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JWAVEの夜の番組「ジャムザワールド」のなかで、スペイン新政権がイラクからの条件付撤兵を打ち出したことを「スペインはテロに屈した」と見るかどうかという設定でリスナーに意見を求めるコーナーがあった。
多数派ではないが、「スペインはテロに屈した」と見る人もいた。
3・11マドリード列車爆破テロの“真相”はおくとして、スペイン新政権がイラクからの条件付撤兵を打ち出したことが「スペインはテロに屈した」につながるという思考そのものが理解(容認)できない。
たとえば、スペイン政府が、あのテロを契機にテロリストの要求を容れて政策を変更したというのであれば、「スペインはテロに屈した」と言うのは正しい。
表現として正しくても、「テロに屈した」ことが間違いだとは言えない。
治安を強化してテロを防止できる自信があるのなら別だが、それができないと判断して国民の犠牲を避けるために可能な妥協策を選択するのは、私にとっては合理的で正しい判断である。逆に、いきがって、いつどこで多くの人が殺されるかもわからない状況を続ける政府は愚かでその名に値しないと思っている。
ところで、今回の政策変更でスペイン政府は「テロに屈した」と表現できる要素があるだろうか?
「テロに屈した」論を持ち出す人には申し訳ないが皆無である。
14日の総選挙で勝利した社会労働党は、米英のイラク攻撃及びイラク占領支配やそれに追随する国民党アスナール政権に反対し、政権に就けばイラクからの撤兵を含めイラク関連政策を変更すると訴えてきた政治勢力である。
その社会労働党が第一党になり政権を握ることになったのだから、公約通りにイラン関連の政策を変えるのが民主政治の基本である。
「テロに屈するな」と叫ぶ人がなぜテロに屈してはいけないと考えているのかはわからないが、それが国家の尊厳などに関わることであるのなら、テロがあったからといって公約を反古にすることをどう考えるのか聞いてみたいと思う。
社会労働党主力政権が3・11を踏まえて公約を反古にしたら、逆説的な意味で「テロに屈した」ことになる。(得体の知れないテロにはそういう目的が潜んでいる場合もある(笑))
付け加えるならば、新政権は、アスナール政権が対米英と合意した6月までのイラク駐留は継続すると言明し、国家として取り交わした国際的契約を尊重している。
現在までのスペイン新政権の言動を見聞きしている限り、「スペインはテロに屈した」かという設問そのものが意味のない頓珍漢なものということになる。
投票用紙に個人名や政党名を書くことしか意思表示ができない制度だから真意はわからないが、社会労働党が勝利したのは3・11をめぐるアスナール政権のデタラメな情報操作に多く拠っていると考えている。付け加えるならば、「テロとの戦い」を叫びETAやムスラムに強行手段を採って抑え込んだと豪語していながら、3・11テロをやらしてしまった無様な政権への愛想尽かしもあるだろう。
仮に、スペインの有権者がテロを恐れて社会労働党を選択したとしても、自分が守ってやれるわけでも代わりに犠牲になることもできないのだから、あれこれ非難がましいことを言うべきではない。
「テロに屈するな」と叫ぶ人たちは、米英政権がイラクにはテロリストが集結していると主張しているのだから、イラクに行って戦ってからそう主張したらどうだろうか。
かつては「人命は地球より重い」という“あやしげな”言葉が政府責任者から発せられ受刑者を解放した日本で、今度は「テロに屈するな」という無思慮で無責任な論が一般国民から抵抗感なく語られるようになったのかとその移ろいに嘆息している。
新聞で「テロに屈するな」的論調を掲げているものがあったので紹介させていただく。
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【主張】スペイン総選挙 テロにひるまぬ政策貫け [産経新聞]
スペインの総選挙で、イラク戦争を支持したアスナール首相の与党、国民党(中道保守)が事前の大方の予想に反して敗北し、イラクからの軍撤退を公約に掲げていた野党の社会労働党(穏健左派)が勝利した。社労党は、他の中道左派政党と連立を組み、八年ぶりに国民党から政権を奪還する。
アスナール政権はこれまでの二期八年間で失業率を半減させ11%とするなど、経済政策では実績をあげ、国内の非合法組織「バスク祖国と自由」(ETA)によるテロ活動にも強硬姿勢で臨み、支持を集めていた。
スペインは、選挙三日前の十一日に空前の列車同時爆破テロの攻撃を受けたが、テロ前に行われていた各種世論調査では、国民党が3−5ポイントリードし、同党の勝利がほぼ確実視されていた。このため、今回の社労党の劇的な逆転勝利は、同時爆破テロの影響を受けたと見るのが自然だ。
国際テロ組織アルカーイダによる犯行の可能性が出てきたことで、国民の間に、イラク戦争を支持したアスナール政権がテロを招いたという不安が生じたか。あるいは、当初、ETAの犯行説を強く打ち出していた政府に、国民の不信感が広がったためか。今後詳しい分析がなされよう。
しかし、選挙分析がどうあれ、スペインの新政権に求めたいのは、テロに屈したと見られる政策は断じて取ってはならないということである。公約のイラクからの撤兵も、無条件即時撤退ではあるまい。テロリストたちは今回、非道の手段を用い、対テロ戦に強硬姿勢を貫いてきた国民党政権を倒すことに成功した。これ以上、彼らに凱歌(がいか)を上げさせてはならない。
幸い、次期首相となる社労党のサパテロ書記長は、勝利宣言の記者会見で「あらゆるテロとの戦いを今後も絶対に最優先する」と語っている。スペイン国民もテロ事件翌日のテロ糾弾デモに全土で一千万人以上が参加し、テロに屈しない意思を示した。
今回のスペインの選挙結果は、七月に参院選挙を控える小泉純一郎政権、十一月に大統領選挙を迎えるブッシュ米政権にとって逆風となりうる。しかし、スペインの新政権とともに、テロにひるまない政策を貫くことがいま最も求められている。
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm