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(回答先: 苦悩する米銀(上)「金を貸さず」――BIS規制足かせ、借り手と信用力逆転も。1991/02/26【日本経済新聞】 投稿者 hou 日時 2003 年 10 月 14 日 20:42:52)
米国の銀行が苦悩している。八〇年代のマネーゲーム時代に不動産、大型買収向けの過剰融資に走った米銀には、九〇年代に入りこれまでのツケが一気に回ってきた。日本より一足先に金融自由化の波にさらされた米銀の収益環境は大きく変わり、構造不況の影もちらついている。自由化先進国の米国の銀行のつまずきは邦銀の今後の経営や制度問題にも影を落としている。米銀の苦悩と今後の展望を探った。
「米金融当局が国際決済銀行(BIS)の自己資本規制の延期要請を検討し始めた」――。米金融界では最近こんなうわさがまことしやかに流れている。
銀行が基準達成のために融資を大幅に圧縮した結果、クレジット・クランチ(銀行の貸し渋りによる信用ひっ迫)を招いたという見方が規制延期説の背景にある。米大統領経済諮問委員会(CEA)も議会に提出した報告で同規制を批判、うわさは一層真実味を帯びて語られている。著名な銀行アナリスト、トマス・ハンリー氏(ソロモン・ブラザーズ)は「貸し渋り解消のため春すぎにはBIS規制の二年程度の導入延期が決まる」とシナリオを描く。
クレジット・クランチ――。せんじつめれば銀行が「金を貸す」という本来の役割を放棄することだ。米連邦準備理事会(FRB)による米銀の融資態度調査では対象行の約三分の一が十月以降、融資基準を強化した。米銀の商工業向け融資は昨年末時点で前年比一・九%と約十年ぶりの低い伸びとなっている。
八〇年代前半の金融自由化でコマーシャル・ペーパー(CP)など新たな資金調達手段を得た大企業は銀行から離れた。優良顧客を失った銀行はよりリスクの高い不動産、大型買収融資に向かう。その結果が大量の融資焦げ付きによる経営悪化と反動の「貸し渋り」だ。
二月上旬の米国債入札はドル安など悪条件にもかかわらず成功した。銀行が預金で集めた資金を企業に貸さずに「BIS基準のリスク比率がゼロで安全な米国債に向けている」(米大手証券)からだ。本来ならば銀行を通じて民間に流れるべき資金が政府に流れ、民間部門の資金がひっ迫するという、皮肉な結果を生んでいる。
チェース・マンハッタン、マニュファクチュラース・ハノバーなど一部大手米銀持ち株会社の優先社債の格付けはBaa3(ムーディーズ社)とジャンク債の一歩手前。借り手側の企業が銀行よりも高格付けで安い資金を調達できるという「貸し手と借り手の信用力の逆転」も起こっている。
八〇年代にスーパー・リージョナル(巨大地銀)と脚光を浴びた米北東部のバンク・オブ・ニューイングランドは不動産融資で傷付き一月に倒産に追い込まれた。各種金融業務の全面展開を柱とする「スーパーマーケット戦略」を打ち出したシティコープは資金難にあえぎサウジアラビアの王子に救いを求めた。銀行は将来の青写真すら描けなくなっている。
富豪ネーサン・ロスチャイルドは一八一五年、ワーテルローの戦いでのナポレオン敗北の情報をいち早く知り英国債を売買、一財を成した。金融業の原点は情報の偏在を利用したサヤ抜きといわれる。情報化の進展、効率化は金融業にとってはマイナスだ。
世界に拠点を置く大企業は銀行に勝るとも劣らない情報網を確立、銀行に頼らずに資本市場で容易に調達できる。借り手と貸し手の地位逆転は情報化の進展で加速しているとみる向きもある。
金ピカの八〇年代が終わり米国には「金を貸さない銀行」と「借り手より信用のない銀行」が残った。米銀行界は景気後退に伴う一時的な収益低迷では片付けられない構造的な不安を抱えている。 (ニューヨーク=藤井彰記者)