現在地 HOME > 掲示板 > 議論16 > 450.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: あっしらさんへお伺いしたいのですが、財政支出(ケインズ政策と国債発行)は本当に効果があるのでしょうか? 投稿者 オニオン 日時 2004 年 1 月 31 日 00:34:05)
オニオンさん、こんばんわ。
Q1:「財政支出は需要創出に効果があり、生産性の向上等があった場合は経済成長にも効果があると言う認識のようなのですが本当にそうなのでしょうか。」
A1:オニオンさんが書かれた「財政支出が増大しても元が税金や国債なら民間に有る金を引き上げることになってしまい結局総需要は変わらない」という状況は、経済成長に寄与しない好例です。
政府が政府や議会の都合でお金を使うのか、家計や企業がそれぞれの都合でお金を使うのかの違いでしかないので、GDP規模は変わりません。(どちらが将来の成長の基礎になるのかも不定です)
ケインズ主義政策の要点は、民間にあるお金が使われないときに政府がそれを借り上げて財政支出に使ってGDPの維持ないし拡大を計ることです。
(不況になると借り入れも低迷するので、需要(投資を含む)に向けられないお金が増加します)
民間にあるお金が民間ですべて使われるのなら、財政支出ではなく、他の政策でGDPを拡大させる必要があります。
Q2;「(ケインズの言う波及効果についても金が政府にあろうと民間にあろうと変わりないのでは?)」
A2:波及効果ないし乗数効果は、財政支出と民間支出でどちらが高いとは一概に言えません。
食品の需要を大きくするより、数多くの産業で生産される財を組み合わせて造られる自動車や建設の需要を大きくしたほうがGDPの拡大効果(波及効果ないし乗数効果)は高くなります。
現在は波及効果自体が小さく民間需要の拡大のほうがまだ大きいかもしれませんが、高度経済成長期は、建設を中心にした財政支出のほうが波及効果が高かったはずです。自動車を快適に走らせる道路がなければ自動車も売れません。
(今は、住宅を含む住環境の需要を拡大するのがいちばん大きな波及効果をもたらすと思っています)
また、鉄鋼や機械などの産業は乗数効果による需要の高まりで生産設備を増強したり生産性を上昇させると過剰供給力につながっていくので、輸出増加やさらなる支出拡大という条件を作り出せないと、デフレや不況という反動に陥ることになります。
Q3:「銀行が国債を買う場合についてもどうなのでしょう。このことについての知識が無くてわからないのですが、銀行が国債を買う場合それは信用創造に当たるのでしょうか?またそれが信用創造になるとしても国債を買うのは保険会社などの機関投資家が多かったと思うのですが、、」
A3:銀行が国債を買うための資金はいくつかの調達方法があります。
代表的なものが預金です。その他には、日銀からの借り入れと自己資金が考えられます。
預金で国債を買うだけでは「信用創造」にはなりません。政府が財政支出を行いそれを通じて利益を得た企業や家計が銀行に預金をし、そのお金を貸し出しないし国債購入に振り向けたときに「信用創造」になります。(“二重貸し出し”という詐欺的行為が「信用創造」です)
日銀から借り入れして国債を買ったときは、日銀が「信用創造」をしたことになります。(無からお金を生み出す詐欺的行為も「信用創造」です)
もちろん、政府支出のお金が銀行に預金として戻ってきて、そのお金を貸し出しないし国債購入に振り向けたときは、預金のときと同じように「信用創造」になります。
銀行の自己資金で国債を買ったときも同じです。
また、国債はノーリスク資産とみなされるので、貸し出し資産増加に寄与する点でも「信用創造」を補完します。
「信用創造」は、100兆円しかない現金が400兆円もあるかのように経済社会を動かすものですから、貸し出しがスムーズに行われ破綻もごく限定的なものであるのならGDP拡大に貢献します。
国債の主要な買い手である生保や郵便貯金は、片や預金がなく、片や貸し出しが限定されているという実情から、「信用創造」が行われないと考えたほうがよく、そこから国債→政府支出→銀行預金という流れを経て、銀行による貸し出しが行われた時点で「信用創造」が起きます。
Q4:「またリチャード・ウェルナー氏の「謎解き!平成大不況」の中に日本の90年代の政府支出と民間需要の関係を調べたグラフがあるのですが、信用創造や通貨発行を伴わない場合は両者には「マイナス1」と呼ばれる関係があることがわかります(政府支出が一円増えれば民間需要が一円減る関係です)。
やはり通貨発行や新規の銀行貸出(信用創造)を伴わない場合ケインズ的政策(財政支出)経済に対して効果が無いと思うのですが。
質問と言うより反論のような形になってしまったのですが、いかがでしょうか。」
A4:質問よりも反論のほうを歓迎します(笑)
「90年代の政府支出と民間需要の関係」が「マイナス1」という説明は、信用創造や通貨発行を伴わない場合という条件付ですから、そうなって当たり前と言えるものです。
100あるお金を、政府が51使えば民間は49で、政府がそれを52にすれば民間は48になり、政府が50に減らせば民間が50に増えるという話です。
おっしゃられるように、通貨発行(ベースマネー)や銀行貸し出し(マネーサプライ)が増加しない限り、財政支出を拡大しても大きなGDP拡大は達成できません。
ベースマネーが増大しても、マネーサプライが増大しない限り、GDPの拡大にはつながりません。(現状もベースマネーは増大していますが、それは国債購入に使われ、財政支出を通じてGDP落ち込みの下支えや銀行の利益増加に貢献しているだけで、マネーサプライの増加には寄与していません)
いちばんわかりやすい話は、財政支出を50兆円行っても50兆円しか需要が拡大しませんが、50兆円を原資に「信用創造」で貸し出しを行えば需要を200兆円増加させることができます。(逆に言えば、「信用創造」が活発に行われるのであれば、赤字財政出はその増加分未満で減らしていっても、GDPを縮小させないで済ませることができます)
しかし、現状の日本経済では、需要(=供給活動に投じるお金)の拡大と銀行財務の改善が同時的に達成されなければ、「信用創造」が活発化しません。
民間需要の増加(給与の引き上げ)を実現し、国有化につながるかたちでも銀行財務を改善することではじめて「信用創造」機能が復活することになります。
赤字財政支出を35兆円規模でだらだら続けるより、単年度に70兆円注ぎ込んで35兆円を不良債権処理(=銀行国有化)に使ったほうが短期的にも実がある政策です。
(翌年度から赤字財政支出を大きく減らすことができるとともに税収も大きく増大します)
最後に、私自身はケインズ派ではなく、財政出動はミニマムにとどめるべきだと思っています。
ケインズ派に対する批判は次の書き込みを参照してください。
『「匿名希望」氏へのレス:ケインズ的延命策の陥穽 《ケインズ主義は「近代経済システム」の“死期”を早めた》』
( http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/1118.html )