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社説
11月23日付
■小泉・胡会談――靖国問題を動かそう
小泉首相と中国の胡錦涛国家主席の会談が、APECの首脳会合が開かれたチリで、ほぼ1年ぶりに実現した。
両首脳の出会いを妨げてきたのは、靖国神社への首相の参拝問題である。会談でも、この問題が正面から取り上げられた。
胡主席は「歴史を避けては通れない」「困難は日本の指導者が靖国神社に参拝することだ」と、参拝の中止を求めた。
これに対して首相は「心ならずも戦場に赴き、亡くなられた方への哀悼の誠をささげる、不戦の誓いをするということで参拝している」と強調した。胡主席の言葉を誠意を持って受け止めると述べたが、参拝をやめるとは言わなかった。
すれ違いだったと言えば、その通りである。しかし、両首脳が靖国問題で直接意見を交わしたことは、日中関係にとって決して無駄なことではあるまい。
実は、靖国を含む歴史問題を除けば、会談のやりとりの多くは双方が両国関係の重要さを述べあうことに割かれた。
首相は中国経済の発展をたたえ、日中の経済関係の発展が「共通利益」の拡大につながると指摘した。胡主席は「中日関係を最重要視し、平和共存関係を発展させていく」と、強い調子で語った。
中国原潜による領海侵犯や東シナ海での資源開発をめぐる摩擦も、深刻な対立とはしないことで一致した。北朝鮮をめぐる6者協議の重要さも再確認した。
言い換えれば、靖国問題を打開できれば、少なくとも当面の日中関係にそう心配はないという現実が見えたと言っていいだろう。ならば日中両国は、靖国問題をどうしたらいいかを、いよいよ本気になって考えるべき時ではなかろうか。
むろん簡単ではない。胡主席は来年が戦後60周年の「敏感な年だ」と述べて、中国国内の反日的な空気を軽んじないよう、くぎを刺した。一方、日本では、首相の参拝を支持する世論が支持しない世論と並ぶ。「中国からとやかく言われたくはない」という反発もある。
私たちは、首相の参拝に反対だ。戦没者への思いは思いとして、靖国は戦前の軍国主義の精神的な支柱だった。東京裁判でA級戦犯とされた人々を合祀(ごうし)してもいる。中国側の参拝批判もこの点に絞られている。つらい歴史にもけじめをつけてこそ、尊敬される国になれる。
だが、中国にも考えてもらいたい。98年に当時の江沢民主席が来日した時、歴史問題での謝罪を繰り返し求め、日本側の不快感を買った。靖国に限らず、中国は「歴史カード」を使って日本を責め続けるのではないか。そんな思いを日本国民に持たせることは好ましくない。
それにしても、小泉首相は考え時だろう。日米同盟を基本としつつも、対中関係の安定は欠かせない。国連安保理の常任理事国入りとて、中国の支持なしに進まない。逆に、軍備増強への懸念など、中国に言うべきことも増えている。強固な対米関係を誇る首相だ。中国との間でも劇的な展開を見せてもらいたい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041123.html