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情報収集衛星をめぐる利権の再構築 (『週刊ポスト』 1999.02.05)
http://www.asyura2.com/0502/senkyo8/msg/1148.html
投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 26 日 13:48:55: XZP4hFjFHTtWY

(回答先: 「情報収集衛星利権に群がる天下り特殊法人の実態」 (『社会新報』 2002.10.30) 投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 26 日 13:41:04)

http://www.weeklypost.com/jp/990205jp/news/news_1.html

<特報・新連立は福音か−−自自連立の裏側>

 1 情報収集衛星をめぐる利権の再構築

 犬猿の仲だった小沢一郎・自由党党首と野中広務・官房長官との“歴史的和解”の末、自自連立政権がスタートした。
「小沢もついに自民党の軍門に下ったか」という評価が我慢ならない小沢氏は、数々の分野で自民党に譲歩を迫り、自らの存在意義を高めようと、躍起になっている。
 気まぐれで強権的だといわれる小沢氏が、政権をガタガタにするという“予測”はさておき、小沢氏が最後までこだわったのが、自衛隊の国連平和活動への積極的参加など安全保障論議であったところに、この自自連立が内包する一側面が表われている。
 自民党のある有力代議士は語る。
「5年半前の自民党分裂で、多くの族議員を擁する旧経世会が支配していた『霞が関利権構造』が、いったんは崩壊しました。今回、自由党が自民党に擦り寄った背景には、長い野党暮らしの間に官庁パイプが薄れ、情報が入らなくなり、利権にもタッチ出来なくなったという彼らの悲哀がある。
 その旧経世会の『霞が関利権構造』のなかでも、特に小沢氏がガッチリと握っていたのが防衛庁でした。野中氏の小沢嫌いは有名で、『あの人のように国を売る人は嫌いだ』と、公言していましたが、それはアメリカ政府や米軍需産業との間にパイプを持つことで、防衛利権を我が物にしてきた小沢氏への、痛烈な批判だったのです。そして、小沢氏の下野により、この防衛利権はまさに宙に浮き“空洞化”した。
 自自連立が成立した今、今後の焦点は、崩壊し、空洞化していたそれらの利権を、誰が、どのように再構築するか、です。それゆえ小沢氏は、かつて自分が牛耳っていた防衛庁に存在感をアピールするためにも、突っ張らなければならなかった」
 自自連立の陰で進む“利権再編”――。
 実は、この自自連立の動きと軌を一にして、既に水面下での駆け引きは始まっていた。今後の防衛利権支配への“入り口”ともいえる「情報収集衛星」がその嚆矢となった。この「情報収集衛星」の導入をめぐる「国産派」と「輸入派」に分かれた抗争は、防衛庁における政治の復権と利権の再構築を予感させる蠢きに満ちていたのである。


 2 官民一体の国産派

「情報収集衛星」は、高度300〜500キロの上空から、細密な写真を撮影することを目的としている。光学機器による撮影と、レーダー撮影の2種類を用意、どんな天候条件にも左右されないようにする。どれだけ鮮明な画像を得られるかという能力を「分解能」というが、日本が計画しているのは1メートル。1辺が1メートル以上のものであれば形が判別できる。したがって、航空機の基地施設、車両、ロケットなどの識別は、十分に可能だといわれている
 依田智治・参院自民党副幹事長(元防衛事務次官)は語る。
「日本は専守防衛であり、そのためにはまず情報を持たなければならない。確かに、アメリカから情報を買うこともありますが、安全保障、危機管理の観点から、やはり独自の情報収集衛星が必要なのです」
 本来、この衛星は「偵察衛星」と呼ぶのが相応しい。それが、科学技術庁の「地震や海洋汚染などの大規模災害への適用」、内閣情報調査室の「内閣の重要政策に関する情報収集」、農水省の「漁業取り締まり」などと多目的利用を挙げ、「情報収集衛星」としたのは、30年前の国会で「宇宙の平和利用」を決議しているためだ。しかし、もちろん「本音が軍事目的であることは明らか」(米田建三・自民党代議士)である。
 数々の制約を抱えた防衛庁に代わり、「情報収集衛星」の導入推進役を務めたのは、外務省、内閣官房、科学技術庁などの省庁である。「防衛庁と違って、中国などを刺激せずに推進できるため」(軍事評論家)で、1996年、最初に1000万円の開発調査費を計上したのは外務省だった。
 官庁のヤル気に恵まれ、三菱電機やNECの売り込みも活発化した。三菱電機の谷口一郎社長は、昨年8月25日に、自民党代議士数10人に対して、説明会を開いている。NECもそれに負けておらず、衛星担当者は分厚い資料を手に、与野党国会議員のもとを訪れ、PRに励んでいた。
 そして、8月31日。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が放ったミサイル、テポドンが飛来する。


 3 政治主導で巻き返す輸入派

 官民一体となった「日の丸情報収集衛星」の開発は、このテポドン・ショックで、一気に上昇気流に乗るかと思われた。テポドン発射を事前に察知できなかった防衛体制の不備がクローズアップされ、情報収集の重要性が再確認されたからだ。
 しかし、逆にここから政界からの猛烈な巻き返しがはじまる。官民任せだった衛星の主導権を、政界が握ろうと動き始めたのだ。
 最初にアクションを起こしたのは、中山太郎元外相、玉沢徳一郎元防衛庁長官、大野功統代議士の3人だった。3人は9月初旬に訪米、アメリカ政府との協議を重ねている。
「北朝鮮が、無警告、無通報でミサイルを発射、我が国の領空を侵犯した。これは言語道断の話です。そこで、国際世論を喚起しようと、中山さん、玉沢さん、私の3人で出掛けました。
 最初はニューヨークの国連に行って、各国の国連大使と次々に会った。そして、国連安保理で議長声明を出すところまでこぎつけた。続いてワシントンに行き、コーエン国防長官やオルブライト国務長官に会い、日本の危機感を説明、コーエン長官が『日本の脅威はアメリカの脅威である』と、いってくれた」(大野功統・自民党代議士)
 時を同じくして、防衛族を中心に自民党内に「情報衛星に関するプロジェクトチーム」が発足。メンバーには、野呂田芳成・防衛庁長官を始め、愛知和男、衛藤征士郎、玉沢徳一郎各代議士ら防衛庁長官経験者など、そうそうたる顔ぶれが並び、中山元外相が座長となった。
「情報収集衛星」の導入は、急ピッチの展開を見せる。11月6日には、政府の閣議で早期導入が決定。この段階でリードしていたのは「国産派」である。ことに三菱電機・谷口社長は政界工作に熱心で、防衛族としてメキメキと力をつけてきたといわれる山崎拓前政調会長の勉強会や、「中山プロジェクトチーム」にも出向き、自社の優秀さをアピールした。11月6日の政府方針の内容が、三菱案に類似しているといわれたほどである。
 この雲行きが変わるのは、アメリカでの具体的な運用状態を視察するために、11月8日からの1週間、「中山プロジェクトチーム」のメンバーを中心に、視察団が派遣されることになってからだ。
 自民党の国防部会や外交部会には、もともと偵察衛星を製作したことのない日本が、軍事目的に耐えうる衛星を開発できるだろうか、という危惧があったという。価格も、衛星4機に打ち上げ費用などを含めて2000億円といわれているが、2002年の打ち上げ段階までの準備費用、諸費用の高騰、計画が失敗、あるいはズレ込んだ時の上乗せ分を含めれば、その2〜3倍に達するのではないかという心配もあった。
 そこで、「国産派」とアメリカから衛星を購入して安く確実な情報収集システムを確立しようという「輸入派」が、激しく争うようになった。
 訪米団の出発前に、科学技術部会で、「国産化で行く」という決議が決まりそうになった。その時、玉沢元防衛庁長官が、「この段階で国産一本で決めてしまうのはいかがなものか」と反対、論争が巻き起こって国防、外交、科学技術の各部会の主要メンバーで、訪米団は組まれることになった。


 4 有力政治家による国産派の再巻き返し

 こうした流れのなかで、「国産派」は焦る。2000億円といっても「情報収集衛星」の寿命は4〜5年。買い換え需要も発生することから、10年単位で考えれば、1兆円からの商売がフイになる恐れが出てきたのである。
 官民主導で進んできた「国産派」も、政治家に接近する。防衛庁における「ポスト小沢」の最有力候補は、防衛政務次官を3期も務めた鈴木宗男官房副長官である。「国産派」は、「防衛庁人事にも影響力を及ぼす」(防衛庁関係者)といわれるほどの新実力者であり、小渕政権の要・野中官房長官の“腹心”でもある鈴木氏を“理解者”とした。鈴木官房副長官は、自分と親しい松岡利勝代議士に勧めて、「国産化推進議員連盟」を作ろうとするほどの動きを見せたという。
「私は、日本の安全保障を考えた時、偵察衛星の独自開発が望ましいというのが持論です。また、日本にはそれだけの技術力がある。議員連盟については、鈴木さんから『必要だぞ』と、いわれてそのような動きはありましたが、動きだけで終わっているはずです」(松岡利勝代議士)
 その一方で、「国産派」は「輸入派」の動きを牽制するためにも、情報収集に努め、「輸入派」に利権絡みの動きがあることを突き止めたという。国産派を自認する外務省関係者がこう明かす。
「11月8日からの訪米団は、純粋な視察目的ではなく、衛星を輸入に持っていくように仕掛けられたものだったのです。というのも、アメリカでのスケジュールや会談のセッティングを行なったのは、日米安全保障問題に携わる公益法人の理事であるA氏という人物でした。このA氏が、ある人物を“通訳”として連れて行っているのですが、実はその人物は、ロッキード・マーチンという衛星メーカーと提携している輸入派、三菱商事の社員だったのです。『最初から輸入ありき』の視察団だった」
 8日からの視察は、ロス国務次官補、キャンベル国防次官補代理などの要人との会談のほか、ロッキード・マーチン、ヒューズ、TRWなどの衛星メーカーや、スペースイメージング社などの民間衛星映像処理会社を、精力的に回るものだった。
 その結果、中山座長は次のような結論に達したという。
「私は国産でも輸入でも構わないんだ。ただ、2002年の配備までに、日本がはるか先を行くアメリカに追いつくことができるのかという不安はある。それに、納税者の負担も考えなくてはならない。となると、答えは(輸入の方向で)おのずと出るだろう」
 玉沢元防衛長官もほぼ同意見である。
「私は、純国産で走り出して、最後になって、未完成だ、不十分だということになったら、誰が責任を取るんだといいたい。アメリカだって莫大なカネをかけ、何度も失敗を繰り返して、今日のレベルにまでなったんだからね。すぐに国産で行けるというのは、やはり危険だよ」
 訪米団は「輸入派」に傾いた。しかし、「国産派」のこれまでの歴史と、科学技術庁と防衛庁を中心とする最後の説得工作が実を結んで、12月22日、113億円の予算化が決まった。これだけの費用を投じる以上、「国産派」が大きくリードしたといっていい。
「情報収集衛星」導入に関わった政治家や官僚は、口を揃えて利権絡みではないことを強調する。しかし、「情報収集衛星」の先には、3兆円ともいわれるTMD(戦域ミサイル防衛)争奪戦が控えており、防衛関係者のなかには、今回の争いをその“前哨戦”と捉えている者が少なくない。


 5 小渕政権2月危機説

 自自連立の実現ですっかり自信をつけた小渕恵三首相が心中深く思い描いているのは、21世紀まで≪世紀をまたぐ総理大臣≫になることなのだという。
 心中深くといっても、最近の小渕さんは“ボキャ貧”どころか思っていることをすぐに口に出す。
 山梨県小淵沢町長が自自連立を祝って官邸を表敬訪問した際には、同町を流れる名水の名前をひきあいに出して、「『延命水』は持ってきてくれたの?」 と、政権延命を狙っている本音をついポロリ。
 小渕派幹部は小渕首相が急に強気になった背景をこう語る。
「小沢自由党の政権入りは旧経世会=小渕派の再結集の意味を持つ。自民党内ではかつての竹下派支配の構図が復活し、最大派閥に逆らって倒閣に動こうという勢力はもはやいない。野党共闘も反自民の最強硬派だった自由党を引き抜いたことで崩壊し、通常国会の焦点は予算案とガイドライン法案だが、いずれも公明党への根回しが効いて成立のメドは立っている。小渕総理は秋の総裁選で再選を果たした後、総選挙を来年10月の衆院の任期満了までひきのばし、選挙に勝てばさらに2年、2002年までの長期政権を考え始めている」
 が、そううまくいくのだろうか。自民党内では連立ができた途端にそれまで慎重派だった森喜朗幹事長まで「どっしり重力自自連立」といい始めるなど“連立祝賀ムード”が広がっているように見えるが、ひと皮めくると、こんな言い方で政局波乱が待ち受けているのである。
「北朝鮮が先か、経済破綻が早いか。小渕連立内閣の命運はそれで決まる」
 加藤派幹部が語る。
「政局の波乱要因は国会審議ではない。北朝鮮情勢が急速に緊迫化すれば、安保政策で鮮明な主張をしている自由党の存在感が高まり、小沢一郎と組んだ小渕内閣の支持率は上がる。その場合は連立政権の基盤が固まってしまう。
 しかし、そうなるより先に大型の金融機関破綻など経済危機が表面化すれば、国会で野党は追及を強め、支持率は再び急降下して政権は崩壊を早める。今年に入ってからの債券相場や株価の不安定な動きなど市場の動向をみても、経済の一層の深刻化は避けられそうにないとみている」
 加藤紘一前幹事長は昨年末のある席で「来年2月に経済は深刻な危機を迎えそうだ」と不気味な予言をしており、加藤派内からは期せずして≪2月政権危機≫説が流れている。
 現実に、小渕首相が公共事業28兆円の大型景気対策を実施し、今年の成長率0・5%成長を公約しているのとは逆に、1月に入って三井信託と中央信託の合併、三菱グループの信託銀行3社の合併、太陽生命と大同生命の全面提携など、急激に金融再編が加速している。その裏では、一昨年以来の金融危機がいよいよ深まり、「都銀や生保の破綻という大型金融クラッシュが迫っていて、それを回避するためのギリギリの綱渡りが始まった」と、政府中枢部が緊張を高めているというのが実情なのだ。

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