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9月16日 ◇◆ 大量破壊兵器は存在しなかった ◆◇よく泣く人とは聞いていたが ◆◇ 核不拡散と日本の決意 ◆◇
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□★□ 天木直人 9月16 日 メディア裏読み □
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◇◆ 大量破壊兵器は存在しなかった ◆◇
パウエル米国務長官が13日の議会証言で大量破壊兵器が実は存在していなかっ
たことを認め、これ以上の捜索を断念する考えを表明した。この表明の意味は重い。
しかしブッシュ大統領は自らの間違いを認める事は決してしないであろう。大統領選
挙を目前にして、「フセイン独裁政権を倒してイラクを民主化することこそ戦争の大義
だ」と言い換えて自らを正当化するしかない。
このパウエル発言に対して日本のメディアは小泉首相に直ちに質問すべきである
が肝心の小泉首相は「長期外遊に逃亡」中である（川端民主党幹事長の15日の記者
会見の言葉）。同行記者にそのような質問をするセンスはない。かわって細川官房長
官が東京で「どういう趣旨で言われたのか真意を確かめねばならない。国連安保理
決議の趣旨から見て米国が、まちがったという事を言っているはずはないと思う」など
ととぼけた応答をしている。外務省首脳も「イラクが国連安保理決議に違反したからイ
ラクへの武力行使が正当化され、日本は支持した」との見解を示した。
とんでもない言い逃れである。安保理決議に違反したから攻撃してもよいなどとは
国連憲章のどこにも書かれてはいない。そのような国際合意はどこにも存在しない。
安保理決議を無視し近隣諸国を軍事占領し続けるイスラエルを米国が攻撃したか。
日本がイスラエル攻撃を要求したか。あのときブッシュ大統領は、テロリストが大量破
壊兵器を米国に向けて使用する差し迫った脅威があるので先制攻撃も正当化される
と世界に公言した。その唯一の口実が嘘だったのである。
来るべき国会で野党が小泉内閣を追及できなければ政権交代はおろか、野党の
存在価値そのものがなくなってしまう。
◇◆ よく泣く人とは聞いていたが ◆◇
小泉首相が今回の外遊の最初の訪問国であるブラジルの日系人の集まりで演
説中に泣いたと16日の各紙で一斉に報じられた。私はこのニュースを最初に聞いた
とき、ついに小泉首相も連日イラクで犠牲になっていく人たちに心を痛め、イラク戦争
を支持した自らの間違いを悔やんで涙したのかと思った。というのもやはり同じ日の
新聞で、英国のブレア首相が今年の夏ごろに、イラク情勢の混乱と英兵のイラク人虐
待事件に心を痛め一時辞任を真剣に考えた事があったと報じられていたからである。
ところが新聞の記事を読んでみるとどうもそういうことではないらしい。日系ブラジ
ル人の歓迎振りに感動して泣いたというではないか。そこでテレビで繰り返し放映さ
れる演説の場面を注意深く見てみた。なんと演説の途中に自らの言葉に酔いしれる
ように感極まって泣き出している。ハンカチも使わずに手で顔面の涙をぬぐいながら
絶句している光景は異様だ。
「言葉も気候も違う中で、どれだけ苦労されたか・・・」と移住者の苦労を思う心はい
い。しかし泣いたのはその事ではない。ヘリコプターで農場を上空から視察していたら
「歓迎、小泉総理」という文字をみつけ、上空から花束を投げる予定だったのを、それ
では申し訳ないと急遽ヘリコプターの操縦士に着陸を命じ、その時の感動を思い出し
ながら「皆さん、涙をもって迎えてくれました。感動しました。」と話すうちに泣き出した
のである。
私はこれがパフォーマンスだとは思わない。何事にも感動する素直な小泉さんが、
演説中に感極まって泣き出したのだと思う。しかし彼が言うとおり、これほどまでに手
厚い歓迎を、はるかブラジルの日系人が自分のために示してくれたことに対し人前構
わず手で涙をぬぐいながら泣き続けられる小泉首相という人間そのものがパフォーマ
ンスなのだ。この人はそういう自分の姿をもう一人の自分が眺めて酔いしれる生来の
ナルシストに違いない。しかし私は彼には涙を流すよりふさわしい場面があると思う。
先日話題のマイケル・ムーア監督の「華氏9･11」を鑑賞していて、どうしても涙を抑
えきれない場面に遭遇した。それはイラク開戦直後にバクダッドを破壊しつくしたすざ
ましい攻撃の光景である。
米兵がイラク人の民家に銃を持って押し入って、泣き叫ぶ家族の前で男たちを捕
まえていく場面である。そして、戦場に散っていった米兵の手紙を受け取った母親が
この戦争の間違いに気づく場面である。でっち上げの戦争を仕掛けておきながら「テ
ロリストたちよ、かかって来い！」とニヤニヤして叫ぶブッシュ大統領の姿である。そ
の悲しみと怒りに私の心は振るえ、涙があふれ出した。
小泉さん、ブラジルの日系人の前で涙を流すのもいいだろう。しかし「華氏9･11」を
是非見て欲しい。見たくない映画だからこそ眼を凝らして見て欲しい。いまも激しさを
増して続いているこの不当な戦争の犠牲となって死んでいく市民の悲しみに思いを馳
せ、金と権力のためには大量殺戮も平気で行う強権政治に憤り、私と一緒に泣いて
欲しい。自分の感動の為ではなく、無益な戦いで死んでいく若者たちの悲しみの為に、
人を自爆テロに追い詰めていく絶対的暴力への怒りの為に。
◇◆ 核不拡散と日本の決意 ◆◇
核拡散についての記事が連日新聞に出ない日はないくらいだ。パキスタンのカー
ン博士の発言で核の闇市場が存在することが明らかになって以来、北朝鮮、イラン、
リビア、南アフリカ、イスラエルといった国の間の人的、物的、技術的裏取引が次々と
指摘されるようになった。ついに韓国までも核開発を重ねていたという事実まで明ら
かになった。
15日のワシントン発時事によれば、米シンクタンク「不拡散政策教育センター」は、
イランの核兵器開発に関する報告書において、イランが今後1年から4年以内に核
兵器を保有する可能性があること、イランが核保有国になった場合、近隣諸国の核
開発を促しテロ支援を強化するおそれがあると警告している。米国はイランの核疑惑
を安保理に付託すると最後通牒をほのめかせている。
そのようなニュースに加えて又一つ興味深い記事が16日付の朝日新聞に掲載さ
れていた。地球儀と題するコラムにおいて筆者の武石英史郎氏は次のようにパキス
タン政府の核兵器とわが国の援助政策の問題点を指摘している。
「・・・パキスタンの独立記念日(8月14日)の直前、川口外相がイスラマバードを訪
れた。その際、川口外相は核実験で科した制裁のうち最後まで止めていた新規円借
款をついに再開、政府途上国援助を実験前の水準に戻すと表明した。一方で「被爆
国として、核不拡散条約、包括的核実験禁止条約加盟をパキスタンに期待したい」と
述べた。
しかしパキスタンのカスリ外相は川口外相の隣で「インドと3度戦争を行った恐怖
を国際社会は理解しなければならない。(加盟を)パキスタンに期待するのは非現実
的だ」とまくしたてるだけだった。「核兵器は宝、手放すまい」。首脳から庶民までの共
通した思いだ。核の闇市場問題のほとぼりも冷めない中、核兵器用ミサイルの実験は
三回実施された。日本の外務省が毎回遺憾声明を出したが、パキスタンはことごとく
無視してきた。
川口外相の訪問後、現地紙ナワイワクトは「日本は自身の歴史に学べ」と題した社
説を掲載した。「日本が核武装していたら、原爆を落とされずにすんだ。パキスタンは
その歴史から学び、核開発を選んだのだ」
このように唯一の被爆国である日本と核保有国パキスタンの歯車がまったくかみ
合わないまま、もうすぐ辞めていく川口外相のパキスタン外遊の手土産として、外務
官僚はパキスタンへの円借款の再開を決めた。日本は本気で核不拡散に取り組ん
でいるのか。「広島、長崎の悲劇は二度と起こさせない」という言葉がむなしい。
http://homepage3.nifty.com/amaki/pages/ns.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。