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JR西 運転士の技量を考える (東京新聞)
http://www.asyura2.com/0502/nihon16/msg/517.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 4 月 28 日 19:24:29: ogcGl0q1DMbpk

(回答先: <尼崎脱線事故>急ブレーキで「せり上がり脱線」か (毎日新聞) 投稿者 乃依 日時 2005 年 4 月 27 日 19:50:52)

JR西 運転士の技量を考える

 尼崎JR脱線事故で、快速電車の高見隆二郎運転士は運転歴11カ月、23歳の若手だった。過去にはオーバーランなどで3回も処分を受けていた。個々の運転士の技量やJR西日本の乗務員教育、安全管理に不安はないのか。背景には国鉄民営化で置き去りにされた“技能”があるとの指摘もある。命を預けるJR西日本運転士の技量とは−。

 「オーバーランは経験ないけど、週に一回は、二、三分遅れる。たびたび経験しているので『またか』と思うだけ。遅れたときはいつもスピードが速くなって、怖いなと思う」

 衝突事故直前に高見運転士が四十メートルのオーバーランを起こしたJR福知山(宝塚)線伊丹駅で、女性会社員(27)はスピードアップの常態化をこう証言した。

 大阪市内の男性会社員(52)も「普段から飛ばしていて、脱線するんじゃないかという不安は以前から抱いていた。今回の事故は、カーブ直前できっちりスピードを落とせるかどうか、他の運転士との技量の差が出ただけなんじゃないか」と話した。

 同駅構内売店の女性店員(25)は「たびたび『遅れます』という構内放送が流れる。大阪で大事な待ち合わせがある時は、JRではなく(並行する)阪急伊丹線を使う。JRの方が通常十分早く着くんだけど、信用できないから。飛び込み事故なんかも多くて、就職活動中に三十分も遅れて会社に行ったこともある。阪急と比べてJRはルーズな感じ」と西日本に憤る。

 西日本の発表によれば、高見運転士は二〇〇〇年に入社、〇一年八月に車掌見習となり、一カ月後に車掌。〇四年五月に運転士となった。

 車掌だった〇二年五月、オーバーランしたのに非常弁を作動させなかったとして訓告処分を受け、〇三年八月には帽子を目深にかぶり、目がうつろだと乗客に注意され、厳重注意処分を受けた。昨年五月には運転士として約百メートルオーバーランし、訓告処分を受けた。

 入社五年で三回の処分を受けたことについて西日本は「当社の中でも間違いなく多い」と認める。処分を多く受ける運転士ならば「適性に問題あり」ともとれるが、同運転士は三年に一度の運転適性検査と毎年の医学適性検査を受けており、いずれも問題はなかった。「処分イコール適性がないとはならない」が西日本の見解だ。

 ただ、西日本管内では一昨年度八十二件、昨年度五十九件のオーバーランがあった。それも二百−三百メートルもオーバーし駅を完全に通り過ぎるケースも目立つ。

 他社では集計数を公表しておらず、管轄する近畿運輸局も「オーバーランだけの報告を求めていない」ため、比較は難しいが、複数の私鉄関係者が「完全に駅を通過するケースはうちでは聞いたことがない」と明かす。交通評論家の佐藤信之氏は高見運転士について「百メートルのオーバーとなると、ブレーキ操作を誤っている可能性はある」と疑問符を付ける。

 一方で、高見運転士は若く経験不足だったのではないかという指摘もある。JR東日本は「一概に言えないが、入社五年目後半から六年目くらいにかけて運転士になる」と西日本と大差はない。JR東海では、高卒新人の場合、運転士試験受験の資格は駅員二年、車掌三年の経験が必要。すべてを順調にクリアしても二十二、三歳で運転士となるのは難しそうだ。
 
■私鉄と比べ目立つ若さ

 私鉄と比べると、その若さがさらに目立つ。阪神電鉄は入社して駅員、車掌を各二年以上で、社内の運転士試験を受けられる。その後、約八カ月の研修を経て国家試験を受ける。「国家試験合格者の年齢を見ると、平均して二十六歳。本社は高卒がほとんどで、平均すると八年前後になる」
 
 京阪電鉄は「通常は十年ぐらいかかる」。近鉄も「駅員を二年以上、車掌を一年以上やって、はじめて運転士試験を受験する資格が得られる。通常二十代後半から三十代前半で運転士になる」という。
 
 なぜ、若い運転士が必要なのか。実は西日本に限らず、JRは国鉄民営化の前後、新卒採用を抑制した時期があり、働き盛りの中堅運転士が極端に少ない。
 
 専門誌・月刊「JRガゼット」三月号に掲載された西日本関係者の記事によれば、昨年四月時点で、三十−三十九歳の社員は千四百五十人で、同時期の全社員三万二千八百五十人に占める割合では4%にすぎない。四十代の一万五千二百七十人、二十代の五千二百二十人と比べると違いは明らかだ。「社員の年齢断層を埋めるべくJR発足後に入社した社員への技術継承を早急かつ適切に進めていくことが重要」という。
 
 これに対し、例えば近鉄は、運転士のみの数字で二十代が三十九人、三十代六百二十人、四十代が四百二十一人、五十代で三百五十九人と世代断絶はない。
 
 人材不足を埋めるため、若手を“促成栽培”することはなかったのか。西日本は「例えば運転士一年生と十五年生とで、通常運行時には技量の差はほとんどない。技量は年齢とともに加速度的に伸びていくとは考えていない」と否定する。
 
 だが年齢が若いことについて佐藤氏は「運転士としての適性を見極める期間が妥当だったかという問題はある」と指摘。交通評論家の角本良平氏も「乗務員個人の問題、適性を見逃した可能性はある」と話す。
 
 運転士育成法について、佐藤氏は「昔は運転士はエリート職場で、駅員、車掌とやって、その中から適性のある人を選抜していた。今は、駅員何年、車掌何年という形で、機械的に誰でもなれるシステムになっているのではないか」と疑問を口にする。
 
 適性に関しては「運転士の国家試験は適性については見ない。適性は各社でチェックするしかない。その意味で、今回の事故については、適性がどれだけ西日本でチェックされていたかということが、結果的に問題になる」と指摘した。
 
 中堅層が少ないのはJRグループ全体の傾向だが、佐藤氏は「民営化後、東日本や東海は中途採用を行っているが、西日本は人員削減を行ってきた」と指摘。「社員の年齢構成がいびつで、指導者の年齢層が少なくなっている可能性はある」と推測する。世代断絶でベテランからの技能継承が進んでいないというのだ。
 
 実際、「旧国鉄時代、車両故障の際に隣接駅まで何とかたどり着くために、運転士は研修で車両の検査、修繕にもかかわった。この研修も今はないのでは」というJR関係者もいる。
 
 継承されていない最大の“技能”として「安全優先の原則」を旧国鉄問題に詳しいジャーナリストの立山学氏は挙げる。「『危険だと思ったらまず止まる』と国鉄では安全綱領で決められていた。止まれば運転士の責任は問われなかった。それほど安全を最重視した。今は経済効率優先で理由なく遅れたら逆に責任を取らされる。運転技術の継承と安全優先意識の両方が、民営化で失われてしまった」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050428/mng_____tokuho__000.shtml

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