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(回答先: 道路公団・藤井総裁の「聴聞」の公開決定 国交省 −朝日新聞 投稿者 怪傑 日時 2003 年 10 月 15 日 14:09:20)
塩爺(じい)こと塩川正十郎前財務相が政界を引退した。「ホイッスルが鳴るまでロスタイムを大事にして有意義な人生を送りたい」という引退の弁がよかった。政治もつまりは人生の一局面であって人生のすべてではない。大病や落選、そして妻に先立たれた塩川さんの言葉は味わい深い。
一方、日本道路公団の藤井治芳総裁は「私は地位に恋々としない」と言うので辞任するのかと思いきや、辞任を拒んでもめ続ける。石原伸晃国土交通相の5時間にわたる談判も空振り。「道路のドン」のクビを取るにはいささか詰めが甘かったか。
その石原氏が12日のテレビ朝日のサンデープロジェクトで、藤井氏とのやりとりの驚くべき内幕を明かした。藤井氏は、どの道路の裏にどの族議員がいたか、それをどう面倒を見ていたのかを語った。議員が絡んだ国有地払い下げの疑惑があったことも明かした。話の中で議員5、6人の名前をイニシャルで挙げたというのである。
石原氏が「役人として不正を知ったのなら公にすべきではないか」とただすと、藤井氏は「そんなことをしたらすべてが壊れてしまう。死人がでる」と答えたというのだから、すごい話だ。
一体、藤井氏はイニシャルで話したのか。ひょっとして実名を挙げているのではないか。もし軽々におれのクビを切るならおれの知っている不正をぶちまけるぞ、そうなったらスキャンダルや事件に発展して松本清張の推理小説のように犠牲の死者が出るぞということなのか。政官業の癒着のドロドロした世界をうかがわせる。
◇
さて、くだんの塩川正十郎氏、各紙の引退インタビューに答える中で、産経新聞での発言が面白かった。
「小泉政権になって自民党は変わった。田中的自民党から福田的自民党にね。族議員も元気がなくなった。角福戦争のころは高度経済成長にはずみがかかっていたころで、日本列島改造論の田中さんが首相になれば、モノで栄えて心で滅ぶことになりゃせんかと必死で戦った」
東大工学部出身の藤井氏が建設省に入って道路建設を手がけたのは、まさに角栄氏の「日本列島改造論」が全盛の時代だった。全国に高速道路を、全国に新幹線を! 地方だって都会と同じ暮らしをしたい。地域格差の是正を! 田中的自民党だって、そもそもは人々の願いに違背したものではなかった。
しかし、そこに路線決定があり、予算配分があり、業者選定があるとなれば、いつしか政治家と業者の癒着が生まれ、官僚はそれを目をつぶって受け入れる。その代わり、私の出世、私の天下りポストは頼みますよ! 田中的自民党は政官業がいわば「権力の秘密」を共有することによって庇(かば)い合って腐る。郵貯資金などを使い放題の特殊法人が続々とできて官僚政治の体系ができあがる。
「権力の秘密」は利権官庁だけではない。昔、外務省を回っていたとき、ある課長から「この机の引き出しの一つ一つに1面トップのスキャンダルが入っていますよ」などといわれて驚いた。
◇
そんな自民党にさすがに嫌気が募ったところに、「昭和元禄」の浮薄を嘆いた「昭和の黄門」福田赳夫の政治的直系、小泉首相が登場して「自民党をぶっ壊す」と叫んだ。小泉総裁再選を果たし、いわば満を持して藤井氏を絡め取ろうとしたところで思わぬ逆襲を浴びたというてんまつである。福田的自民党もいまは正義を背負っているけれども、田中的自民党を根こそぎにするにはまだまだ傷を負わなければならないということかもしれない。
しかし、田中的自民党から福田的自民党に変わっただけで、本当に変わるのか。石原氏のテレビ発言に対し「2人の協議の中の話を一方の断りもなしに表に出すのはよくない。ほんとの話かね」と反発の声が出る。小泉さんは自民党は改革推進政党に変わったと叫んでいるけれども、なかなかそうは思えない。
で、自民党ではしょせん無理だ、チームがまるごと変わってしがらみを切り捨てないとほんとの改革はできないと政権交代を迫っているのが民主党である。あるいは、そうかもしれない。 (2003/10/15)
早野透(朝日新聞コラムニスト)