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(回答先: 第42回 ザ・タイムズ紙の豹変に新聞の来るべき未来を見た! (2005/08/25) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 20:29:22)
第43回 車社会アメリカが切り開くiPod&ネットの近未来 (2005/08/25)
http://web.archive.org/web/20051217181404/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050825_ipod/
2005年8月25日
ニューヨークから、ワシントンに向かう、デルタ航空シャトル便のゲートの前には、無料で誰が持っていってもよい、フリー・ペーパー、フリー雑誌のたぐいが、山積みして置かれている。
その中に、「オーディオ・ファイル」という雑誌があったので、多年、オーディオ趣味にこっている私としては(昔、オーディオ雑誌に連載をもっていたこともある)、迷わずその一冊を手にとって機中の人となった。
米国で爆発的に広がるオーディオ・ブック
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飛行機の中で、この雑誌を開いてみたら、これはいわゆる日本風のオーディオ趣味(ハードあるいはソフト)の雑誌ではなく、一冊丸ごとオーディオ・ブックのカタログのような雑誌であると知ってビックリした。
オーディオ・ブックとは、カセット・テープ、あるいは、CDによる録音方式の耳で聞く雑誌である。これは昔からあったが、最近これに、新方式の MP3メモリ方式のデジタル・ブックが加わって、新しい世界が広がっている。これらデジタル・ソフトは、アップルのiPodなどで聞く、あるいはネットでダウンロードしてコンピュータで聞くなど、利用者が好きな所で聞ける。
テープあるいはCDによる耳で聞く本は、日本にも前からあるから、その存在自体はよく知っているが、日本では価格が高いこともあいまって、その市場がいまひとつだった。出版点数も少ない。
しかしアメリカでは、これが意外によく売れているらしい。だからこんな雑誌が成立している。
これは一応有料で、1冊6ドルの定価が付いているが、広告が沢山入っているから、実質上は、広告だけで経営が成立しているらしい。だからシャトル便の乗客に無料でバラまくなどということができるのだ。
MP3プレーヤーでオーディオ・ブックを聞く
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末尾には、定期購読の案内があるから、地方の人で定期購読している人もかなりいるのだろう。書店買いが大半の日本の雑誌とちがって、アメリカの雑誌は、実は大半が定期購読で成り立っている。
広告主は大半がオーディオ・ブックの出版元だが、それに次いで多いのが、オーディオ・ブックを聞くためのハードの製造販売元である。特に今は、新しい方式であるMP3方式がどんどん伸びつつあるので、そのハード・メーカーの広告が多い。
日本ではMP3プレーヤー(ここではiPodなどを含む携帯型デジタルプレーヤーのこと)は、もっぱら音楽のプレーヤーと考えられているが、アメリカでは、少なからぬ人がそれを使って、オーディオ・ブックを聞いているのだ。
ちなみに、価格は、20GバイトのiPodが300ドル、1GバイトのiPod shuffleが150ドル、512Mバイトが99ドルで、他社のさまざまの商品も、だいたいメモリ量に応じて、そういうラインにある。アップルよりは少し安めで、60Gバイトで300ドル、50Gバイトで200ドルなどという商品もある。
next: 車社会のニーズにピッタリとはまる…
http://web.archive.org/web/20051217181404/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050825_ipod/index1.html
車社会のニーズにピッタリとはまる
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なぜアメリカではオーディオ・ブックがそれほど売れるのか。その聞き方の特集ページがあって、なるほどと納得がいった。
「どういうとき、どういう場所で聞くか」という問いに、圧倒的に多かった答えが、「車の中(53%)」である。アメリカ社会は車社会だから、通勤も基本は車である。その他の仕事と生活で車の中で過ごす時間を合わせると、1日数時間は車の中という人が多いから、車の中で労せずに本が読めたら、こんないいことはないわけだ。
「車の中」に次いでは、「家で」が24%。ビックリしたのは、「運動中」という人が8%もいることだ。ヘッドホンをつけてジョギングしている人がかなりいるので、みんな音楽を聞きながらジョギングをしているのかと思ったら、オーディオ・ブックを聞きながら走っている人が結構いるということだ。
方式別では、CDが36.2%、カセット・テープが27.6%、デジタル・ダウンロードが25.7%、MP3メモリが10.5%というところだが、 MP3とダウンロードのデジタル派がどんどん伸びており、「もっと安くなったらそちらに乗りかえる」という人が非常に多いから、将来はさらに伸びるのだろう。
いずれにしても、「車の中と外の方式を同じにして、そのまま聞きつづけられるのがいちばん」と答える人が多いというのは、アメリカ人の生活スタイルの率直な表現だろう。
便利で圧倒的に安いMP3メモリ式のコンテンツ
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なぜMP3メモリ方式が伸びているか。取り扱いが便利で、内容当たり(時間当たり)で、圧倒的に安いからだ。
たとえば、最近評判の長篇推理小説ブライアン・フリーマンの「インモラル(背徳)」の場合、テープだと12本になってしまい、89.95ドルする。CDだと13枚になってしまい、108ドルもする。しかし、MP3メモリならたった1枚で価格もわずか29.95ドルなのだ。
たいていのオーディオ・ブックがこの3つの方式で同時発売となるが、物財コスト物流コストが安くすむMP3方式が、長篇ほど価格面で圧倒的に有利になるわけだ。
とはいっても、出版社によって、作品によって、方式別の価格差はそれぞれ独自に付けられており、コンテンツコストを重視して3方式とも同一価格というのも珍しくない。
コンテンツ料を誰も取らない聖書の場合、CD62枚(CD1枚1時間で換算すると、62時間分。新約、旧約全部いれるとそれぐらいになる)豪華保存版でも、99.95ドルという安さだが、これはMP3方式がない。メモリがほんの数枚では、豪華保存版にするのが奇妙な感じになるからだろうか。
next:「買うより借りる」のレンタル業者が台頭…
http://web.archive.org/web/20051126163215/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050825_ipod/index2.html
「買うより借りる」のレンタル業者が台頭
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どこで入手するか調べると、アメリカできわめて多いのが、買う(小売店で、あるいはオンラインで)のではなく、借りるという手で、「小売店(オンラインを含む)で買う」が、4人に1人(25.3%)しかいないのに対して、「図書館から借りる」が41.1%もいる。さらに「レンタル業者から借りる」が、5.6%おり、オーディオ・ブックは、ほとんど半数の人が借りて聞いているのだ。
レンタル業者でいちばん有名なのは、「Recorded Books,unlimited(無制限レコードブックス)」で、この会社の会員になると、1カ月29.99ドルで、あらゆるレコード本の無制限貸し出しを受けられる。会員になると、在庫本 6500冊のカタログが送られてきて、そのうちの3冊を選ぶと、すぐに本が送られてくる。読んだ本を送り返すと、またすぐ次の本を注文することができる。
本を受け取るときも、送り返すときも、費用はすべて「無制限レコードブックス」側で負担するから、客側の負担はない。本を送り返すのが遅れても、特別のチャージは全くつかないなど、月々の会費以外のコストは発生しない。
紙の本の世界では、「ブック・クラブ」の名で、同じような方式で本を販売してしまう巨大物流会社があるが、それを電子本、レコード本で、売り切りではなくレンタルにしたということだろう。
クリントン元大統領が自信の色事を自ら朗読するオーディオ・ブックも登場
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レンタル業者は他にもいろいろあり、月々の会費15ドル程度と安いところもある。
音の本の場合、読み手が重要で、「オーディオ・ファイル」誌では、読み手に関する記述が多く、読み手に与えられる年度賞などもある。
読み手といえば、放送局のプロがやっている例も多い。定評ある読み手が多く、発行点数も多いイギリスのBBCにいたっては、アメリカに「BBCオーディオブックス・アメリカ」という会社を設立して、オーディオ・ブックの注文があればすぐ発送するという商売をはじめている。「オーディオファイル」誌の裏表紙は毎号BBCのこの事業の広告になっているから、それなりに儲かっているのだろう。
一方でプロの読み手を使わず作者自身が読んでいることを売りにしている本もある。たとえば、しばらく前に日本でも発売されて評判を呼んだ、クリントン元大統領の「マイライフ」などは、クリントン自身が全篇を読んでいる。例のモニカ・ルインスキーとの色事の場面などいったいどんな調子で読んでいるのだろうといささか興味をそそられたが、買おうとは思わなかった。
この商売、日本ではどうなのだろう。アメリカ同様に流行るかといえば、そうはならないのではないか。車での生活時間が少ないということもあって、本は聞くより目で読むほうが日本では主流だ。本はやはり紙の本を持ち歩いて読むという生活スタイルが、今後とも日本では主流でありつづけるのではないかと思う。
しかし、MP3メモリ方式がどんどん安く手軽になっていけば、将来日本でも状況が変わってくるかもしれない。アメリカでもそうだったが、語学の学習教材などから一挙にマーケットが広がるかもしれない。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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