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Nobles Obligeについて --- マルハナバチさんへの返答
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/458.html
投稿者 戦争屋は嫌いだ 日時 2003 年 10 月 19 日 19:41:01:d/vusjnSYDx0.

マルハナバチさん

Nobles Obligeは非常に興味深い問題だと思うのでこのような形で別途投稿させてもらいました。

まず戦争におけるNobles Obligeですが、ご指摘のように戦争の近代化、電子化、機械化に伴って急速に非人間的要素が強くなり、現代では(特に米軍など先進国の軍隊では)兵器を担当する要員は兵士、というよりは電子技術者といった観がありますね。あれでは昔の戦場では貴重な資質とされた腕力や剛胆さよりは、マニュアルを正確に理解する能力の方が重要となっていることでしょう。まあ陸軍の第一線では若干状況は違うかも知れないが、フォークランド戦争で英国海兵隊のJones中佐がアルゼンチン軍のトーチカに突撃して、英軍戦死者第一号となったような場面は、これからは急速に減っていくことでしょう。

私はNobles Obligeはある社会の道徳水準の尺度だと考えています。日本の社会がおかしくなったのは真のエリート階級(金持ちとは限らない)と共に、Nobles Obligeの概念も喪失したことが背景にあると思います。日本にもかつては存在していたのです、白州次郎のような人物が。彼は貴族の家系に生を受け、ケンブリッジ大学留学後もブガッティのスポーツカーを取り回すなど、すべてにおいて恵まれた人間だったわけですが、「どら息子」にはならなかったのです。(この辺の経緯は「風の男白州次郎」(新潮文庫)に記されていますので、Nobles Obligeに関心があったら一読をおすすめします。)戦争中は神奈川の田舎に引っ込んで農業をやっていたようですが、戦後吉田茂に取り立てられて連合軍と交渉した際の鼻っ柱の強さは、爽快感を覚えるほどです。引退後は軽井沢ゴルフ倶楽部の理事長をしていたようですが、ここでも会員・客の都合よりキャディの健康を最優先した(これこそNobles Obligeの真骨頂!)彼の人間としての姿勢には強い共感を覚えます。(こういう人物が10年くらい総理大臣でもやってくれたら日本の文化・社会・道徳的状況は随分変わっていたであろう。)

白州個人の話は別にしても、日本の官僚も戦前ははるかにスケールが大きく清廉な人物が多かったし(広田弘毅を見よ)、軍人にしても海軍を中心として哲学を持ちそれを実践した井上茂美のような傑物を輩出しました。井上は非科学的な精神論を徹底的に排除し、人命尊重の哲学(勿論軍人であることと矛盾はするが当時の社会ではエリートが軍人を志向することはやむをえなかった)を貫いた人で、特攻攻撃を嫌悪していました。大将にまで昇進したものの、戦後は敗戦の責任感からすべての公職を固辞しています。晩年は田舎に引っ込んで地元の子どもに英語を教えて過ごしましたが、報酬をとらなかったため極貧の生活だった由。いや特攻隊生みの親である大西中将にしても、終戦を目前に自ら爆撃機を操縦して敵艦に突っ込み、大勢の若者を死に追いやった責任はとっているのです。これがエリートの美学というものでしょう。それにひきかえあの大勲位君や宮沢の往生際の悪さ!引退したら何もやることがなくなってしまう人間的貧困。胸が悪くなります。

そもそもNobles Obligeが成立する前提は王族を中心とした特権階級の存在です。(王には平時は贅沢三昧が許されるもののいざ戦争となれば真っ先に率先して戦う義務を負い、他の階級もその見返りとしての王の特権を是とした)が、世界的に19世紀的な意味で特権階級の代表であった王族・貴族階級が消滅しつつあることが根底にあるように思われます。日本についてもやはり戦後の1億総中流化が背景となっていると考えます。といっても何も平等になるのが悪いというわけでは勿論ありません。Nobles Obligeが消滅したとはいいますが、広い意味でのNobles Obligeは特権階級でない私達にも励行することが可能です。それは自分より弱い立場の者(ここには子どもとか動物も入る)に対する思いやりという程度の意味ですが、根底にある哲学は同じです。逆に相手が強いと見てひるみ、弱いと見て調子づく人もおり、現実の社会では残念ながらこの手の輩の方が多数派かもしれません。

もうひとつ欧米においてNobles Obligeの消滅に拍車をかけた要因がありますが、これはホントは言いたくない。ユダヤ人の高い文化水準を尊敬している一人としては、これを言って「反ユダヤ主義者」のレッテルをはられたくない。でも真実を追究するために敢えて心を鬼にして言いましょう。

ユダヤ人の勢力が台頭した社会はNobles Obligeが減退する傾向があります。それはNobles Obligeという概念は本質的にlocalないしnationalなものであるのに、ユダヤ人の存立は本質的にinternationalだからです。特権階級が非特権階級のために命をかけて戦うのは、両者とも地域に密着した長い歴史を持っていることが前提ですが、これはユダヤ人の生存様式とは本質的に相容れないものです。ある国で成功したユダヤ人がいつまでもそこに居るという保証はありません。ユダヤ人は基本的に経済合理性の導くままにどこでも居住可能な、いわばポータブルな民族だからです。さらに言えば全世界でポグロムに遭ったユダヤ人の精神文化には被害者意識が内包されている関係で、Nobles Obligeの前提である精神的余裕・慈悲の観念(これはユダヤ人同士にのみ適用される贅沢である)が欠けている面も指摘できると思います。

ウォール街など(特に第二次大戦後は)事実上ユダヤ人が築き上げてきたようなものですが、アメリカ人は「ジャングルと同じ無慈悲な世界だ。」と言います。そこではNobles Obligeなど敗者の哲学に過ぎません。じつにいやな社会だと思います。(ユダヤ人であるマルクスが資本主義を、実にユダヤ的な理念型だと批判しているのは皮肉である)。あのビル・ゲイツに誰がNobles Obligeを期待できるでしょうか?ああいう非倫理的な吸血鬼のような人物が成功者の代表格と見なされる社会に対して、私は軽蔑しか覚えません。

ところで英国にもユダヤ人は大勢いますが、ユダヤ人のidentityを保っている限り社会に本当に同化することはできません。(顔に剃刀を当てることを律法で禁じられた正統派ユダヤ人のあの三つ編みにしたもみあげ(!)で普通にオフィスに勤務できるだろうか?)逆にChristian Jewishと呼ばれる改宗ユダヤ人も大勢います。彼らは名前を見ればすぐにユダヤ系の出自がわかります(とはいえ母方がユダヤ人であった場合は名前からは全く判定できなくなる)。彼らの「ユダヤ度」は千差万別ですが、本当に地元に同化してしまった場合はもう自分をユダヤ人とは認識していません。かつての家主はSearleという典型的なユダヤ名を持つ人物でしたが、「何世代か前にはユダヤ人だったかもしれないけど、今はこの大きめの鼻と名前くらいしか痕跡はないね。」とのこと。こうなると価値観・道徳観・思考様式上も完全に英国人で、外見上もほとんど見分けはつきません。英国の社会同化力は非常に強いのでこういうケースは希ではありません。

問題は米国です。元来先住民族の殺戮と奴隷労働を基盤として建国された経緯があって、同質性(これもNobles Obligeの前提の一つである)が希薄なため、「財力・腕力のある奴が偉いのさ」のジャングル哲学が色濃く見られます。米国は実は社会同化力が言われる程強くない(だからこそ星条旗や国歌がそこらじゅうに登場して安っぽい愛国心に訴求する必要がある; 米国社会の最大の哲学は「金儲け」である)ため、Nobles Obligeなど端から希薄な社会だったのではないかと思います。とはいえ個人レベルでは、かつてポトマック河での飛行機墜落事故の際、川に投げ出された乗客の男性が、老女に救命具を譲って本人はおぼれて死亡したケース、に見られるようにNobles Oblige的資質を持っている人は少なくないとは思うのですが。

余談ですが上述した米国建国の前提としてのバイオレンスは、イスラエル建国の前提としてのテロ・バイオレンスと共通のメンタリティがあるような気がしてなりません。これが昨今のあの乱暴な複合体戦略の情緒的・精神的バックボーンとなっている可能性があります。「類は友を呼ぶ」です。

最後に知に偏するとやまいだれが付くという貴指摘は全く正しいと思います。健全な道徳観を基盤にもたない知、さらに言えば健全な体力の裏付けのない知もやまいだれの危険を常にはらみます。人間の脳も所詮は内臓など他の器官と同様、正常に機能する上で適正な血流に依存しています。全身が正常に機能していない状態で不十分な血流の下では、脳もろくなことを考えないようになります。思想とは結局一個の肉体というフレームワークの中に閉じこめられた精神の所産に過ぎません。「心技体」とか「健全な肉体に健全な精神が宿る」とか言うのは古今の真理です。Nobles Obligeの大前提が文武両道であることもこの真理の反映といえるでしょう。武道でなくても適正なスポーツを継続することはアプリオリに正しいことです。 ただこの理念は将来人間が人造人間化して行くにつれて、(現在のコンピュータの延長として人間の脳に匹敵、否それを凌ぐ人工頭脳の誕生はもはや時間の問題といえる)、必然的に大幅な変貌をとげることになりそうですが。

ところでマルハナバチは英語のbumble beeにあたるのですね。当方の屋上庭園にも夏の間は横綱級の、文字通り栄養満点でまるまるとした奴が朝食に来訪していました(ロベリアの花の密が好物のようですね)。和名があるところを見ると、日本にもいたのですか?私は蜜蜂・熊ん蜂くらいしか見たことがなかったが。

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