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(回答先: 金正日が謝罪したという嘘【天木直人・日本の動きを伝えたい】3/13 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 3 月 14 日 17:24:21)
2007年03月12日
右であれ左であれ、わが祖国日本
新聞の書評につられて週末に一冊の文庫本を買って読んだ。「右であれ左であれ、わが祖国日本」(船曳建夫著、PHP新書)という表題の本である。その表題は、英国の作家ジヨージ・オーウェルの評論集 My Country Right or Left の邦訳からとったという。
社会主義者のオーウェルはまた反戦主義者でもあったが、第二次大戦が始まり、ヒトラーの侵攻を目のあたりにして、「私は心の底では愛国者であって・・・戦争を支持するだろう。できれば、自ら戦いもするだろう」と従来の立場から一歩踏み出した。徹底した平和主義者であれば一貫して戦争に反対するはずだ。オーウェル自身もそうした平和主義者を非難するのではなく、むしろその立場を支持した。しかし自分は、そこから一歩踏み出して、「右であれ左であれ、わが祖国」と宣言したのだ。
著者船曳はこのエピソードを引用しつつ、国家を論ずる時の基本目的は、右であれ左であれ日本の「国益」を最大化することでなければ議論は空転する事、その場合「国益」を「他の国の国益」よりどこまで優先するかであるという事をこの本の中で論じている。
この本の内容を紹介するのがこのブログの趣旨ではない。この本に指摘されている二つの論点から導き出される日本の国益について、右であれ左であれ、意見に違いはないという事を、彼の書いている二つの箇所を引用して例示したいだけである。
彼は、今日のテロ問題が、すぐれてアメリカの問題であると明言している(181頁)。これは私が常に強調してきたところである。すなわち、「テロ問題はすべての国と国民にかかわる世界的な問題であり、あらたな世界秩序が編み上げられていく長期的な問題である」と我々は思い込まされてきた。だからテロ問題の解決に協力することが国際的な義務であるかのように思ってしまう。しかし今日のテロ問題の本質はこよなく米国的な問題なのであると彼は言う。それは米国とイスラエルに向けられたアラブの反米武装抵抗であり、米国の資源、産業、金融支配に対する後進国からの暴力的な反発なのである。私は「テロとの戦い」とは、米国の、米国による、米国の為の戦いであるといい続けて来た。ところがそういう意見を正面から述べる日本の論者はいなかった。テロ問題は「すぐれてアメリカの問題」であると断じた船曳の論評は、私が日本の評論の中ではじめて目にするものである。
他方において、海外派兵に対する日本の態度について彼はこう書いている(161−164頁)。すなわち日本が自衛隊の海外派遣に消極的だったのは、1991年の湾岸戦争の時が初めてではない。かつて日英同盟に基づいて英国が欧州戦線への陸軍派兵要請を求めてきた時、日本の指導者は「遠い危険な地域で人命を失うおそれががある」と考えて断り、英軍輸送の護衛のための巡洋艦と駆逐艦の派遣にとどめた。法的にも軍事的にも派兵が可能であったにもかかわらず積極的に協力しなかった事をどう解釈すればいいか。日本という国は自国の保存を最優先し、世界の利益という理念に欠けている面があるのではないかと疑問を呈するのである。
この二つの船曳の問題提起から導き出される疑問は、小泉前政権下から急速に進められようとしている米軍再編への協力を、国益という見地からどう考えればよいかということである。これが小泉前首相の個人的な私益に基づいてものであるのなら、あるいは米国に守ってもらうためには米国の要求は何でも聞くしかないという日米同盟絶対視論者の考えから由来するものあれば、まだ分かりやすい。議論以前の問題であるからだ。
しかしまじめに国益というものを考えた時、日本とは無関係の「すぐれてアメリカの問題」であるテロとの戦いに、日米同盟における英国の要請や湾岸戦争における世界の期待でさえ、応ずる事のなかった陸軍兵士(陸自自衛隊)の海外派兵(派遣)を、今行う事が果たして日本の国益であるのか、という根本的な疑問にどう答えればよいのか。
それがイラク戦争の時のように、最も安全な地域を探し当てて復興支援に限定する分にはまだ許される。後方支援に徹するのであればそれもいいだろう。
しかし日本は今後米軍再編に協力する形で「テロとの戦い」への本格的な参加を米国から強要されるのである。日本は間違いなく米国の戦争の盾とされる。自衛隊は米軍の先兵隊とさせられる。日本の指導者にその自覚があるのか。自衛官を殺し、殺させる覚悟があるのか。それが国益なのか。右であれ左であれ、わが祖国日本の国益を考えた時、答えは一つである。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/03/12/#000294
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