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Re: 正統の哲学・解題@なぜバークはフランス革命を批判したか?
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投稿者 あっしら 日時 2004 年 6 月 16 日 22:01:37:Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: 正統の哲学・解題@なぜバークはフランス革命を批判したか? 投稿者 竹林の一愚人 日時 2004 年 6 月 16 日 14:42:50)


竹林の一愚人さん、どうもです。
要望にお応えいただきありがとうございます。

まず、バークの『フランス革命についての省察』は引用という間接的なかたちでしか知らないことをお断りさせていただきます。


>果たして、フランス革命が近代民主制に果たした貢献などあるだろうか?

大いなる皮肉を込めてではありますが、フランス革命は近代民主制に大きな貢献をしたと考えています。

最大の貢献は、人々を“抽象的な一国民”として位置付けたことだと思っています。

古代アテネや古代ローマの共和的民主政は市民―奴隷(非市民)という生々しい現実構造のなかで確立されたものですから、そこで政治に関わった市民は、大土地所有者(=奴隷所有者)や自営農民であって、“抽象的な一国民”ではありません。

フランス革命は、奴隷(自己の生存に最低限必要な物的手段を非所有)をも“国民”として政治に参加させる政治体制を確立したことが最大の貢献です。

ざっと世界を見渡してみればわかるように、そのようなフランス革命が確立した政治体制がもっとも“民主的”なものとして評価され、実際にも採用されています。

アイルランド人のバークが賞賛した英国も、立憲君主制とは言え、現在の民主制はそれほどフランスから離れたものではありません。
(議院内閣制と大統領制を差異性としてどこまで評価するかという問題は残ります)


奴隷が奴隷であることを失念し国民として生きている現実、これほど、政治的支配者にとって好都合な現実はないと私は考えています。

(日本でよく見られることですが、将来役員にもなれそうになりサラリーマンが経営書を読み、会社の利益を云々している姿を思い浮かべていただければ重なるものがあると思っています)

>明らかにフランス革命はそうした「改革」の枠を超えており、単なる「法の破壊」に
>しかならないとバークは見通していたのである。

この部分は、法とは何か、法は何に由来するのかといった近代政治哲学の永遠のテーマになるので簡単に書かせていただきます。

人がつくる実定法が権力機構によって尊重されているのならそれが法だという観点に立てば、「法の破壊」は旧権力機構の実定法を破壊したに過ぎず、新しい実定法をつくったと言えます。

新しい実定法の内容がある人にとって気に入るものか気に入らないものかは「思想」の問題ということになります。

ただし、法の短期間での全面的な改定は、社会を混乱を陥らせることになるという“保守主義”的理解は納得の範囲にあります。

ハイエクの言う“自生的秩序”と整合性の取れない“法”が施行されることで生じる混乱は大いなる悲劇です。(そのために、虐殺を含む強制力の行使も横行することになります)


> バークは、イギリス人が長い歴史を経て育んできた「自由」な風土を愛していた。
>そうしたイギリスの伝統に即した「法」秩序が、イギリス人を国家の圧制からも守っ
>ていたのであり、フランスにおいて古き「法」秩序が破壊されるならば、そして国王
>であれ貴族であれ民衆であれ、彼らが法に拘束されない「権力」を掌握するなら、も
>はやそこに「真の自由」はないとバークは確信したのである。事実また、フランス革
>命はそうなった。

オルテガは、「大衆の反乱」でフランス革命にふれ、堕落した貴族層を罵倒しながらも、革命政府は“社会”を一顧だにしなかったのに対し、国王や貴族層は“社会”のことをいつも気にかけていたといった趣旨を書いています。

(これについては、自分たちが心地よく生きていく支えが“社会”なのだから、金づるのご機嫌伺うのと同じで当たり前だと応えておきます。ただ、だからこそ漸進的改良は可能だと反論は受け容れます(笑))

「自由」とは何か?という、これまた深遠なテーマに関わる点もありますが、「自由であるためには、生存できる最低限の物的手段を排他的に保有していることが最低限の条件である」としておきます。
(バークの時代の英国・アイルランドにそのような自由な条件を手にしていた人がどれほどいたのかという問題提起です)

>事実、フランス革命は何か成果を挙げただろうか?「革命は穏健派によって始められ、
>やがて急進派に移り、最後はひどい反動になって帰ってくる」という形式を歩んだだ
>けではなかろうか。

「革命」という言葉が、「天“命”が“革”(あらた)まる」という中国語に由来する訳語であることが混乱の一つの要因だと思っています。
(本来の「革命」は、社会国家構造の根底的な変更ではなく、天命で就いているはずの皇帝(最高権力者)が天の支持を失ったことによる権力者交替を意味する)

なぜ、このようなことを持ち出したかというと、「革命は穏健派によって始められ、
やがて急進派に移り、最後はひどい反動になって帰ってくる」という洞察がそれに関わっていると考えるからです。

“自生的秩序”でも“天命”でもいいのですが、それを超えた急進的変更は、それ(“自生的秩序”)によって引き戻されてしまうという歴史が「反動」を指しているのだと思っています。

フランスは、王政復古の動きもありましたが、大統領を国王とする国益主義国家で落ち着きをみました。(フランスは今でも偉大な農民国家です)

ロシア革命後のソ連は、「共産党官僚専制ロシア帝国」に落ち着き所を見出すことになりました。(今では、「大統領を皇帝とするロシア帝国」とさらに“反動”的な落ち着き所を模索しているようです)


フランス革命は、「思想」を権力的にでも現実化させようとした思想に悪の根源があると思っています。(権力と一体化した啓蒙主義です)

そして、それは、ロシア・ボルシェヴィキ革命にも通じるものです。(権力で実現しようとした共産主義)

さらに言えば、革命の旗振りをした人たちはともかく、実働部隊として革命を担った人々はあふれんばかりの善意に衝き動かされていたことが、最大の悲劇であり何よりの教訓だと思っています。


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