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(回答先: Re:食卓の向こう側・第4部 輸入・加工知らない世界<10>米改良剤 おいしければいい?【西日本新聞社】 投稿者 天地 日時 2004 年 11 月 08 日 14:29:22)
食卓の向こう側・第4部 輸入・加工知らない世界<9>減塩信仰 減った分、増えたもの
20041030付 朝刊掲載
http://www.nishinippon.co.jp/news/2004/shoku/shoku5/09.html
昔ながらのやり方で梅干しを作る大分県大山町の農家
「減塩」「甘塩づくり」―。そんな宣伝文句の商品が並ぶスーパーの漬物売り場。
試みに、日本最大の梅の産地・和歌山県でつくられた梅干しを手に取った。塩分7%をうたう「うす塩味梅干し」(二百四十グラム、五百二十二円)のパックには次のようなラベルが印刷されていた。
名称=調味梅干。原材料名=梅(中国産)、食塩、還元水あめ、醸造酢、アミノ酸等、甘味料(ステビア)、酒精、ビタミンB1、着色料(赤色102号、黄色5号)
昔ながらに塩とシソだけで作られた梅干しは、少数派。「開封後は要冷蔵」とただし書きされた製品さえあった。
わが国伝統の保存食、梅干し。一体いつから、冷蔵庫での保存が必要な食品になったのか。
× ×
白砂糖、精製塩、白米の取りすぎが、高血圧など健康に悪影響を招く原因という「三白の害」が唱えられ始めた一九八〇年代初頭。当時、添加物商社に勤めていた高木吾朗=仮名=は、それを逆手に「減塩で、ひともうけできないか」と研究に没頭した。
通常、梅干しには、梅の重量の15―20%の塩分を使う。その役割は、(1)保存(防カビ)(2)色落ち防止(3)食感保持―の三つだ。減塩には、これらの役割を、ほかの何かで肩代わりするテクニックが必要だった。
高木は、まず、アルコール添加とpH(ぺーハー)調整剤の使用で防カビ効果をカバー。色落ちを酸化防止剤で防ぎ、歯触りが良くなるリンゴ酸ナトリウムで食感を補った。食塩は、その一部を塩化カリウムに代え、塩分濃度を従来比で三割減らした。
だが、これだけでは、塩辛さはほとんど変わらない。そこで、甘草(かんぞう)、ステビア、サッカリンなどの甘味料を加えてしょっぱさを抑え、人間の舌を「塩分が半減した」と錯覚させることに成功した。高木は、このテクニックを漬物にも応用。“減塩商品”はヒット商品になった。
消費者ニーズに応えた商品開発。だが、それは消費者にとってもろ刃の剣でもあった。すっぱく、しょっぱかったからこそ、ほどほどで満足していたものが、口当たりが良くなったため、いくらでも食べられるようになったのだ。「売り手は歓迎だが、消費者は結局、塩分を控えるつもりで総摂取量を増やすことになる」(高木)。さらに、減塩の代償として、従来の梅干しにはなかった多くの添加物まで摂取することになった。
× ×
一面的な事実を根拠に消費者の危機感に訴え、別の商品を勧める。こうしたやり方が成り立つ裏には「『がんに効く』、あるいは『これは危ない』といった“あおり商法”がある」。自らの経験を踏まえ高木は言う。
梅干しは日本人の知恵だ。おにぎりに入れれば保存効果がある。胃腸薬代わりに海外旅行に持参する人も少なくない。
かつて六月ともなれば、塩とシソで梅干しを作る光景が、どの家庭でも見られていた。それが今、梅干しは「店で買うもの」に変化。メーカーが消費者に買ってもらえるように“技術”を振るった結果、本来の梅干しには似て非なるものが、店頭に並ぶようになった。
健康不安を避けるために、減らしたように見えて、実は増えたもの。そして、簡単・便利になって手に入れたものと、失ったもの。「消費者ニーズ」は、私たちの暮らしを、どこへ導こうとしているのだろう。
◇
▼三白の害 ミネラル分や食物繊維など、本来その食品が持っている成分が精製で失われ、結果的に摂取不足になることを指す。白米、白砂糖、小麦粉、精製塩、化学調味料などのうちの三つ。例えば、一般的に出回っている精製塩は塩化ナトリウム(NaCl)の純度が99・9%だが、海水から作った海水塩には、数十種類のミネラルが含まれている。