい統計から分かること 酒田新値の詳しい統計から分かること
酒田新値を数える上でのパターンや意識したい新値の見方について解説しました。 そこで、この章では酒田新値の統計から分かることを確認し、相場の逆行・順行にどのように当てはめていくべきかについて考察を深めてみましょう。 マニアックな内容となっていますが、あらゆる”相場”に当てはめて考えることができるため、よりディープな理解を深められるはずですよ。 2-1. 酒田新値から考察する「上げ相場」の性質とは? 繰り返しになりますが、酒田新値を用いた「相場」は以下のように解釈をします。 それは、上げ相場であるならば「陽線は順行の動きとなり、陰線は逆行の動きとなる」ということ。 順行、逆行の陽線・陰線を連続して繰り返すことで、結果として価格が上昇し、逆行だった陰線の動きが順行に変化したことを確認すると、「上げ相場の終わり」を意味するのです。 さて、こうした前提となる数え方を踏まえた上で「酒田新値」を用いた上げ相場の性質を見てみましょう。 下記の表は、前章で紹介した小豆と株式による出現回数(表1)の割合を示したもの。 陰線新値の本数(押し目となった本数) 出現した回数 出現確率 累計確率 1 225 18% 18% 2 385 30,8% 48% 3 472 37,8% 86,6% 4 84 6,7% 93,3% 5 56 4,5% 97,8% 6 14 1,1% 98,9% 7 11 0,9% 99,8% 8 2 9 1 合計 1,250 林 輝太郎(2020年)『定本 酒田罫線法』, 同友館 すると、陰線新値1本目で押し目完了となったのは「225回」であることが分かり、出現確率は「18%」を示しています。 やはり3本目までの陰線新値は統計データからも多いことが解釈できますが、8本、9本目が押し目となった陰線新値もあったとされています。 ここまでの本数が陰線として出現すると、もはや下げ相場の順行の形にも見えますよね。 ただ、あくまで上げ相場における「逆行」であり、陰線新値であるということを抑えておきたいです。 そうは言えど、1,250回の押し目のなかで8本、9本は表のデータから「計3本」しかないと分かります。 ですから、上げ相場の性質としては3本までの陰線新値が押し目となりやすい確率が高く、それ以降は押し目としての出現確率は低くなると認識できるでしょう。 2-2. 逆行での出現頻度が高い「新値3本」の確率について 陰線新値の本数(押し目となった本数) 出現した回数 出現確率 累計確率 1 225 18% 18% 2 385 30,8% 48% 3 472 37,8% 86,6% 4 84 6,7% 93,3% 5 56 4,5% 97,8% 6 14 1,1% 98,9% 7 11 0,9% 99,8% 8 2 9 1 合計 1,250 林 輝太郎(2020年)『定本 酒田罫線法』, 同友館 もう一度、先程の表をご覧ください。 そして、「陰線新値」がもっとも出現している本数は幾つでしょうか? タイトルにもある通り、その答えは「陰線新値3本」であることが分かり、出現回数は「472回」であり、出現確率も「37,8%」となります。 およそ4割近くが、3本の陰線新値によって押し目が形成されていることに。 40%という確率は、相場を分析するという観点では、異常に信頼性の高い数値になることは間違いないでしょう。 ただ、チャートの右側は未来のに起きることゆえに、必ず陰線新値の本数を言い当てることができないのも事実。 「昨日の日足で陰線新値を付けたから、今日も陰線新値をつけるはず」なんてことは断言できず、ましてや「陰線新値が3本出現したから、押し目となって反転するだろう」と、推論してしまう訳にもいきません。 過去の統計データから示された確率的な割合であるため、あくまで直近の過去においてどのぐらいの陰線を付けた(上げ相場における逆行)のかを調べたいところです。 そうした意味で、逆行における「新値の出現回数3本」への解釈は下記のように。 1本目からの出現回数をたどり、3本目の陰線新値の出現回数は累計1,082回であり、全体の「86,6%」を占めるものであると解釈可能となりますね。 2-3. 「逆行」が「順行」へと転換するタイミングを考察する 酒田新値を用いて相場分析をする上で、逆行に注目することは「押し目」を捉えるキーポイントになることを解説しましたね。 一方、「上げ相場」における「陰線の押し目(逆行)」が「下げ相場」の順行に転換する見分け方は、どうなるでしょうか? 酒田新値の定説としては、逆行の本数は「5本」までにすべきとされており、幾つかの解釈を広げることができます。 逆行の新値3本までは押し目と強く判断でき、「4-5本」 の新値を形成する場合でも、一応は押し目として捉えられる。 5本以上の新値をつける場合、それは押し目ではなく「下げ(上げ)」に転じたと認識する。 そもそも3本までの新値が押し目となる確率は「約80%」以上であるため、4本目は例外的な新値としてカウントし、5本目の場合は順行(相場の転換)と見なす。 ほぼ断定として、5本の新値を連続して見せるときは天井・天底を確認したことになる。 統計データからも分かるように、5本以上の逆行が失敗する確率は「2,2%」のみである。 *(5本目までの累計出現率は97,8%であるため) このように、押し目を形成していた「逆行」の新値が、相場の転換によって「順行」となることを見極められるのです。 なかでも、5本目以上の新値によって逆行が出現する確率は低いことから、5本以上の新値が出現した場合は(相場転換による)順行となったと解釈できますね。 新値3本・新値5本の見方はどうすべきなのか? 読者のあなたも薄々気づいているかもしれませんが、押し目となる逆行の動きが順行となるタイミングを見極めることが、酒田新値による相場分析をする上で大切となります。 とすると、逆行となる押し目になりやすい「3本の新値」と逆行が順行へとなりやすい「5本の新値」は注目したいところ。 こうした考えに対し、伝統的な酒田罫線の理論では明確な指摘をしている人はいないのが実態です。 しかしながら、ここまでご紹介した内容を踏まえると下記のような解釈ができるでしょう。 新値が3本続く場合 基本的に、押し目(戻り)の逆行 新値が5本続く場合 押し目(戻り)の判断は要注意であり、順行も視野に入れるべき と、100%の絶対的な確信を得られる訳ではないが、大方の推測を立てることができると分かります。 一般的に、酒田新値といえばローソク足の「線組み」や「型」が意識されがち。 ところが、酒田新値を売買技法にまで落とし込むのであれば、新値の本数から相場の性質を抑えられる力も必要となるのです。 2-4. 上昇相場・下降相場における新値(逆行)の近似値について ここまでの解説では、上昇相場における逆行の新値本数を参照としてきました。 統計データから分かったこととして、新値3本までは出現確率も高かったものの、新値4本目以降は極端に減少。 実際、新値4本目での累計出現確率は(表1)で「93,3%」であり、(表 2)では「91,9%」。 とすると、5本目以上での出現確率はどちらも「10%」を下回ってしまう計算になります。 他方、下げ相場における逆行の出現確率はどうしたものか、検証をしてみましょう。 *補足として、下げ相場での逆行とは陽線新値のことを指します。 下記の表をご覧ください。 (表3) 陰線新値の本数(押し目となった本数) 出現した回数 出現確率 累計確率 1 195 16,3% 16,3% 2 248 20,7% 37,0% 3 591 49,4% 86,4% 4 110 9,2% 95,6% 5 42 3,5% 99,1% 6 6 7 4 8 1 合計 1,197 林 輝太郎(2020年)『定本 酒田罫線法』, 同友館 というように、表1と同時期における陽線新値の総本数は「1,197回」と陰線新値の「1,250回」よりも少ないことが判明しました。 そして、下記の表では表2と同時期における陽線新値の数もカウント。 (表4) 陰線新値の本数(押し目となった本数) 出現した回数 出現確率 累計確率 1 50 13,6% 13,6% 2 153 41,7% 55,3% 3 102 27,8% 83,1% 4 41 11,2% 94,3% 5 17 4,6% 98,9% 6 2 7 2 8 0 合計 367 林 輝太郎(2020年)『定本 酒田罫線法』, 同友館 こちらに関しては、表2における陰線新値の総本数が「323回」と比して、「367回」と上回っていることが分かります。 表1・表2もまとめて以上のデータを比較してみると、興味深い点が出てきます。 それは、表1・表3では表2・表4よりも陽線・陰線新値2本の本数が少なく、逆に陽線・陰線新値3本の本数は多いのです。 小豆と株を用いた統計データを参照としていることから、性質の違う相場によって新値の出現確率に変化があることが分かりますね。 さらに、こうした酒田新値による統計データ、及び、近似値から売買の基本を定着したいところ。 重要な点をリストアップしたので、チェックしてみましょう。 出現確率の高い新値の2本、3本は陽線・陰線、どちらにも差異がある。 表1-表4を参考にした場合、3本までの新値の(累計した)出現確率は陰線新値「86,6/81,1%」陽線新値「86,4/83,1%」であり、「近似値のばらつき」が小さいと分かる。 出現本数が一気に少なくなる5本の(累計した)出現確率に関しては、陰線新値「97,8/95,0%」陽線新値「99,1/98,9%」であり、上記と同様に「近似値のばらつき」が小さいと分かる。 異なるデータを参照することで、酒田新値の近似値について詳しい理解を深められますね。 3. まとめ まとめ 今回の記事では、酒田新値の数え方から統計データを参考にした「酒田新値の出現傾向」をご紹介しました。 もしかしたら、「酒田新値の基本的な数え方について初めて知った!」なんて方もいるかもしれません。 それもそのはずで、通常の教本では「線組み」や「型」だけに注目し、売買法に発展させたものが多いため。 けれども、そうした小手先のノウハウだけを追いかけるのではなく、新値の数え方から相場の均衡バランス、時々における新値の意味を捉え、さらには、出現する新値の数から気付きを得ることで、本質的に相場を分析し、利益となる売買法に活用できるのです。 次回の記事では、相場を動かす線(ローソク足)と線組みについて詳しく解説。 相場の流れをより詳しく分析するためにも、欠かせない知識について解説します! https://behind-trade.com/technical-analysis/sakata-shine-toukei-date/
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