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Re: 日本の取るべき戦略 その2
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投稿者 岩住達郎 日時 2004 年 6 月 06 日 06:07:39:TcNSd0ZB71Ujg
 

(回答先: Re: 日本の取るべき戦略 その2 投稿者 岩住達郎 日時 2004 年 6 月 06 日 06:06:09)

14.幸福指標の概念

それには先ず最も重要な定義である、人間の幸福とは何か、を確定せねばなならない。一般に使われている「幸福」とは心理的、倫理的要素と物質的要素を含んでいるから、先ず幸福を「定性的幸福」と「定量的幸福」を定義する。定性的幸福は恋愛中の人には最高値を示すだろうし、愛する人を亡くした人では最低値になるだろう。この様な主観的感情的な要素は国の政治経済とは関係が無いので、幸福指数に組み込むのは不適当である。従って、以下では幸福指数は定量的幸福のみ扱う事にする。この定量的幸福は更に二つの要素に分解され、一つは収入と支出に関する貨幣要素と、もう一つは一日24時間をどの様に配分するかに関する時間要素になる。

幸福指標を造るに当たり二つの考え方がある。一つは色々な幸福を定義する諸項目を集計するのに距離の概念を使う方法と、もう一つは諸項目に重みを掛けて単純集計する方法である。即ち、第一の考え方では、
N次元距離= √Σ(Ai)²、 i = 1, 2, ....N

このままでは諸項目が同じ重みなので、
加重N次元距離= √Σαi(Ai)²、 i = 1, 2, ...N

として重みαiを政治的調整係数とする。

加重N次元距離を幸福指数にするのは、重みを勝手に幾らでも大きく取れるので、適当でない。世界の資源は有限であり、国の富みも有限である事から、基準化を導入する。即ち、
Σαi = 1、及び ΣAi = 1

基準化によって加重N次元距離は常に半径1のN次元球の中に存在し、基準化前の最大値は基準化後の最小値に相当する。従って、基準化された加重N次元距離から幸福指数を定義するには逆数に変換する必要がある。

第二の考え方ではN次元距離では無く、一次元距離を使う方法で、上の式で√と諸項目の二乗が無くなる。基準化によって一次元距離が1以下になるのはN次元距離の場合とおなじである。

以下ではN次元距離を使った場合について述べる。

14ー1.貨幣要素

人間の幸福感を支配する消費活動事項を並べると、食事(E)、家族(F)、余暇活動(H)、仕事(W)、貯蓄(S)に大別される。故に
消費(C)= E + F + H + W + S

これを無次元化する為に両辺をCで割って、
1 = E/C+ F/C+ H/C+ W/C+ S/C

とし、食事比(e=EC)、家族比(f=F/C)、余暇活動比(h=H/C)、仕事比(w=W/C)、貯蓄比(s=S/C)、とそれぞれ名付ける事にする。ここで消費の定義は生活に使った貨幣の総額で、その出所は問わない。また貯蓄は預け入れのみで引き出しは0として扱う。又、資産総額は考慮に入れない。勿論、これら以外に社会によって環境とか宗教とかお祭りが重要ならば適宜に項目を追加すれば良い。此処では概念を説明するために最小限の5種類に限ってある。

個人の支出はその人の好みや価値観により大きく異なる。例えば浮浪者や食道楽の人は食事比が1に近づき、守銭奴の人は貯蓄比が1に近づく。こういう社会の基準からはずれた人達も含めて、国民性を反映した常識的な配分が統計的に決まる。この統計的測定値を元にして国民の価値観に応じた理想的配分値に近づく様に政策を立てようというのが基本的な考えである。

それにはこれらの配分比に「重み」を掛け、集計した物を貨幣指標と定め、それを上に述べた理由で最小化する事になる。ここで一番肝心な事は、重み(以下係数と呼ぶ)は国会の審議で決定し、官僚や中央銀行が自分達の都合の良い様に勝手に決める事は禁止される。これが数理民主主義の基礎となるものである。即ち、貨幣要素から成り立つ貨幣指標(M)は
M = √[αe² + βf² + γh² + δw² + εs²]

ここで、αは食事係数、βは家族係数、γは余暇活動係数、δは仕事係数、εは貯蓄係数である。これらの係数をどの様に定義するかは後述するが、基本的にそれぞれの分野での産業が国の経済活動の何分の一になるかに依って決まる。

上に述べたようにMは半径1のN次元球の中に存在するので、Mは0と1.0の間の数値を取る。この指数Mは五つの活動項目(αe²、βf²、γh²、δw²、εs²)のどれかに偏ると数値が上昇し、五つの項目が全体に平均すると最低値に近づく性質がある。

此処で解るように、経済活動は分配比で表され今までの様に通貨の絶対値では無い。従って、通貨的経済が縮小しても国民を一層幸福な生活が出来る政策が取れるわけである。

14−2.時間要素

時間の配分についても上に似たような配分を考え、食事時間比(e')、家族時間比(f')、余暇活動時間比(h')、仕事時間比(w')、睡眠時間比(s')と分類する。ここで病気の時間は睡眠時間として扱う。前と同様に国民の時間配分を統計的に調べ、これらに重みを掛けて時間指標とする。即ち、時間要素から成り立つ時間指標(T)は
T = √[ζ(e')² + η(f')² + θ(h')² + ι(w')² + κ(s')²]

と表され、ζは食事時間係数、ηは家族時間係数、θは余暇活動時間係数、ιは仕事時間係数、κは睡眠時間係数、となる。これらの係数はそれぞれのサービス業が国の経済活動の何分に一を占めるかによって決まる。従ってκには国民医療費の要素が含まれる。Tも0と1.0の間の数値を取るが、五つの項目が全体に平均すると最低値に近づく。

国民幸福指標の構成
上のように貨幣指数と時間指数が決まると、国民幸福指数(NHI)は
NHI = 1/(M×T)

で定義される。NHIが逆数になる理由は、人は心理的に最小値よりも最大値を好むからである。MとTの和でなく積になっている理由はこの二つの要素の論理積が幸福に繋がるからである。この指標の構成原理から分かる様に、NHIはこれから日本の人口が減少しGDP値が下がっていく様になっても、日本人の生活満足度つまり生活水準が上がるにつれて上昇して行くから、今の様に経済の量的拡大のみを追求するあまり物理的破局に猪突猛進し、貧富の差が拡大し、結局生活水準を低下させる事態は起こらない。又、国民の総意は係数の選択に反映され、政治家と官僚は与えられた制約のなかで如何にしてNHIを最大化するかという仕事をする事になる。

14−3.重み(係数)の定義

上の指標の各項に掛けた重みにはその項目の経済活動を表す数字が入るが、係数を決める基本的な理念はその項目に費やした国民の努力が全体の努力(GDP)の何分の一になるかという事になる。指標は貨幣と時間に分けてあるので、GDPも製造GDPとサービスGDPの二種類に分割せねばならない。業種によっては製造とサービスの両方に跨っているから、どの様に生産を分類するかによって計算がいくらか左右される。この分類は経済学者を集めた委員会の仕事になる。

係数の簡単な例を示すと、もし日本で食料の生産を全部止めて輸入食品のみ食べる場合はα=0になる。しかしα=0でも食事産業に携わる人々のサービスはあるわけだから、そのサービス業からの貢献度が例えばサービスGDPの10%ならζ=0.1になる。故に、将来の政策を決めるに当たって、現在の係数から望ましい係数に変えるには政府の政策をどうすれば良いかと云う議論になる。もしα=0になれば当然Mの第2項から第5項迄の数値が上がり、結果的にNHIが下がるので、過度の外国食料品への依存は国民にとって良くない事が分かり、自国生産を奨励する政策を立てる事になる。

もう一つの例として福祉医療費がGDPの大きな割合を占める場合を考えると、εとκの値が上がる為にNHIが下がってしまうから、病気の人には気の毒でも国民全体の幸福の為に福祉医療費を下げる政策を採る事になる。更に、NHIは政治家の利権行為を防止するにも役立つ。政治家は選挙民の人気取りの為には大多数を犠牲にしてでも一部の人を優遇しようとする強い傾向があるが、差別待遇が数値の下落として現れ、国民の詮索を受ける事になるからである。

14−4.国民統計を取る方法

どんな統計でも結果の信頼性は如何にして標本を取ったかで決まる。政治家や官僚の思惑通りに結果を出すために標本を操作したのでは初めからやらない方がましだ。標本の対象は家庭の支出に責任を負う人に限り、以下では標本を正しく無作為に取ったものとして話を進める。

NHIを計算するには標本として選ばれた人から毎日10の数値を報告してもらう必要があり、それには家計簿をきちんとつけるだけでなく、時間もきちんとつける事が要求される。いくらお国のためとは云え几帳面に毎日の生活を紙に書き残す事は誰でも嫌がるからもっと楽にしかも正確に記録を残す方法を考えねばならない。それには腕時計型の特製集計器を政府が提供し使用者は朝起きてから夜寝るまでの日常生活のデータを打ち込んで貰い、政府は毎月一回無線の遠隔操作でデータを読みとる。

腕時計型の集計器の良い所は実時間で生活の記録を取れるところにある。例えば、買い物をすればお金を払った時点で金額を自動的に書き込む様に出来る。全て実時間で記録されるから、インチキをして後でまとめて書き込む様な事をすると直ぐにばれてしまう。

勿論、使用者には回収したデータ中の有効なデータに応じた料金を支払う。空隙の無い完全なデータを提供した人に月3万円くらいの料金を払うのが適当であろう。こういった統計を取るには守秘性が最も重要であるから、使用者は番号だけで示し料金受け取りもその番号と暗唱番号で行う必要がある。

この様にして集めたデータは有効な物を自動的に選別し、毎月公表される。この際、政府が調査結果を自分達の都合の良いように改竄するのを防ぐため、生のデータをインターネット上で公開させる。
(続く)

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