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(回答先: Re:食卓の向こう側・第4部 輸入・加工知らない世界<9>減塩信仰 減った分、増えたもの【西日本新聞社】 投稿者 天地 日時 2004 年 11 月 08 日 14:33:20)
食卓の向こう側・第4部 輸入・加工知らない世界<8>マジック 「本物」との思い込み
2004/10/29付 朝刊掲載
調合次第でいろいろな味が作られる
テーブルの上に、白い粉が入った約百個の容器が並ぶ。「では、とんこつラーメンを作ります」。福岡県内で開かれた講演会。壇上に立った高木吾朗=仮名=はワイシャツの腕をまくった。
容器から粉を目分量で小さじにすくいボウルに入れる。塩二グラム、続いて化学調味料、マトンや大豆を塩酸などでアミノ酸に分解したタンパク加水分解物。風味を出すポーク、チキンなどのエキス。ブラックペッパーにニンニク・タマネギ粉…。
ここからが見せ場だ。スープを「長浜ラーメン風」に白濁させる脱脂粉乳、もう一口飲みたくさせるため、しつこさを抑えてさっぱりした後味にする酸味料、甘草(かんぞう)、とろみを出す増粘多糖類。
最後に薬味のゴマ、ネギを添え、二百ミリリットルのお湯を注ぎ完成。白い粉で瞬く間にできたスープは、まさに「インスタントラーメン」の味だった。
「この配合からポークエキスを除き、ニンニクエキスをまぶせばガーリック風味のスナック菓子。カツオエキスなら、だしの素(もと)。ベースはみな同じです」
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高木はかつて、商社に勤務。添加物を駆使して安い食材を提案するトップセールスマンだった。だが、そんな食品に舌が慣れ、人間本来の味覚が狂いかねないという添加物の負の側面を自覚。消費者に、その功罪を説く活動を始めた。
「おいしい味の組成に代替品でいかに近づくか。それがメーカーの思考」。高木は打ち明ける。 例えば酢。本来は、微生物が米のデンプン質を糖化させ酒にしたものを酸化させてつくる。通常は一年。いかにも長い。
そこで、「どうせデンプン質を使うなら安い小麦、トウモロコシでもできる」と材料を代替。あるいは、化学合成された廉価のアルコールから直接、酢をつくる。製造過程で微生物が醸し出すほのかなうまみ、風味は消えても、短期間で安い製品ができる。「ほぼ同じ味で、安いなら消費者も喜ぶ」。そんな発想だ。
一度口にしたら、再び買いたくなるように、味覚の研究にも力が入れられる。徹底した市場調査で売り込む年代層、消費者像を設定。口に入れた瞬間感じる「前味(まえあじ)」、飲み込んだ後の「後味(あとあじ)」、その中間の「中味(なかあじ)」を対象層の好みに合わせて調合。「やめられない」味のヒット商品を狙う。
仕上げは販売戦略だ。子ども用ミートボールなら、スーパーで親子連れの子どもをターゲットにする。販売員は子どもと同じ目線になるようにひざを曲げ、試食品を口に入れてやる。「おいしい」と言わせれば売り手の勝ち。母親は商品をかごに入れる。
「お母さんのおにぎりより、コンビニの方がおいしい」と言う子どもが増えている。「添加物まみれの食品でつくる家庭料理に、舌が慣らされるから」。高木はそう訴える。
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講演のフィナーレは、まさにマジックだ。コップの植物油脂と水に乳化剤を入れてかき回すと、あら不思議。一瞬で白い液体に。クリームらしくするためカラメルで着色し、増粘多糖類でとろみをつけると、コーヒーや紅茶に入れる“ミルク”が出来上がった。
「今まで本物のミルクと思っていたのに」。会場に驚きの声が広がる。しかし、メーカーは製品の大袋のラベルには、トップに「植物性油脂」と明記している。
問題は「なぜ、喫茶店などで使い放題なのか」を考えず、勝手に本物と思いこんでいた私たちの側にあるのだろうか。 (敬称略)
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▼原材料表示 加工食品の場合、記載される原材料名は総重量の割合が多い順に、また、食品添加物は原材料に占める重量の割合が多い順に記載することが、食品衛生法で定められている。さらに、原材料にアレルギー物質を含む場合は、「(原材料の一部に大豆、小麦、卵を含む)」のように併せて表示する。