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(回答先: Re: 正統の哲学・解題@なぜバークはフランス革命を批判したか? 投稿者 あっしら 日時 2004 年 6 月 16 日 22:01:37)
>ざっと世界を見渡してみればわかるように、そのようなフランス革命が確立した政治>体制がもっとも“民主的”なものとして評価され、実際にも採用されています。
フランス革命が確立した政治体制とは、フランス二月革命をも体験し外相にも就任した歴史家・自由思想家がいうには、「超中央集権体制」であったということです。そして、議会がありとあらゆる権限を掌握したそうです。もし「民主的」という言葉が、「民衆の意志を議会に直接に反映させ、その意志を実行する」ということにあるならば、なるほどフランス革命は「近代民主主義」の原点であるように思われます。
ただ、そうしたフランス革命が確立した政治体制が“評価され”、実際に“採用されている”ということになると、バークが墓場から這い出てきそうなので(笑)、霊魂を鎮める意味でも、僭越ながら、バークになり代わって、彼の愛したイギリスの政治体制をフランスとの対比によっていま少し擁護してみたいと思います。
政治体制の変遷といえば、有名なのはアリストテレスの提示した「君主政」「貴族政」「民主政」の永遠の循環であります。君主制が堕落すると僭主政となり、この暴君を打倒して次には貴族政が成立し、しかしこの貴族たちもやがて堕落して寡頭政に移行し、次には民主政が成立するが、この民主政も堕落して衆愚政治に陥り、やがてこの混乱を収拾した有力なものが独裁者として君臨し、而して永遠の循環が続くと…。
イギリスの政治制度とは、基本的にはこれら3つの政体を併せ持ったものであると考えられます。つまりは、「君主制的」な「国王」、「貴族制的」な「貴族院」、「民主制的」な「庶民院」から構成される「混合政体」のほかなりません。自分は、これが理想的な政治体制であるとは思いませんが、しかしながら、モンテスキューの唱えた「三権分立」が非常に“妥当”なものであるように、このイギリスの混合政体も、非常に“妥当”なものであるように思われます。
フランス革命が身分制を打倒したということは、やはりその大きな成果の一つでありましょう。フランス革命がなければ、国家を構成する普遍的な一国民という概念は形成されなかったかもしれません。しかし、国民全員が現実に政務を直接に執るということは不可能であります。それゆえ、フランスの政体は共和政から王政、王政から帝政、帝政からまた共和政へと、転々としながら、結局はフラン革命が意図した政治体制ではなく、イギリスの政治体制を模倣したのではないでしょうか。
異論もあろうかと思いますが、アメリカの大統領はイギリスの国王の模倣であり、上院は貴族院の模倣であり、下院は庶民院の模倣であるようです(実際には、イギリスの国王の持っている権威に該当するものはアメリカでは最高裁であるという相違はあるが)。同様に、自分の記憶が正しければ、フランスか大革命の混乱を真に収拾し、安定した政体を樹立したのは第3共和政(間違っていたらごめんなさい)であったと思われます。この時に、フランスは革命の伝統である一院制を捨てて英国式の二院制を採用します。現在、フランスの上院は非常に「非民主的」であります。確か直接選挙ではなかったはずです。こうなると、やはりイギリスの政治制度のほうに「普遍性」があるように思われます。
バークは人間の「理性」や「知性」には限界があると考えていました。だからこそ、歴史的に「有効」であると証明されたものを大事にした。逆に、歴史的に「有害」であると証明されたものは避けようとした。大胆にイギリスとフランスの政治史を概括するならば、前者は「経験主義的」であり、後者は「合理主義的」であるように思われます。
☆「革命」について、もうすこし突っ込んだ議論をしたほうがよいようなので、次回はフランス革命とアメリカ独立革命とを比較したアレントを取り上げたいと思います。