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(回答先: 自民党の加藤紘一前幹事長・・・ 「孫のキャッシュカードを乱発し、サインして歩いているような状況だ」 【日本経済新聞】 投稿者 hou 日時 2008 年 11 月 26 日 00:23:13)
「体力低下」映す長期金利――小均衡の袋小路(日本病を断つ)2003/01/24, 日本経済新聞 朝刊, 3ページ, , 1518文字
民間の「期待」回復する政策を
長期金利の低下は単なるカネ余りの産物というよりも、「日本病」と呼ぶべき経済の基礎的な体力の低下を映している。将来の期待成長率が下がり、デフレ脱却の見通しが立ちにくい。そんな環境で、病人の体温が下がるように金利が低下しているのだ。
九八年十月に長期金利が〇・八%を下回った当時と同様に、今回も日本経済の先行きの見通しは厳しく、米国など海外景気にも不透明感が漂う。日銀が懸命に金融緩和を続ける一方、リスクを恐れた資金が信用度の高い国債に流れ込んでいる点も共通している。
■慢性的な重し
橋本龍太郎首相の財政再建路線で景気が落ち込み、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の金融破たんが相次いだ前回の局面は「急性」の金融危機が金利低下に拍車をかけた。橋本政権が倒れた後に小渕恵三政権が誕生。政府・日銀は「積極財政、ゼロ金利政策、銀行への公的資金注入」の三点セットで危機を乗り切り、長期金利一%割れの異常事態は解消した。
今回は銀行の不良債権問題が依然深刻だが、公的資金注入の枠組みは完備している。にもかかわらず金利低下のピッチが速まっているのは「慢性的」な景気低迷という重しがのしかかっているからだ。小泉政権の下で一月の景気判断を三カ月連続で下方修正し、デフレ脱却の目標時期を二年間遅らせたことは、ぬかるみにはまり込んだ日本の現実を反映している。
■運用先に困る
デフレ懸念は世界的な現象でもある。だが、米国ではブッシュ政権が財政面から向こう十年間で六千億ドルを超える景気テコ入れに踏み切った。グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は長期金利の低め誘導にも言及した。米国民には経済政策への信頼感が残っている。
一方、日本はバブル崩壊後、総額百四十兆円にのぼる財政政策を進めてきたが、低迷からの脱却は果たせていない。短期金利はゼロ、長期金利も一%を下回るのに、企業は前向きの設備投資に動かず、余裕資金は借り入れ返済に充てている。
財政赤字に伴う国債発行増は本来、債券相場の下落(長期金利の上昇)を招くはず。しかし、こんな経済原理をよそに運用難の資金は国債に向かい、金利低下が続く。このマネーの流れは消費や投資など民間需要の不振を政府が公共投資などで埋め、からくも失速を免れている実体経済と表裏一体の関係にある。
慢性的な景気低迷とデフレを伴う日本病が長期化するようだと、民間部門はますます委縮してしまう。税収の落ち込みから政府部門が行き詰まることにもなりかねない。長期の運用収益を前提とする年金や生命保険など、国民生活の安心を支える仕組みが崩れ、不安感から家計がさらに身をすくめる恐れもある。
■政策を総動員
縮小均衡の袋小路から抜け出すには、民間部門の「期待」を回復させる政策運営が不可欠だ。不良債権や過剰債務など「過去」の問題処理にメドをつけることが大前提となる。そのうえで介護や福祉、教育など、国民が高い質のサービスを求める分野にヒト、モノ、カネを移し、経済の成長分野を再構築することが大切だ。金融機関もビジネスの呼び水となるリスクマネーを供給し、企業経営者と連携した「自力経済再生」をめざす責務がある。
日銀はデフレ脱却に向けて金融面から企業や家計を一段と後押しする時だ。財政も縮小均衡に合わせた緊縮路線ではなく、波及効果の大きい公共投資や将来の成長分野への減税などを大胆に繰り出す必要がある。
「長期金利〇・八%割れ」は見方を変えれば、インフレに転じてしまう恐れが当面は極めて低い証しでもある。小泉政権がその機を逃さずに、経済政策を総動員できるかどうか。日本病克服の決め手はそこにある。
(編集委員 滝田洋一)