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本投稿は、はまちさんの「反シオニストさんへ、パレスチナの自爆攻撃とあるアラブのどうしようもない就職事情」を受けたものですが、阿修羅読者にパレスチナ問題等をより深く知ってもらいたいと言う意図がありますので、特にはまちさんへの返答という形式は取りません。
はまちさんの私への返答は以下の通り。
http://www.asyura.com/0306/dispute12/msg/326.html
自爆攻撃とジハードについて
私はできるだけ中立的な意味合いを持たせるために「自爆攻撃」という言葉を用いています。一部パレスチナ武闘派やイスラム武闘派が自爆攻撃をジハードとしていますが、これは明らかに誤った用法です。自爆テロという言葉も用いられますが、組織的かつ大規模なテロ行為を行っているのはシオニストであり、このテロによって追い詰められたパレスチナの若者が行う自爆攻撃を果たしてテロと呼べるか大いに疑問があります。また彼らの自爆攻撃の背後には極右シオニストの意を受けたイスラエルの諜報機関の存在が少なからずありますので、問題は単純ではありません。
アル・ジャズィーラがパレスチナ人の自爆攻撃をジハードと表現しているかどうか確認していませんが、アラブ紙やアラビア語報道では「爆弾攻撃」あるいは「殉教」(イスティシュハード)という言葉が一般的に使用されています。
自殺はイスラムでは戒められる行為ですので「自殺攻撃」はアラビア語報道では用いられません。それが正しいかどうかは別にして、自己の信念や信仰に基づいて身命を捧げるわけですので、イスティシュハード(殉教)はそれなりに適切な用語かと思います。ちなみに、親パレスチナ報道あるいはイスラム系報道ではイスティシュハード、自爆攻撃に反対する立場の報道では「爆弾攻撃」が多いようです。私は「自爆攻撃」に「自殺」の意味を含めているつもりはありません。
以下に述べるように私は自爆攻撃には反対ですが、自爆攻撃を行うパレスチナの若者をイスラムの狂信者であるとは全く考えていません。彼らが置かれている悲惨で絶望的な状況は十分理解しているつもりです。
ジハードについて
ジハードは「努力する」「努めて義務を果たす」という意味の jahada という動詞から派生した言葉です。この動詞の名詞形はジャハド(jahd)で、 ジハードという語形ではジャハドより能動的であり意味は深化します。従ってジハードは「奮励努力」くらいに訳すのが適当です。奮励努力はあらゆる分野に及ぶものであり、決して戦争に限定されるものではありません。従ってジハードを「聖戦」とするのは完全な誤りです。
イスラムのコンテクストではジハードは大ジハードと小ジハードに分けられます。大ジハードはアッラーの道のため、イスラム共同体の発展のためのあらゆる努力を意味します。イスラム共同体を発展させるための学問研究や経済運営のための努力も大ジハードです。
小ジハードは、イスラム共同体防衛戦争における奮励努力を意味します。戦闘のみならず後方支援における奮励努力も小ジハードです。従って、パレスチナ解放闘争はムスリムにとって小ジハードです。しかし、自爆攻撃は小ジハードとは言えません。イスラム共同体防衛どころか、共同体に大きな損失を与えているからです。
自爆攻撃に反対する理由
アッラーの道のための戦いとは何か、という問題に踏み込むと神学的議論になりますので、この点は避けてパレスチナ解放闘争とイスラム共同体防衛戦争という観点から自爆攻撃に反対する理由を列挙します。
(1)自爆攻撃は戦略的・戦術的視点から見て決して有効なものではなく、稿を改めて述べるようにパレスチナ社会に非常に大きな損害を与えている。また、パレスチナと南レバノンのヒズボッラーとは状況が全く異なるので、パレスチナの自爆攻撃とヒズボッラーの抗戦を同列に置くことはできない。
(2)自爆攻撃によって、イスラエルに憎しみを抱く一部ムスリムは溜飲を下げるが、大部分のムスリムやパレスチナ人は自爆攻撃に大きな疑問を持つと共に、イスラムの教えに反するものであると強く批判している。すなわち、戦略なき自爆攻撃はイスラム共同体防衛どころか、共同体を分裂させ、パレスチナ社会も分裂させている。
(3)パレスチナの真の敵はシオニズムとその背後に控える多国籍金融支配層であるが、自爆攻撃でイスラエル市民を殺傷しても彼らに打撃を与えることは全くない。それどころか、自爆攻撃はパレスチナ攻撃のために極右シオニストに利用されている。
(4)イスラエルの諜報機関がパレスチナ社会に深く浸透しているのは周知の事実である。自爆攻撃を行わせているハマースの軍事部門やイスラミック・ジハードは相当部分イスラエル諜報機関を通じて極右シオニストに操作されている。敵に操作されている自爆攻撃は敵を利するのみであり、パレスチナの利益とはなっていない。
(5)パレスチナは弱体であるがゆえに、世界の多くの人々を味方にする戦略をとる必要がある。しかし自爆攻撃は世界中で強く非難されており、「パレスチナ人はテロリスト」とのステレオタイプの見方を強化している。これはパレスチナにとって大きな損失である。また、自爆攻撃はイスラムのジハードと結びつけて行われるため、「イスラムは怖い宗教」とのステレオタイプの見方も強化されている。これはイスラム共同体にとっても大きな損失である。
(6)多国籍金融支配層はイスラム世界を脅威としてこれを包囲・分断し、さらにイスラム世界から利益を搾り取ろうとしている。イスラムに名を借りた自爆攻撃は、この包囲・分断を支えるものであり、決してイスラム世界に利益をもたらすものではない。