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http://www.yochomachi.com/2008/08/blog-post_09.html
『格差はつくられた』(ポール・クルーグマン)……「操縦される大衆」はニッポンばかりじゃないのだ
経済のクルーグマン先生が専門外の政治学(社会学)の本を書いた。いつになく先生は怒っており文章に力が入りすぎとの感もあるが、言わんとすることは非常に明快。ニューディール政策以来、負けっ放しだった米国富裕層がレーガンを境に「逆襲」に出て、今やニューディールで失った権益を全部取り戻したという。どういう手管を使っているのか。それは巨額の資金を使ってマスコミによる「大衆洗脳」にあると。オバマもこれじゃ危ないかも知れない。日本についても同じことが言える。ただ米国と違うことは、日本の場合は「農村エスタブリッシュメント」による巧妙な「大衆洗脳」が成功を収めてきたと言うことか。
格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略
三上 義一
早川書房 2008-06
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ルーズベルトにより巨額の富の移転が米国の富裕層から労働者階級になされ、そのおかげで戦後の米国で中産階級が形成されたが、その中産階級から、レーガン以降再び巨額の富の移転が富裕層に対してなされたとの指摘は、数字に基づいているだけに説得力がある。彼らがそれを実現するために使った手管とは大衆の本能的な感情に訴えるというやり方。そのノウハウは共和党に蓄積されているという。
日本の場合は、残念ながら米国が10年でやることが50年かかるお国柄。「富の移転」はまだ一方通行のままである。すなわち「都市から農村への富の移転」という戦後体制のメカニズム・制度がいまだに機能しっぱなし。農林統計によれば農家の所得と一人あたり支出は都市勤労者世帯を遙かに上回るまでに増加している。しかし「農村エスタブリッシュメント」は大衆の本能的な農村への親近感をうまく利用しマスコミを総動員するかたちで更なる農家への所得移転を求めている。これも(方向は違うにせよ)共和党が得意とする手口。
日本では、この本はそういった観点から読まれなければならないと思う。