★阿修羅♪ > 文化1 > 251.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
(回答先: 「石内尋常高等小学校 花は散れども」96歳の新作映画/対談/新藤兼人さん/新藤風さん/4(しんぶん赤旗) 投稿者 gataro 日時 2008 年 10 月 01 日 23:11:18)
「石内尋常高等小学校 花は散れども」96歳の新作映画/対談/新藤兼人さん/新藤風さん/5
2008.09.26 日刊紙 13頁 一般 (全1,910字)
映画の持つ大きな力を信じて命への敏感さがこの映画に影響
風 突然、牛持ってこい、だの、ニワトリ持ってこい、と撮影前日になっていいだしたりしたことがあったね。今回、監督自身も体調が悪い中、死ぬんじゃないか、と周りがひやひやしながらやってるから、すごく命に敏感なところがこの映画に影響を与えてるんじゃないかな、と見てて思いましたけれどね。
兼人 みんな生きるのは平等に生きてるんだということなんだよ。それを分からない人も、分かる人もいるんですよ。なんとなく感じが伝わるというようなことを、この寝てる間に考えたんだね。シナリオというのは紙に書いた字でしょう。それを全部、絵コンテに描いたわけ。時間があったから。
風 大事なシーンをね。
兼人 その絵コンテをスタッフに渡して、今度は現場に行くと実際の人間がそこにいるでしょう。それでまた変化させるというようなことをやって、三段階にやっていけば、客観的なとらえ方ができるんじゃないかな、と思ったんです。
風 今回が初めてだよね。今までは割と絵コンテ描いたら、きっちり、絵コンテどおりに撮るんだ、とびっくりしてたんだけれど。
兼人 前は頭がいいと思ってたの。今はあんまり頭がよくないから(笑い)。
風 今回、だから、ライブ感が結構あるよね。その場、その場の空気をとらえて撮るみたいな形が。
兼人 もう一つ、これは発見なんですけど、車いすに乗ってるでしょう。そうすると、俳優さんのところへいって、ささやいたり、ちょっと直したりなんかは簡単にできないんですよ。だから客観的に俳優さんの演技を観察する。
風 今までカメラの横に立っていたのが…。
兼人 前は、俳優さんのところにちょこちょこいったりして、ささやいたり、文句いったりして撮ってるわけですね。でも、なんか、行くのも面倒になって。
風 いやいや。そんなことない。行ってる行ってる。ちゃんと行ってるよ。
兼人 距離感があってよかった。発見ですね。
風 そうね。今までカメラの真横にいたのがカメラの後ろにいるようなことが多かったからね、今回は。
集団創造としてすごい表現力が
兼人 少年時代に見た何本かの映画とか、あるいは、伊藤大輔とか、山中貞雄とか、溝口健二とか、先輩のすごい人がいますね。その人がとったワンシーンが、目を通して心にこびりついてるわけですよ。主演俳優がにこーっと笑うと、うずまきが起きて終わり、という映画があった。
風 衣笠貞之助の「雪之丞変化」だ。
兼人 うずまきが起きて全編の終わり。こんなのを見てびっくりしましてね、今だに覚えてますね。それに匹敵するようなことをやりたい、と思いましたね。それをふうちゃんはどう思うか。今ごろ衣笠貞之助といったってなんだ、というように思うだろうけれど、しかし、すごいところがある。
風 勝手に私の意見をつくらないで…。
兼人 映像というものの表現力の強さ、大きさというようなもの。たとえば、ドキュメンタリーで三十八度線を映したりしますね。そうしますと、そこへ行ったわけではないんだけれど、百万言を論ずるよりか、映像で見せる強さというのがありますね。だから、無限大に大きな表現力を持っていると思うんですよ。しかも大衆的に。集団創造として、監督を中心とした映画の表現力というのはすごいんじゃないかなぁ、と思ってますね。
僕なんか、若いときに何をやろうかと思ってぷらぷらしているときに、山中貞雄の「盤嶽の一生」という映画を見て、突然思いついて映画をやりたいと思ったんです。それは山中貞雄の映画でびっくりするようないい表現があったわけですね。あぁ、映画というのはすごいんだなぁ、と思ったわけよ。
風 それで、映画の世界に飛び込んだんだ。
兼人 映画に入りたいと思ったんですね。一つの表現のすごさ、大きさというのを映像はみんな持ってると思いますよ。それから、映像というのは将来にたいする可能性があって、これは文字に換わったとはいいませんけど。
風 文字?
兼人 ええ、文字。字は大変なんです。大変貴重なものだけど、やっぱり、映像は、それとは別な表現力を持っているんじゃないかな、というふうに思いますね。これは、これから出てくる若い人たちがつないでいくんだ、というふうに、今、思っていますよ。
風 そのうち、わたしが監督ぐらいの年になるころには立体映像とか、そういうのも出てくるかも知れないし、どうなってるのかが楽しみだけど。
兼人 ふうちゃんはね、映画監督になろうと思ってなったんだよ。何本か撮ったんだね。
風 やれやれというけど、家から出るな、とも。外に出なきゃ仕事できないよ。
(おわり)