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(回答先: 第44回 今どきナンセンスな公職選挙法 ネットは解禁でなく義務化せよ (2005/09/02) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 20:43:02)
第45回 対日戦争勝利記念式典に思う日本と中国、その原点と未来 (2005/09/05)
http://web.archive.org/web/20060304220731/nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050905_nittyu/index.html
2005年9月5日
先日から上海に来ている。上海、実は、正式に来るのははじめてである。正式ではなくて来たのは、1960年、日中国交回復以前で、中国もゴリゴリの共産主義国家で、西側に全く門戸が開かれていなかった時代だ。
ヨーロッパからオランダの貨物船に乗って帰国の途中で、船は上海市内の埠頭に停泊したが、中国に入国が許されているパスポート(昔のパスポートには、入国してもよい国の名が列記されていて、それ以外の国には行けなかった)を持たず、中国側のビザも持たない我々は、上海の最も有名な風景であるバンド地域(旧租界)のスカイラインを遠くに望みながら、船に上がってきた物売り、芸人、港湾関係者、警備の兵隊などと、ほんの数言、言葉を交わしただけだった。
いまいるホテルは、市の中心を流れる黄浦江をはさんで、ちょうどそのとき見えたバンド地域の対岸にある東方浜江大酒店(オリエンタル・リバーサイド・ホテル)である。このホテルに隣接する国際会議場センターで、IEEE(米国電気電子学会)の医学・生物学部会(EMBC)の年次総会が開かれているので、NHKの特番のために、その取材にやってきたのである。
中国と米国のはざまで上手に生き抜くには
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私は上海ははじめてだが、中国には何度もきている。そもそも子供時代(2歳〜5歳)が北京育ちだ。成人しても国交回復後、何度も来る機会があったので、中国がボロボロだった時代から、ゴリゴリの共産主義時代を経て大発展にいたるその大変化はおりにふれて見てきた。
2001年には、北京大学で「日本解読」という連続講義をしたことがあるが、そのとき、中国は間もなく経済的に大発展して、5年以内にドイツを追い抜き、世界有数の経済大国になると予言したが、それを信じる聴衆はあまりいないようだった。
しかし、それからの中国の躍進は私の予想以上で、いまや、中国の経済力がさまざまな側面で日本を追い抜きつつあることは、大方の知る通りだ。
これからしばらくの間、世界は経済においても、政治においても、いやでも米国と中国が世界の二大中心として動いていく時代を迎えることになるのだと思う。とにかくこの二つの国の潜在的国力の大きさは、圧倒的だ。
日本人は最近、妙にナショナリスティックになりつつあり、嫌米派、嫌中派の日本人がふえつつあることは、由々しきことだと思う。
これからの日本は、宿命的にこの二つの超大国のはざまで上手に生き抜いていかねばならないのである。
日本は二つの超大国に圧迫されつづけてきたので、嫌米派、嫌中派になりたくなる気持ちもわかるが、嫌米派、嫌中派をこれ以上ふやしていったら、日本の宿命的生存条件である、「二つの超大国のはざまで上手に生き抜く」ができなくなる。
2頁目は、元のURLでアーカイブをWay Backしたり色々やったのですが、たどれませんでした。
next: 学術論文誌を埋め尽くす中国の爆発的エネルギー…
http://web.archive.org/web/20060304220731/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050905_nittyu/index1.html
next: 科学・技術の分野で中国が
http://web.archive.org/web/20060304220731/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050905_nittyu/index2.html
科学・技術の分野で中国がグローバル・スタンダード以下だった時代も長かったが、それは文化大革命の時代に、中国の教育システムと学術研究の分野が徹底的に破壊されてしまったためである。十分な教育を受けられなかった世代が、しばらく前まで、中国社会の基本的な担い手として枢要な地位にいたから、特に先端科学技術の分野で国を導くことができなかった。
その世代がしばらく前に中国のあらゆる分野の指導部から消え、特に科学技術の分野の指導部は一斉に若返りした。そのため、中国の先端科学技術の研究は、ほとんどあらゆる分野でいま急速に世界のトップグループに追いつきつつある。
国家戦略の立て方、国家資金の投じられ方も、今の日本よりずっと若い世代が担っている(日本は60代以上、中国は4、50代以上)。
アメリカからの知識と技術の旺盛な吸収力も中国がずっと上だ。かつてアメリカの各研究拠点には日本人留学生がたくさんいたが、いまは中国人留学生がどこでもたくさんいて、アメリカの現場の研究力の担い手になっている。
かつてそれらの中国留学生の大半は、中国に帰らずアメリカにとどまったが、文化大革命が終わったころから、彼らは次々に中国に帰国して各大学の教授になり、若い世代を育て、いまその世代が急速に中国の研究現場の主力になっているのだ。
若い世代の研究にかける情熱もエネルギーも中国のほうがはるかに上なのである。
私は、中国の国家レベルの科学技術政策の決定過程を現場で実地に調査してきた人を友人に持つが、しばらく前にこんなことをいっていた。「中国の学術論文は水準が低いなどといわれていたのは、かなり前のことで、いまはグローバル・スタンダードです。むしろ日本の若い研究者のほうがはるかに水準が低い分野が沢山ある。いずれにしても若手の研究者の人材の厚みが決定的にちがいますから、あと5、6年もすると、科学技術分野のほとんどあらゆる分野で日本は中国に追い抜かれます。一般の日本人はそういう実情をほとんど何も知りませんから、理由もなく、科学技術なら日本のほうが上だろうと思っている。科学技術分野で中国に抜かれたら、経済上の日本の優位性もすぐに消えます」
日本と中国のあるべき関係の原点とは何か
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ホテルにある大型液晶テレビこそ日本製だったが、あとはコンピュータ(部屋そなえつけのコンピュータがある)も、冷蔵庫も電話機も、ステレオも全部中国製だった。
そのテレビだが、82チャンネル映るうち、外国起源のものは、、CNN、BBC、HBO、スターチャンネル、ナショナル・ジオグラフィック、ブルームバーグ、NHK衛星放送など、7チャンネルのみで、あとの70チャンネル以上が中国の固有のテレビ局だ。
メディア面においても、中国は完全に自立している。そしてその中国のテレビ局がこのところ連日やっているのが、9月3日の対日戦争勝利60周年記念式典(日本の降伏文書調印を記念する)に向けての、さまざまの特別番組である。
next: 報道番組あり、ドキュメンタリーあり…
http://web.archive.org/web/20060304220731/http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050905_nittyu/index3.html
報道番組あり、ドキュメンタリーあり、ドラマあり、演劇、バレエ、歌謡番組ありと、本当にあの手この手で、対日戦争時代の中国の苦難の日々が伝えられている。
それが7月7日の盧溝橋事件記念日以来、2カ月もつづいているのだ。
しばらく前に反日デモが爆発したとき、日本のテレビでは、それは反日教育のせいだの、官製デモだのといったことを、したり顔で伝える論者たちがいたが、こういう番組を次々に見るともなく見ていると、反日感情は、中国人にとって自然な感情の発露なのだということがよくわかる。
現代中国という国家が、そもそもいつ出来上がったかについては、政治的立場によって各論あるが、いずれにしても中国の国家としてのアイデンティティは、日本と戦争をする中で確立していったというのが歴史の真実である。対日戦争抜きに中国という国家は存在しなかったといってもいい。対日戦争(と、それに対する勝利)は中国という国家の原点(誕生するきっかけ)なのである。
そこが見えてこないと(日本人一般の常識からはここが抜けている)、日本と中国のあるべき関係の原点がわからなくなる。
日本人の歴史認識の欠如はいつまでもつづく
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現代日本人の知識の中でほとんど欠落しているのが、あの日中戦争はどのような戦争だったのか、あの戦争をはじめたとき、日本人はいったい何を考えていたのか、あの日中戦争はどのように展開したのか、という最もベーシックな知識である。
それは若い人からも、年配の人からも欠落している。若い人は無教育故に、年配の人は情報の欠落故に(戦中も戦後も日中戦争の実態は日本国内でほとんど伝えられなかった)。
若い人のためにいっておけば、あの時代の日本は、あわよくば中国全土を征服して、中国に天皇制を押し付け、大日本帝国の一部にしようとしていたのである。「元」だって「清」だって、異民族支配の帝国だったではないか。今度は日本が中国を支配して新帝国を築いたっていいではないかと考えていたのである。
冗談と思うかもしれないが、本当なのである。
大東亜戦争が目的とした、「大東亜共栄圏を作り“ハッコウイチウ(八紘一宇)”の世界とする」というスローガンは、そういう意味だったのである。
そしてさらにその上で、ヨーロッパに覇権を確立したドイツ、イタリアと組んで、世界を再分割する(新世界秩序を作る)という発想だったのである(それが日独伊三国同盟の目的)。
おそらく、いまの若い世代の日本人は、この時代の大日本帝国指導者たちの誇大妄想的グランドデザインを何も知らない。
そこがわからないと、日本人の歴史認識の欠如がいつまでもつづく。
立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
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