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多国籍軍参加:自衛隊運用の枠組み「なし崩し」変容
イラク多国籍軍への参加決定によって、自衛隊運用の枠組みは、なし崩し的に変容することになった。政府は、多国籍軍に参加しても活動内容は従来と同じ「人道復興支援」が中心になると強調し、参加の意味合いをことさらわい小化しようとしている。しかし、問題の核心である「日本独自の指揮権」がどのように担保されるのかは、いまだに不明確なままだ。
共産党の志位和夫委員長は、17日の与野党党首会談で「多国籍軍に参加しているのに指揮下に入らないというのは矛盾しているではないか」と迫った。これに対し小泉純一郎首相は「多国籍軍の一員となるが、日本が指揮権を維持することは米英両国も了解している。口頭で了解を取った。これが担保だ」と言い放った。政府は「参加はするが、指揮権は独自」と繰り返すだけだ。
自衛隊の多国籍軍参加には、当初、外務省内でも慎重論が根強くあった。湾岸戦争(91年)での多国籍軍編成に際して、政府は「目的・任務が武力行使を伴うものであれば、憲法上許されない。『参加』にいたらない『協力』で武力行使と一体とならないものは許される」(90年10月、中山太郎外相答弁)との見解を示しており、今回の参加方針との整合性を取ることが厳しいと判断していたためだ。
しかし、日本だけが多国籍軍の傘から離れてイラクで活動することへの警戒が強まり、政府は新たな国連安保理決議に多国籍軍の任務・目的として「人道復興支援」を明記させることで、自衛隊の参加を可能にする方法を選んだ。新決議の内容が固まった際、外務省関係者は「憲法問題はすべて片がついた」とエネルギーを使い果たしたように振り返った。
それでも今回の決定にあたっては、「多国籍軍参加は違憲」という過去の見解との整合性に気を使う政府の「弱気」ぶりが終始つきまとった。秋山收内閣法制局長官ですら「『参加』という意味は私も時々混同する」と語ったほどだ。18日の閣議決定に際して発表された政府見解でも「参加」の2文字は慎重に回避され、「多国籍軍の中で活動する」とあいまいな表現になった。
ただし、小泉首相は17日の記者会見で「参加」と明言した。自衛隊が参加しても憲法の枠内だと判断する根拠を問われても「活動を停止することがイラクの国民に喜ばれるのか」と情緒的に反論する首相からは「結論先にありき。理屈は後からついてくる」との本音が見て取れた。【中川佳昭】
毎日新聞 2004年6月18日 13時01分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20040618k0000e010067000c.html