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(回答先: 「石内尋常高等小学校 花は散れども」96歳の新作映画/対談/新藤兼人さん/新藤風さん/1(しんぶん赤旗) 投稿者 gataro 日時 2008 年 10 月 01 日 22:53:32)
「石内尋常高等小学校 花は散れども」96歳の新作映画/対談/新藤兼人さん/新藤風さん/2
2008.09.23 日刊紙 9頁 一般 (全1,864字)
平凡だが、先生の一生懸命な生き方
〔映画は、大正の終わりの小学校での授業シーンから始まります。居眠りした生徒を先生がしかり、その生徒は夜通し農作業を手伝っていた、という事情を聞いて先生が泣いてわびる、感動的なシーンです〕 風 実話の部分が多いですけどファーストシーンはフィクションだよね。先生の人柄が出るように。
兼人 そう。重々しく生徒に接する先生ではなくて、軽みというか、平凡な感じで、先生も怒ったり、喜んだりする。
風 三十年後の同窓会をやったのも実話。先生が倒れて、良人がお見舞いに行ったことも実話なんだよね。
情操育てる先生機械ではないと
兼人 ええ。人間は誰でも平凡なんだけれども、先生の平凡なよさは、一生懸命生きてるということですね。同窓会で三十年後に会ってみるとみんな戦争の影響を受けて傷ついている。けれども、現実に懸命に生きてる。それを代表して、先生の物語をやったわけです。小学校においては、そんなに知識を授けるわけではなく、人の生き方というか情操というものを育てる。先生はものを教える機械ではなくて、人間なんだ、というようなことをやりたいと思ったんですね。
お百姓さんでもそうなんです。一筋に生きて、表彰されることもない、嵐が来る、稲が倒れる。そんな中で、懸命なすごい生き方をやっているわけですね。先生も一筋に生きたということ。それは子どもに影響を与えます。子どもにとって、小学校で与えられたことは大きく心に響いている、生涯響いているわけです。
風 そうね。
兼人 先生が、うそをいうな、ということを口ぐせにしていたことも、非常に大きい意味を持っていますね。
風 真っ直ぐ生きなさい、といってたんだよね。
兼人 そうなんだね。人間として、うそをいってはいけないんだ、ということは、子どもにとっては大きなテーマだったわけです。青年になり、親になり、仕事をするようになり、先生の平凡な言葉というのは大きな支えになった、というふうに思っているんです。今回は偉い人間は出ないんです。生徒たちも役場の収入役や、料亭のおかみ、売れない脚本家になったりして、それぞれです。売れない脚本家も、売れるようなシナリオを書きたいと思って懸命になってるというようなことなんです。
風 みんな自分の人生を一生懸命生きてるからね。監督は、父(新藤次郎近代映画協会社長)なんかにとってお父さんらしいことをしたわけではないけれども、一生懸命生きるんだ、ということを背中で教えている部分はあったからね。それは父から私もうるさくいわれてきたことだから。一生懸命生きる人の姿というのが市川先生に出てるね。
兼人 人間というのは、まっすぐないい道ばかりではなくて、曲がりくねった道に出会いますから、そのたんびに、挫折感がありますね。自分自身がなんであるかという、しっかりした自信を持たないと挫折をくぐりぬけていくことはできません。僕は独立プロをやってますから、企業みたいに経済的に資金があるわけでもないわけだから、もう、つねに挫折の上に乗っかっているようなことなんですね。しっかりと生きていれば、やがて挫折を乗り越えることができる、という考え方です。だんだん年をとってきますと、市川先生に非常に大きな影響を受けたんじゃないか、というような感じがするんですよ。
尊敬できる大人伝えてあげたい
風 テレビのバラエティー番組で大人が大人をいじめてる、ニュースでも、教師や警察官が事件をおこしたとか、大人が大人を批判し、大人が大人を尊敬しないでしょう。そういうのを見ていたら子どもが大人を尊敬することなんてできないよね。ちゃんと一生懸命生きてる人はすごい、ということを教えてあげないと子どもたちには大人のいうことがすんなりと入ってこない。
兼人 青年資本家が株のことでつかまった。人生はカネだ、カネですべてが解決できるといったんです。
風 人の心も買えるといってたね。
兼人 ええ。それは間違ってる、心はどうなるんだ、と真っ向から立ち向かわなきゃいけない。カネを、何十億円持っていようと人間最後は死ぬわけです。小学生のときに何を与えるかということが重要だと思うんですね。僕はたまたま、いい先生に出会って影響を受けたから、これを映画にしてみたいというふうに思った。平凡な人間を書こうと思ったのは初めてなんです。
風 前から構想はあったんだよね、これは。
兼人 そう。だけどなかなか現実化できなかった。平凡なよさなんていうのを表すのは大変なんですよ。
(つづく)