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(回答先: 第46回 衆院選自民圧勝で見えてきた小泉05年体制の危険な兆候 (2005/09/27) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 21:48:11)
第47回 霞が関キャリア官僚が明かした小泉「ポスト郵政」の本気度 (2005/09/29)
http://web.archive.org/web/20060207103511/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050929_honkido/
2005年9月29日
一昨日(9月27日)の朝日新聞の社説「『五月病』でしょうか」を読んで、その通りだと思った。
これは、9月26日の小泉首相の所信表明演説を聞いての感想を記したものだが、そのあまりの内容のなさに唖然としている筆者の顔が目に浮かぶような内容となっている。
「ポスト郵政」がまったく見えない所信表明演説
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実際、あれはあまりに内容がない演説だった。演説の冒頭三分の一は郵政民営化についてだったが、その内容といえば、選挙運動期間中、小泉首相が毎日毎日演説でも自民党のコマーシャルでも繰り返していたこと(「郵政事業は本当に公務員でなければできませんか?」など)の焼き直しにすぎなかった。
選挙で、圧倒的多数を得てしまったいま、郵政民営化は、もう通ったも同然である。法律的な手続きはまだいろいろ残っているかもしれないが、もう手間も時間もそうそうかかるわけがない。
ここにきて、国民がいまいちばん知りたいのは、郵政民営化のあと、新政権は何をやるかである。小泉首相が圧倒的多数をにぎったままの状況で、残りの一年の任期に何をやるかである。
知りたいのは郵政ではなく、ポスト郵政である。
ところが小泉首相は、ポスト郵政についてほとんど語るところがなかった。政府系金融機関の改革、三位一体改革、公務員制度改革、年金、医療問題などなど、アイテムとしてはいろいろならべてみせたが、その中身はというと、何もなきに等しかった。どれもこれも、これまで何度も口にしてきた、お題目的なやる気をみせただけである。
そのあまりのやる気のなさを皮肉って、朝日新聞の社説は、「五月病」と名づけたのである。「五月病」とは、もともとは東大の新入生の間で五月になるとドッとふえる、精神・神経系失調症に対してつけれれた病名だ。
「受験勉強に没頭したあまり、念願の学校に入学したあと虚脱状態に陥ってしまう五月病。三十年来の念願だった郵政民営化の実現についに手をかけた首相も似た状態にあるのではないか」
と朝日の社説はいう。
小泉首相が任期延長しない理由としてささやかれていること
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これを読んで、頭にパッとよみがえったのは、出たばかりの「フライデー」(10月7日号)に出ていた、
「結局、『郵政』の後は何もない
小泉独裁者『心身の異変』で任期延長なんてそもそもムリ情報」
という記事と、それにそえられた写真である。
それはあの大勝利の開票の日に、党本部で候補者がズラリとならんだボードの前に小泉首相がいる写真なのだが、なぜか小泉首相はあまりにもさえない表情をしている。虚脱状態そのものという感じで、ガックリしている。
写真の説明にこうある。
「自民党の歴史的圧勝が確定した9月11日夜の会見でも、なぜか暗い表情だった。テレビカメラが回ると笑みを浮かべはするが、出演時間が終わると、途端に疲れ切った表情に変わり、椅子に沈み込むように唖然と座っていた」
なるほどこの写真の小泉首相、一見して普通ではない。テレビで見慣れている元気で明るい小泉首相とは別人の観がある。
next: さらに、この記事の活字部分を読むと…
http://web.archive.org/web/20060207103511/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050929_honkido/index1.html
さらに、この記事の活字部分を読むと驚くような情報が沢山書かれている。
小泉首相は、「実は健康面で重大な不安を抱えて」おり、「任期延長どころか、あと一年、首相として務められるかどうかという微妙な体調だ」というのだ。
ある自民党大物議員の話として、
「小泉首相は以前から高血圧の持病を抱えており、降圧剤を使用している。最近は会合でも、肉やてんぷらなど脂っこい料理はほとんど手をつけない。酒も焼酎のウーロン茶割りばかり飲んでいる。体調が年々悪くなっているのは確かで、時折、内輪の会合では発言中に手がぶるぶる震えていることがある」
という話を紹介している。
気になる日本の舵取りの健康状態と精神状態
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小泉首相の動静を新聞報道で追ってみると、よくホテルの床屋に行っては、かなりの時間をそこですごしたことになっているのが前から不思議がられていた。その間、床屋にいたことになっているが、実はカゴ抜けをして、別室で、誰かと会っていたのではないかという観測が絶えなかった。会ったことを知られたくない相手と会談していたのではないかということだ。
その相手は、政治家ではなくて、女だという説も有力だった。小泉首相は離婚後ずっと独身生活をつづけており、首相になってからも表向きは禁欲生活をつづけていることになっているが、実はそうではなかったのだという説だ。
だが、この記事によると、その誰かと会っていたと疑われていた「床屋にいたことになっている時間」、実は小泉首相は別室で医師の診断を受けていたのだという。それは、体調がそれだけ悪いからで、そういえば、細川内閣時代の末期からその後にかけて(小沢一郎の全盛期)、小沢も心臓に爆弾をかかえていた。
その頃、小沢がときどき姿を消して行方不明になることがあった。記者の間では、また小沢の身勝手なふるまいがはじまったと非難されていたが、実は小沢は人知れず医者にかかっていた(時には外国に脱け出してまで)ということがあったことを思い出す。政治の世界では、医者通いは、女性関係以上に人目にふれぬようにするものなのだ。
どれくらい小泉首相の健康状態は悪いのか。同誌の記事は、自民党幹部の話として、「首相に近しい人々は、『絶対にあと一年で辞めさせる』と心配していて、そもそも任期延長など周囲も本人もまったく望んでいないのです」という声を紹介している。
この話、写真週刊誌の記事である上、何のウラ付け情報もないので、ありえない話ではないと思うものの、私はあまり信用していない。
だが、小泉首相が、精神的な緊張を失ってしまって、あと一年で本当に辞めてしまうということは、ありうる話だと思っている。
next: 就任当初掲げていた「骨太の改革」は…
http://web.archive.org/web/20060215054130/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050929_honkido/index2.html
就任当初掲げていた「骨太の改革」はどこへ行ったのか
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私はもともと、政治家の本性として、権力の絶頂において、自分から権力を捨てた政治家は誰もいないという歴史の教えから、小泉首相があと一年で辞めることはありえないという説に立っていた。
しかし、先だって、一群の高級官僚たちと話を交わす中で、小泉首相は本当にあと一年で辞めるのではないかと考えている人が官僚の中に意外に多いということを知って、最近、本当に辞めるというのも、ありうる話だなと思い直しはじめている(まだ完全にそちら側に考えを変えたというわけではない)。
そのとき聞いた話の中で、ハッと思ったのは、「小泉首相は本当のところ、任期を延ばしてまで、どうしてもやりたいと思っていることが何もないはずだ」という声があったことだ。
「だけど、小泉改革の初期の全体計画である『骨太の改革』には、いろんな改革項目があげられているじゃありませんか。郵政のあとに、あれを次々に片付けていきたいと思っているんじゃないんですか」
とその人に問うと、
「それは、たしかにあの計画には、いろいろ並べられてはいましたよ。だけど、それが小泉首相が本当にどうしてもやりたいという政策を並べたのかとどうか。私にはそうは思えないんです。だいたいあの人は、真剣に政策の話をすることがほとんどない人なんです」
「もちろん、郵政民営化だけは別で、それは熱心に語ります。だけど、郵政以外の政策の話を、小泉首相の口から直接に、オレはこれをどうしてもしたいんだという形で聞いた人は誰もいないんじゃないかな。郵政以外、あの人は本質的に興味がないんじゃないかな。だから郵政が終わったら、あの人は、本当に総理大臣なんか窮屈なばかりだから、辞めてしまいたいと思っているんじゃないかな」
この話、相手がいわゆる高級官僚に属する人だけに、妙なリアリティをもって聞こえた。
問われる小泉首相の改革への意志
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本人が常日頃、小泉首相の近くでつかえ、小泉首相の肉声を日夜聞いているというわけではないが、高級官僚の世界というのは、ワン・クッション、ツー・クッション置けば、小泉首相の肉声を直接聞く人からの情報が入ってくる世界なのである。
あれやこれやの山のような小泉改革のメニューがあって、それに、日夜わき目もふらず、いつもねじり鉢巻で取り組んでいるというのが一般の人が描く小泉首相の政治生活の日常のイメージだろうが、ぜんぜんそうではないというのだ。
これには私もいささか拍子抜けしたが、これまたありえない話ではないと思った。かといって、丸々うのみにするのも危険だろう。その人の語る情報にどれだけ確度があるのかわからないからである。
next: ともあれ、これからの政局…
http://web.archive.org/web/20060215054137/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050929_honkido/index3.html
ともあれ、これからの政局、わからない事が多すぎるが、何よりも欠けている情報は小泉首相の意志だ。
小泉首相は本当のところ、いつまでやるつもりなのかである。いつまでやりたいのか、である。小泉首相の「任期延長は絶対にやりません」の言をそのまま信用していいなら、悩む必要は何もないわけだが、私は基本的に彼の言を信用していない。
第一に、この手の問題に、問われるとすぐに、真っ正直に自分の本心を語り、その本心を貫いたなどという政治家は、いないことはないかもしれないが、滅多にいないし、こういう場合、政治家が本心をストレートに語ることを誰も期待していない。政治家が問われて何か語ってもそれをストレートに受け取らないというのが、日本の政治カルチャーの常識だ。
第二に、政治家というのは、すべて、権力欲が人一倍強い種族で、とりわけ、権力の座に一度ついて、権力の座にあることの醍醐味を知ってしまった人は、ますます権力欲が強くなる。権力というものの持つ魔性の力に魅入られてしまうとそうなるのだ。
小泉首相はすでにそのレベルに達してしまっている(魔性の力に魅入られ、生涯、権力闘争の世界から逃れることができない)と思うから、小泉首相は自分がすでに持っている権力を、自分からすすんで捨ててしまうなどということは決してないだろうと思う。
日本の政治史上まれにみる強い権力を手にした小泉首相
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小泉首相はいま、日本の政治史上まれにみるほど強い権力を自分の手にしている。
頭数だけからいっても、森派の人数と、今回選挙で当選した小泉チルドレンの数を合わせると、田中角栄全盛期(闇将軍時代)の田中軍団の総数をはるかに上回っている。
小泉首相はいまや、あの時代の田中角栄のように超権力者になりうるポテンシャルを持っている。しかし、ポテンシャルを持っているということと、現実にそうなるかどうかは、まったく別の話だ。
それはまず何よりも、意志の問題だし、権力への意志の問題だ。
たぶん小泉首相はあの頃の田中角栄ほどには、権力への強烈な意志を持っていない。あの時代の角栄の強大すぎるほど強大な権力欲求は、それを持たなければ、すぐにでも自分がすりつぶされてしまうにちがいないという恐怖の反映でもあった。
権力欲求は多分に、逆境をはねのけようとするときの逆バネ作用によってもたらされるという側面がある。
自分をすりつぶそうとする圧力が強ければ強いほど、性格が強い人は、それに抗する力を自分の中にかきたてることができる。
小泉首相がこれほど強い政権をつくることができたのも、小泉首相がこれまで一貫して、経世会(田中派→竹下派→橋本派)支配の自民党の中にあって、反経世会の政治姿勢を保ち、経世会にすりつぶされそうになりつつ、それに抗しつづけなければ生き抜いていけないという状況が、いつも自分をとりまいていたからだろう。
小泉政権の5年間は、一言で要約するなら、徹底的な経世会つぶしの5年間だった。いまや経世会は、焼け跡に焼け杭が5、6本といった程度の残骸を残すのみという程度の存在になってしまった。
そして、経世会勢力が消えたいま、新しく出現した超巨大勢力が小泉党である。
その超巨大勢力を用いて、小泉首相は何をやろうとしているのか。
私はたぶん、小泉首相自身にもそれがよくわかっていないだろうと思う。
next: 目標と政敵を見つけることができるかで…
http://web.archive.org/web/20060215054143/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050929_honkido/index4.html
目標と政敵を見つけることができるかで政局展開が変わる
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小泉首相は、これまで一心不乱にほとんどそれ一筋という感じで追求してきた政治目標(郵政民営化)がいまや事実上実現された状況の中で、「目標の喪失」という、活動的な人間にとってはもっと恐ろしい精神状況に立たされている。
「目標の喪失」だけでなく、「敵の喪失」というもっとも恐ろしい状況変化にもみまわれている。これまで小泉首相は目の前の強い敵に対峙して、それに対する敵愾心を持つことによって自分の戦闘エネルギーをかきたててきた。「敵の喪失」は、そのような戦闘エネルギーの喪失を意味する。
このところ、小泉首相にあらわれている五月病症状、虚脱状態とは、このような「目標の喪失」と「敵の喪失」によってもたらされた「脱力症状」「エネルギー喪失状況」と分析することができるだろう。
小泉首相がこれから、失っていた目標と敵を見つけることができるかどうか、そしてそれをどこに見つけるかで、これからの政局展開はまったくちがったものになるだろう。
小泉首相の前にはさまざまな選択が置かれている。その選択いかんで、これからの日本の政治の基本的構図は全くちがったものになってくるだろう。
西欧近代政党レベルに脱皮できるか、いまが正念場
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たとえば小泉首相には獲得したばかりの強大な政治力を利用して、1、2年の任期延長をはかるという選択もあるが、そういう平凡な選択は捨てて、かつて田中角栄がそうしたような、超権力者の道を歩むこともできるだろう。
もう総理大臣の椅子にあと1、2年しがみつく、などというケチな話とは縁を切って、かつての田中角栄がそうしたように、キング・メーカーとなって、次の総理大臣を誰にするか、次の次は誰にするか、といった大きな話に熱中する。あるいは、小さな国策、小さなキャビネット人事は時の総理大臣に任せて、自分はそれより上のレベルの大きな国策、大きな外交政策、大きなキャビネット人事にだけ口を出す、いってみれば昔の元老並みの超大物政治家になるという道を目指す。
あるいは、自民党の旧来の基本構造であった派閥政治をほぼ完全に壊したというこの状況を利用して、それをさらに徹底化させ、日本の基本的な政治構造を、ほぼ完全に西欧近代政党と同じレベルにもっていって、それを定着させるという選択もあるだろう。
かつてのような政治ボスによる利権支配、それにともなう政治腐敗などが絶対に起こりえないように日本の政治システムを変えてしまうということである。今回の選挙後にはじまった、新人議員の教育を党が中心になってシステム的に行い、派閥の効用を一切なくてしてしまう方向への動きなど、この方向を狙っているともとれそうだ。
いったい小泉首相は、自分の得た超権力をどのように使おうとしているのか。
その使い方いかんで、小泉首相は歴史に名を残す大政治家にもなれば、50年経ったら、「その人ダーレ?」のただの歴史の一つのエピソードにすぎない人物で終わる可能性もある。ここしばらくは小泉首相の人生にとっても正念場だが、日本国にとっても正念場だろう。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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