現在地 HOME > 掲示板 > 戦争58 > 224.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
8月7日付・読売社説(1)
[広島原爆忌]「反核の訴えに政治を絡めるな」
核による惨禍を二度と起こさぬよう、国際社会に訴える日を市長個人の政治信条を主張する場にしてはならない。
広島原爆忌の平和宣言で、秋葉忠利市長は「政府は、世界に誇るべき平和憲法を擁護し、国内外で顕著になりつつある戦争並びに核兵器容認の風潮をただすべきだ」と述べた。
平和宣言で、憲法改正問題に踏み込むのは異例のことだ。護憲を反戦や反核と結びつける主張は、冷戦時代の左翼勢力の思考だ。これでは、世界に誤ったメッセージを伝えてしまう。
自民党が来年、民主党が再来年、それぞれ憲法改正案を示すと表明し、憲法改正が最大の政治課題になりつつある。
社民党衆院議員から転じた秋葉市長には憲法改正の流れに歯止めをかける狙いがあったのかもしれない。だが、自らの政治的な思惑に基づいた主張は、被爆地の心とかけ離れ、反核運動から国民を遠ざけるだけだ。
読売新聞の三月の世論調査では、65%の人が「憲法を改正した方がいい」と答えた。秋葉市長の主張は、冷戦時代とは大きく変化した国民の憲法意識を直視しない発言と言わざるを得ない。
秋葉市長は昨年も、北朝鮮の金正日総書記に平和記念式典への招待状を出すなど、パフォーマンスが目立った。
今年の宣言では、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、核廃絶の目標年次を二〇二〇年とする行動プログラムを採択するよう求めた。
なぜ、二〇二〇年なのか。核廃絶への具体的な行程も示されていない。現実味の薄いスローガンの感が否めない。
護憲を反核運動に絡めようという動きは、今年、際だっている。
共産党系の原水爆禁止日本協議会(原水協)は原水禁世界大会のテーマの一つに「憲法を守ろう」と掲げた。海外の政府関係者も招いた大会で、日本の国内問題を討議すること自体、常識を疑う。
長崎市では、有識者らでつくる平和宣言文の起草委員会で、一部委員が「憲法擁護」の文言を入れるよう求めたが、「世論を二分する問題を扱えない」として、退けられた。当然の判断だ。
一九五四年、ビキニ環礁の水爆実験に遭遇した「第五福竜丸」の被曝(ひばく)を機に始まった反核運動は五十年を迎えた。被爆者の高齢化は進んでいる。
反核の世界大会は今年も、原水協と旧社会党系の原水爆禁止日本国民会議(原水禁)との分裂開催となった。
反核運動が政治にまみれることに終止符を打ち、核軍縮・不拡散の建設的な訴えを発信する原点に返る時である。
(2004/8/7/02:17 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040806ig90.htm