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(回答先: 第47回 霞が関キャリア官僚が明かした小泉「ポスト郵政」の本気度 (2005/09/29) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 21:52:08)
第48回 自民党をぶっ壊す! 小泉首相の後継者選び (2005/10/07)
http://web.archive.org/web/20060103023606/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051007_koukei/
2005年10月7日
小泉首相は11月2日に内閣改造すると、予告している。
例によって、小泉首相はその当日まで具体的な人事をおくびにも出さないだろうから、それまで、みんなかたずをのんで待つだけで、しばらく政界の動きはほとんどなきに等しい状況になることは確実である。
そして、次の改造人事が発表されたところで、小泉首相の未来への意思が見えてくる。つまり、誰を次の首相にするのか、自分自身がもう1期ないし2期ぐらいやるという方向にもっていくかである。
政権中枢に総裁候補を置いておいて、忠誠を競わせる
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小泉首相はこれまで、自分の政敵を倒すことに熱中するばかりで、後継者を育てることなど全くしてこなかった。
そして、自民党の党内構造を、少数の実力者がインフォーマルに集まり、額を寄せあって何でも決めてしまうという日本流の寡頭制から、総裁がなんでも一人で全体を仕切っていく総裁独裁型に変えてしまった。今回の郵政解散総選挙にいたる過程にその変化がはっきりあらわれている。そしてこの選挙を通して、派閥は事実上の解体状態に置いてしまった。いまや党内で小泉首相と覇を競うことができるだけの政治家は一人もいなくなってしまった。
こういう状況下で、小泉首相が本当に予告通り政権を1年後に手放すことになるかといえば、ならないと思う。
第一に、圧倒的な権力を現に持っている者が自分からその権力を手放すようなことをするかといえば、しないというのが、あらゆる権力の歴史が教えるところである。
大量の株を持っている者で、株価が最高値をつけたときにそれを全部売りとばす人が絶対にいないのと同様、小泉首相もまた、皇帝になったといわれるほど肥大化した権力を自分から自発的に手放すことはないと思う。
では何が起きるのか。
小泉首相はかねて、次の内閣改造で自分の後継者が誰かわかるようにするといっていた。
しかし、どういう形ではっきりさせるのかははっきりしない。はっきりこの人とわかるような形ではっきりさせるのか、それとも、この人かこの人(あるいはもう1人ぐらい加えて3人の総裁候補)のうちの1人という形で示すのかわからない。しかし、政治の世界の常識として、1人にしぼるということはないだろう。
この人とはっきり1人にしぼったりしたら、そのとたんに、政界の政治力学は、早々とその人を中心に動くようになってしまって、小泉首相がレイムダック状態におちいることが必定だからだ。
それよりも、政権中枢に総裁候補を置いておいて、忠誠を競わせるようにすれば、自分の政権が安定すること請け合いである。
next: 安倍晋三が次期総裁の座を射止めるためには…
http://web.archive.org/web/20060103023606/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051007_koukei/index1.html
安倍晋三が次期総裁の座を射止めるためには
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過去の歴史から拾えば、佐藤栄作長期政権の末期に、福田赳夫と田中角栄を両翼において、次期政権禅譲のにおいをプンプンさせることで、どちらにも忠誠心を最大限に発揮させ、自分の政権を最後まで安定に保ったのが見事な例となる。次の長期政権となった中曽根康弘もまた同じ戦略を使った。竹下登と安倍晋太郎の2人の総裁候補に次期政権をちらつかせて、忠誠心を競わせ、自分の政権を安定に保った。
小泉首相も多分これと同じ戦略を用いて、複数候補に次期政権をちらつかせながら、忠誠心を競わせる戦略を取るにちがいない。
誰をその候補にするのかといえば、衆目の見るところまず安倍晋三だろう。若手の人気は圧倒的なものがあるから、次を外すとは考えられない。
安倍の小泉首相に対する忠誠心は基本的に強い。思えば安倍が政治家として一挙に注目を浴びることになったのは、2003年に小泉首相が、安倍を突然 49歳の若さで幹事長に大抜擢したことがきっかけである。その後も、小泉首相は安倍を政権中枢にずっと置いてくれた(幹事長から副幹事長への降格という条件付きではあったが、政権中枢へ置いてくれたことのほうがメリットがはるかに大きい)。
いま、次期政権候補の筆頭といわれるようになったのも、ずっと政権中枢にいたからで、安倍としては小泉首相に感謝の気持ちでいっぱいのはずだ。いまこの段階で突然心変わりして、「政権は戦いとるものだ」などといって、小泉首相に反旗を翻すようなことがあるとは考えられない。まだまだ小泉首相と正面きって政権を争えるだけの力は安倍にはない。
それより安倍には小泉首相に忠誠でいるほうのメリットのほうがはるかに大きい。
安倍には次の首相候補といわれながら、実はまだ主要な閣僚の経験が何もない(実はそもそも大臣の経験がない)という大きなハンディキャップをかかえている。そのハンディをなくしてくれるのは、人事権を持つ小泉首相だけなのだから、安倍はいまいっそう強く小泉首相への忠誠心を誓わなければならないところなのだ。
もし安倍が本当に次期総理の座につきたいなら、重要閣僚(外務、財務、経産、総務など)のポストを最低2つは経験したいところだろう。政治の世界はなんといっても経験がものをいう世界だから、重要閣僚ポストの経験がぜんぜんない人に、総理大臣の座がつとまるかどうか大いに疑問だし、本人も不安だろう。
重要閣僚の経験ということになると、麻生太郎のほうがはるかに上である(総務大臣、経済財政政策担当大臣、経済企画庁長官を経験)。麻生は総裁選に出馬した経験もあるから、党内人気の点では安倍よりずっと落ちるとしても、キャリアの点では安倍の対抗馬になる資格は十分にある。安倍が重要閣僚を立派に務めあげて、実務政治家としての存在感を示せないと、「安倍はまだ早い」の声が自民党の長老政治家たちのあたりから出て、安倍が後れをとってしまう可能性はまだかなりある。
next: 総理総裁の座を射止めた田中角栄の巧みな戦略…
http://web.archive.org/web/20051013084919/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051007_koukei/index2.html
総理総裁の座を射止めた田中角栄の巧みな戦略
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ここにきて、安倍が取るべき最良の戦略は、小泉首相の任期延長を率先してかつぐことだろう。そうすることで小泉首相のおぼえが一層めでたくなり、それによって重要閣僚のポストを複数回もらうことができる。
実は、佐藤政権の次の総理総裁の座を田中角栄が射止めることができたのは、彼がこれに近い戦略をとったからだ。
佐藤が政権を3度獲得したとき、自民党内の大部分の政治家は、これで佐藤は終わりと考えていた。政権を立て続けに4回も獲得するなどそれまで誰もしたことがなかったことである。誰もそんなことはできるはずがないと考えていた。そして、次期政権はかなり前からクラウン・プリンスの異名をとっていた福田赳夫のもとに行くことが確実と思われていた。
この時点では、福田と比較すると、田中角栄はまだまだキャリア不足とみなされていた。
田中角栄はこの時点で、郵政大臣に大蔵大臣を数期つとめ、党務では幹事長、政調会長を立派にこなしていたのだから、政界の標準からいえば、キャリア不足どころではない立派な経験を誇っていた。しかしそれでも、福田の輝けるキャリアの前ではあまり大威張りできなかった。
何より角栄は高等小学校卒という学歴ゼロのハンデを負っていた。それに対して福田は東大卒で大蔵省では主計局長までつとめた高級官僚中の高級官僚で、政界に入ってからも、大蔵大臣、外務大臣をこなし、党務でも幹事長をこなし、アメリカにおいても、次の総理大臣候補として名が通っていた。
角栄としては、福田と肩をならべるためには、どうしても重要閣僚の経験がもうひとつふたつ欲しいところだった。特に、福田に比べて、圧倒的に見劣りしていた外交に弱い(アメリカとの人脈もない)というポイントをなんとか改善したいと思っていた。
そこで田中角栄がとった戦略が、3選で終わりと思われていた佐藤に率先してゴマをすり、佐藤4選待望の方向に党内の空気をもっていくことだった。そして佐藤4選を具体的に実現するためにありとあらゆる助力(もちろん資金集めにもたっぷり協力した)を惜しまず、本当に文句なしの4選を佐藤に実現してやったことだ。
それによって史上最長の政権を実現した佐藤は大いに喜び、田中角栄を望んでいた通りの通産大臣のポストにつけてやった。このポストを通じて、角栄はそれまで福田に比べて圧倒的に弱かった財界主流との人脈を強めることができた。
さらに、そのころ暗礁に乗り上げていた日米繊維交渉をスパッと解決してみせて(実はアメリカの要求をのむと打撃が大きい日本の繊維業界に政府資金をドンと付けることで難題を呑ませてしまった)、アメリカ側を大いに喜ばせた。これでアメリカ人脈を作るとともに、角栄の最大の弱点だった外交に弱いという評判をひっくり返すことができた。
next: 小泉首相の任期延長で安倍にもチャンス到来…
http://web.archive.org/web/20051013085017/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051007_koukei/index3.html
小泉首相の任期延長で安倍にもチャンス到来
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いま思い返すと、佐藤4選が福田と田中の最大の勝負の分かれめだったといえる。佐藤4選がなかったら、文句なしに福田が政権を手にしていたはずである。その時点では、田中が福田の対等のライバルになりうるなどとは誰も思っていなかったのである(多分福田はもちろん田中も)。
佐藤の右腕として佐藤4選をはかり、その報酬として通産大臣のポストについている間に、田中はみるみる実績を上げ、弱点を次々に克服して、福田と肩をならべる堂々のライバルに育ってしまった。
この故事にならうなら、安倍のベストの戦略は、小泉首相の任期延長に率先して力をつくすことだろう。そして、次の改造人事での重要閣僚のポストを確実なものにし、それによって、次(任期延長小泉首相)の次の座を確実にすることだろう。
その戦略転換を安倍がいつどのような形でおこなうかが見物である。小泉首相が絶対に任期延長はしない、絶対にあと1年でやめるといっているのだから、黙ってそれを見守り、ポスト小泉の時代のはじまりを待とうなどと思っていると、誰か第二の田中角栄のような目はしのきくのが飛びだしてきて、小泉首相任期延長のセッティングをうまくやって、たちまち小泉首相にとりいってしまうかもしれない。
あれほど小泉首相は任期延長は絶対しないといっているのだから、小泉首相が突然自分でのほうから自分の意思を変更しましたなどといって、自分で任期延長を決めてしまうなどということはできないし、そんなことをしたら、小泉人気がガタ落ちになるだろう。
ここは誰かが出てきて、小泉首相が断るに断れないような任期延長の理由作りをしてやる必要がある。そして、それを社会に公にしても小泉人気をガタ落ちにしないようなプラン作りを演出する。
それを誰かが見事にやってのけたら、本命の安倍が消えてしまって、トンビにアブラゲという事態だって考えられる。そんなことにならないように、安倍は早く行動を起こす必要があるが、あまり早すぎると、見え見えの「次の次」目当てのゴマすりととられ、安倍自信の評判をガタ落ちにしてしまう恐れもある。
next: 衆院選挙で大きく変わった党内政治地図…
http://web.archive.org/web/20051013085145/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051007_koukei/index4.html
衆院選挙で大きく変わった党内政治地図
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今度の選挙で、自民党の党内政治地図があまりにも大きく変わってしまったため、これからの政治に何が起きるかわからない流動状態になっている。とにかく従来の派閥はのきなみ力を失い、圧倒的多数の小泉チルドレンが新興最大派閥となり、しかもその派閥は派閥を名乗らず、自民党執行部そのものと一体となっており、派閥の新人教育を、党機関中心の新人教育と称して、それがそのまま通ってしまうという事態は、いわば、自民党に党内クーデターが起こって、党内権力がそちらに移行してしまったようなものだ。
この状態は、制度的にあと数年はつづく。とりあえず制度的には次の選挙まで小泉チルドレン多数派の状況がつづく。小泉首相がいっているように、本当にあと1年で小泉首相が身を引いたりしたら、小泉チルドレンたちは行き場を失い、既成派閥に吸収されてしまうなどということが起こるのだろうか。
私はぜんぜんそうは思わない。
近い将来、確実に、小泉引退絶対反対の声が党内にもりあがってくるにちがいない。これだけ「改革、改革」の呼びかけで選挙に勝った以上、改革を途中で放り出して身を引くのは無責任だという声が、党内から澎湃(ほうはい)として起こり(おそらく小泉チルドレンの中から)、小泉首相は確実に次の参院選挙まで任期を延長することになるだろうと思う(自民党の中に、小泉首相以外に次の選挙で看板になりうる人物はいない)。
そして、次の参院選で小泉首相がまたまた大勝してしまったりしたら、この国の体制は根本的に変わってしまうにちがいない。
この選挙が終わってから、自民党の武部幹事長は、「いま革命が起きてるんです」と口走ったらしいが、たしかに、いま起きている事態は、従来の政党中心、派閥中心の政治力学では説明がつかないことが次々に起きている。
小泉チルドレンたちのエネルギーで新党立ち上げも
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私のところに、突然、「人民戦線の旗のもとに!」という、聞いたこともない新左翼系(らしい)ミニコミ紙が送られてきた。そこに、この一連の事態に対する新聞報道(分析)はみんなまちがいだとして、こんなことが書かれてあった。
「これは『自民党の大敗』であり、『壊滅』であり、選挙に勝ったのは『小泉革命』であった。総選挙で日本国民が『小泉革命』に投票したのは『自民党をぶっ壊す』という旧来の秩序破壊に共感した結果であった。今や古い自民党は破壊され、『小泉革命』をかつぐ『小泉新党(自民党)』となった」
この分析のこの部分はほとんど当たっていると思う。今回の選挙で勝ったのは「自民党」ではなく、「小泉党」なのである。自民党を大勝させた自民党への投票は、「旧来の自民党」への投票ではなく、「小泉自民党」への投票であった。すなわち、「自民党をぶっ壊す力」への投票だった。そして、旧来の自民党はすでにほとんどぶっ壊れているのである。
小泉首相がこの選挙で爆発的にふえた小泉チルドレンたちのエネルギーをうまく組織できたら、自民党の名前を捨てた、新しい小泉政党を作ることすらできるだろう。そうしたら、あと1年という自民党総裁の任期に全く縛られることなく、彼は新党の党則に従って、何年でも政権をにぎったままでいることすらできるのである。
そのような、これからどうなるかのまだぜんぜん姿が見えない、とてつもない大きな政治状況の大変動が、いま我々の目の前にあらわれつつあるのだと思う。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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