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ニッポン放送株問題 市場の課題、浮き彫りに
フジサンケイグループ(FCG)の資本政策の安定をめざすフジテレビと、ニッポン放送株の大量取得を背景に、FCGとの業務提携を迫るインターネット関連会社、ライブドア。両社の動きは、資本市場のあり方と法制面の課題をも浮き彫りにする。これまでの経緯をたどった。
■フジテレビによるTOB
一月十七日夕、フジテレビはニッポン放送の「株式公開買い付け(TOB)」を発表した。株式持ち合い関係にある中で、ニッポン放送がフジテレビの筆頭株主である資本関係を変更するためだ。
フジテレビの日枝久会長は同日の会見で、「グループの経営資源の選択と集中を機動的・効率的に実行できる経営体制を構築する」と説明。「長期的に安定した経営体制を確立することが、グループの企業価値を高め、株主利益にもつながる」と強調した。
当時、ニッポン放送の筆頭株主、村上世彰氏が関係する投資ファンド「M&Aコンサルティング」は「基本的に歓迎する」とコメント。TOBはスムーズにスタートした。
■ライブドアの登場
事態の急転は二月八日朝。
ライブドアが同日午前七時の取締役会で八百億円のCB発行を決議し、その直後、米系リーマン・ブラザーズ証券との間でCB引き受けを合意。リーマン社の関連会社から約五百八十八億円のつなぎ融資を受けたうえで、わずか三十分間に、東証の「時間外取引」で同放送株約九百七十二万株を買い付けた。
その結果、同社はニッポン放送株を計35%保有する大株主になった。
同日午後四時に記者会見した堀江貴文社長は、「インターネットと電波の融合で、FCG全体との事業シナジー(相乗効果)を考えていきたい」と述べ、さらなる株式買い増しを進める考えを明らかにした。
■TOB目標の修正
想定外の出来事に、フジテレビの日枝会長は、「いきなりの提携申し入れとはいかがなものか」と述べ、不快感を示した。
対応を迫られたフジテレビは十日、ニッポン放送に対するTOBの条件変更を発表、買い付け目標を50%超から25%超に引き下げた。商法二四一条の規定では、株式持ち合い関係にある一方が他方の株式を25%超保有すると、相手側からの「議決権」は消滅する。
「TOBを確実に成功させないと、株主に不利益を与えることになりかねない」(境政郎フジテレビ常務)という配慮からの対抗策だった。
■問題点浮上
ライブドアによるニッポン放送株大量取得問題に対し、政財界からは意見が相次いだ。
その多くが、「立ち会い取引でなく、時間外の取引で三分の一を超える株式取得を果たしたということに疑問を感じる」(佐々木幹夫・日本貿易会会長=三菱商事会長)というものだった。株式取引と市場の透明性をどう担保するのか、法制面の整備が必要との声も高まった。
一方で、「公共の電波を扱う放送会社の株が、簡単に売買されることの危険性」(自民党の森喜朗元首相)を指摘する声もあがった。ライブドアに資金提供したリーマン社による、放送会社の間接支配も問題に。
欧米では「国益が損なわれる可能性がある」として、「放送会社の外資規制」を厳しく定めている。電波法など、現行の国内法では、その規制の甘さを指摘する声が多いため、早期改正を求める声も多くなっている。
■「新株予約権発行」と「仮処分申請」
そんな中、二十三日に事態は新たな展開を見せた。ニッポン放送が取締役会で、フジテレビを割当先とする「新株予約権」の発行を決議したのだ。そこでは「ニッポン放送の企業価値の維持」と「マスコミとしての高い公共性の確保」を目的に、「FCGに残る」(亀渕昭信社長)ことが、改めて明確に打ち出された。
これに対しライブドアの堀江社長は同日深夜、「ニッポン放送株のさらなる買い増し」を宣言した。翌二十四日夜には、「著しく不公正な方法による新株予約権の発行にあたる」として、発行差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。
これにより、ニッポン放送の経営権をめぐる争いの舞台は司法の判断に委ねられることになった。
◇
■株式公開買い付け(TOB) 企業買収などのため、投資家が市場外で大量に株式を取得する手法。TOBは「Take Over Bid」(公開買い付け)の略。特定株主に有利な取引を排除するため買い付け目的や予定株数、買い付け価格、期間などを公表したうえで実施する。取得後の保有比率が実質5%以下と低い場合など一部の例外を除き、市場外での買い付けには、TOBが強制的に適用される。
■時間外取引 証券取引所の通常の売買時間外に電子ネットワークを使って行う取引。東証の取引時間は午前8時20分から9時、11時から午後0時半、3時から4時半の3回。平成9年に導入された。同一銘柄で同量の売り注文と買い注文を出し売買を成立させるクロス取引など、機関投資家が株式投資の配分を調整する大口取引などに活用されている。だが、価格決定に競争原理が働かず不透明さが残り、小口投資家が参加しにくい問題点がある。
■議決権 会社の経営方針などに対し、株主が有する権利。一定以上の議決権を持つと経営に携わることが可能となる。具体的には(1)3分の1超=合併など重要事項に関する特別決議の拒否権を持つ(2)50%超=取締役の選任、利益処分などの普通決議を単独で決定できる(3)3分の2以上=定款変更、合併、営業権譲渡などの特別決議を単独で決定できる。
■放送会社の外資規制 現行の電波法では、外国資本による放送会社の議決権比率を20%未満に制限している。公共性の高い放送局を外国人が支配すれば、国益を損なう情報を流すこともできるからだ。しかし、同法は間接出資を想定しておらず、外資の子会社の日本法人が放送会社を傘下に収めることは可能。米国やフランスなどでは、間接出資も含めて外資の持ち株比率を20%未満に規制している。
■新株予約権 株式をあらかじめ定められた価格で取得できる権利。取引先との関係を強化する場合や、敵対的な株買い占めを受けている会社が友好会社に経営権を託す場合などに、特定の第三者に割り当てることがある。取締役会の決議で発行できる。平成14年施行の改正商法で権利だけの単独発行が可能になった。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/27kei001.htm