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(回答先: 薬害エイズ:安部被告の公判停止 高齢で心神喪失 東京高裁 [毎日新聞] 投稿者 あっしら 日時 2004 年 2 月 23 日 15:56:58)
500人を超える犠牲者を生んだ薬害エイズ事件で、血友病治療の「権威」に対する責任と真相を究明する道は、事実上閉ざされることになった。元帝京大副学長、安部英(たけし)被告(87)の東京高裁の公判が23日、停止された。96年8月の逮捕から2734日。1審の無罪判決を批判し、控訴審を見詰め続けてきたエイズウイルス(HIV)感染者や遺族は「ショックだ。やり切れない」と肩を落とした。【小林直】
元副学長の起訴事実となった事件で一人息子を失った母親は、ほぼ毎回、ハンカチを握りしめて最前列で傍聴した。
「できるだけ重い処罰を望む」。1審判決前、母親はマスコミ各社の取材にこう答えていた。しかし法廷で無罪判決を聞くと、HIV訴訟弁護団に「判決には息子のことが書かれていない」と怒りをぶつけ、取材を拒むようになった。今月10日、「(元副学長は)善悪の判断をする能力がない」とする医師の鑑定書が明らかになった際も、母親は「話す気にならない」と沈黙を貫いた。
昨年11月。九州で開かれた集会に出席するために乗り込んだ飛行機は、気流で激しく揺れた。「怖かったでしょう」と尋ねると、母親は「天国にいる息子の近くに行けるから、怖くない」と語った。
同弁護団などの調査によると、遺族の約7割が「うつ」、約3割はPTSD(心的外傷後ストレス障害)とみられる症状に苦しんでいる。遺族を覆う虚無感に公判停止が追い打ちをかける――と弁護団は懸念する。
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「これで無罪判決だけが残る。『医師の責任』を訴えてきたが、これからは負け犬の遠ぼえになるのか」。北海道HIV訴訟の原告男性はそう話す。男性は現在30代後半。高校2年生の時にHIV感染を告知された。
「元副学長はこっち(血友病患者)の味方だった時期もある。しかしどこかで変わった」。その理由が知りたくて、控訴審の9回の公判すべてを傍聴した。
非加熱製剤に混入していたのは、エイズウイルスだけではなかった。男性は多くの被害者同様、C型肝炎も併発している。月1回の検査では、緩やかだが確実に免疫力が低下し、エイズウイルスの量は増えている。肝炎で体がだるく、薬は手放せない。血友病、エイズ、肝炎の三重苦だ。
「僕らは医師と付き合い続けるしかない。熱心な医師がいるのも事実だが、医療を信じ切れない。スモン、サリドマイド、ヤコブ。薬害は繰り返されるが、日本の医療は変わりませんね。このままエイズは風化するのでしょうか」。あきらめの混じった口調で、男性はそう語った。昨年だけで16人が死亡した戦後最大級の薬害に終わりはない。
◇安部元副学長、昨年秋から異変
安部元副学長の異変は昨年秋ごろ訪れた。1審公判開始当初は自ら弁護士事務所に出向き、打ち合わせをリードするほど元気だった。しかし、次第に持病の心臓病が悪化。00年5月の東京地裁公判では、被告人質問を受けるかどうか裁判長に問われ「息が苦しくなってきました。だめです。お許し下さい」と答えた。
1審判決前には、月2回通院する以外にはほとんど外出しなくなり、昨年9月には弁護士の話を理解できなくなった。高齢による痴呆症とみられ、当初は時折、会話の内容を理解できない程度だったが、症状が進行し、現在はトイレに行くにも介護が必要な状態だという。
◇逆転判決の可能性「残念でならない」
刑事訴訟法314条の規定では、無罪であれば公判を停止しなくても判決言い渡しができる。この点を踏まえて、鈴木利広・東京HIV訴訟弁護団事務局長は「公判停止は、(1審無罪の)結論が逆転する可能性があったためと考えられ、残念でならない」との談話を出した。その上で同事務局長は「松村明仁被告の控訴審で、無罪判決部分の見直しを期待したい。裁判の過程では、大学病院の医師のあり方や製薬企業との関係など、薬害再発防止の観点から見過ごせない貴重な証言があった。医療関係者が、この裁判を忘れず、今後の改善に生かすことを強く切望する」と述べた。
東京・大阪HIV訴訟原告団の話 1審判断は私たち被害者が体験してきた事実に反し、到底納得できない中身だった。公判停止で私たちが求めてきた真相究明、責任の明確化から遠ざかるとすれば残念と言う以外ない。関係各位には、亡くなった多くの仲間たちや、闘病生活を送る患者の思いを受け止め、なお、真相究明と再発防止のため、最善の努力をお願いしたい。
[毎日新聞2月23日] ( 2004-02-23-14:51 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20040223k0000e040049002c.html