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(あらかじめ言い訳)
過去の投稿をあまり読んでいませんので、もし同じ内容の繰り返しになっていたら、なにとぞご容赦の上、無視して下さい。また、バルセロナより愛を込めてさんの投稿を読んで、あてつけで書いているわけではありません。ただ、どんな論よりも証拠が先であるべきではないでしょうか。
で、記事の感想ですが、ひとことで言えば「想像してた通りでした。」です。
(1)青酸ガスの毒性について
-------- 西岡昌紀氏の「マルコポーロ」記事からの引用 ---------
サイクロンBを使って、人間を大量に殺すことが到底不可能であることは後から説明するが、
(中略)
サイクロンBは、缶に入っている。「ホロコースト」を扱ったテレビドラマや映画ではこの缶をドイツ兵が開け、「ガス室」の屋根に取付けられた穴から放り込むと、直ちに缶の中から毒ガス」が出て、ドイツ兵の足下の地下式「ガス室」にいる人々が「毒ガス」に悶え苦しみ、死んで行くという場面が描かれているが、これは絶対にあり得ない。サイクロンBの缶の中身はシアン化水素(HCN)、すなわち青酸ガスが吸着したチョークやパルプのかけらなのである。青酸ガス(HCN)を発生させるには、それらの(青酸ガスを吸着した)チョークやパルプをヒーターで長時間加熱しなければならないのだ。これを燻蒸という。
アウシュヴィッツ等の強制収容所では、戦争末期に発疹チフスなどの感染症が多発し、それらの病原体を媒介するシラミの駆除が大間題になっていた。こうしたシラミが、被収容者の衣服に付着することが多かったため、ドイツ軍当局は,被収容者の衣服をサイクロンBによって燻蒸、消毒していた。
もっとも十分な効果は得らず、ある資料によれば、サイクロンBによる燻蒸では、蛾を殺すのにもニ十四時間が必要だったという。この程度の殺虫剤をドイツは大量殺人用の毒ガスに転用したということになっているのだが、蛾を殺すのにニ十四時間もかかった殺虫剤で、人間を数十分以内に殺せたのだろうか?
---------- 引用ここまで --------------------------------------
で、青酸ガスの毒性は、どれくらいのものかと、googleで検索してみると、次のようなサイトが見つかりました。
岩手医科大学のホームページ内 <法医中毒学各論>
http://forensic.iwate-med.ac.jp/kumagai/toxi97_2.html
-------- 引用開始 ---------------------------------------------
青酸ガス(シアン化水素,HCN)は倉庫,船舶の燻蒸剤,シアン化カリウム(KCN)は写真,冶金,メッキ,電気鍍金に,NaCNは柑橘類果樹の殺虫剤と広く用いられており,毒性が急速に現れるので自他殺の例がなくならない.HCNは青酸配糖体の加水分解,アクリル系の繊維や樹脂の燃焼によっても生成する.KCNの致死量は0.2-0.3g,HCNは500ppmで数分以内に死亡する.
---------- 引用ここまで --------------------------------------
西岡さん、「人間を数十分以内に殺せたのだろうか?」などと聞いてますが、「数十分」どころか、500ppmで「数分以内に死ぬ」って書いてるやんけ。大丈夫なんでしょうか。医者としての信用は・・・。
(2)「科学的には絶対あり得ない」という主張について
-------- 西岡昌紀氏の「マルコポーロ」記事からの引用 ---------
アワシュヴィッツ収容所の所長(司令官)だったルドルフ・ヘスが書いたとされる文書が重視される理由は、ヘスこそが、アワシュヴィッツ収容所でサイクロンBによる大量殺人を立案した人物だとされているからだ。しかし、これらの文書を読むと、科学的には絶対あり得ないことが沢山書かれている。
例えば、ポーランドでへスが書いたとされる「回想録」の中にこんな描写がある。「ガス室」でユダヤ人達が死んだ後、ドイツ兵達が「ガス室」に入り、ユダヤ人達の死体を外に搬出する様子の描写なのだが、ドイツ兵達は物を食べたり、タバコを吸ったりしながら黙々と死体を運び出したと述べられている。
しかし、これは絶対に嘘である。「物を食べながら」ということは、ガスマスクを付けずに処刑直後のガス室に入ったことを意味する。
サイクロンBで人間を殺せるかどうかの議論は棚上げして、仮りに殺せたとしよう。とすれば、処刑が終わった「ガス室」内部は、人間の致死量を超える濃度の青酸ガスが充満している筈である。そこにガスマスクを付けずに入ったというのだろうか? そして、「タバコを吸いながら」という描写はどうだろうか? 青酸ガス(シアン化水素)は、水素化合物、即ち爆発性の気体なのだ。
さらに言えば、「ガス室」のシャワーから青酸ガスが噴霧されたというよく知られた話も全く馬鹿げている。
青酸ガスは、空気より軽いのである。その青酸ガス(シアン化水素)をガス室の屋根の穴から缶ごと投下し、シャワーを経由してその下にいるユダヤ人達を殺したという話が、広く信じられているが、空気より軽い青酸ガスが、「ガス室」の天井からその下のユダヤ人達へと、上から下へ拡散するだろうか?
---------- 引用ここまで --------------------------------------
(2-1) 上記引用中の「物を食べながら」ということについて
ルドルフ・ヘス(副総統とは別人)告白録の、該当する部分は次のようになっています。
---「アウシュビッツ収容所 所長ルドルフ・ヘスの告白遺録(サイマル出版会)」からの引用 p.144 ----
つづいて、部屋から屍体を引き出す、金歯を取去る、髪の毛を切る、墓穴または焼却炉へ引きずってゆく。それから、穴のそばで火の調整をする、集めてある油を注ぎかける、燃えさかる屍体の山に風通しを良くするために火を掻きたてる。
こうした作業全部を、彼らは、まるで何か日々のありきたりのことのように、陰うつな無表情さでやってのけるのだ。屍体をひきずっている最中でさえ彼らは、何かを食べたりタバコをふかしたりする。すでに長時間、大きな穴に転がされて腐臭を発する屍体を焼くという、陰惨な作業の時にさえ、食べるのをやめないのだ。
---------- 引用ここまで ---------------------------
西岡氏は、「ドイツ兵達が「ガス室」に入り、ユダヤ人達の死体を外に搬出する様子の描写」として「物を食べたり、タバコを吸ったりしながら黙々と死体を運び出したと述べられている。」と書いていますが、ご覧の通り、(少なくとも日本語の翻訳本には)そんなことは書かれていません。ドイツ語の原本を調べる余裕も能力もないので断定はできませんが、私には、西岡氏が創作したか、あるいはだれかが捏造したものを読んで、孫引きしたとしか思えません。この点についてもっと言えば、西岡氏がドイツ語の原本を読んだのか、私は疑わしいと思っています。というのも、ナチスが使ったのは、Zyklon-Bですが、西岡氏は「サイクロンB」と表記しています。辞書には、
Zyk・lon [ツュクローン](男性名詞)〔(単数の2格)‐s/(複数の1格)‐e〕(気象)サイクロン(インド洋上に発生する熱帯低気圧)
と出ていました。「ツュクローン」であって「サイクロン」ではありません。無理やり英語風に読んでも、「ザイクロン」あるいは「ヅィクロン」でしょう。「Zyklon-B」は商品名ですから、英語の cyclone に翻訳するのもどうかと思うのですが、とにかくそのように表記された文書をタネ本にしたのでしょう。
なお、兵士達の異様な態度の理解のために付け加えると、上の引用のちょっと前に、次のようなことが書かれています。
------ 同書 p.141 ---------------------------------
意思を疎通させ、安心させるという理由からして、特殊部隊は、つねにその時に処置が予定される地方の人間と同郷のユダヤ人から編成された
---------- 引用ここまで ---------------------------
また、上記p.144の引用のすぐ後に、次のように書かれています。
------ 同書 p.144 ---------------------------------
さらに、特殊部隊のユダヤ人が、屍体の中に自分の身近な者を発見したり、それどころか、ガス室へ向う人間の中にみつけることさえもよくおこった。たしかに、彼らにそれとわかるほど近くにいても、彼らは決してゴタゴタを起こしたりしなかった。
私自身も、一度、その例を経験した。
施設の部屋から屍体を引き出している最中、特殊部隊の一人が、突然ぎょっとしたようにとびさがって、一瞬身じろぎもせず立ちすくんだが、また仲間たちと屍体を引っぱりはじめた。私は、キャップに、どうしたのか、と訊ねてみた。彼は、あのとびさがったユダヤ人は、屍体の中に自分の妻の姿を発見したのだ、といった。
---------- 引用ここまで ---------------------------
(2-2) 「爆発性の気体」の中で、兵士がタバコを吸ったのはおかしい、という主張について
既に見たように、ヘスの告白録には、兵士が青酸ガスが充満している部屋の中で、タバコを吸ったなどとは書かれていません。西岡氏の創作です。また、仮に青酸ガスの中で、タバコを吸ったとしても、爆発しなかっただろうと思います。青酸ガスの爆発限界の下限は空気中で5.6%(体積%)であり、それ以下の濃度では爆発しません。一方、先に見たように、500ppm(0.05%)の青酸ガスを吸うと数分間で死亡するということですから、実際の濃度は、爆発限界の下限よりはるかに低かったことが推測され、その場合は、爆発は起こりません。
(2-3) 青酸ガスは空気より軽いから部屋の中の人まで届かない、という主張について
気体を拡散させるのは、気体分子が持つ運動エネルギーで、分子は四方八方に凄い速さで飛び回っています。その運動エネルギーの大きさは、重力による位置エネルギーに比べ、はるかに大きいので気体が分子量の違いによって上下に分離したまま拡散しないということはありえません。時間がたつにつれて、どんどん拡散していきます(もちろん放出直後に、ガスの温度の違い等により一時的に上下に分かれることはありえます)。青酸ガス(HCN)の分子量は27、空気の平均分子量は28.97で、その差はあまり大きくありません。空気は、分子量28の窒素と、分子量32の酸素の混合気体で、その重さの差は、青酸ガスと空気の重さの差よりずっと大きいのですが、部屋を密閉して長時間放置しても、空気が窒素と酸素に分離することはありません。
それに加えて、部屋の中にガスを吹き出すときの勢いや、部屋の中の人の動き、呼吸、人の体温等による空気の対流で混合は促進されます。
また、青酸ガスと同様に空気より軽い一酸化炭素(CO、分子量28)で多くの人が、自殺したり事故死していることを考えれば、少なくとも西岡氏の言う「科学的には絶対あり得ないこと」でないのは明らかです。