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「空耳」での、中川八洋『正統の哲学、異端の思想』をめぐる一連の議論にたいする
自分のコメントの責任を取りまして、またあっしらさんの提案を受ける形で、いくつかの問題提起をしたいと思います。ことの発端になった同著の解説というよりは、同著の依拠した思想家の考えを、いくつか考えてみたいと思います。
まずは、イギリスの政治家・政治哲学者バークを取り上げたいと思います。彼は、フランス革命が勃発するまでは、どちらかといえばイギリスにおいては「反体制」的な人であった。アイルランドの自治を推進して政府と対立したり、インド総督へースティングスの不正を議会で追求したり、果てはアメリカ独立革命をも支持した。その彼が、しかしフランス革命に対しては、完全として否を唱えた。この世を去るそのときまで、フランス革命政府の打倒を訴えた。
では、なぜバークはフランス革命を批判したのか?バークは決して政治における改革を拒否するような頑迷な保守主義者ではない。改めるべきものは慎重にこれを修繕することをいとわない。しかし、明らかにフランス革命はそうした「改革」の枠を超えており、単なる「法の破壊」にしかならないとバークは見通していたのである。事実、フランス革命は何か成果を挙げただろうか?「革命は穏健派によって始められ、やがて急進派に移り、最後はひどい反動になって帰ってくる」という形式を歩んだだけではなかろうか。
バークは、イギリス人が長い歴史を経て育んできた「自由」な風土を愛していた。そうしたイギリスの伝統に即した「法」秩序が、イギリス人を国家の圧制からも守っていたのであり、フランスにおいて古き「法」秩序が破壊されるならば、そして国王であれ貴族であれ民衆であれ、彼らが法に拘束されない「権力」を掌握するなら、もはやそこに「真の自由」はないとバークは確信したのである。事実また、フランス革命はそうなった。
果たして、フランス革命が近代民主制に果たした貢献などあるだろうか?
参考文献:エドマンド・バーク、『フランス革命についての省察』(上・下)、岩波文庫。 エドマンド・バーク、『フランス革命についての省察ほか』(上・下)、中公クラシックス。