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http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004052700029&genre=C1&area=K00
「パラダイス。欲しいものが何でも手に入る」。ガンダムとビジュアル系の音楽が好きな少年(19)にとって、ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」は、夢のような世界だった。ゲームも音楽も何でもただ。送受信はすべて暗号化され、絶対にばれないはずだった。すっかり魔力に取りつかれていた。しかし、予期せぬ事態は突然やって来た。
昨年11月27日の早朝、松山市内の少年の自宅に京都府警の捜査員が大勢やって来た。身に覚えがなかった。しかし、ウィニーという言葉を聞いて「ああ自分なんだ」と分かった。著作権法違反の疑いで逮捕され、約3カ月後の3月5日、京都地裁で懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた。任天堂のゲームのデータを、他のウィニーのユーザーが自由に取得できるように放流(アップロード)したことが罪に問われた。
「ウィニーは、放流すればするほど、(自分の欲しいアニメや音楽の)データが取り込みやすくなる。だから、みんな放流する。そんなバランスも考えてある」。現在は釈放され自宅で過ごす少年は、ウィニーを「法律の穴をかいくぐってできた素晴らしいソフト」だと、今も思っている。
ネット上で「47氏」と呼ばれていたウィニーの開発者の東京大助手(33)が、著作権法違反ほう助の疑いで逮捕されたニュースは、テレビで見て知った。「捕まえ方はちょっと強引。47氏は現在の著作権法がだめで変えるべきだという意識を持っていたので、その意見を貫いてほしい」。
ウィニーの詳しい仕組みは、開発者を除いて、大部分の人たちが分かっていない。ウィニーで映画の画像データを放流したとして、少年と同じ著作権法違反で逮捕された群馬県の会社員(41)は、京都地裁で「ウィニーは、ファイル共有ソフトであることぐらいしか知らなかった。著作権を侵害したかどうかは分からない」と述べた。
初期ノード、IPアドレス、キャッシュ…。高度な専門用語が飛び交う会社員の公判。証人に立った京都府警の捜査員は、3台のパソコンをつなげてウィニーの動作実験を行った状況を説明するなど、捜査の万全性を強調した。しかし、弁護側がウィニーの詳しい構造を問いただすと、検察側が「構造が分ってなくても、みんなテレビを使っているでしょ」と切り返した。
被害額13億8000万円。検察側は、少年が違法にゲームソフト26本をネットに放流したことで、ソフト会社が被った額を算出した。途方もない数字に、少年は「算出方法がよく分からないが、損害賠償を請求されたらどうしよう。拘置されている間に、母が自宅の電話を解約してしまった。反省はしている。けど、またウィニーを使いたい」とつぶやいた。
▽何を変えようとしているのか
情報の発信者も受け手も暗号化されたファイル共有ソフト「Winny」の開発者である東京大助手が、京都府警に著作権法違反ほう助容疑で逮捕された。ソフト開発者の立件は世界でもほとんど前例がなく、ネット社会やソフト業界、法律関係者の間で激しい議論になっている。ファイル共有ソフトが切り開く世界は従来の社会に摩擦を起こし、何を変えようとしているのか。デジタル著作権を取り巻く状況と事件の背景を追った。