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転載:http://exodus.exblog.jp/5502392/
本日午前0時11分(BST)発信のTHE SCOTSMAN によると,3月12日にガザ市内で誘拐され,1ヶ月間その所在も安否もまったく不明であったBBC特派員アラン・ジョンストン氏の無事が昨日,公式に確認された.それによると,パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス大統領は同日BBC会長のマーク・トンプソン氏に「(お訊ねの)ジャーナリストは明らかに無事で元気にしている」ことを(多分国際電話で)伝えた.大統領はまた,「パレスチナ自治政府は彼の釈放を確保することに全力を注ぐつもりである」ことを同会長に約束した. 依然として犯行グループの正体は明かされず,事件の詳細も不明のままであるが,少なくともパレスチナ政府が犯行グループとの直接(ないし間接)交渉の場を持ち,その交渉が順調に進んでいることを示すものである.ここまで来れば,明日にも記者が解放されるようなことがあっても何ら不思議はない.しかしことは慎重を要する.この事件が一種の国際謀略であることを疑う十分な理由がある以上(後述する),万が一にも取り返しの付かない失敗を冒さないよう,慎重の上にも慎重を期さなくてはならない.パレスチナ自治政府の真価が問われる局面である.
アラン・ジョンストンが誘拐されてから1ヶ月目に当たる3月12日には,世界各地でジョンストン氏の解放を求める国際行動が展開され,BBC,CNN,Sky,al-Jazeeraの4大メディアが共同してジョンストン救出のために世界同時放映の特別番組を放送するという史上希に見る画期的な取り組みが行われた.この特別番組はパレスチナ西岸のラマラから世界に向けて送信され,記者会見会場に駆けつけたジョンストンのご両親は囚われた息子への手紙を発表した.
どちらかというとその反響はむしろ抑制的であったような気がするのだが,ある意味でこの誘拐事件よりももっと重大な事件がこの事件の4日後に発生している.国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)責任者を乗せた車両がガザで待ち伏せ襲撃を受けたという事件である.
3月16日,UNRWAガザ地区責任者ジョン・ギング氏の乗った車両がイスラエルからガザ地域に入るエレズ検問所を通過して1キロほどのベイト・ハヌンに差し掛かったところで白いスバルによって進路を妨害されたため停止したところ,中から覆面をした男たちが銃を手に飛び降りて車に駆け寄りドアを開けようとしたが,ロックがかかっていたため賊はただちに銃撃を開始した.運転手はそのまま車を発進させて全速力で現場を離脱し辛うじて危機を脱することができたが,この銃撃で車体には11個の弾痕が残された(14発とも).防弾装甲されたランドクルーザには運転手の他に,ギング氏と警備担当者が同乗していたが,全員無事だった.
時刻は不明だが間違いなく白昼の出来事であり,車両には国連のマークが描かれボンネットには国連旗が旗めいていた.ニューヨークの国連スポークスウーマン,ミシェル・モンタスによれば,車両はギング氏の車を中に挟んで3台で車列を組んで移動していたという.UNWRAのスポークスウーマン,ジーナ・ベネベントの説明でも同様に,車列を組んでいたことになっている.この事件はジョンストン記者誘拐事件の陰に隠れてこのまま迷宮入りしそうな気配が濃厚だ.
事件後ギング氏は,パレスチナ当局に攻撃者の捜査を求める一方,このような一握りのガンマンの攻撃にひるむことなくガザに留まって彼の任務を引き続き遂行する決意を表明した.現在ガザのUNWRAに派遣されている外国人職員は8名程度と思われるが,今のところ人員を引き上げたという情報はない.ただし,休暇などで帰国しているメンバーはしばらく待機を続けることになった模様.UNWRAの業務は従前通り滞りなく遂行されている.(FOX は国連本部がガザ地区のすべての外国人スタッフの総引き揚げを命じたと報道しているが,おそらく誤報である)
(もちろん,パレスチナ紛争の根本原因が第二次大戦の終戦処理に関わった戦勝国に一義的にあることは明らかであり,これらの難民たちはその政策的誤りの犠牲者であるのだから国際社会がその責任を負うことは―人道的見地を抜きにしても―ある意味で当然ではあるが…)
2006年1月に行われたパレスチナ評議会選挙で,ハマスは圧倒的な勝利を収め,全132議席のうち,74議席を獲得した.独立系の議席80を加えると206議席となり,ファタハの43議席を大きく上回る安定与党を構成することになった.ファタハの敗北は和平交渉の行き詰まりと自治政府の腐敗・無能に民衆が愛想をつかしたためと考えられる.しかし,イスラエルはパレスチナ政府の歳入をブロックして財政破綻の淵に追いやり,さらにはファタハに肩入れして武器を大量に供与するなどしたため,ハマスとファタハ間の紛争が激化しパレスチナは収拾のつかない混乱に陥った.最終的にサウジアラビアのアブドラ国王が調停に乗り出し,2月8日に両者の間でメッカ協定が成立,3月15日にハマス・ファタハのパレスチナ連立政府の樹立が宣言された.
これに先立つ3月12日にはジョンストン記者誘拐事件が発生,追い討ちを掛けるように3月16日には上記した国連機関の車両襲撃事件が起きた.このような困難な状況の中でパレスチナ評議会は3月17日連立内閣の信任投票を行い,晴れてパレスチナ挙国一致内閣が発足する.これらの事象を時系列を追って調べれば結論は自ずから明らかであろう.一言で言えば,ハマス主導のパレスチナ自治政府の倒壊を目的とする外部からの集中攻撃である.報道では一般に誘拐事件を実行したのはガザの有力マフィアであるダグマッシュ一族であるとされ,また国連車両襲撃はアルカイダ系国際テロリストグループの仕業であるとほのめかされている.しかし,これら2つの事件がまったく同じグループによって実行されたことを示すきわめて単純な一つの事実がある.実際,読者はあまりの単純さにあきれてしまうに違いない.
第1の事件,ないし第1と第2の事件の両方にダグマッシュ一族が何らかの形で関与しているか,ないし少なくとも一定の庇護を与えている可能性がある.また,この犯行グループがいわゆるイスラム原理主義グループと呼ばれる国際的ネットワークに繋がるものであることもほぼ確実だろう.しかし,それはもう一回り大きな国際謀略の手駒でしかない.大詰めのドラマがどのような展開になるのか?私は知らない.しかし,一つだけ忠告することがあるとすれば,もし,犯行グループのアジトを強襲するという作戦があるとすれば,その部隊のメンバーの選択は十分吟味する必要があるということだけだ.最後の土壇場で味方の方から発射した銃弾が救出を待っている人間に命中するようなことがあってはならないからである.(馬場英治)
Reporter's family pleads for release (The Scotsman, 2007-04-13)
Media unite to seek BBC man's release (BBC NEWS, 2007-04-12)
Sources: "Palestinian officials disappointed by Merkel's visit (IMEMC News, 2007-04-02)
UK in talks with Hamas over BBC reporter (Telegraph.co.uk, 2007-04-06)
UN aid chief calls on PA to track down gunmen who attacked him (HAARETZ.com, 2007-03-17)
UN mission chief attacked in Gaza (The Jerusalem Post, 2007-03-16)
UN aide attacked in Gaza (International Herald Tribune, 2007-03-16)
U.N. Pulls Staffers From Gaza After Gunmen Try to Kidnap Mission Chief (FOX News, 2007-03-16)
Gunmen Try to Kidnap U.N. Refugee Chief (The Washington Post, 2007-03-16)
ハマス対ファタハの内戦?ーー問題点の再整理(付記あり) (Staff Note, 2006-12-30)