現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産31 > 134.html ★阿修羅♪ |
|
(回答先: 中東の本格外資導入に乗れない日本石油業界―何が必要とされているのか― 投稿者 hou 日時 2003 年 10 月 14 日 20:03:18)
ニューヨークの世界貿易センターなどが襲撃された同時多発テロは、当の米国だけでなく世界各国を震撼させた。いつ、いかなる時にテロに襲われるかも知れないという恐怖が世界中に広がったためである。 だが、今回の同時多発テロを最も深刻に受け止めた国は、石油大国サウジアラビアではないかと私は思っている。その理由は次のようなものだ。 周知のとおり同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディンの父親は、サウジアラビアの隣国イエメンで生まれ、サウジアラビアに移住して大富豪となった人物である。 ビンラディン自身もサウジアラビアで生まれ、やがて同国のサウド王家支配に反旗を翻して、国籍を剥奪されたという経歴の持ち主だ。イスラム教の聖地メッカ、メディナのあるサウジアラビアに、異教徒の米軍が駐留していることに反発、それを許しているファハド国王を盟主とするサウド家に敵対、その打倒を目指していると言われる。米軍の駐留に対するサウジ国民の反発は強く、同時多発テロの時にはビンラディンを支持する声が大きかった。 同時多発テロの際立った特徴の一つは、四機の米国民間航空機を乗っ取ったテロリスト十九人のうち、十五人までがサウジアラビア国籍だったことだ。これは、ビンラディンの指揮するテロ組織「アル・カイーダ」の主張に共鳴し、自らの命を犠牲にしてまでも「聖戦」(ジハード)に身を投じる若者が、サウジアラビアには大勢いることを示している。何故だろうか? 一つの理由は、間違いなく米軍の駐留である。だがそれよりさらに根深く、もっと深刻なのは、サウド王家による石油利権の独占と、王族たちの腐敗、堕落だろう。 一九三二年、アブドル・アジズ・イブン・サウドがアラビア半島を統一してサウジアラビアを建国、初代国王となった。以来、国王の座に着いたサウド、ファイサル、ハリド、ファハド(現国王)はいずれも、初代国王の息子たちだ。次期国王と目されているアブドラ皇太子もファハド国王の異母弟で、一族の支配は今後も続きそうだ。サウジアラビアという国名そのものが、「サウド家のアラビア」という意味なのだ。 国家権力の中枢や石油がらみの企業のほとんどがサウド・ファミリーの手中にあり、五千人といわれる王族に富が集中している。南フランス・コートダジュールのカジノやナイトクラブで、プリンスたちが豪遊している姿はしばしば目撃されている。 その豊かさは伝説的でもある。サウド家の海外投資は総額六〇〇〇億ドル(約七十五兆円)と言われている。同時多発テロの時、ニューヨークのジュリアーニ市長に見舞金として一千万ドル(約十二億五千万円)の小切手を切って断られたアルワリド王子は初代国王の孫だが、米国のシティ・グループ、AOL・タイム・ワーナー、モトローラ、コダック、ニュース・コープなどに百十億ドル(約一兆三千七百億円)もの投資をしている。 また、サウジアラビアの現国防相・スルタン王子の息子で、駐米大使を務めているバンダル王子は高級リゾート地・アスペンに建坪約五五〇〇平方メートル、部屋数五十五、浴室二十七の別荘をもっているといわれる。 だがオイル・マネーがサウジアラビアにふんだんに流れ込んだ一九七〇年代と異なり、その後の原油価格の低迷で財政は一九九九年まで連続十七年間も赤字が続いていた。人口も急増しており、国民生活にも影響が出ている。 一方、国内ではワハーブ派の厳格なイスラム教解釈に基づく政治が行われ、これに対する反発も強い。アルコールは禁止だし、映画もディスコも非合法、銀行でも学校でも男女は別だし、女性は車の運転を禁じられている。外国へ留学する若い世代が増えた今、こうした国の現状に不満が高まるのも当然だろう。 サウジ国内でもテロ事件が起きており、サウド家の支配に対する不満が爆発する可能性も否定できない。今のところ強力な治安組織が過激派の動きを押さえているが、サウジ王室が危機感を抱いていることは間違いない。十一月、サウジ政府が米週刊誌「ニューズウィーク」などに、ファハド国王の善政を讃える十二頁もの広告を掲載したのも、そうした危機感の表れだろう。 世界中から二百万人もの巡礼者がメッカに集まる「ハジ」も間もなく始まる。テロが起きないことを祈るばかりだ。