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【視点】桶川ストーカー殺人国賠訴訟 市民感覚とズレ
本当に「男女のいさかい」レベルか
ストーカー規制法制定のきっかけとなり、警察の捜査のあり方が問われた猪野詩織さん殺害事件をめぐる国賠訴訟の控訴審判決は、再び死亡と捜査怠慢との間の因果関係を認めず、両親にとって事実上の“敗訴”となった。だが、高裁の判断にはやはり疑問が残る。
判決が「名誉棄損の加害行為が行われる危険性すらない」とした十一年六−七月、実際には猪野さん一家は多数の無言電話や、家に押しかけてくる元交際相手の男=死亡=らに身の危険を感じていた。だからこそ、警察に相談に行った。ストーカー犯罪の多くが異常な動機や犯行態様を見せる中、こうした行動を「男女のいさかい」レベルに帰着させる判断は現状に即しているのか。
神戸市西区で大学院生が殺害された事件をめぐって、神戸地裁は昨年末、「捜査の不作為(権限不行使)と被害者死亡の因果関係」を初めて認めた。警察のずさんな初動捜査を断じる一方で、違法と認める基準を「必ずしも具体的な殺害の危険性が切迫していることまでは要求されない」と緩めている。
神戸の事件では、警察側は処分だけだったが、猪野さんの事件では刑事罰に問われており違法性はより高い。神戸地裁の視点に立てば、詩織さんの身に何らかの危険が及ぶ程度の予見可能性を認め、警察の違法性を問うことも十分できたはずで、高裁判決は、市民感覚との距離の遠さを浮かび上がらせた。
控訴審の終盤にいたっても、埼玉県(県警)側は、準備書面で改めて詩織さんを「高額なプレゼントをもらって男と交際する女性」などと“中傷”する主張を行った。昨年成立した犯罪被害者等基本法は「犯罪被害者等は個人の尊厳が重んぜられ、ふさわしい処遇を保障される権利を有する」と定めている。犯罪被害者の立場を、より理解する努力が求められる。(広瀬一雄)
http://www.sankei.co.jp/news/morning/27na1003.htm