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(回答先: 「ユーゴ空爆」を支持したスーザン・ソンタグに、キッシンジャーが知っている「知識人」という文脈で言及する意味は? 投稿者 傍らで観る者 日時 2004 年 7 月 04 日 20:06:06)
傍らで観る者さん はじめまして バルタンです。
ご明察のようにユーゴ内戦を想定して書きましたが、ちょっと力尽きて前レスで
展開できませんでした。切るなら切るでばっさり落とせば良かったのですが構成力
に欠けるもので、別レス律さんにもご迷惑をかけたと思っています
スラヴォイ・ジジェクが浅田彰との対談で言っていましたが
「セルビア人がボスニアでやっていることは集落ごとにモスリムたちを一箇所に集め
幼い子どもを家族の目の前でレイプする、次に子どもの目の前で両親の眼をえぐり出して
耳を切り落として殺すというのが一般的な手順だった」ということです。もちろん
ジジェクは「信頼すべき情報によれば」と断っていますが。
浅田は「もちろんモスリムも残虐な報復行為を行っている」としたうえで
「セルビア人の血を広める為、文字通り『民族浄化』としてのモスリム女性に対する
集団レイプにより一万人以上が妊娠した」ことについて語っています。
ジジェクの非難はアメリカのダブル・スタンダードにも向かいます。湾岸戦争などと
比較にならない小規模の軍事介入、あるいは経済制裁でも悲劇はとめられたかもしれないと。
ソンタグの「空爆支持」が上記の様な「例外状況」のなかでの発言であることは記憶に
とどめる必要があります。
ダブル・スタンダードはアメリカだけではありません。ヨーロッパも「権力の空白」を
恐れたのです。カオス=難民流入よりどんな政権でもあるだけまし、それが最悪のもので
あってもです。「歴史的に複雑な事情があり、どちらかに加担する安易な正義は語るべき
ではない」という言説が動員されたわけです。
そもそも冷戦の終結により「歴史の終焉」がやってくるはずが、なぜ地獄の釜の蓋が
開いてしまったのか。ジジェクは「まさにヨーロッパの「内」と「外」を巡る争いで
あった」といっています。「内側」に残れれば繁栄のお裾分けにあずかれるが「外側」
なら奴隷市場ですから。そのためには等質性が要求され、根拠として「古い衣裳」が
持ち出されたに過ぎないわけです。
ソンタグの「サラエボでゴトーを待ちながら」は柄谷が主宰していた「批評空間」に転載
されたので読んだ覚えがあります。
当時のヨーロッパの「ポスト・モダン」な知識人の反応は「イラク人質バッシング」と似た
ようなもので「正義」や「理念」を嘲笑して「行って死んだら自己責任だ」(笑)
キッシンジャーはジジェクが言ったような文脈で「複雑な背景があるのだから単純な正義は
振り回すな」と批判したのですが、私はキッシンジャーの様な超エスタブリシュメントな
「知識人」がよくソンタグのものに眼を通しているもんだと「感心」したのですが、実は
セルビア企業のエージェントをしていたわけです。(苦笑)
アメリカ国内での反応はソンタグが「ボスニア政府の傀儡」と非難するものもありましたが
肯定する意見は「困っている人を助けるのはいい事じゃないか」というものだったわけです。
たしか柄谷がイェール大の客員教授になって滞米中に子どもが自閉症になったのですが
その時地域のボランテァの人たちが実に良くケアをしてくれたので「トランジェントの
人間になぜそこまでしてくれるのか」と聞いたら、答えが「この子が将来どこに行くかは
判らないがこの子にとって今が一番大事な時だから」 そこまでは良い、泣かせる美談ですが
その次に「アメリカ国籍をとりなさい」と言われたそうです。
これが「アメリカ的正義」というやつなんでしょう。
ケーガンが「ライフルマンが熊を追っ払う」隠喩でヨーロッパを嘲笑したとき、私は
「たぶん、ユーゴを当て擦っているんだろう」と思いました。「お前らきれい事ばかりで
アメリカに尻を拭かせてるくせに」ですね。まぁ目くそ鼻くそな話ですが。
結局はミロシェビッチを「悪玉」に仕立てて一件落着となったわけですが、所詮小物の
エージェントに過ぎなかったのは言うまでもありません。
ソンタグへのイラク戦争への「シュピーゲル紙」のインタビュー(コソボ内戦にも言及)
http://www.melma.com/mag/58/m00026258/a00000355.html
http://www.melma.com/mag/58/m00026258/a00000356.html
(ウオーラーステイン、ロイ、ローティなどの記事もあります)